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教育機関の未来を切り拓くSchooが、4年ぶりの増資を経て「地方創生」に目を向ける理由とは?

インタビュイー
森 健志郎
  • 株式会社Schoo 代表取締役社長 CEO 

1986年大阪生まれ。2009年近畿大学経営学部卒業。2009年4月、株式会社リクルート・株式会社リクルートメディアコミュニケーションズで、SUUMOを中心とした住宅領域の広告営業・企画制作に従事。2011年10月、自身24歳時に同社を設立し代表取締役に就任。2020年、新設予定の情報経営イノベーション専門職大学にて客員教員就任予定。

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近年、大学が多様化している。授業は全てオンライン、世界7都市を移動し、インターンシップなどで学びを深めるミネルヴァ大学。「近大マグロ」を使った広報戦略やIT分野への投資など、独自の魅力で勝負をする近畿大学

そうした流れの中で、「地方が持つ学び」の可能性に目を向け、「未来の大学作り」に挑むのがSchooだ。同社は、2019年9月にKDDIとの業務提携を発表。地方創生を推進する企業への投資を行う「KDDI Regional Initiatives Fund 1号(以下、KRIF1号)」から資金を調達し、歩み始めた。

Schooが実現しようとしている未来の大学とは。代表取締役社長CEOの森健志郎氏に聞いた。

  • TEXT BY RIKA FUJIWARA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY INO MASAHIRO
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大学は、万人に開かれなければならない

「世の中から卒業をなくす」をミッションに、2011年に創業したSchoo。動画学習サービス「Schoo」を運営し、テクノロジーやマーケティング、政治、経済などの授業を生放送で配信している。

森氏がいま、注力するのが「大学のユニバーサル化」だ。高校卒業後に進学する場としてのイメージを脱し、年齢を問わず、誰もが学びたいと感じたときに学べる場を目指すという。

その課題解決のために彼が考えるのが、「より強力な産学連携」と、オンラインの仕組みを活用した「場所による制約の突破」だ。

「より強力な産学連携」の一例として、森氏はダイソンが2017年にイギリスで設立した「Dyson Institute of Engineering and Technology」を挙げる。20倍以上の倍率をくぐり抜けた学生たちは、平日の3日をダイソンでの勤務、2日を大学の勉強にあてる。授業料は無料で、1年間で約248万円の給与が支払われる。

「企業で働きながら学べる」仕組みを活用すれば、金銭面や時間の問題も解決し、社会人の学び直しも加速する、と森氏は考える。魅力的な取り組みである一方、時間や場所に制約されるため、誰もが恩恵を受けられるわけではない。森氏が可能性を見出しているのが「場所による制約の突破」だ。

大学と聞くと、リアルな場としての『キャンパス』を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、キャンパスや広い教室の有無は重要ではないと思っています。大事なのは、学習や研究ができる機会の提供です。場所の制約を取り払った例として、遠隔授業を受けながら海外の地方都市を周り、インターンシップが受けられるミネルヴァ大学があります。この流れのなかで、場所に対する重要度は下がっていくのではないでしょうか。

「大学のユニバーサル化」の試金石として、3年前から青山学院大学の地球社会共生学部での実証実験に取り組んでいる。学生はSchooで配信中の講義『18歳からのビジネスプラン』を受け、その後、海外でインターンをする。帰国後にレポートの提出と、インターン中に考えたビジネスプランをプレゼンすると、単位を取得できる仕組みだ。2019年は6人ほどの学生が単位認定を受ける予定で、今後は他大学でも類似の取り組みを増やす想定だ。

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地方大学の力で、スマートシティ化に耐えうる「学び」を提供する

森氏が課題に挙げるのが、そもそも「学び」に対して関心の低い層へのアプローチだ。特に目を向けているのが地方。背景には、IoTやロボット、人工知能、ビッグデータなどを活用し、生活者の利便性向上を目指すスマートシティ化の波がある。

地方にテクノロジーを導入しても、そこに住む人々がテクノロジーを受け入れなければ、スマートシティ化は進みません。まずは人々のリテラシーを高めることが先決。

ここでカギとなるのが、『地方大学』です。地元大学は地域住民が馴染みやすく、ブランド力もあり、学びを提供するハードとして適しています。地方大学を地域住民が学ぶ媒介として活かせば、学びに対して関心の低い層にもアプローチができると考えました。

その構想のもと、森氏は全国13の大学や9つの地方自治体、官公庁と連携。Schoo上で大学の公開講座の配信を行うだけでなく、自治体の生涯学習センターでもSchooの授業を公開してきた。しかし、森氏は自社リソースの限界を感じはじめていた。

