「20代社員にはやりたいことなど聞かない」
人材輩出企業シンプレクスの金子氏が説く、30代から2,000万円以上稼ぐビジネスパーソンを育てる秘訣

Sponsored
登壇者
金子 英樹

1987年 一橋大学法学部 卒業、同年アーサー・アンダーセン(現アクセンチュア)に入社。外資系ベンチャーを経て、1991年 ソロモン・ブラザーズ・アジア証券(現シティグループ証券)に入社。1997年 ソロモン・ブラザーズ時代のチームメンバーとともに独立し、シンプレクスの前身であるシンプレクス・リスク・マネジメントを創業。2016年 単独株式移転により、シンプレクスの持株会社としてシンプレクス・ホールディングスを設立。

関連タグ

「金融×IT」というフロンティアをフィンテック時代到来のはるか前から切り拓き、国内№1をひた走りながら、グローバル№1に照準を定めるシンプレクス。今や「東大生が選ぶ就職注目企業ランキング」等で、アクセンチュア、マッキンゼー、ゴールドマン・サックスらそうそうたるグローバル企業とともにベスト10に入る唯一のベンチャー企業でもある。

人材採用や評価についても独特の価値観によるピュアな実力主義を貫き、新卒入社から約10年で年収1500万や2000万超えを果たすプレイヤーが続々誕生している。

そこで創業社長である金子氏と若きエース格3人がFastGrowのセミナーに登壇。稼ぎ続ける個人と組織は何が違うのか、について本音を投げかけた。

  • TEXT BY NAOKI MORIKAWA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SECTION
/

一見すると不合理。それでも、上場したての創業社長が毎年60回も新卒採用セミナーに登壇した理由は?

ビジネス感度の強い学生や、成長志向の強いビジネスパーソンにとっては知る人ぞ知る存在の金子CEOが約1年ぶりにFastGrowのセミナーに登壇。

20年2月3日夜、会場には今回も100名近い参加者が集結した。いつもの通り、あえて力強く、参加者の心をエグるような言葉を連打する合間にしっかり笑いもはさむ独自のスタイルで自己紹介とシンプレクスの成長ヒストリーを語った金子氏。

やがて話題は早期タイミングで注力を開始した新卒採用に。

金子1997年に創業したシンプレクスは、2002年から新卒採用を開始しました。上場した最初の年です。

急速に業績を伸ばすことに成功したとはいえ、シンプレクスのビジネスはBtoB。学生への知名度はゼロだったと言ってもいい。そんなベンチャーがなぜ新卒採用に力を入れたのかと言えば、尖ったヤツが欲しかったから。

すでに優れた能力を別の企業で顕在化しているプレイヤーに中途入社してもらえる可能性よりも、潜在能力しかないにせよ磨き方次第で化けそうな学生に入社してもらい、その才能が開花する可能性に賭けたわけです。

「ポテンシャルのある学生をどう見抜くか」だけでなく「シンプレクスに必要な潜在能力とは何なのか」についても、様々な手法を試しながら考え抜いていきましたが、何より肝心なのは「知名度のないシンプレクスがどうすれば優れた学生たちに振り向いてもらえるか」でした。

結局、このフェーズなら、創業者が情熱を込めて直接メッセージを投げかけるしかないだろう、という考えのもと、私自身があらゆる学生との出会いの場に足を運び、思いの丈を伝えていったんです。

シンプレクスはその後、2004年に東証二部へスピード上場、2005年には東証一部上場企業となり、業績も一直線に右肩上がりを続けた。

「急成長する企業の社長なら、もっと他にすることがあるよね」という意見もあるだろうが、金子氏は自ら新卒採用の現場に出向き、年間60回のペースで就活生を相手にプレゼンしていく手法は2014年まで続いた。

金子最近では東大生注目の就職企業ランキングの上位に、ベンチャーとしては唯一ランクインしているそうですが、最初にその話を聞いた時は「ホントかよ」と思いましたね(笑)。

