職種の枠を超えての自走が、20代の成長を決める!?──ビジョン実現に向け次々と事業立ち上げに挑むネクストビート、ビジネス組織の強さの秘訣を探る

インタビュイー
佐々木 麻位也
  • 株式会社ネクストビート 執行役員 CMO 

早稲田大学政治経済学部卒。新卒でセプテーニに入社し、進行管理業務を経て、メディア仕入れ部門の責任者として着任。その後、アドテクノロジー領域の戦略子会社の立ち上げメンバーとして参画。事業責任者と他子会社のマネージャーを兼務し、その後再びセプテーニで管理部門の責任者に就く。2019年5月、デジタルマーケティングのゼネラルマネージャーとしてネクストビート入社。2020年10月にCMO就任。

野木 良敬
  • 株式会社ネクストビート 執行役員 CFO 

2005年、日本政策金融公庫へ新卒で入社。中小・中堅企業、ベンチャー企業など600社以上の融資・審査・コンサルティングを実施。2018年リーディングマークへ入社し、執行役員最高財務責任者(CFO)として経営管理全般(財務会計、総務、法務、人事)を管掌。2019年8月、執行役員CFOとしてネクストビートへ入社。中小企業診断士。

仙北 裕規
  • 株式会社ネクストビート 保育士バンク事業責任者 

新卒で医療機器メーカーに入社し営業として3年間従事。その後、医療現場の人材不足という課題を感じ、SMSに転職。 看護師の転職支援を行うキャリアアドバイザーや大手法人担当営業として約5年間在籍。その後はスタートアップ専門のベンチャー企業へ転職し、新サービスの立ち上げから、事業譲渡までを経験。事業譲渡先のアイティメディアでは営業責任者として営業戦略の立案や数字管理を担う。2018年1月にネクストビートに入社。「保育士バンク!」事業責任者として全体を統括する。

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個の成長やチャレンジが事業の発展にダイレクトに結びつく。そんな理想的な組織の形を追求し、裁量の大きいチャレンジングな環境があると掲げていても、蓋を開ければ様々な制約が生じ、組織の中で思うように動けないという話は珍しくない。また、個の裁量を重視するあまり、組織の均衡が保てなくなるというのもよくある話だ。

では、個の成長やチャレンジを最大化しながら、一人ひとりがビジョン実現に向けて自走し、事業を発展させていくことは不可能なのだろうか?

「人口減少社会への価値貢献」をミッションに掲げ、創業から8年で7事業を展開するネクストビートのCMO佐々木氏は、「一人ひとりにカルチャーが深く浸透していれば、それに応じて組織も適切な形に変化していく」と語る。個の成長=事業の成長であり、さらにそれがビジョン実現につながっていくという。

今回はそんな事業成長の方程式が成り立つ組織の秘訣を探るべく、様々な領域を経てネクストビートで事業を牽引する、3人の事業責任者に話を聞いた。

  • TEXT BY ICHIMOTO MAI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY KEISUKE SHIMADA
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マクロ環境を適切に捉え、課題解決に動く

ネクストビートの創業事業である『保育士バンク!』は、累計30万人以上が登録する保育士専門の就職・転職支援サービスだ。全国11の事業所で保育専門のコンサルタントが求職者一人ひとりに真摯に向き合い、きめ細やかなサービスを提供してきた。個別相談の他にも、北海道から沖縄まで47都道府県の求人広告を扱い、全国で就職・転職フェアを定期開催している。創業期から保育事業者や求職者に寄り添い構築してきた強固な顧客基盤が、複数の事業成長を後押ししている。

『保育士バンク!』を率いる仙北裕規氏は、この事業の提供価値を語る上で、マクロ環境への言及は欠かせないと話す。

仙北政府が本腰を入れて待機児童問題の解消に動いたことにより、保育施設はこの10年間で1万施設以上増加しました。それと同時に、より多くの施設で保育士不足に直面することになります。

しかし、マクロ環境の変化により課題を抱えているのは、事業者だけに限った話ではないと言う。

仙北求職者である保育士も自分に合う職場がどこなのか、どういう基準で選べば良いのかわからない状況に陥っています。仮に採用されたとしてもミスマッチが多ければ、保育士として働くことを断念してしまう人もいるでしょう。そのような潜在保育士が増えれば、いくら施設の数を増やしたとしても、安心して子供を預けることができない社会になってしまいます。

