連載シンプレクス新共同COO連載

生意気な若者よ、10年で私を超えてみないか?
──新共同COO助間孝三氏が明かす、人材輩出企業シンプレクスが若手リーダー育成にかける想い
【シンプレクス新共同COO連載:前編】

Sponsored
インタビュイー
助間 孝三

東京大学を卒業後、新卒でアクセンチュアに入社。同社の戦略コンサルティング部隊で、有力企業の経営戦略策定や変革実行等に携わった後、USENへ転職し、カリスマリーダー宇野康秀社長のもと、同社の劇的な経営変革の渦中で奔走した。2008年にはシンプレクスへ転じ、経営企画部門を担った後、最前線の事業部門に分け入って多くの大型プロジェクトに携わり、マネージングディレクター格に就任。近年はシンプレクスが展開する事業分野を束ねる経営陣の一翼を担ってきたが、2020年4月に共同COO/副社長に就任。同社の次なる成長を牽引する責務にコミットしている。

関連タグ

1997年の創業以来、金子英樹CEOの圧倒的リーダーシップで躍進を遂げてきた印象の強いシンプレクス。日本を代表する金融機関と正面から向き合うリアルFinTechで、今やトップブランドポジションを確立した同社だが、今期、その経営体制に大きな変化があった。それまでも各々担当する事業部門を統括していた助間、早田両氏が共同COOに就任。金子氏との3トップ体制でさらなるイノベーションとブレークスルーを目指すのだという。

そこで、共同COOの両氏に独占インタビューを敢行。2回の掲載に分け、2人の副社長それぞれに体制変更が意味するところと、これからのシンプレクスのビジョンについて、大いに語ってもらった。

  • TEXT BY NAOKI MORIKAWA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SECTION
/

「金子英樹の会社」に非ず!
10歳以上若い2人の新COO抜擢こそが、シンプレクスが人材輩出企業たる由縁

コロナショックの影響もあって、多くの企業が業績見込みを下方修正する中、シンプレクスの好調は止まらない。

新卒採用に目を向けてみても、近年は例えば東大生が選ぶ注目企業ランキングの上位に位置するなど、とりわけ優秀な学生らにマークされる人気企業の1つとなっている。順調そのものという印象のシンプレクスだが、それだけに「なぜ今、経営体制を変更したのか」が気になる。

助間CEOの金子はこの数年ずっと言い続けていたんです。1997年の創業メンバーがこれまでは経営を引っ張ってきたけれども、20数年を経て世代交代すべき時期が来ているのだと。ですから今回、私と早田が共同COOに就任した理由の1つもそこにあります。2人とも創業メンバーよりもだいたい10歳ほど若い。そういう人間が経営の中枢に立つことで、シンプレクス全体の若返りを進めていけるようになる……という狙いがここにはあるんです。

たしかにこれまで数回登場してくれた金子CEOは言っていた。「創業社長や創業メンバーが特別なカリスマ性を発して引っ張っていくような会社がベストだなどと思っていない。その会社のカルチャーそのものがカリスマ性をまとっていくような集団にならなければ、再現性も継続性も生まれない」と。だが、役員クラスだった2人が副社長に抜擢されたからといって、それだけで果たして「全社的な世代交代と若返り」につながるのだろうか?

助間今回、旧経営陣よりも10歳若い40代の2人が共同COOとなりました。それを見た下の世代はどう感じると思います?ただでさえ「生意気な集団」と社外からも言われているシンプレクスですから(笑)、「自分もいつかはCOOやCEOになれるかも」と感じた人間は少なくなかったはずです。

もちろん、すべてのビジネスパーソンが社内ポストの「上」を目指したり、経営者になろうと志したりする必要はない。事実、シンプレクスにはマネジメントとは異なる領域で尖ったパフォーマンスをしていくことに喜びを見出している者も多い、と助間氏は言う。

