“本気で資金調達を目指す”起業家必見。合宿型アクセラレーションプログラム「Incubate Camp 11th」

インタビュイー
木村 亮介

一橋大学商学部経営学科を卒業後、プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現:PwCアドバイザリー合同会社)及びKPMGヘルスケアジャパン株式会社にて公共インフラ/ヘルスケア領域に関するコンサルティング業務に従事した後、インキュベイトファンドへ参画し、ispace、Gatebox、Misoca、ベルフェイス、iCAREなどの急成長企業を含む40社超の投資先支援に従事。2017年1月にライフタイムベンチャーズを設立。プレシード/シードステージに特化して投資を行う。Rehab for JAPANの社外取締役も兼務。

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シード、アーリーステージの起業家へ向けたアクセラレーションプログラム「Incubate Camp 11th」が今年9月に開催される。

Incubate Campは、起業家とベンチャーキャピタルの出会い、マッチングが濃く凝縮された合宿型のプログラム。年々実績を積み重ね、成長を続けている。

今回から将来有望な起業家の資金調達を後押しする「ファストパス制度」も実施。

プログラムの内容や目的、新制度の可能性について主催の「インキュベイトファンド」に聞いた。

  • TEXT BY KEI TAKAYANAGI
  • PHOTO BY KENGO HINO
  • EDIT BY MITSUHIRO EBIHARA
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起業家と投資家の思いが化学反応を生む場

近年、日本において起業家を支援する独立系のベンチャーキャピタル(以下VC)が増えたことで、様々な分野で新たなビジネスやイノベーションが生まれている。起業家にとっては事業拡大や飛躍のチャンスが増えたことになるが、投資家に対して自らのビジネスのビジョンや、アイデアの可能性をダイレクトに伝えられる場はまだ多くはない。

そんな現況において、短期間かつ高確率で大規模な起業家とVCのマッチングを実現しているプログラムが、“起業家・投資家合同経営合宿”と銘打った「Incubate Camp」だ。Incubate Campを主催するのは、シード、アーリーステージの起業家への投資や育成事業を積極的に行う、インキュベイトファンド。

同社は、前身となるインキュベイトキャピタルパートナーズから数えて総額375億円の資金を運用、関連ファンドを通じ300社以上へ行う等、シード/アーリーステージのスタートアップ投資・支援においては国内最大規模の実績を有する。

Incubate Campは、2010年に第1回が開催されて以来、今回で11度目をむかえるシードアクセラレーションプログラム。日本国内の有力VCと起業家が、千葉のホテルに集い1泊2日の“合宿”が展開される。

これまで190組が参加し、90社以上のスタートアップが立ち上がり、IPO・M&Aをあわせ14社がイグジットを行っている。参加企業による調達金額は、年々増加傾向にあり、10thではファイナンス総額が約16.1億円、参加企業1社あたり最大3.0億円のファイナンスが成立した。

また、参加企業18社のうち12社が同プログラム参加後、7カ月以内に資金調達を実現している。ファイナンスの投資主体はインキュベイトファンドと関連ファンド、ゲストVCだ。同社アソシエイトでIncubate Camp 11th運営責任者の木村亮介氏は、プログラムの特徴について次のように説明する。

木村Incubate Campは、1泊2日の間、起業家も投資家もホテルにカンヅメになって、合宿を行います。1日目は、まず起業家が自分の構想しているビジネスや事業計画についてプレゼンテーションし、その後、起業家と投資家が1対1でメンタリングを行います。18組ほどの起業家が同じ数の投資家と15分ずつ、全員と面談するので、体力的にとても大変です。

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まるでお見合いのような熱気

そして1日目のクライマックスが、起業家と投資家のマッチング。投資家はメンタリングを通して、起業家にペアになりたい順番をつけ、それをもとにタッグを組む起業家を指名する。もちろん、複数の投資家から指名が重複することも。その場合、今度は野球のドラフトのように指名された起業家が投資家を選ぶターンが訪れる。

木村非公開のプログラムとはいえ、他の投資家や起業家、一部の取材クルーの前で、投資家が起業家から選ばれるかどうかという光景はなかなか見られない。個別メンタリングにおいて、投資家側も評価判断されているという緊張感が生まれ、合宿の参加者全員が真剣に取り組むことにつながります。