慢性的な保育士不足は、保育の質に大きく影響する。「保育士バンク!」はそうした課題を解決すべく、求職者が知りたい情報を整理・集約し、人材紹介・求人広告・フェアなど多方面から、求職者と事業所の接点を生み出し、採用プラットフォームを提供している。

すでに知名度、実績ともに業界トップクラスだが、仙北氏は「圧倒的ナンバーワンでなくてはいけない」と強調する。その背景には、プラットフォームビジネス特有の理由があるようだ。

仙北『保育士バンク!』はユーザーが増えれば増えるほど、ユーザーにとっての価値が高まる、いわゆるネットワーク効果が生まれるビジネスモデルです。「保育士バンク!」がナンバーワンになれば、そこには圧倒的な便益が生まれます。サービスを成長させて世の中にきちんと価値貢献し続けるためには、取扱求人数や求職者数において明確にトップを獲る必要があります。

仙北氏は新卒で医療機器メーカーに入社し、20代半ばで転職した先でネクストビート創業前の三原氏と出会った。その後、複数の事業立ち上げを経験した仙北氏がネクストビートへの入社を決めたのは、先輩である三原氏の仕事へのスタンスが大きく影響している。

仙北三原は昔から、常に顧客やサービスと正面から向き合う姿勢を貫いていました。当社のメンバーが日々顧客と向き合う姿勢は、当時から変わらない三原の仕事に対するスタンスと重なる部分があります。

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プロダクトの優位性を高め続ける、ビジネスサイドの価値貢献

保育領域のもう一つの主力事業が、保育園・幼稚園向けのICT業務支援システム『キズナコネクト』だ。保育の現場では手書きの作業も多く、アナログで煩雑な業務が残っている。そのためタブレット端末で誰もが利用しやすい業務支援システムを提供し、保育士の業務効率化をサポートしている。

野木保育の現場では大変な業務をしているのに、自分たちではそれをペインだと気づいていない、または気付いているのに仕方なくそのまま続けているケースが多々あります。そのため「こんなやり方をしたらもっと楽になりますよ」「この業務を簡単にしたら、結果的に保育の質を上げる部分にこれだけ時間が使えるようになりますよ」と、相手に寄り添いつつ啓発する、課題解決型のアプローチが必要です。

また、ITサービスに慣れていない保育士の方も多いので、成約後も導入サポートや問い合わせ対応を特に丁寧に行う必要があります。

いかに顧客から選ばれるプロダクトとして、マーケットでの優位性を築くか。「鍵を握るのは、営業やマーケティングといったビジネスサイドの役割です」と、事業オーナーの野木良敬氏は強調する。

野木営業のクライアント開拓力やマーケティングの集客力はもちろんですが、顧客との関係性を構築しながら、そこで見つけたユーザーインサイトをプロダクトに反映するのも大切な役割の一つです。

現場では何に困っていて、どのような機能が充実すればより使いやすいサービスになるのか。営業やマーケティングがそれぞれの立場で得た情報を共有し、マーケットインに貢献する動きは欠かせません。

開発サイドが生み出したプロダクトをさらにニーズにマッチするよう、ビジネスサイドが改善を促す。これがネクストビートの事業成長を加速させる大きな原動力になっている。そうして事業者や保育士をきめ細やかにフォローアップをすることで、業界内でのプレゼンスが高まり、それがそのまま参入障壁になるという。

野木氏は当初、ファイナンスや経営管理を中心に担っていたが、現在は自らの意向で事業オーナーとしてビジネスサイドに軸足を移している。

野木思い切ってベンチャーに飛び込みましたが、ファイナンスや経営管理だけではなく「当事者として事業に関わりたい」という強い想いから、今は事業を任せてもらっています。そうしたチャレンジはやりがいに繋がると共に、その責任を果たす覚悟を同時にもっています。

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ミッション実現のために、領域は絞らない?
複数領域での事業成長が可能な理由

ネクストビートは保育領域以外でも、複数の事業を展開している。その一つが『おもてなしHR』という宿泊業界に特化した就職・転職支援サービスだ。この事業を率いるCMOの佐々木麻位也氏は、前職のインターネット広告代理店での経験を生かし、入社直後から広告運用の内製化を推し進めてきた。