だが例えば、「これまで手がけてきたプロジェクトよりもさらに大きくて難度の高い案件のリーダーを任されたい」、あるいは「複数の事業を統括していく仕事に就きたい」、「より経営目線に立って、イノベーションを模索したい」という願望を持つ者にとって、何がモチベーションを刺激するのかといえば「頑張れば、その願いは叶う」と信じることが可能な状況ではないだろうか。そんな状況が、「まさに今のシンプレクスにはある」ということだ。

40代の2人がCOOになったのであれば、例えば30代のミドル層が「次は自分たちが」と、これまで以上に成長意欲を膨らませる可能性は大きい。そしてもしも30代がそうした反応を見せれば、今度は20代の者たちもまたさらなるモチベーションを得ていくはず。

そうした連鎖が会社というチームに新たな活力を加えていく。すべての年代にこうしたポジティブな刺激を与えようというのなら、まず経営層が変わってみせることが大切だったのだというのである。

助間ただですね、これだけは言っておきたい。こうした発想は、もともとシンプレクスの内部で脈々と息づいていたということです。やっぱりシンプレクスは「金子英樹の会社」という印象が強く、実際に今活躍している社員の多くも「金子さんに魅力を感じて入社した」と言っているけれども、だからといって上意下達のトップダウン型集団だったかというとそうではない。むしろ金子や経営陣は率先して「人が動く」会社であることに重きを置いてきたんです。

さて、ここで敏感な読者は食指が動いたことであろう。助間氏が言う、「人が動く」会社とはどういう意味なのか?

「ジョブズすごい」と思っているならビジョナリーを目指すな”であったり、“「20代社員にはやりたいことなど聞かない」”であったりと、良い意味でベンチャーパーソンの期待を超え、ド肝を抜いてくれる、あのシンプレクスの新共同COOが言い放つことである。

単純に、「人事異動を多く実施します」という意味であるはずがない。

SECTION
/

「流れるプール」を止めるな。
意図的に「不安定」を生み出し、10年後のリーダー人材を生み出し続ける

助間シンプレクスの思想として、「同じ人間が同じポジションに長く居座ることを良しとしない」というものがあるんです。役職も経験年数も全く関係なく、「常に自分の実力より上の職責を持たせねば、一流人材は育たない」という発想です。これを体現するシンプレクスを私は、「人が動く」会社、と呼んでいます。

例えばメガバンクの市場系業務に関わるシステム変革に携わった経験を持つ社員がいれば、むしろたいていの会社では、類似案件が発生すると再びその者にプロジェクトを委ねていくでしょう。決して間違った選択ではありません。過去の経験で培った知見をベースに、さらに成熟したパフォーマンスを見せる可能性は高いのですから、そのほうがプロジェクトも納品体制も“安定”します。

ただし、それを毎年のように繰り返していたら、会社は事業内容ごとに部署が分かれ、タテ割りの発想で物事を進めるようになる。「●●な仕事は誰々に」と固定化されてくる。じゃあ、その社員の成長曲線はどうなのかというと、それさえも“安定”してしまうでしょう。間違いなく、成長の加速度を失っていきます。

組織力の成熟と硬直化は表裏一体。各社員が自らの専門性・経験値に見合う「慣れ親しんだ仕事」だけを追求すれば、たしかに業績は安定し、プロジェクトの炎上リスクも軽減されるが、反面「人は動かない」組織となり、顔ぶれは硬直化して、手法も前例踏襲の保守的色合いを帯びやすくなる。「Hello World, Hello Innovation.」の理念を掲げ続けるシンプレクスがそれで良いはずがない、というわけだ。

助間ですから我々経営層は、以前からしつこいくらい社内に発信し続けていました。「もしもPM(プロジェクトマネージャー)になったなら、1日も早くその座を後進に渡せるよう頑張れ。それがPMに課せられたミッションだ」と。