指名とマッチングによってすべての起業家・投資家がペアを組み、2日目のプレゼンテーションへ向け、ペアによってはほぼ寝ずに事業計画をブラッシュアップしていく。投資家から事業の方向性、コストや数字など具体的な指摘を受け、戦略やプレゼンテーションの方法を修正し、より投資家が投資したくなる事業計画に近づけていくのだ。

2日目のプレゼンテーションは、1日目に参加していない別の投資家や識者も査員となり、総合順位やベストグロース賞などを表彰する。

木村ペアを組んだ起業家と投資家がそのままファイナンスにつながるケースだけでなく、個別メンタリングやプレゼンテーションに向けた投資家からのアドバイスによって、起業家自身とそのビジネスが大きく成長していく可能性を秘めています。

合宿中は「インキュベイトキャンプ!」という掛け声が様々な節目に響く。その様子は、まさに学生時代の部活やスポーツの合宿の一場面のようだ。

Incubate Camp 紹介動画

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プロダクト未完成でも参加可能な新制度

Incubate Camp 11thからは、これまでのプログラムエントリーのステップに加え、「ファストパス制度」が新設される。Incubate Campの通常の応募プロセスは、(1)ウェブからのプレエントリー、(2)書類選考、(3)メンタリング、(4)個別面接を経て参加が決定する。

ファストパス制度は、書類選考のステップがなく、プレエントリーから直接メンタリングに移るもので、プロダクト完成前の起業家に参加の窓口を広げるものだ。更に、メンタリングから個別面接までの期間で、事前の資金提供オファーも受け付け、Incubate Campの参加決定前に、プロダクト製作や事業計画のスケールアップを図ることができる。

木村産業界からの期待を受けてVC業界へ資金が集まり、年々、投資規模が大きくなっていますが、投資先は同じようには増えていない。その要因は、これらの資金の多くはすでにビジネスとして形になっているミドルやレイター段階のスタートアップへ向けられることが多く、会社やプロダクトもできていないシードステージへの投資には必ずしも回りきっていない実情があります。一方で、Incubate Camp初期はプロダクトが完成していない起業家の参加も少なくありませんでした。プログラムが回を重ねる毎に、ファイナンス規模が大きくなっている今、改めて“本気で資金調達をしたい起業家”の思いに応えるべく、ファストパス制度を新設しました。

ファストパス制度には2つの適用対象が設定される。いずれもプロダクト完成前の起業家/起業準備中を対象とし、市場規模1兆円超の巨大市場を目指す起業家への「ユニコーンファストパス」、代表が25歳以下のチームへ向けた「ミレニアルファストパス」だ。

木村ファストパス制度やIncubate Campに限らず、メンタリングや個別面接で投資側が見ているポイントは、起業家が目指す事業のニーズを検証できていて、その市場が魅力的であるかどうか。起業家自身が、自分の体験で『売れる』という実感を生々しく感じ取れているか。手触り感のあるマーケットを理解しているかです。最終的には、その思いやビジョンを伝えられる個人のタレントや情熱がものを言います。

Incubate Campのプレエントリーは、最終締め切りまで、何度もやり直すことが可能で、メンタリングなどを通して事業計画をブラッシュアップしながら、本番への参加を目指すこともできる。また、定期的にインキュベイトファンド主催の「Incubate School(インキュベイトスクール)」が行われ、MVP(Minimum Viable Product)やチームビルディング、資本政策、ピッチブックと起業と資金調達に欠かせない知識を学べる場も提供される。

ビジネスプランを温めている起業家、シードから次の段階への飛躍を目論む起業家たちは、Incubate Campを含め、これらの機会をぜひ活用してほしい。

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【応募に関するスケジュール】

4月6日(金) プレエントリー開始(順次、書類選考通過者に対して招待制のfacebookグループ及びメンタリングセッションへ案内)
4月13日(金) キックオフイベント開催(メンタリングセッション / 事前説明会開始)
8月12日(日) 本エントリー応募〆切
7月4日(水)~8月17日(金) 面接期間、参加者確定
9月14日(金)、15日(土) Incubate Camp 11th開催

こちらの記事は2018年05月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

高柳 圭

1992年 広島県出身、東京都在住フォトグラファー。大学卒業後大手住宅設備メーカーに勤務。4年ほど営業として勤務しつつパラレルキャリアとして建築や広報広告事業のフォトグラファーとして活動。
2018年、結婚を機に上京しフリーのフォトグラファーとして独立。現在はWEBや広告等でポートレートを中心に撮影。またライフワークとして一般のご家族や恋人を撮影し、人々の繋がりをテーマに写真を残している。

編集

海老原 光宏

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