保育領域と宿泊業界ではかなり異なる部分がありそうだが、勝算はあるのだろうか。

佐々木確かに当社は保育領域から事業をスタートしましたが、事業領域を絞っているわけではありません。我々が常に考えているのは、「人口減少社会への価値貢献というミッションに対して、どのような手段で結果を出していくか」ということです。

市場の課題と我々の提供できる価値がマッチするのであれば、あとは挑戦するだけ。今までと違う領域だからという理由で参入を躊躇する必要はないですし、抵抗感は全くありません。

しかし、いくら保育領域で培ったマーケティングノウハウやを事業基盤を活かせるとはいえ、これまでとは異なる領域で新規事業にチャレンジするのは容易ではない。実際に既存領域の枠を超えて事業参入し、大成功を収めているベンチャーはそう多くはない印象だ。

すると佐々木氏は、「別領域での採用ノウハウを横展開しているおもてなしHRには、業界内で固定化している採用手法に風穴をあける意義がある」と続けた。

佐々木宿泊業界では知人を介して人材を探す事業者が多く、手の届く範囲でしか求職者にアプローチできていないことも少なくありません。一方で、我々の調査では宿泊業界を志望する求職者のなかには、「場所にこだわらず働きたい」と考えている人が多いこともわかっています。

事業者と求職者を丁寧に繋ぎ、そうしたミスマッチを減らすことで宿泊業の活性化に貢献できれば、人口減少社会の課題の一つである地方創生に切り込むことが可能です。

異なる事業領域であっても、業界特有の構造的な背景を理解し、なぜ需給ギャップやミスマッチが生まれるのかを紐解いていく。そのプロセスにおける緻密なリサーチやマクロ環境を適切に捉えた事業づくり、そして顧客基盤を活かした事業の拡張こそが、ネクストビートの事業の再現性を高めているポイントと言えそうだ。

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一人ひとりのカルチャー理解と行動から醸成される、
ネクストビートらしい組織の形

事業が成長しメンバーが増えれば、必ずと言っていいほど組織の課題が浮き彫りになる。部署を越えたコミュニケーションが希薄になり、セクショナリズムの蔓延などから歪みが生じることも少なくない。

これだけフェーズや領域の異なる事業を複数展開するネクストビートであれば、すでにそうした課題に直面していてるのではないか?率直にそんな疑問をぶつけてみると、佐々木氏は「特別珍しい仕組みを導入しているわけではない」と謙遜しつつ、次のように語った。

佐々木組織の理想の形というのは、存在しないと思っています。一人ひとりにカルチャーが深く浸透していれば、それに応じて組織も適切な形に変化していくのではないでしょうか。

ちなみに私が入社した時点で、すでにカルチャーの元になる考え方は確立されていたので、それがどのように育まれたのかは教えて欲しいぐらいです(笑)。約7年の歴史の中で、相当深く根付いたものなのだと思います。以前、Culture book(*1)をつくるにあたり言語抽出をしたのですが、その際も新たに何かを定義するのではなく、すでに社内に備わっているカルチャーを引き出して、より浸透しやすいようにしたくらいです。

*1:企業の価値観を社内外の人と共有するためのツール

個々人がミッションドリブンな動きをすれば、組織も自然とそれに適した形に変化していく。社内で自然と横断的な役回りを担っているマーケティングチームが、それをわかりやすく体現しているという。

仙北当社ではメンバークラスでも、マーケティング担当者との接点は豊富です。どんな打ち合わせにも必ずマーケティング担当者が参加しているくらいの感覚ですね。数十人のスタートアップならまだしも、300人規模の組織ではかなり珍しいのではないでしょうか。

佐々木氏にさらに詳しく尋ねてみると、ネクストビートのマーケティングチームの形は、こちらの想像とは異なっていた。

佐々木HR事業のマーケティングというと、おそらくリスティングやリターゲティングがメインだと考えるでしょう。もちろんそうした広告運用の業務もありますが、割合としては全体の1割以下に過ぎません。サイト改善のためのグロースハックやSEO、コンテンツ、CRMといった分野は社内で一通りカバーしているので、外注せずにそれら全てを自社で運用しています。

さらに、一つの領域や事業だけを担っているメンバーはいないというのも大きな特徴です。各々が「今ある課題を全て解決するためには、自分が社内でフレキシブルに動くのが最善だ」と考え、業務範囲をどんどん横に広げています。大規模なマーケティングを専門とする会社や広告代理店では体験できない、当社のマーケティング組織ならではの事業との関わり方だと思います。

そんなネクストビートのカルチャーは、同社が行動指針として掲げる「∞(無限大)当事者意識」から生まれるものだと、野木氏は考えている。

野木社内では自分のチームだけでなく、事業全体、さらには会社全体に対する当事者意識が当たり前のように求められます。そうして会社全体のことを考えている人が増えることで、自然と職種の垣根を超えた交流が発生するのでしょう。

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ビジョン実現に向けて、自らが実践者として
事業に取り組む覚悟はあるか?