PMは同じプロジェクトに安定するのではなく、より難易度の高いプロジェクトに挑んでいく。そうすれば、それまでPMのもとで働いていた誰かがPMの役割を担わざるを得なくなる。ともに「常につま先立ち」の状況に自らを追い込んでいくことで、リーダークラスであっても若手であっても、誰しもが自身の成長を加速させることができる。こうして、意図的に「不安定」を生み出し続ける。これこそが、シンプレクス流の「人の動き」。ですから今回私と早田がCOOになったのも、その一環でしかない、と言えるわけです。

「よくそれで組織がうまく回りますね」と言われることもありますが、もちろんトライ&エラーの繰り返しです。でも、それでこそシンプレクスなんです。5年後も10年後も、シンプレクスがシンプレクスを支える人材を輩出し続け、顧客の期待を超える付加価値を提供するには、それくらいの覚悟を持って「人が動く」会社であらねばならないのです。

「つま先立ち」とはつまり、今までと同様の努力では到底手が届かないところに挑む、「不安定」な態勢のこと。人はそういう態勢になって初めて、懸命に背伸びをしながら、未踏の領域にまで自らを伸ばしていくことができるのだ、という信念でシンプレクスは営まれ続け、人材を輩出して来た。そして、「だからこそ、これから参画しようという人にはちゃんと言っておきたい」と助間氏は続ける。

助間一流の人材輩出企業で戦おうとしている若者であれば、「キャリアの一般論」を鵜呑みにしないでほしいですね。「優秀な人がいっぱいいる会社に行けば、自分も成長できる」っていうじゃないですか。そんな簡単な話、ありませんからね(笑)。シンプレクスのような本当の人材輩出企業は、“流れるプール”ですから、「入ったら一丁上がり」と思ったら大間違いですよ。

この“流れるプール”という例えは、助間氏がよく使うものだ。

先の話にもあったように、シンプレクスではマネージャー、リーダークラスも若手も関係なく、皆が「1つ上」あるいは「2つ先」を目指して「つま先立ち」で前に動いている。会社を人が集まるプールに例えれば、皆が同時に前に向かって泳いでいくがゆえに、自然発生の“流れるプール”状態になっているというのである。もちろん見回せば誰も彼もが優秀なケイパビリティの持ち主であるため、他の会社(プール)にいたら、同じ場所でピョンピョン跳ねてさえいれば最低限評価されるような人材である。だが、そんな「前に向かって泳いでいる人が少ない」プールに、“成長を貪欲に目指す流れ”などは生まれない。

シンプレクスというプールでは、ジッとしていたって優秀なはずの人材が「こんなものじゃあ満足できない」という想いで前に進んでいるがゆえに、対流が生まれている。そんなプールに嬉しそうに入ってきて黙って突っ立っていたら、「永遠に“流れを生み出す者たちの一員”にはなれず、対流に翻弄され、むしろ後退して終わるかもしれないよ」という警告が先の助間氏の言葉だ。

助間チャレンジして失敗するのは組織としての責任ですから、もちろん、組織としてサポートはします。でも、「自分はこのとんでもない勢いの“流れるプール”の中でやっていける」、いや、「絶対にやっていくんだ!」という覚悟は持っていて欲しい。

そして、我々経営陣としても、この流れの勢いを決して緩めず、入社してくれた社員に最大限ストレッチの効いた成長機会を提供し続けることにコミットする。この2つが揃っている状態こそが、「シンプレクスらしい」状態である。私はそう考えています。

だってそうでなければ、ずっと悲願であり続けている「イノベーションを起こして、世界に打って出る」という夢も追えなくなるんですから。今回の経営体制の変更はつまり、順調に成長し、組織も拡大してきたシンプレクスではあるけれども、「このままでOK」とは思っておらず、「さらなる変革」をしていくことの意思表明でもある、と私は理解しています。