つい6年前まで汗水たらして必死の思いで学生の皆さんの前で熱弁をふるっていたんですから、そう感じるのは当然でした。

例えばある年の雨の日、説明会の会場へ行ってプレゼンをしようとしたら、学生は2人しか来ていなかった。

こっちは採用担当の社員も入れて6人以上のチームで臨んでいるわけですから、「上場企業の社長が直接プレゼンするのに、雨が降っただけでたったの2人しかこないのかよ!こっちのほうが人数多いじゃん(笑)」と思ったりもしたわけです。ただ、それでもしっかりお話はしましたよ。

一部上場企業だろうとなんだろうと、そんな事実だけで才能ある学生が振り向いてくれるわけではないことくらいは覚悟の上で採用活動をしていましたから、説明会場が閑散としている経験を何度しても、この会社にしかない価値、シンプレクスに入社したら得られるものについて、対面で伝え続けたんです。

シンプレクスは2013年、さらなる成長ステージへジャンプするため、あえてMBOを実施し、非上場企業となる決断をした。

しかし、上場企業であるときよりも、むしろその後になってからのほうが「上場を廃止してまでもチャレンジし続ける会社なんだ」ということが世間に伝わり、入社を志望する者は増えたと金子氏は言う。

2015年以降は、金子氏自らが高頻度で新卒採用の現場に足を向けることはなくなったが、近年では100名を超える新卒入社の社員を迎えている。

金融フロント領域で国内№1の実績を得ていることや、どこよりも早くITと金融を掛け合わせたリアルフィンテックのビジネスモデルを構築して成果に繋げてきたことが、ようやくビジネスシーンでも、新卒採用市場においても正しく認識されるようになったことが大きいだろう。

そしてもちろん、そうした成果を築き上げている原動力は現在最前線で活躍する20代後半〜40代前半のメンバーたちである。

彼らの大部分が学生時代に直接聞いた金子氏のメッセージに共鳴して入社を決意したことは、この後登壇した3人が明らかにしてくれた。

SECTION
/

説明会で心を射抜かれたキーワードは「№1」、「完全実力主義」

武石(2010年新卒入社)私は就活をある程度進めるうちに、大手自動車メーカーから内定をもらっていたんです。

モノづくりに興味があって機械工学系の勉強もしていましたし、ここに決めてしまってもいいのかなと思いかけましたが、できれば単にモノづくりにだけ勤しむのではなく、ビジネスを創っていくような仕事にも触れていたいと考え、その両方を追いかけていける会社がないか、再度動き出すことにしたんです。

そうして出会ったのがシンプレクスでした。説明会で聞いた金子の言葉にも大いに刺激を受けましたし、その後会わせてもらった先輩社員が皆、他社で出会う社員とは比べものにならないほど優秀だということが伝わってきた。

ですから、「モノづくり×事業創造」という軸で、シンプレクスへの入社を決意しました。

望月(2010年新卒入社)正直に言ってしまうと、就活中のある日、たまたま予定が空いていた日にシンプレクスの説明会がありまして(笑)。それまで何の会社だか知りもしなかったんですが「時間あるし行ってみるか」くらいの気持ちで説明会に参加したんです。

でもステージに登場した金子のプレゼンを聞いているうちに、どんどん惹きつけられていきました。

最終的には「№1を本気で獲りに行く」「ウチは掛け値なしの完全実力主義」という言葉が心に刺さり、「この人が作る組織なら本気でそれを目指せるのではないか?」と感じて入社することを決めました。

佐藤(2008年入社)私は就活するにあたって、明確にビジョンを決めていたんです。それは「成長の最大化」。とにかく社会に出て働くからには自分が持っている可能性を最大化できるところでやりたいと思っていたんです。

