30億調達のReproが目指す、ジャパン・アズ・ナンバーワン再興──平田祐介が、日本の未来に人生を賭けられる理由

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インタビュイー
平田 祐介
  • Repro株式会社 代表取締役 

1980年、東京都出身。戦略コンサルタント出身のシリアルアントレプレナー。大手コンサルティングファームに入社後、主にメーカーに対して経営戦略立案支援や成長支援業務に従事。2011年から複数の立ち上げに関与する。2014年にReproを創業し、世界66か国7,300のサービスに導入(2020年1月時点)されているカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Repro(リプロ)」を提供。

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世界66か国、7,300以上のサービスで導入され、圧倒的な市場シェアを誇るApp / Web向けのマーケティングプラットフォーム『Repro』。開発・運営するReproは、2020年2月、シリーズCで総額約30億円を調達した。「CE(カスタマーエンゲージメント)プラットフォーム」として大幅なアップデートを実施し、グローバル展開を推進していく。

Reproは、シリアルアントレプレナーである代表取締役・平田祐介氏が「早期リタイアに向けた資金を得るために立ち上げた」会社で、売却が前提だった。しかし、平田氏は今回のアップデートに際し、「M&Aシナリオは捨てた。グローバルでNo.1シェアを獲り、“ジャパン・アズ・ナンバーワン”再興の呼び水となりたい」と意気込む。

平田氏が、自社のみならず、日本全体のエンパワーメントにコミットするのはなぜか。「1,000万円近くの借金を背負った」二度目の起業から、再チャレンジだったReproの挫折と復活の軌跡、そして今回のアップデートの舞台裏まで辿り、「20年ぶりに人生の目標が刷新された」と語る平田氏の経営哲学を明らかにする。

  • TEXT BY YUKO TAKANO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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多額の借金を背負い、“ユーザー視点”の意味を知る

「世界シェアNo.1を獲得する」と、今でこそミッションを熱く語る平田氏だが、起業家としてのスタートは意外にもドライなものだった。

平田起業したての20代の頃は、自分本位のモチベーションに突き動かされていました。学生時代に思い描いた「早期リタイアして、世界中を自由に旅するための資金を得る」という夢を実現することしか、頭にありませんでしたから(笑)。とにかく、できるだけ高い評価額で事業を売却し、まとまったお金を手に入れたかった。

二度の起業で挫折を経験。二度目の起業ではECサイトを立ち上げるも、売上が伸び悩んで赤字が続き、1,000万円近くの借金を背負ってしまう。

苦境に立たされた平田氏は、知人のグロースハッカーにアドバイスを求める。すると、Webサイト上のユーザーの動きを記録し、動画で閲覧できるツール『GhostRec』を勧められた。

藁にもすがる思いで導入し、ユーザーの行動からインサイトを読み取り、サイトを改善した。続けていくうちに売上は急増、たった4ヶ月で借金を完済し、黒字化も達成した。その時、平田氏は「ビジネスの本質はユーザー視点だと知った」と振り返る。

Repro株式会社 代表取締役 平田祐介氏

平田GhostRecは命の恩人。売上アップだけを目的にし、ユーザー視点が欠落していた僕を救ってくれました。その時はじめて、人の役に立つことこそがビジネスの本質だと気づいたんです。

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安売りなんて絶対にできない──積年の夢を捨てた、苦渋の決断

自らが救われた体験を胸に、平田氏は“アプリ版のGhostRec”の開発に着手する。アプリ内のユーザー行動を、動画で再現できる分析ツールとして、2014年に「Repro(β版)」をリリースした。

一部のマーケターから熱い支持を獲得したものの、導入数は伸び悩んだ。アプリ市場は伸びており、ユーザーインサイトを深く知りたいニーズはあるはず──それにもかかわらず、リリースから約2年間は、MRR(月間経常収益)が100万円を超えない日々が続く。状況の打開を図り、マーケターへのヒアリングを重ねるうちに根深い要因が浮かび上がってきた。

平田多忙を極めるマーケターは、分析ばかりに時間を費やせないと気づきました。彼らの目的は、あくまでKPIを伸ばすこと。使ってもらうには、実行すべき施策まで提案しなければいけないと思い直したんです。

インサイトを得た平田氏は、「Repro」をピボットさせる。データ分析のみならず、プッシュ通知やアプリ内メッセージの最適な表示タイミングを提示するなど、ネクストアクションまでを最小ステップで実現するツールに変貌を遂げたのだ。

すぐには認知が広がらず、苦境は続いた。しかし、2015年9月の「B Dash Camp」のピッチコンテストで優勝してから、風向きが一変。アカウント数が急増し、快進撃が始まった。

SaaSスタートアップの理想的な成長目安とされる指標に、「T2D3」がある。“Triple, Triple, Double, Double, Double”を意味しており、「2年連続で300%成長、その後の3年連続で200%成長すれば、超一流のSaaS」だと示すものだ。Reproは、T2D3を達成するペースで急成長を遂げてきた。

