「名刺」からかつてない市場を創出したSansan。BtoB SaaS市場をリードし続けてきた信念と、この先に見据える巨大プラットフォーム構想とは

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インタビュイー
大間 祐太

人材系企業へ入社し、採用コンサルティング事業の立ち上げを経験し、独立。その後、採用領域のベンチャー企業の立ち上げに携わる。2010年にSansan株式会社へ入社し、営業部門のマネジャー、人事部長を務める。現在はCHROとして、人材価値を高めるための人事戦略を指揮する。

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「どうして『名刺』なんですか?」

SansanでCHRO(Chief Human Resources Officer)を務める大間祐太氏が、かなりの頻度で投げかけられる言葉だ。

「『名刺は古臭い』『SNSで十分』など、忌憚ない意見をたくさんいただきます。でも、全然そんなことはない。可能性が詰まっているんですけどね」と大間氏。

2007年の設立以来、法人向けクラウド名刺管理サービス『Sansan』と個人向け名刺アプリ『Eight』で、Sansanは名刺管理市場を切り拓いてきた。現在、法人向けでは契約件数6,000件を突破、市場シェアはおよそ82%。BtoB SaaS企業のなかでも国内トップクラスの成果を出している。

6月には東証マザーズに上場、躍進を続けるSansanだが、「名刺=地味でつまらない」「上場したくらいだから、守りに入っていそう」「挑戦できるポジションがなさそう」といったイメージを持つ読者もいるかもしれない。

しかし、そもそもSansanやEightは名刺管理を行うだけのサービスではない。名刺データを起点に人と人とのつながりを加速させ、イノベーションが起こりやすい世界をつくろうとしているのだ。

前時代的なイメージの強い「名刺」からイノベーションが生まれるとは、どういうことなのか。「紙の名刺は無くなってもいい」と断言するSansanが考える名刺データの可能性から、「ミッションへの共感は、必ずしも求めない」という思想のもと形成される組織形態、一貫したプロダクトアウト型のビジネススタイルにまで迫った。

  • TEXT BY YUKO TAKANO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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信念を曲げずに顧客を「導き」続ける、プロダクトアウト型のスタイル

大間私が営業担当としてSansanに入社した2010年頃は、「名刺は、個々で管理するもの。組織として、名刺管理にかける費用なんて0円だ」という考え方が当たり前でした。そんな状況のなかで「年間1,000万円を名刺管理に投資しましょう」と言っていたので、提案先からは「いやいや、本気で言ってるの?」と言われたこともありましたね(笑)。

取材冒頭、現在のSansanを取り巻く状況からは想像もできない当時の苦しかった状況を、CHRO・大間氏は明かした。名刺管理というサービスの市場そのものが存在していないに等しかった当時、名刺管理にコストをかける企業は、ほとんどなかったという。

大間それでも名刺管理の投資価値を説き続けてきた結果、徐々に市場が形成されていきました。当時のお客様の反応をそのまま受け取っていたら、すぐに撤退していたはず。「Sansanは、絶対に世界を良くするサービスなんだ」と、自分たちを信じ続けてきたからこそ、今があります。

資金繰りも苦しい創業初期、いくらスタートアップが「自分たちの目指す世界の実現」のために奮闘しているとはいえ、光の見えない闇夜をひたすらに駆け続ける恐ろしさは想像に難くない。彼らは、一体なぜそこまで自分たちのプロダクトを信じ続けられたのか。その答えは、彼らの思想にあった。

Sansan株式会社 CHRO 大間祐太氏

大間僕らは、常に顧客をリードしていかなければいけないと思っています。顧客自身は、自分たちの潜在的な課題を全て認識しているわけではないので、僕らがその解決のためにより良い方向へと導く、というつもりでやっています。ですから、基本的にはSansanメンバーは、顧客の要望だからといって、何の考えもなしにそのまま聞き入れることはありません。