涼しい顔で、でも熱の入った口調でそう語る助間氏。ふと気になって「なんでそこまでして変革や成長を求めるのですか?」と問うと、笑みを浮かべた。

助間たしかにそうなんです(笑)。例えばこの先の3年間、安定的に企業を成長させて、組織の状態も健康的に保つことだけにフォーカスしたら、全員が「今と同じことだけ」やっているのが正解でしょう。でも、私に言わせれば、それってもはや「シンプレクス」じゃないんですよ。

繰り返しですが、シンプレクスという組織はいつも、10年後を見据えて「不安定」を意図的に生み出していますし、それによって人材が輩出され続け、その人材こそがシンプレクスのトップブランドとしてのポジションを支えているんです。ですから、「経営体制が変わったから、社員が大変そうだから、とりあえず目先3年の安定を取ろう」と意思決定した瞬間に、シンプレクスはシンプレクスではなくなってしまう。常に休む間もなく全員がめちゃくちゃ大変だし、問題が起きる可能性があることもわかった上で、常に「不安定を取る」という意思決定を、敢えてしているんです。

ですから、ここシンプレクスにおいては、私や早田の立場だって、全くもって安泰だなんて思っていませんよ。この数年はいいかもしれませんが、うかうかしていたらどんどん下から這い上がってくるヤツらがいるんだ、いつ「COO替わってくれ」と言われてもおかしくないんだ、ということは重々心得ていますし、経営者となった自分がどんな「つま先立ち」をして成長すべきなのか考えながら、緊張感を持って臨んでいるんですよ。

ここまで「シンプレクスかくあるべし」を語られると、「シンプレクスらしさ」をそのように見抜けるまでに達観した助間氏自身のこれまでの「動き」を知りたくなる。アクセンチュア〜激動期のUSEN〜シンプレクスという経歴だけを見れば、実力主義の環境下で磨きをかけたに違いないキラキラ感ばかりが想像されるが、実はそうでもなかったようである。

SECTION
/

「この組織では、自分は何者でもない」
そう悟ったからこそ、最大級の火消しを自ら担当

シンプレクスの人たちに話を聞くと、どうやら「理論派の助間、情熱派の早田」という認識を皆が共有していることがわかる。こうした捉え方について、当人である助間氏と次回登場の早田氏に尋ねてみると、両氏とも軽く微笑みながら事実だと認めた。だが助間氏の場合、多少の異論はあるようで「私ほど泥水をすすってきた人間はいない、と自負していますけれどね」と笑う。そこで、助間氏のこれまでのヒストリーについて尋ねてみた。彼のファーストキャリアはアクセンチュア、ただしIT系部隊ではなく戦略系案件を担うチームで従事してきた。

助間アクセンチュアといえばIT、デジタルの印象が強いかもしれませんけれども、以前から戦略分野でも高い実績を築いてきた集団です。私自身、ここで企業経営に関わる数多くの学びを得ましたし、時にはITがらみの案件で要件定義などには携わってきたのですが、自分でプログラミングをするようなエンジニア的体験を持たないまま、次の(株式会社)USENへと転職しました。

アクセンチュアが全員良い意味でギラギラしており、スキルも知識も豊富なエリート軍団だったのに対し、USENは個性とガッツ溢れる好人物が揃う多様性に富んだ集団。ちょうどカリスマ的存在だった宇野康秀社長が積極的に新規事業開拓や経営変革を断行している時期でしたので、ここでも貴い経験を得ることができたんです。

特質は異なるものの、前のめりな集団の中で経営にまつわる事物を吸収してきた助間氏は、起業することも考え始めるようになる。

助間正直に言えば、今だって起業する可能性がゼロになったわけではありません。自分が選択した事業プランを、信用できる面々とゼロから形にしていくことには魅力を感じます。ただ、USENを辞めて次へ進もうとした時に、少し立ち止まって考えました。今の自分にアクセンチュアにいたようなハイスキルの持ち主や、USENにいたような真っ直ぐな者たちを100人も1,000人も集め、そしてさらに、束ねてまとめあげることが可能なのかどうか?についてです。