売上が伸び続けるなかで、2018年にはついに売却を検討しはじめる。数社と商談してみたものの、平田氏が提示した金額を受け入れる企業はなかった。強気の交渉を続けたが、一向にまとまらない。悩みに悩んで出した結論は、「積年の夢である早期リタイアを捨て、売却を断念すること」だった。

平田金額を下げれば、買い手が現れる可能性は高かったと思います。でも、これまでReproのために尽力してくれた社員や、苦しいときに助けてくれた投資家の方たちのことを思うと、安売りなんて絶対にできなかった。

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とある“危機感”が、鬱屈の日々を抜け出すきっかけをくれた

結論を出しても、長年の目標を捨てることで負った傷は、決して小さくなかった。

平田正直、モチベーションは急落しましたね。「終わりのある戦だ」と思い、命を削って働いてきましたから。売却を断念したら出口が見えなくなってしまった。それ以降の数ヶ月間は、新たな目標も定まらず、鬱屈とした日々を過ごしていました。

ある時、創業期に在籍していた元インターンたちと旧交を温める機会があった。そこで平田氏は、忘れていた「危機感」を思い出す。

平田インターンたちは地頭が良く行動力もあり、本当に優秀でした。「こんなにすごい若者がいるなら日本の未来は明るい」とまで思っていたのですが、ある日、彼らの言葉に衝撃を受けたことがあって。

仕事をした後にお酒を少し買ってきて、飲みながら話すことがありました。彼らに「将来やりたいことは?」と聞いてみたんです。全員が口を揃えて「わからない」と答えた。「こんなに優秀な若者たちでも夢を持てない国に、未来はないのではないか」と強い危機感を覚えました。

創業期は売却だけを目指していたため、アクションを取ることはなかった。しかし、積年の目標を失った平田氏は、思い出した危機感に激しく心を揺さぶられた。自身の若かりし頃には「夢を持てない」とは考えられなかったからだ。

平田僕は小学校の卒業文集に、「SONYの社長になりたい」と書いていました。当時は、新聞の一面が「日本企業が世界で勝っている」と報じるニュースで溢れていた時代。子供心にも、ビジネスパーソンが本当にかっこよく見えていました。

平田氏は1980年生まれだ。1979年にアメリカで『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が出版され、ベストセラーに。1989年の世界時価総額ランキングでは、トップ50のうち32社を日本企業が占めていた黄金時代。

昨今の時価総額ランキングに、日本企業の名前はほぼ見当たらない。大手企業が、数千人規模で早期退職の希望者を募る光景を目にするのも、珍しいことではなくなった。結果として、若者が夢を抱けない状況が生まれているのだと、平田氏は推察する。

平田「早く社会に出て働きたい」と意気込む前向きな想いより、「社会は厳しいから、生き残っていくための力をつけたい」と考える防衛本能が先行しているのでしょう。沈みゆく今の日本では、仕方のないことですよね。

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「ジャパン・アズ・ナンバーワンを取り戻す」に人生の目標をアップデート

「この20年間で、若者の思考はかなり変わってしまった」

平田氏は次に目指すべき山に気づく。このギャップを埋めることだ。

平田経営者としての人生を選択した自分が、何を成し遂げるべきなのか、はっきり自覚しました。日本の若者が、当たり前に夢を抱けるようにしなければいけない──。人生の目標が「ジャパン・アズ・ナンバーワンを取り戻す」にアップデートされたんです。未来を担う若者に、できるだけ多くの希望を与えることが、大人の仕事だろうよ、と。

早期リタイアを目指していた青年期から転じ、現在は「人生を賭けて他者の幸せにコミットするフェーズに入っている」と平田氏は続ける。

平田自分の幸せだけを追求する人生は捨てました。沈んでいく日本を横目に、リゾートでシャンパンを楽しむ人間にはなりたくない。いまは、他者を幸せにすればするほど、自分の人生が豊かになる感覚があります。5年後はさらに範囲を拡大し、「アジア人を幸せにしたい」と言っているかもしれないし、10年後はすべての人間が対象になっているかもしれません。

自分本位から、他者本位へ──平田氏は、心理学者・マズローの「欲求5段階説」を引き合いに、志向性の変化は「自然の成り行きだ」と語る。

欲求5段階説において、最上位は「自己実現欲求」とされているが、マズローは晩年に「自己超越欲求」を付け加えている。人は自己実現を達成した先に、「社会全体を幸せにすること」を欲求するようになると、マズローは気づいたのだ。「自己実現欲求から、自己超越欲求へ」のステップを、平田氏は自身の変化になぞらえる。

平田起業した頃の夢は、いま思えば、自己実現欲求を満たすためのものでした。でも、思い出したくもないような辛いことをたくさん乗り越え、会社を伸ばしていくなかで、自己実現欲求が満たされていったのだと思います。だから、自己超越欲求に行き着いたのではないかなと。

平田誤解してほしくないのですが、僕が歩んできた道は、決して特殊なものではありません。欲求を一つひとつ実現していけば、誰もが自然にたどるステップだと思います。もしかすると、歴史に名を残すような偉人であれば、自己実現欲求よりも先に自己超越欲求にたどりつくのでしょう。でも僕は凡人なので、彼らのように飛び級はできません(笑)。