そして「自分が成長し続けるための場なのだから、その会社自体が高く成長率を維持していないといけない」「成長している会社だからこそ、社員の給与も上がるし、良いポジションもどんどん用意できるはずだ」というこだわりも持っていました。

いろいろな企業の説明会に行きましたが、当然のことながらどこでも「自分の会社の良いところ」というのを伝えてきますよね。ただ、どこに行ってもなんとなく直感的に、モヤっとしたあやふやなメッセージにしか聞こえなくて、ピンと来ないでいたんです。

そんな中、唯一バッサリ言い切る口調で「うちは絶対に№1になるから」と当然のことのように口にした金子を見て、「あ、ここだ」と入社を決めました。

“カリスマ創業社長の巧みなプレゼンに魅了された学生たち”として「入社動機としてあるあるだよね」と捉える人もいるかもしれないが、登壇した3人はいずれも「他社にも入れる」評価を就活で得ていた。

「№1」「実力主義」という金子氏からの強烈なキーワードに心を射貫かれたというが、もちろん「どういう戦略で№1を目指すのか」「どんな実力主義が行われているのか」を理解した上での内定承諾だったようだ。

そこで、このセミナーのテーマでもある「稼げる会社」「年収1,000万円もらえる人材」について語ってもらうこととなった。

会場のスクリーンには、あきれるほどオープンに、シンプレクスの肩書き毎の年収額が映し出されたため、来場者からはどよめきも上がる。

SECTION
/

30代前半で年収1,500万円超となった3人が共通して語る「完全実力主義で給与が決まる」キャリアのメリット

金子このスライドに示したように、シンプレクスの新卒社員は皆、年収500万円の「スタッフ」というグレードからスタートします。

ただし、ここから先は本人の実力次第。毎年「札入れ」という評価手法を用いて、1人ひとりの社員の評価を先輩や上司たちの投票によって決めていくんです。

いまや社員総数800人を超えるシンプレクスですが、その言葉どおり、1人1人、本当にその者の評価を役員陣、マネジャー陣で1ヶ月かけて個別に審査しています。

その場では、その年にアサインしたプロジェクトの実績を踏まえつつ、シンプルに「今この社員が中途採用で入ってくるとしたら年収いくらで雇えるか」という視点で金額を入札していく。

そうして「もしも年収800万円でも雇いたい」という意見が大半を占めれば、スライドに示したグレードを飛び級、つまり「スキップ」して翌年からその年収で働いてもらうことが決まります。

「ダブルスキップ」や「トリプルスキップ」もあれば、「ステイ」という評価が下される場合もある。それが創業以来ずっと続いているシンプレクスの評価制度であり、人材カルチャーなんです。

ちなみにこの日登壇した3人はいずれもプリンシパルという肩書き。入社から10年前後、30代前半で年収1,500万円以上をもらっている人材である、ということが明らかになった。

金子もうすぐ当社は期末の評価期間である3月に入りますので、彼ら3人がそこでエグゼクティブ・プリンシパル、つまり「年収2,000万円以上でも雇いたい」と実感できるほどの成果をこの1年で上げてきたと評価されれば、昇格・昇給が決まります。

もちろん私には、誰がどう評価されるのかはわかりません、ひょっとしたら格下げにだってなるかもしれない(笑)。彼らの仕事ぶりを誰よりも知る人たちによって、純粋に評価が決まる。だから完全実力主義。

当の3人はこの評価制度をどう受け止めているのだろうか? 今や評価する側でもある3人が本音を語る。

佐藤自分の「人材としての市場価格」というのが明快にわかるわけですから、満足していますよ。

入社して何年目で、均一的に昇格して、年俸はいくら、といわれるような会社にいるよりも、「自分のこの1年間の仕事はどう評価されたのか」「いま自分が他社に転職するとしたら、どのくらいの年収でオファーがもらえるのか」がわかることに意義があると思っています。