そうこう考えているうちに、起業とは別の選択肢として「スジの良い人材がすでに集まっていて、そのチームをまとめあげていく役割を託してもらえるポテンシャルある組織があるなら、そこで力を振るってみたい」という考えも持つようになっていったんです。そして、そんなタイミングで出会ったのがシンプレクスだったんです。

まず直感したのは、同じカリスマリーダーでも宇野氏と金子氏には根本的な違いがあることだったという。宇野氏のやり方は、革新的な事業に合わせた仕組みを経営者として用意し、そこに血気盛んでまっすぐなプレイヤーを送り込んでいくスタイル。一方、金子氏がシンプレクスで取り組んでいたのは、「何か1つでもいいから尖ったものを持っている人材」を集め、彼ら彼女らの一番尖った部分を組み合わせてチームアップし、それぞれの「尖り」を活かすことで、高い付加価値を生み出していくスタイル。

助間端的に言えばUSENには「いい人」がいっぱいいました。個人のケイパビリティをレーダーチャートにした場合、バランス良く整っている人たちが宇野さんの号令のもとで駆け抜けていました。見方を変えれば、似たタイプの人材がたくさんいたとも言えます。仕組みがカチッと出来上がっているのだから、あとはプレイヤーたちのやる気次第ということです。

一方、シンプレクスは180度違う。「生意気な人」、「面倒くさい人」もたくさん混ざっていて(笑)、そんな連中が「他社では絶対に出せない付加価値」を生み出すためにチームでワークしていたんです。たしかに金子が言う通り、全員の尖った部分がうまく連携して作用すればとんでもない成果につながるけれど、USENで事業部を束ねていた自分から見ると、「こいつらを束ねるのは相当に大変だぞ」とも思いました。

その代わり、彼らが金融のフロント領域という、すごくニッチがゆえにノウハウが転がっていない、クリティカルな領域で見せていた付加価値は、同業界を分析しても、本当に特筆していた。こんなに難しいフィールドで、これほど差別化できてしまう組織に魅せられたことに加え、「個人としても筋の良いビジネスパーソンが多い組織だと直感した」ことも相まって、入社を決意しました。

入社直後は経営企画を担う部門で司令塔的な役割に携わっていたという助間氏だが、すぐに「このままではいけない」と思い立つ。

それもそのはず。IT領域のプログラミングでスーパーエンジニアともいえるスキルを発揮している社員や、金融工学の専門性において並ぶ者がいないほど精通している社員もいて、その誰もが「つま先立ち」をしているシンプレクス。そこにエンジニア歴も金融業務経験も持たない自分が入り込んだとしても「ジッとしていたら認めてもらえない」という危機感があったからだ。

助間難しい理屈なんて抜きです。“汚れ仕事”でもなんでもいい。とにかく「●●で助間に勝てるヤツはいない」。1日でも早くそう言われるようにならねばいけない、と。そうやって自分の価値を知らしめない限り、彼ら彼女らを束ねるどころか、一人のメンバーとして認めてもらうことすらできない。そう覚悟したんですよ。

創業以来ずっと右肩上がりの成長をしてきたシンプレクスといえども、いわゆる“炎上案件”は時折発生していましたから、そういう「誰もやりたがらない重要な業務」が発生した折りには、自分から手を挙げて火消し役を買って出るようにしていったんです。

例えば、成長著しかった某金融機関のシステム改変プロジェクト。そもそもこのチャレンジングな案件を獲得してきたのは、次回登場する早田氏なのだが、開発〜導入のプロセスを踏み、早田氏の手を離れた後、運用・保守プロセスを他のメンバーが託されていた。

だが、ある日このシステムに不具合が発生し、その修復がなかなか捗らずに問題化したのだ。よくあるシステムインテグレーターの炎上案件と違い、シンプレクスのそれは多くの場合、「成長途上の会社だからこそのジレンマ」が背景にあったようだ。