もちろん、顧客のビジネスを強くするために提供しているサービスであるということが前提でありつつ、「自分たちが示す理想に共感してくれるお客様」を増やしていくことを、最も重視しているのです。

Sansanといえば、カスタマーサクセス部隊の優秀さが話題にのぼることも多い。そのイメージからか、顧客の「成功」のために伴走する形を連想しがちだ。しかし実態は、Appleやディズニーなど、破壊的イノベーションを起こしてきた企業と同様、プロダクトアウト型のスタイルで、顧客を「導く」べく事業を推進しているようだ。

同社は、サービスの価値がなかなか理解されないという状況に負けることなく、顧客自身も気付いていない潜在ニーズを読み取ってきた。自分たちを信じ続けた結果、現在では契約件数6,000件を突破(※)、法人向けクラウド名刺管理市場では約82%と圧倒的なシェアを誇るまでに成長している。

※クラウド名刺管理サービス『Sansan』および名刺アプリ『Eight』の企業向けサービス『Eight 企業向けプレミアム』の合計契約数

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ビジネスシーンでは“名刺一強”な理由

一方で、「SNSが普及した今、名刺は必要ないのでは?」と、Sansanが展開する名刺管理サービスのスケーラビリティに疑問を抱く読者も少なくないだろう。

しかし大間氏によると、名刺とSNSには、決定的な隔たりがあるという。

大間SNSは社会に広く普及していますが、誰もがアカウントを持っているわけではありません。若い方でもSNSを一切やらない方はいますし、年代が上がるほど苦手意識を持っている方もいます。SNSを使いこなしている人ばかりの環境にいると、意外と気付きにくい部分だと思います。

一方で名刺は、ビジネスパーソンなら100%といえるほど保有しています。また、最新のビジネスプロフィールが記載されているので、常に正確な情報がそこにある。役職が変わったり、会社が変わったりしても、SNSに反映しない方は多数いますしね。

ただ疑問は、SNSの存在だけではない。そもそも名刺が「紙」ということ自体が、ネガティブな印象を生んでいる。「紙の名刺はそのうちなくなりそう。Sansanのビジネスチャンスもなくなってしまうのでは?」と率直にぶつけてみた。

すると、「たしかに、紙の名刺は廃れていく可能性が高い。だが、むしろ紙の名刺をなくしていくのがSansanの役割だ」と、大間氏は言う。

大間僕らが名刺交換にイノベーションを起こせるとしたら、まず相手は「紙」、自分は「デジタル」というように、デジタルと紙をミックスするような体験を創ることが必要だと思っています。

個人向けのEightではすでに、ユーザー同士ではもちろん、相手がEightを使ってない場合もデジタルで名刺交換ができる仕組みにトライしています。名刺交換という行為や、紙の名刺をどう変えていけるかについては、この先もチャレンジをしていくつもりです。数年後には、若手ビジネスパーソンから「昔は、ビジネスプロフィールを書いた厚紙を交換していたって、本当ですか?」と言われるような未来をイメージしていますね。

そもそもSansanが提供しているのは、紙の名刺をスキャンして情報管理するだけのサービスではありません。その先にある、名刺データの“活用”に重きを置いているんです。

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名刺データで、キャリア支援すら可能。Sansanが見据える「イノベーション創発」

ひとえに「名刺データの活用に重きを置いている」とは言うものの、旧来の厚紙を連想してしまう我々には、その活用イメージが湧かない。そんな筆者の曇る表情を察したのか、大間氏は具体的な事例を交えて語ってくれた。

大間既にSansanの導入企業へ提供をスタートしている「スマートレコメンデーション(β)」という機能があります。名刺交換履歴を分析することで、社内に蓄積された人脈の中から次に誰と会うべきかをAIがレコメンドしてくれる機能。「誰に会うかを考える」というビジネスの前段階に割く時間が減り、「会っていかに形にするかを考える」ことに集中できるようになります。