様々なフェーズの事業があり、新規事業にも前のめりに取り組める環境は魅力だが、ゼロから事業を立ち上げる過程には想像以上の泥臭さもあるだろう。佐々木氏は「どんな状況下でも、具体的なイメージを大事にしてほしい」と話す。

佐々木先日、堀江 貴文氏(通称:ホリエモン)が九州で球団を設立すると宣言したニュースが話題になりました。例えば、「球団をゼロから立ち上げるために、泥臭いこともやってもらいます」と言われて、土地を耕すところから取り組む覚悟がある人は少ないでしょう。 でも実際に球団を設立するには球場や練習場などの設備が必要ですし、そのために未開の土地から何をどのように進めていくのかも自分で決めて動かなければいけない場合もあります。

もしそれくらいのフェーズから事業創りを任されたとしても、歓声に湧くスタンドの様子を鮮明に思い描きながら、ゴールまでのステップに愚直に取り組めるかどうか。そうしたイメージや想像力はネクストビートで新規事業に取り組む上で、大事にしてもらいたいですね。

ゼロから何度も挑戦を繰り返し、カオスを楽しみ続ける──。そんな組織にフィットするのはどのような人材なのだろうか?

野木ネクストビートはアイデンティティとして「ALL実践者」という言葉を掲げ、評論家ではなく価値を生み出す実践者を求めているので、受動的な人は全く合わないと思います。「どうすればいいですか?」という問いかけではなく、自分で判断してから聞くアサーティブなコミュニケーションは必須です。

仙北「どうすればいいですか?」と聞くぐらいなら、「やってみてこんな結果が出ちゃいました」というコミュニケーションの方がよっぽどいいですね(笑)。大切なのはゴールにたどり着くために、その手順や段取りをしっかり考え、自ら形にしていく実行力です。今の時代を生き抜く上でも欠かせない力だと思います。

最後に自身も実践者としてネクストビートの事業を先頭で率いる3人に、今後の展望を聞いた。

仙北『保育士バンク!』は、中途だけではなく新卒マーケットにも進出していきます。また採用だけではなく、保育事業者の経営課題全般を解決できるようなサービスも検討しています。ユーザーに向けては、保育士の国家資格取得を支援する学習アプリを提供するなど、保育領域の中だけでも提供したいサービスはたくさんあります。

野木『キズナコネクト』に関しては、2、3年のうちに業界トップシェアを取りにいきます。営業やマーケティングを強化しつつ、UIUXの観点も含めたプロダクト改善を並行して進めていけば、実現できない目標ではないと考えています。

佐々木私が責任者を務める地方創生領域の『おもてなしHR』は、『保育士バンク!』のような当社の屋台骨となるサービスに育てられるかどうかが鍵になります。今後の事業展開を見据えて今大切なのは、スピード感を持って全国規模にまで拡大することです。保育領域とはフェーズが異なるからこそ、また違う面白さがありますね。

事業家として事業を立ち上げて成長軌道に乗せるためには、ただ絵を描くだけではなく、実現に向けてどこまでやり切れるかが重要になる。今回登場した3人の話からも、ネクストビートには「人口減少社会への価値貢献」に向けて取り組むべきことが山ほどあり、ゴールに向けてゼロからチャレンジする環境があることが伺える。

たとえそれがどんなに険しい道のりだとしても、事業家になるという覚悟と愚直さが備わっているのであれば、ネクストビートの門戸を叩くことは一考に値するだろう。

こちらの記事は2021年08月06日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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フリーライター。1987年生まれ。東京都在住。一橋大学社会学部卒業後、メガバンク、総合PR会社などを経て2019年3月よりフリーランス。関心はビジネス全般、キャリア、ジェンダー、多様性、生きづらさ、サステナビリティなど。

写真

藤田 慎一郎

編集

島田 啓佑

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