助間「シンプレクスは値段が高い」という評判は金融業界中に知られています。それでもオファーをいただけるのは「高いだけのことはあったな」と納得してもらえる結果を出してきたから。他者に真似のできない付加価値に見合う値付けをしているのだから「高いのは当然」と思って、私たちはやっています。だからこそ「生意気」というレッテルを貼られてもいるのですが(笑)、とにかくどんな案件であろうと他には出来ない価値を出そうとしていますから、この炎上プロジェクトでもベストな仕事をしていました。

ただ、シンプレクスの評価がどんどん上がり、次々に魅力ある案件オファーをいただく状態が続いていましたから、どうしても人員不足の状態を抱えがちになってしまった期間も過去にありました。この時もそれが火種となってしまったケースです。

そんな成長痛ともいえる部分を目の当たりにしたことも、助間氏が火消しを買って出るきっかけになったようだ。「どんな理由があったにせよ、お客さまに損失を出させてはいけない。責任をもって事態を収拾すべき」ではあるが、成長意欲の塊のような若手人材には出来る限り「うまくいく場面」を数多く体験させたいと考えていた。だからこそ、「だったら俺が」になったというのだ。

助間こうして淡々とふり返ってはいますが、まあ本当に寿命が縮まるような経験を何度もしてきました。そもそもお客さまが「高くて生意気なシンプレクス」だと知ってオファーを出してくださる以上、ほとんどの案件はその会社にとって社運を賭けたようなクリティカルなチャレンジなんです。

そのシステムに問題が発生したとなれば、「どうなってるんだ」と言って現れるのも先方のキーパーソンばかり。そういう人たちが朝の5時から、鬼の形相で向かってくるんですから、“ビビる”なんていう生やさしい表現じゃ足りません。

だが、こうした火消し経験の数々がもたらした対価も決して小さくはなかったのだと助間氏。「中途入社でやってきた理論派ムードの助間さん」の社内イメージも、確実に好転していった。「結構やるじゃん」といったリアクションを心から嬉しく受け止めていたというが、そうした信頼関係はクライアントとの間にも生まれていったのだ。

助間さきほども言ったように、クリティカルな案件が炎上したのですからお客さま側の経営陣も必死ですよ。「なんてことをしてくれたんだ」というムードが続きます。けれども、先の案件などではシステムの修復が終わった頃には、まるで戦友のような関係性に変わっていましたし、その後の炎上案件でも似たようなポジティブな変化があったんです。

「あれほどのピンチをなんとか抑え込むことができたのは、きっと助間さんのチームだけだったろう」というように逆に評価していただき、しばらくの後、別の案件をいただいたりもしました。

助間氏の話を聞くにつけ「誰よりも苦労人じゃないか」と感じつつ、それでもやはり社内で「理論派、知性派」と言われている所以も何となく伝わってきた。

助間氏がたどった火消しの歴史を知る社員も数多くいる中で、なぜ変わらず「理論派リーダー」と言われるのかといえば、それは当人も話してくれたように「この会社だから直面する危機」を自ら進んで買って出て、「シンプレクスの流儀」を身体で感じ取ってきたからではないか。この会社の強みも弱みも踏まえながら、それを理路整然と話して聞かせてくれる。そんな存在は、これほどの個性派集団であっても唯一無二なのであろう。だからこそ、彼はCOOに「選ばれた」のだ。

わかりやすいキーワードを立てながら、時に熱く語ったりもするが、一貫して抑制の効いた声で順序立てて話す。助間氏自身は金子CEOの魅力を「唯我独尊の熱血漢では決してなく、むしろスマートでニュートラルな気遣いの人。力強いリーダーシップと謙虚さの二律背反を同時に兼ね備えている、日本企業の経営において貴重な存在」と語っている。