会社にとっても、社会・マーケットにとっても、納得してもらえる評価が得られるような働き方を自分はできていたのかどうか、が毎回査定のタイミングで確認できることが嬉しいですね。

むしろ「●●万円稼ぎたいからもっと頑張ろう」という発想にはなっていません。もちろんお金は大事ですけれど(笑)。

望月そこは私も同じです。会社都合だけではなく、マーケットに向き合い、シンプルでわかりやすく設計された評価制度だからこそ、社員からしても納得感の高さが違うし、金額の多い少ないで一喜一憂しないのも、全社員が共通した価値観で働いていることがわかっているからだと思います。

当社には「5DNA」という行動規範があって、いまでも採用活動の時からそれを明確に伝えています。

ここにいる3人が共通して魅力を感じた「№1」という価値観もこの5DNAの1つですし、我々の後輩たちもこの5DNAに共感して入ってきます。それでも入社後にこうした価値観への共感が実感として掴めないような人間は、結局転職してしまいますよ。

「№1」「クライアントファースト」「コミットメント」「プロフェッショナリズム」「グローバル」という5つの単語についての捉え方を示しているシンプレクスの5DNAは、言葉で示された概念でしかない。

実際に働き始め、仲間との協働の中で、その概念の本質を体感できた者だけが、「札入れ」というシンプレクスの評価制度にも高い納得感を得る、ということだろう。

ある意味、年収が決定される機会、人材マーケットから見た自分の価値がわかる機会であると同時に、コアバリューへの共感度合いも明らかになる機会が同社の評価制度であり、武石氏、望月氏は後者の部分にも満足しているというわけだ。

武石共通の基準で皆が評価されているのですから、やっぱり納得度は高いですよ。先ほども言ったように私は「本当に優秀な人と働いて成長したい」と考えていましたから、誰がどう評価されているのかが明快なのは、いろいろな意味で良いことだと思います。

金子私が年60回の採用活動のプレゼンで何を話したかというと、結局は定性的な概念であったり、創業メンバーとともに大切にしてきた価値観の結晶である5DNAについてだったりしたんです。

BtoCのサービスを提供している企業と違って、「ウチはこのヒット商品を作りました」なんて自慢話ができないから、という側面もあってのことですが、やっぱり少数精鋭で稼ごうとしているベンチャーにとって何より重要なのは価値観やフィロソフィーを共有すること。

3人が言っていた通り、実際に働いてみれば、こうしたものに共感できていない人間は去っていきます。

例えば、シンプレクスが共有しているものの1つに「全員が一流のプレイヤーであれ」という概念があります。

入社何年目であろうと、「俺はテクノロジーの腕で、マネジメントは捨ててでも、最高のエンジニアとして生きていくんだ」と主張している人材が、「札入れ」においても「十分その働き方で成果を出しているし、会社の成長に貢献している」と評価されれば、マネジメントが全くできなくても、エンジニアとして働いてしっかり年収2,000万円、3,000万円と稼いでいくことができる。

多くの日系企業であるように「30歳を過ぎたらマネジメントをやるべき」「そうしないと年収も上がらないよ」などとは誰も言わない。

逆に「マネジメント」というスキルにこだわって、そこだけに卓越した人材になることを望む者がいて、個人としてその他に卓越したスキルがなくともマネジャーとしての腕前を評価されれば、そういった働き方で年収を上げていく選択だってできる。

それもまたシンプレクスらしさの1つなんですが、時には中途入社で「私はあの●●社でこんなに大きなプロジェクトのPMをやってきました」という人間が参画するケースもありました。

しかし、彼らの中には短い期間でウチを去っていく者も多かったこともまた事実です。

新卒から育って、自分の得意を磨いてきた生意気な社員ばかりがいるこの会社でマネジメントをして、誰もが納得するような成果を出そうというのなら、やはり相当な覚悟と力量、そしてシンプレクスの価値観への共感がないと続けられない。