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「シンプルにうざいだけ」の企業からのメッセージを変革する、たった一つの方法

Reproと平田氏の変遷

ジャパン・アズ・ナンバーワンを取り戻すため、平田氏はReproの大幅なアップデートに踏み切った。

アプリやWebだけでなく、今後はオフラインも含めたあらゆるチャネルに対応領域を拡大。すべてのユーザー接点を横断し、企業と顧客の理想的な関係を実現する「CE(カスタマーエンゲージメント)プラットフォーム」に進化することを志向する。その背景には、全世界的なマーケティング手法の転換点があった。

平田世界的にサブスクリプションモデルが普及しつつある昨今、多くの企業にとってLTV(顧客生涯価値)の向上が最重要課題となっています。今後は「パーチェスマーケティング(買わせるためのマーケティング)」より、「エンゲージメントマーケティング(顧客との関係性を強化するためのマーケティング)」が重視されていくのは明らか。その流れを支援し、LTVを向上させるのが、CEプラットフォームの役割です。

平田氏は、Reproの目指す姿を「BtoC版のSalesforce」と表現する。世界最大級のCRM(顧客情報管理システム)であるSalesforceにより、BtoB領域では顧客理解が進んでいる。ところが、BtoC領域においては、認知層からロイヤルカスタマー層まで、各レイヤーに属する顧客の人数すら可視化できていない企業が多い。Reproは、そうした行き詰まりの打開を目指す。

平田Reproは、ロイヤルカスタマーを創出するための施策を自動提案します。契約いただけた瞬間に、マーケターが成果を出せるツールです。

エンゲージメントマーケティングが進み、CEプラットフォームが普及した先には、「企業と消費者の関係性は豊かになる」と平田氏。テクノロジーの発展に伴って生活が豊かになってきている一方で、わずらわしさも増えている」。たとえば、ECサイトで初回購入を終えると、大量のメルマガが届くことは珍しくない。「顧客からするとシンプルに『うざい』だけの残念な状況だ」と嘆く平田氏は、エンゲージメントマーケティングを普及させることで、この現状にメスを入れる。

平田本来、企業は消費者に良い体験を提供したいはずなのに、真逆の状況を作ってしまっている。とはいえ、消費者一人ひとりに最適化されたコミュニケーションをマーケターの人力で行えば、どうしても限界を迎えてしまいます。

だからこそ、Reproのように、AIを駆使して理想のパーソナライゼーションが実現できるCEプラットフォームが必要なんです。ほしい情報を、ほしいタイミングで、ほしいチャネルから受け取れる世界を実現したい。

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“前例主義”をハックし、ジャパン・アズ・ナンバーワンを再興

エンゲージメントマーケティングは、まだ国内市場が形成されておらず、需要は未知数だ。しかし、ゼロからアプリマーケティング市場を切り拓いてきた経験を糧に、平田氏は自信を見せる。

平田Reproの立ち上げ当初と同様の手順を踏めば、勝機はあると考えています。まずは水滴を垂らし、水たまりをつくる。そして、その水たまりを育て、池にするだけです。

戦場は日本だけではない。2019年に開設したシンガポール拠点を皮切りに、インドなどのAPAC(アジアから太平洋にかけての地域)にも進出する計画だ。グローバルに進出するにあたり、「なぜアメリカに行かないのか」と聞かれることも多いそうだが、「世界シェアを獲るための鍵はアジア、特にインドにある」と平田氏は見ている。

平田統計的に見て、5年後にはインドが世界最大の市場になると踏んでいます。世界戦の鍵になるのは明白で、インドを押さえれば世界を獲れる。市場が未形成な段階から攻めて実績を伸ばし、3年から5年かけて「Reproというやばい企業がいるな」と認知を醸成していきたいんです。

シリーズCで約30億円の調達を実施したのも、ロングスパンでの実現を見据えてのことだ。Reproが世界のリーディング・カンパニーになることは、ジャパン・アズ・ナンバーワン再興の呼び水になると平田氏は語る。なぜなら、日本人は“前例主義”だからだ。

平田前例ができると、どんどん後続が育っていく傾向がありますよね。スポーツ界を見ても、今や多くの日本人が世界のプロリーグで戦えているのは、野茂英雄や中田英寿が先陣を切って海外で活躍したからこそです。

ビジネスも同じだと思いますし、僕はこの“前例主義”をうまくハックしていきたい。Reproが日本企業として世界シェアを獲得した前例になれば、世界戦に臨んでくれる若者が増えるはずです。

並々ならぬ情熱を注ぐ平田氏。話を聞いていると、自己超越欲求とは別に、もうひとつ、モチベーションの源泉があるようだ。

平田僕は人に舐められることが嫌いなんですよ(笑)。海外のピッチコンテストに出ると、「お前らの国からはグローバルサービスは出てこない」と、よく馬鹿にされる。いやいやふざけんなよって、思うじゃないですか。日本を代表して喧嘩を買うぐらいの気概で、世界に仕掛けていきますよ。

こちらの記事は2020年02月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

高野 優子

フリーの編集、ライター。Web制作会社、Webマーケティングツール開発会社でディレクターを担当後、フリーランスとして独立。

写真

藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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