だが、かくいう助間氏からもまた、他企業の経営陣にさえもなかなか似た人が見当たらないような個性を感じるのである。

SECTION
/

「私を10年で超える。そう言える若者を待っている」
根拠なき自信を持ち、後付けで証明するくらいがちょうどいい

助間たしかに私も12年間で相当数の「火消し役・立て直し役」を買って出てきましたから、「職人」といっても過言ではないと思いますし(笑)、想定通り相当に「尖った」、「個性的」な人材にはなれたのかもしれません。でも正直、いろんな葛藤を抱えてもいるんです。私は創業者ではないし、800人を束ねるCOOなんて、まだ身分不相応なんじゃないかとか、本当にシンプレクスを大きくするための意思決定ができるのかとか、ね。

ここまで、快活な調子で理路整然と話していた助間氏であったが、少しうつむきながら、自身もシンプレクスメンバーとして「つま先立ち」しているのだと打ち明けてくれた。

だからこそ、この新COOに、聞かざるを得ない質問がまだ残っている──「なぜ、今この時期に経営体制を変えたのか」。「なぜ、今でなければいけなかったのか」。

助間端的に言えば、このシンプレクスというチームの可能性が今ここへ来て大きく花開こうとしているタイミングだからです。

当社は創業以来、「金融×テクノロジー」を武器に成長してきました。とりわけ難解で失敗が許されないディーリングやトレーディングといったフロント領域に的を絞り、そこでよそには真似のできない付加価値を示してここまできたわけです。

しかし、厳密に現状を言うならば、シンプレクスは例えばFX市場での取引システムでトップブランドとしてのポジションを築いていますし、同様の成果を暗号資産の市場でも達成しつつあります。また、銀行や証券ばかりでなく保険会社のシステム変革の事業も急成長している他、ERP領域でも成果を上げています。

時代が後から追いつく格好で「FinTech」という呼び名が浸透したため、「シンプレクスはFinTechで成功している会社」だと認識してもらえる機会も増えましたが、実際には「金融×テクノロジー」というワクをとっくに超えて、新たなイノベーションにチャレンジしているんです。

一方、世の中ではあらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が盛んに叫ばれるようになりました。大雑把にDXの本質を言ってしまえば、デジタルなデータを活用して、いかに収益に結びつけていくかが問われる変革ですよね?それって、私たちが金融機関と向き合いながら今までやってきたことと大きくは違いません。

そもそも、金融ビジネスがもともとオカネにまつわる様々なデータを扱うビジネスだったからこそ、シンプレクスの力がきれいにハマったわけですが、これからはあらゆるビジネスがデータを起点に動き出します。我々が金融ビジネスにだけこだわり続ける理由なんて、そこにはないんです。

「金融×テクノロジー」という掛け算で得た知見やスキルやノウハウが、今やあらゆる業界を対象とした「ビジネス×テクノロジー」という掛け算に活用できる段階がやってきているし、すでにその成果も上がり始めている。Society5.0へと社会が移行し、DXがあらゆる産業で行われ、コロナ禍も経て生活や働き方にもニューノーマルへの模索が始まっている今だからこそ、シンプレクスも思い切った体制変更を行ったということになる。

助間私が中途入社した12年前に約300人だった社員も今では800人に増えています。今後も毎年新卒採用に力を入れ続ける方針ですし、中途採用にもこれまで以上に注力しようとしているのが今のシンプレクス。我々の目の前に今までにないくらい大きな可能性が広がっているのですから、そこへ向かって皆で「つま先立ち」で挑んでいきます。

何度もお伝えしている通り、「不安定」を生み出すことによって、シンプレクスの人材は急成長していくし、次世代リーダーも輩出されていく。この人材こそが、これまでも、これからも、シンプレクスを支えていきます。ですからこの数年も、「金融」という領域に安住するのではなく、「金融以外」の未知の領域に挑んで、「不安定」を生み出し、次世代リーダーをどんどん輩出していくつもりです。