個性溢れるシンプレクスのメンバーが「このマネジャーの言うことなら耳を傾けてやってもいいか」と思われるマネジャーでいるには、他社でどれだけの実績を上げてきた者にとっても、相当に骨が折れる仕事なんだろうと思います。

「採用時に伝えられるのは定性的な概念であるミッションやカルチャー」という部分はシンプレクスに限ったことではないだろう。

結果として、価値観やビジョンに共鳴して入社したつもりだった者が、そうではないことに気づくタイミングとしても、「札入れ」という実力主義に基づき、転職マーケットに則した評価スタイルは機能しているのかもしれない。

だが気になるのは、実力主義が社内競争を激化させ、チームワークに影響が出たりはしないのか、という素朴な疑問。そして、こうした環境下で稼げる人間というのは何が違うのかという点だ。

SECTION
/

「近くの先輩など見ていない」1,500万円超プレイヤーが戦う相手は「自分」

ここでこの日の司会進行役でもあるFastGrowの編集長・西川ジョニーが壇上で語る。

「くれぐれも伝えておきますが、シンプレクスさんは決して拝金主義の集まりではありません。この企画はFastGrowからお願いをして実現したものです。皆さんも興味があるはずの年収というものをキーワードにしながら、稼げる人材、つまり、社会に高い付加価値を提供し、企業や社会に利益で貢献できる人材は何が違うのかを、実力主義のシンプレクスの皆さんに語ってもらおうと考えたまでです」と企画主旨を改めて説明。

望月私からも同様な主張をしておきます。

シンプレクスはたしかに実力主義ですし、一般的な日本企業、ベンチャー企業よりも年収は高いのですが、社内のムードが悪い意味での競争意識に満ちていて殺伐としている、なんてことは決してありません。そこはご理解ください(笑)。

それでも西川ジョニーは食い下がる。

「ただ、当然ですけれども稼げている人とそうじゃない人とがいるわけで、そこの違いというものを皆さんがどう捉えているのかは気になるんです」と。

望月そもそも、「周りの人間と差を付けてやろう」という考え方自体が、社内にはないように感じますし、私自身もそうです。

もちろん高い評価を受けている人が誰なのかは明らかですから、そういう人たちから学ぼうという気持ちにはなります。

ただ、そういう発想ですから私の場合は、例えば新人で年収500万円だった頃も、すぐ上のグレードの先輩というよりも、さらに上の1,000万円、1,500万円も稼いでいるような人たちのことを必死で見つめていました。

しかも自分が1,000万円くらい稼ぐようになると、そこからは「先輩の誰かから学んで」というよりは、「自分の得意領域を伸ばしていくための、自分自身との戦い」みたいなアスリートっぽい感覚になっていきました。

佐藤その通りですね。この話題についても3人共通だと思います。競争意識はあっても「人と差をつける」という部類のものでは決してありません。

私の場合はさっきも言った通り、「自分に納得できているか」「社会から評価されるパフォーマンスを自分は出せているのか」が興味の対象です。

武石私も同じです。

人との差が評価されるわけじゃないし、それは社員全員がわかっているから、何よりもプロジェクトを成功させて社会に、お客様に価値を提供するために、「クライアントファースト」という目標にコミットしていますから、当たり前のようにチームワークを重視して働いています。

とにかく「金融×IT」で成果を出すのがシンプレクスのポリシー。ビジネスパーソンとしての経験が浅いうちは「自分にできていないこと」というのが簡単にあぶり出せてしまうから、先輩に相談したりして、なんとかその不足する部分を埋めて成長していける。

けれども、望月が言っていたように入社から5〜6年が経過して、それなりの年収ももらえるようになった頃には、「人とは違う視点」で努力しないと、「自分にしか出せない価値」を出して、人より早く成長する、高い評価をもらう、といったことは望めなくなっていきます。