同氏は、「名刺を起点としたキャリア支援サービス」の可能性についても続ける。

大間今年から、Eightを活用したダイレクトリクルーティングソリューション『Eight Carrer Design』も提供開始しています。ユーザーは自分を必要としてくれる企業と、企業側は採用市場に出ていない潜在転職層と、それぞれ出会うことができる。アメリカでは主流となっているダイレクトリクルーティング、およびタレントプールの仕組みを取り入れ、双方にとってより効率的な採用活動を後押ししていきます。

どうやらSansanは、より名刺データの価値に向き合うことで、あらゆる角度からビジネスを支援する体制を整えているようだ。

そしてその想いは、会社のミッション「出会いからイノベーションを生み出す」に集約されているという。

大間イノベーションは、異なる2つのものがつながったときに生まれます。Sansanは、より多くの出会いをテクノロジーの力で後押しすることで、「イノベーションを創発する環境」を生み出したいんです。イノベーションのハブになれるようなプラットフォームを目指し、まだまだ進化を遂げていきます。

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ミッションへの共感なんて、いらない?Sansanというフィールドを「使いこなしてほしい」

しかし、ミッションについて熱く語った直後、大間氏は意外な言葉を発した。

「Sansanの社員は、必ずしもミッションだけに共感して入社しているわけではないんですよ」。

採用時に「会社のミッションにどれだけ共感しているのか」を重視する企業は多いが、Sansanの場合は、「そもそも、自分のやりたいことと企業のミッションが完全に合致している人なんて、ほとんどいないはず」と割り切っている。むしろ、自分自身の成長の場としてSansanを「使って」ほしいという。

大間先日入社したメンバーが、面談時に「子供に誇れる仕事をしたい。『かっこいい父親と思われたい』というのも動機のひとつだ」と話していました。

そのような志望動機も大歓迎ですよ。彼が自分の理想を叶えるために仕事に邁進すれば、結果的に会社の成果にもつながり、ミッションの実現にも近づく。極端に言えば、動機は何でもいいんです。会社の成長と、自己の成長を重ねてもらいたいということです。

実は大間氏自身も、ミッションへの共感だけを理由に入社したわけではない。以前勤めていた人材系の企業で、採用コンサルタントとして創業2年目のSansanを手伝うようになったのが、全てのはじまりだった。

大間前職で人材系の企業に勤めていた頃、当時のSansanに採用のコンサルとして入ったものの、全然人が採れなくて。そうしたら代表の寺田に「お前がSansanに入社して採用を手伝え」と言われたんです(笑)。ただ、当時は独立しようと考えていたので、オファーはお断りしました。

ジョインしたのは9年前。「市ヶ谷の古めかしいビル」にオフィスを構えていた時代だ。

大間その後、自分なりの理想を掲げて起業したのですが、2年目以降、頑張れば頑張るほど理想から遠のいていく。そんな状態が続きました。

なんとかしようという想いはあったが、前に進まない。そこから「別々の道に進んだほうが良いのでは?」と感じ、立ち上げに携わった会社を離れることを考えるようになりました。

その時、また寺田が声をかけてくれたんです。ただ、他にも数社からオファーをもらっていて、正直なところ当時のSansanの条件は良くなかった(笑)。もちろん、「人の出会いを加速して世界を変えるんだ」と宣言していた寺田のことを、純粋にかっこいいとは思いましたが、入社の決め手にはなりませんでしたね。

それでも、大間氏は最終的にSansanを選んだ。「自分が理想とする組織づくりができそうだ」と感じたからだ。

大間当時、Sansanの社員は30名弱だったのですが、入社前に半数以上の人と飲みに行ったんです。営業、開発、役員ととにかくいろんな人と個別で飲みに行きました。すると全員がお互いのことを本当にリスペクトしていると気づいたんです。開発メンバー(現CTO)は営業メンバー(現営業部長)のことを「あいつ、めちゃくちゃかっこいいんだよね」と語り、その営業メンバー(現営業部長)は逆に「開発の〇〇さんは、本当に技術力がすごい。彼なくしてはこのプロダクトは成り立たない」と、それぞれが嬉しそうに語るんです。