金子が自ら社員に言っているように「1人のリーダーで追いかけられるほど、この組織が目指す次の山が小さな山じゃあなくなっている」ということもありますし、「いつまでも俺が引っ張るんじゃなく、次の世代もどんどん前に出ろ」というメッセージも、今回の体制変更には込められています。

「なぜ今なのか」ではなく「今だからこそ」の変化、「シンプレクスだからこそ」の変化なのだということを、ぜひ理解してもらえたら嬉しいですね。

ここまで助間氏が大いに「らしさ」を語ってくれた、変化途上のシンプレクス。そのカルチャーと、「次世代リーダー」というキーワードに興味を持つ活きのいいFastGrow読者も多いことであろう。

最後に、そんな読者の気持ちを代弁して、「助間さんがもし新入社員に、『私は助間さんを早く超えたいです。何年で助間さんのポジションまで行けますか?』と聞かれたら、どう答えますか?」と尋ねてみた。

助間最高なシチュエーションですね(笑)。そういうことを言い出す人たちにどんどん入ってきてほしいです。根拠なき自信を、死にものぐるいで頑張って、根拠のある自信に変えていける若い人材。そういう“生意気”な人材こそ、シンプレクスがフィットしていると思っています。で、実際に先の質問をされたら、こう答えますよ。「10年でやってみてよ」と(笑)。

なんとも知性派らしい引っかけ問題。「いや、10年じゃさすがに無理ですよ。助間さんだって20年社会人やっているじゃあないですか」というリアクションをした途端、この新人に対する期待値は振り出しに戻るに違いない。

ちゃんとその辺は見越した上で、「わかりました!10年でやってやりますよ!」と言い切って、自分で自分を追い込み、「つま先立ち」戦闘モードに入る人材が、ただでさえ“流れ”を変えようと動き出したこの“流れるプール”に、更にまったく新しい“流れ”を築いていくことになるのだろう。

SECTION
/

FastGrow編集長ジョニーの見解
自由に「尖りまくる」人材の集合体、それがシンプレクスなのだ

「これだから、シンプレクスという会社は面白い」──これが私の、初対面の助間氏への取材を終えた直後の感想である。

これまでどこのメディアよりも深く、創業者である金子氏の取材と、社内メンバーへのヒアリングを重ねてきたFastGrowである。私を含むその取材班ですら、「シンプレクス」の真骨頂を、まだ何も理解できていなかったのかもしれない。

新COOに着任したこの助間氏と、次回登場する早田氏は、私たちにそう思わせる「凄み」と「オーラ」を放っている。今回は読者にお伝えしきれていないが、「この話を伝えたらきっと読者にも伝わる」と思っている、書ききれていない助間氏の「思想」や「エピソード」もたくさんある。

だからこそ、取材前、うっすらとでも助間氏と早田氏のことを、「金子さんの若い後任でしょ」程度に思っていた私は、一人のシンプレクスファンとして、そんな自分を恥じた。

ここは、「シンプレクス」なのだ。全員が、独自の尖りを「これでもか!」と伸ばしながら、奇跡的にバランスしている組織なのだ。その新COOである2人を、たとえ創業者であるとはいえ、「金子氏と比較してどうか?」などと語ろうとすることがすでに、「ナンセンス」なのである。助間氏は助間氏なりの、早田氏は早田氏なりの、「創業者=金子英樹」とは全く異なる「尖り」を持っているのだ。

この組織は、少なくとももう、「金子英樹の会社」じゃない。仮に明日、金子英樹が会社を去ったとしても、「シンプレクス」は「シンプレクス」であり続けられる──そう確信した取材であった。

こちらの記事は2020年12月21日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

次の記事

連載シンプレクス新共同COO連載
記事を共有する
記事をいいねする

執筆

森川 直樹

写真

藤田 慎一郎

おすすめの関連記事

記事を共有する
いいね

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

When you log in

新規会員登録/ログイン

SNSアカウントでログイン

パスワードを忘れてしまった方はこちら

メールアドレスでログイン

*の項目は必須項目になります