弱みを解消するというよりも、自分の強みをどう把握して、それをどう伸ばせばいいのか、ということが重要になるイメージですね。

では、稼げる人材を次々に育てていかねばならない経営陣としてはどういう感覚なのか?金子氏が20代・30代・40代についての持論とともに答えてくれた。

SECTION
/

20代の社員に「やりたいこと」など聞かない。ビジネスパーソンとしての土台があるものだけが「稼げる30代人材」という称号を手に入れる

金子武石も言っていたように、シンプレクスに入った20代社員はタフな状況に晒されると思います。なぜなら、彼らに「何がやりたい?何が君の強み?」などと聞いたりはしないからです。

開き直って言いますが、こうした部分には横暴な会社、横暴な経営者なんです(笑)。

「金融×IT」をコアビジネスにしていますから、金融に魅力を感じている人や、「子どもの頃からITが好きでした」という人も入ってきます。

かといって「片方はわかっているし好きだけれど、もう片方は知らないので勉強したいです」という人ばかりではなく、「私は金融のことだけ追いかけたい」とか「ITしかやりたくない」という人もいる。

そういった気持ちを汲んであげる優しい会社もあるでしょうけれど、少なくともシンプレクスではどんな好みや強みを主張していても、まずは「優れたビジネスパーソンに育ってもらう」ことを最優先にして、「君が好きか嫌いかなんて関係ない。一流のビジネスパーソンになるべく、黙ってこれをやれ」という指示を20代のうちはするんです。

もちろん特例がないわけではない、と金子氏。入社する段階から突出したプログラミングの腕や、金融工学の知識を持っていて、放っておいても実績を上げてくれそうな人材が現れれば、やりたいことを自由にやってもらうというが「そんな人間はせいぜい世の中に0.1%くらいしかいない」とのこと。

それならば、様々に理不尽な現実が待ち受けている「金融×IT」のプロジェクトに投入し、「まずは1人のビジネスパーソンとして価値を出せるようになれ」という方針で育成をするのだと熱を込める。

金子誤解のないように言いますが、前回のインタビューでも話した通り、人材育成については、いまのやり方に甘んじることなく、常に最良のやり方を模索して、カリキュラムの構築などにも取り組んでいます。

ただし、やはり若い時になによりも成長をもたらすのは現場での経験だと考えています。0.1%のスーパーな人材ではなくても十分過ぎるほど優秀な逸材に入社してもらっている自負はありますが、スーパーじゃない以上は「未経験なこと」「苦手だと感じるもの」にも取り組んでもらいたい。

なぜなら、例えば「得意です」ということに専念してもらった結果、その社員が30代になった時、「もうこの領域で自分が成長するのは限界だ」と知ってしまったらどうなってしまうのか、ということ。

20代の間、やらずに済ませていた苦手な領域に30歳を過ぎてから挑んでも、そう簡単には成長の踊り場を突破できません。

むしろ「やりたくない」と感じていたものにでも20代の時に挑んでもらい、多様な経験を積んだ上で初めて「本当に自分がやりたいこと」を見つけたり、「実はこれが自分の強みだったんだ」という発見をしたりして、30代を迎えてほしいと思うんです。

金子氏の30代に対する考え方は、まさに望月氏が語った「自分との戦い」という言葉や、「5〜6年経ったら強みを伸ばさないと」と語った武石氏の言葉と符合する。

「何が本当の強みなのかを知るための20代の苦闘」があってこその30代というわけだ。

では、3人が共通して迎えているこの30代を、金子氏はどう過ごしてほしいと思っているのか。

金子やりきる力、胆力を30代からは身につけてほしいと私は考えています。

シンプレクスには5DNAとは別に3つのフィロソフィーがあり、これも全社員で共有しているのですが、その中の1つに「God is in the Details」があります。「神は細部に宿る」ですね。

これまでのインタビューでも話したように、シンプレクスが目指している「クライアントファースト」は、お客様に「オマエらスゴイ」「どの同業他社よりも高いけれど発注したい」と言わせるだけの付加価値を結果として見せることです。