自分が一緒に働くメンバーのことを誇らしげに語り合う彼らを見て、「自分はこういう会社をつくりたかったんだよな」と改めて気付いたんです。この会社が、50人、100人と大きくなっていても、お互いが誇り合えるような組織にしていきたい──そう思って入社を決めました。9年経った今も、その想いは変わっていません。

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検索のGoogle、買い物のAmazon、そして“ビジネスのSansan”へ。上場で加速する、事業拡大とR&D

2019年6月19日には、東証マザーズへ上場したSansan。節目を迎えたかのように思えるが、今後はどのような展開を見せるのか。

大間上場はゴールではなく、ミッションを実現するための通過点でしかないと考えています。事業成長を促進するための、「燃料投下」というイメージでしょうか。もちろん会社として大きなイベントであることに違いはありませんが、「改めて襟を正し、成長に向き合っていかなくては」という気持ちです。寺田も「登山でいうと、1合目にも到達していない」と語っています。山は登れば登るほど高くなっていくわけです。

Sansanは今後、新規事業開発や、M&Aといった手段も視野に入れているという。その先に見据えるのは、「ビジネスプラットフォーム化」だ。

大間Sansanを「あらゆるビジネスパーソンが最初に訪れる場所」にしたいんです。検索ならGoogle、動画を観るならYouTube、買い物するならAmazon──国内ビジネスシーンにおいて、こうした立ち位置のプラットフォームはない状況と認識しています。「ビジネスをするなら、まずはSansan」という立ち位置を獲得するために、よりスピードを上げて突き進みます。

Sansanは企業の全社員が利用するサービスで、Eightは個人のビジネスライフを通じて利用可能なサービスです。いずれも拡張性が高く、エコシステムの中心となり得る。しかし、そのようなプラットフォームになるためには、まだまだプロダクト面でも手付かずの領域が多くあります。

今後、より拡充していくために新規事業開発やM&Aも視野に入れていますし、事業拡大に伴い、社員も積極的に増やします。成果次第ではありますが、若手も新規事業立ち上げなど、どんどん要職に抜擢していくつもりです。実際に今でも、新卒3年目でシンガポール支社の立ち上げを行い、5年目の今は事業企画の副部長に就任しているメンバーもいますし、今後の展開を考えれば必然的に、事業の中枢を担うポジションは多く生まれていくでしょう。

ビジネスサイドのみならず、R&Dにも注力していく。Sansanは最先端のテクノロジーを積極的に採用しており、R&Dセンターである「DSOC(Data Strategy & Operation Center)」を保有。名刺読み取り技術の制度向上やオペレーションを担っており、Sansanの事業を支える根幹の組織といっていい。特にAI領域に注力しており、冒頭に紹介した「スマートレコメンデーション(β)」は、DSOCの研究成果の1つだ。

ビジネス、開発双方で新たな可能性を開拓し続けるSansan。上場しても「落ち着く」ような気配はまったく感じられない。

イノベーティブな仕事に関心が強ければ強いほど、前時代的なイメージがある「名刺管理」には興味を持ちにくいだろう。特に「名刺はアナログで、スケールするイメージが持てない」と感じるFastGrow読者は、多いのではないだろうか。しかし、そんなFastGrow読者こそ、Sansanと相性が良いのかもしれない。圧倒的なビジネス展開余地を持ったフェーズで、イノベーティブな仕事にチャレンジできる環境が用意されているのだから。

こちらの記事は2019年09月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

高野 優子

フリーの編集、ライター。Web制作会社、Webマーケティングツール開発会社でディレクターを担当後、フリーランスとして独立。

写真

藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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