地方との連携を進めていく上で、私たちの取り組みを知っている地域住民が圧倒的に少ないと気づきました。幅広い人たちに学びを届けていくためには、オンラインだけでなく、オフラインでの接点も必要です。重要な情報源は市役所の回覧板かもしれませんから。

ただ、自社だけではオフラインの接点を一つひとつ作るにはリソースが足りない。そう悩んでいた時、KDDIから声がかかったんです。

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KDDIの地方創生特化型CVCが、Schooを初の出資先に選んだ背景

森氏がKDDIの担当者である松野茂樹氏から声をかけられたのは、2018年12月頃。松野氏はベンチャー出資や地方創生の事業を担当しており、森氏とは7年ほど前から知り合いだった。

KDDIはテクノロジーによって地域社会の課題解決にも力を注いでいる。兵庫県豊岡市でビッグデータを活用した観光マーケティングや、宮城県東松島市ではIoTを活用した農業の推進などに取り組んできた。

2019年5月には、地方創生に特化したコーポレートベンチャーキャピタル「KRIF1号」を設立。Schooは初めての出資先だ。

松野さんとお話しした時、私がずっと考えていた『テクノロジーの進歩』と『地域住民のリテラシー』について、同じ課題意識をお持ちだとわかりました。国が進めるスマートシティ構想は、ドローンや自動運転車の開発、行政のインターネット化に比べて、地域住民への教育に対する優先度が低い現状です。そんな状況をなんとしてでも変えなければならないと、深く共鳴したんです。

社員数も多く、地方創生の取り組みを手がけてきたKDDIと協力していけば、より地方自治体や大学との連携も深められるはずと考え、提携を決意しました。

両社は今後二つの取り組みに力を入れる。一つは、ICTの知見を持った人材を育成する教育プログラムの提供。もう一つは、KDDIが保有する5Gなどの先端技術と、Schooが持つオンライン動画学習のノウハウを掛け合わせた、遠隔教育プラットフォームの開発だ。

KDDIではすでに、岩手県立大学と提携を結び、ICTに知見のある人材を育成するプロジェクトを開始している。デジタルトランスフォーメーションの講義やアジャイル開発のコーチング、起業家人材を育成するためのカリキュラムの構築などに取り組んでいく。Schooも参画し、プログラムのオンライン化などの面で尽力していくことを検討している。

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「働きながら学べる大学」を作り、大人の学び直しを促進する

KDDIとの提携により、未来の大学作りへの道が開かれた。森氏は、自ら全国各地に足を運びながら、取り組みに賛同する大学や地方自治体を探している最中だ。

まだまだ地方の『学び』の現状に、危機感を持たない大学や地方自治体が多いようです。熱意を持って取り組んでくれる人たちを探し出し、巻き込むことが重要です。

公開授業のオンライン化や、その授業を広める取り組みを進めながら、大学や地方自治体との関係を強化していきたいですね。

志の高い大学や地方自治体との対話を繰り返した上でで、どのような教育を住民に届けていくべきか、どんな風に届けるのかがベストなのかを一緒に模索して、成功モデルを作り出せればと思います。

森氏が構想のひとつとして描くのは、地方の企業と連携をし、動画学習サービスの仕組みを使った「働きながら学べる」大学作りだ。

動画学習の良さのひとつは、場所の制約を超えて、どこにいてもリッチな学習体験を享受できる点です。このスキームが確立すれば、大人の学び直しはもっと加速するはずです。今、学びの必要性がある地方にこそ、フィットする仕組みなのではないかと考えています。

その実現には、法改正の必要性があるなど、立ちはだかる壁は少なくない。そうした中でも、KDDIとの連携を深めながら、着実に構想に向かって歩み続けたいと森氏は語る。

テクノロジーの力によって、大学のあり方を編集しようとしているSchoo。もともと、森氏が社会に出てから、学び直しの難しさを感じ、Schooのミッションは生まれた。同志を見つけ、人々が学び続ける世界の実現に、また一歩近づいたのだろう。

こちらの記事は2019年12月05日に公開しており、
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執筆

藤原 梨香

ライター・編集者。FM長野、テレビユー福島のアナウンサー兼報道記者として500以上の現場を取材。その後、スタートアップ企業へ転職し、100社以上の情報発信やPR活動に尽力する。2019年10月に独立。ビジネスや経済・産業分野に特化したビジネスタレントとしても活動をしている。

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藤田 慎一郎

編集

イノウ マサヒロ

ライター/編集者。1991年生まれ。早稲田大学卒業後、ロンドンへ留学。フリーライターを経て、ウォンテッドリー株式会社へ入社。採用/採用広報、カスタマーサクセスに関わる。2019年より編集デザインファーム「inquire」へジョイン。編集を軸に企画から組織づくりまで幅広く関わる。個人ではコピーライティングやUXライティングなども担当。

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長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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