実際に「スゴイ」と言わせてきた者たちが共通して主張するのが「細部」にまでこだわって、妥協なくやりきることなんです。

3人が言っていたように、20代で自分の弱みや不足を思い知り、そこを埋めていく過程で、同時に本当の自分の強みに気づいて30代を迎えたなら、そこから先はその強みを信じて、タフなプロジェクトをやりきること。

細部にまでこだわってやりきった時にどんな付加価値につながるのかが見えてくれば、心から充実した30代を過ごせると私は信じています。

SECTION
/

40代になる前に「ハッピー」を定義せよ。「輝かしい40代」を過ごせるかどうかは、30代にやりきったかで決まる

ここまで話した金子氏は、「今日会場にいる皆さんに40代になった時の話をしても、イメージがわかないかもしれませんが」と笑いながら前置きをしたうえでこう語った。

金子やりたいことを早いうちに決め込んで、30代でその限界を思い知るのか、それとも20代の時にビジネスの苛酷さや理不尽さに遭遇しながら、苦手なことも克服していった結果、自信を持って「これが私の強みだし、ここを伸ばしていこう」と思えるのか。この違いは大きい。

もちろん、自信を持って自分の強みに磨きをかけながら、細部にまでこだわった仕事をしていくこと自体は楽ではありません。それでも、きっとここにいる3人もそこに醍醐味を感じるようになる。

進んで難問に挑んでいこうとしている時、人間はそれを楽しむものです。そうしてやがて40代になる。

私の感覚では、輝く40代のビジネスパーソンというのは20%くらいしかいない。残り80%の人は在籍している会社でそれなりの地位には就いているかもしれないけれども、「自分はもう将来この程度までしかいけないんだな」と勝手に決め込んで、どこか消化試合をこなすだけのような40代になっている。

30代の時以上に、40代以降では幸福感に歴然とした差が現れるんです。

では、まさに充実した30代が過ごせるかどうかが問われる年代となった3人はどう考えているのか?

武石年代ごとの違いについてはなんとも言えませんが、自分自身が満足できているかどうかで、さらに成長したいかどうかは決まってくると思っています。

ゲームにしたってそうじゃないですか。楽勝で勝てるゲームを何度やったって面白くないから、少しずつ難易度の高いゲームを選んで、それをクリアすることが楽しくなる。

今のところ私は難しいゲームを手にできていると思うし、それをクリアしたい気持ちが強いので、まだまだ自分に満足していないし、成長していきたいと思っています。

そして、他社に転職するよりも、シンプレクスのほうが最先端の難題にチャレンジしていると思っている。だからこそ、まだ転職も考えずにこの組織で頑張ろうと思っているんです。

望月武石の話にも通じますが、新人の頃に必死で頑張って、やっとなんとかできた仕事というのが、何年かもがいて努力すると、そんなに頑張らなくてもこなせるようになる。

当然、余力とか時間が手に入るわけですが、「前よりも楽に、同じだけ稼げるようになった」というだけで満足してしまったら、そこで成長は止まりますよね。

手に入った余力を使って「さらに高いハードル」を自分から探して超えようとしている間は、成長していける。

私としても、今超えられないでいるハードルをなんとしてでも克服したいですし、日々「誰も解決したことがない難題」が降ってくるシンプレクスという組織の中で、このまま走り続けたいと思います。

佐藤今では私もチームやプロジェクトを任される立場ですから、後輩たちと接する時には「自分のベストパフォーマンスを出せているか」を問います。

そういう時に周囲との比較でなんとなく「出せている」かのような返答をするメンバーには「本当にそれがキミの最大限のパフォーマンスなの?」と問い直すようにもしています。

今の私の課題は、そうして最大の満足度を自分と仲間の双方に創り出していくことだと思っているので、その課題と格闘していくつもりでいます。

最後に金子氏は「ハッピー」という言葉を軸にこう話した。

金子今日はFastGrowから事前に設定されたテーマもあったので、「頑張ろう」「もっと上を目指そう」という方向の話が多くなりましたけれども、究極、私がこの会社をなんのためにやっているのかと言ったら、私自身も含め、皆でハッピーになろうと思ってやっています。

ですから「年収2,000万円を稼いでいてもハッピーではない」という社員がいるのなら、それはすごく気になりますし、どうしてなのか聞きに行きます。

逆にベテラン社員などで「年収800万円だけれども今のままで十分ハッピーで、このシンプレクスで働き続けることを望んでいます」という社員がいれば、喜んで「頑張ってくれてありがとう。ずっとここにいてほしい」と心から感謝を込めて伝えます。

「シンプレクスは実力主義だ!」というと、どうしてもかつての米国系企業のように「アップ・オア・アウト」な社風だと思われがちですが、シンプレクスは「アップ・オア・ステイ」です。

成長を目指して駆け上がることをハッピーだと思う人と、このシンプレクスという会社と働き方が好きで居続けたい、という人によって会社が運営されていくことが私にとってのハッピー。その点は理解してほしいと思っています。

今日登壇した3人もそうですが、やはり5DNAをはじめとするこの会社の価値観に共感した人が入ってくる会社ですから、誰もが「頑張るぞ」「常にもっと上を目指すぞ」という思いで入社するけれども、人生は仕事ばかりではない。

結婚をしたり、子どもが生まれたりして人生観が変わる人もいるだろうし、親の介護に時間を傾けたいと思い始める人も出てくるだろうし、人生は人それぞれに異なります。

そうしたものを押しのけてまで「がんばれ」「成長しろ」「もっと稼げ」というつもりはありません。

ただ我々が会社というチームで追いかけているのは、お客様を、どの会社よりも高い付加価値でハッピーにしていくことですから、そこに向かって努力することをハッピーだと思う人間の集まりでいたい。

この軸をブラすことなくやってきたからこそ、私たちはここまで、同業よりも高い利益率を確保したまま、成長できたのだと思っていますし、それを誇りに思っています。

質疑応答の時間には、前回同様、次々に来場者から質問が投げかけられたが、「稼ぎ続けるための習慣は何かありますか?」との質問に、金子氏は「習慣とは違うけれども、成長の源泉は臆病であることだと私は思っています」と答えた。

「私はどこに行っても強気な人間だと思われますし、事実そうなのです(笑)。けれども一方で、『本当に今のままで良いのか。これが最良の答えなのか』と常にビクビクしている一面も実はあります。ですから昨年も30歳前後の社員200人くらいと時間を掛け食事をしていきながら、一人ひとりに聞いたんですよ。『今、ほんとうにハッピーか?』と。業績は伸びていても、年収は他社にいるより高くても、実は皆ハッピーじゃなくて、出て行かれたらどうしよう、などと思っていたりするんです。ただ、そのおかげで『頑張らなきゃ』『このままじゃいけない』『もっと改善しなきゃ』という思いが湧いてくるとも考えています。」

「細部にまでこだわってやり切る」とはこういうことなのだろう。泣く子も黙る強気なCEOは今回もまた、おそらくは創業当時と変わらぬ熱量なんだろうなと思える本気の姿勢で、参加者からの質問の数々に答え続けていた。

こちらの記事は2020年03月05日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

森川 直樹

写真

藤田 慎一郎

おすすめの関連記事

Sponsored

国内DX人材のレベルが低い、構造的な理由──MBOから再上場を果たしたシンプレクス金子が見出した「新卒人材育成」という高収益・高成長を維持する経営スタイルの全貌

金子 英樹
  • シンプレクス・ホールディングス株式会社 代表取締役社長(CEO) 
  • シンプレクス株式会社 代表取締役社長(CEO) 
公開日2023/03/08

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。