「成功したければ解釈ではなく事実で話せ」
Candle金氏が明かす、起業家が持つべき“情報への執念”

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インタビュイー
金 靖征

株式会社Candleを東京大学3年次の2014年4月に創業。 卒業後半年となる2016年10月にクルーズ株式会社に12.5億円にてグループ入り。 現在、メディア事業を中心に事業展開中。

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20歳で起業、22歳でクルーズ株式会社に12.5億円で会社を売却した株式会社Candle代表の金靖征氏は、独自の情報観を持った若手起業家だ。

「アウトプットに数千倍の差が生まれる」と持論を展開する彼は、会社のバイアウトを決意した理由についても「クルーズという情報の中心に身を置くため」だったと話す。

今回は事業、投資を行うにあたり求められる必要な情報の捉え方、収集術について伺った。

  • TEXT BY NAOKI TAKAHASHI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「情報」とは「意思決定のために必要なデータ」

以前行ったFastGrowのインタビューでは、「事業を生み出すためには質の高いインプットの量が成否を分ける」と発言されていました。事業において必要な「情報」とは何でしょうか?

まず、事業っていくら頭が良くても成功しないと思うんですよ。よっぽどの天才以外は、「情報」が無いと必ず失敗します。

どういうことでしょうか?

情報って「意思決定を行うために必要なデータ」なんですね。意思決定に関わらないデータは、どれだけ貴重でも「情報」にはならない。

僕の場合は必要な情報をまず徹底的に集める。一つの情報を得たら、そこに隣接する分野に広げていく。それを何度も繰り返して初めて「正しい意思決定」を行えると考えています。

まずは可能な限り情報を集めると。すると、今度はそれをどう活かすかを考えますよね。

情報の読み取り方や使い方も同様に重要だと思っていて、そこは個人の能力にある程度は依存します。僕は、意思決定は「情報×地頭=意思決定」の方程式で導けると思っているんです。地頭とは、学力や特定の専門知識ではなく、事業において必要な処理能力のことで、集めた情報の真の価値は、その使い方との掛け算で伸びていきます。だから、どれだけ頭のいい人がいたとしても、必要なデータが足りていなければ正確な意思決定を行うことは不可能なんです。これは市場選定からグロースの細かな施策まで、どんな事業フェーズにおいても成り立つ方程式ではないでしょうか。

金さん自身が情報の重要性に気づくきっかけはあったのでしょうか?

明確なきっかけではないですが、僕がエンジェル投資を受けていた2人である、最近「ズボラ旅 by こころから」をリリースされたアリコーさん(有川鴻哉氏 株式会社Hotspring 代表取締役)や、起業家であり東大企業サークルTNKの先輩でもある福島さん(福島良典氏 株式会社LayerX 代表取締役 )と話をするなかで影響を受けた部分はあるかもしれません。

彼らの持っていた経験から来る、SEOや組織マネジメントにおける情報、データによって、Candleの成長速度は著しく上がりました。これは、僕がお二方とお話しすることによって地頭がよくなったわけではなく、正しい情報が脳内に増えることによって、思考スキームや知識が身についた。それによって意思決定の精度が上がったからだと考えています。影響を及ぼす度合いが計り知れなかったことから、感謝と共に、情報の重要性を深く認識するに至りました。

情報収集は誰にでも出来ることです。大切なのは成功するかどうか判断ができるまで徹底的に情報収集しきれるかどうか。そのボーダーラインを超えて初めて、“Go or Not Go”を判断するという、新規事業のスタートラインに立てるんです。

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書籍ではキャッチアップしきれない情報を得る、そのためのコストは惜しまない

「誰にでも出来る」とはいえ、その分野においてトップクラスの情報を集め続けるのは簡単でないように思います。金さんは普段どのように情報収集を行っているのでしょうか?

そんなこともないと思いますよ。例えば「絶対に手にいれることができない情報」は、そもそも多くはないでしょう。どこまで執念を持ち、本気で得ようとしたかに尽きます。僕が実践しているのはインターネットで常に最新の情報にアンテナを張り、そのジャンルの第一人者に直接話を聞きに行くことですね。

書籍も読みますが、ピーター・ドラッカーの書籍や『7つの習慣』のように、時代を超えて通用する普遍的なノウハウを得るためです。ベンチャーのように戦況が刻々と変わるジャンルの最新情報は、やはり書籍ではキャッチアップできません。

得たい情報によって方法を切り分けているんですね。情報収集を行う際に意識していることはありますか?

必要な情報を得るために支払うコストは惜しまないことにしています。情報にコストを払う人は多くないので、アドバンテージを得られるからです。おそらく「情報が得られません」という人は、ラクをしようとしているのか、コストをかけずに済まそうとしているのか、どちらかではないでしょうか。

例えば、僕が動画メディアの事業に本気で取り組むとしたら、まずは業界のトップにいる企業、そこで働く人にアプローチします。専門的な知識にしろ、最新の情報にしろ、それを網羅的に握っている場所にアクセスするのが最も効率が良い。「ユーザーインタビュー」もいま流行していますが、僕に言わせると既に解を持っている人から聞くほうが圧倒的に早いと思うケースを多く見受けます。その時間を「買って」、最短で事業を成長させる方が良い。

事業にとって真に必要な情報が得られるのであれば、リーディングカンパニーのCEOや役員、担当責任者などから直接出資してもらって「運命共同体」になれば内部データも聞けるでしょうし、時には情報を持っているキーマンをヘッドハンティングしたっていい。

それだけでトップの企業と情報面では肩を並べられ、成功確度が数十倍に高まるのであれば、それにかかるあらゆるコストは安いものです。それぐらい、情報は重要であり、コストをかけるべきものだと思いますね。

また、僕がクルーズグループにジョインした理由の一つは、この考え方が非常に合ったからだというのもあります。 M&Aに到るきっかけであり、現在もCandleの管掌取締役であるクルーズCOOの仲佐さんは、まさに事実データを何が何でも引っ張ってきて、事業の立ち上げをいくつも成功させている方です。 また、社としても、1ヶ月に1回「金脈会議」と呼ばれる会議が行われていて、そこでは社長や仲佐さんと事実データをもとに事業を大きく成長させるためのドライバーが何かを提案し、議論をしています。ここでの議論によって、データが足りなかったり、解釈に頼った意思決定が格段に減ったりと、自身の成長にとても寄与しています。

この金脈会議を「CROOZ永久進化構想」のもと、全ての子会社が行っています。他のグループ会社もとても順調な会社が多いし、話していて切磋琢磨していますから、多くの起業家候補の方々にとっても良い環境だなと感じます。

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起業家に「トレンド情報」は必要ない

金さんは起業家である一方、投資家としての顔もお持ちですよね。集めるべき情報は違いますか?

投資家としては「広く、浅く」、起業家としては「狭く、深く」情報を摂取していますね。投資家にとって有用な情報であっても、事業にとって必要でないものは沢山あります。

例えば、トレンド情報はそのうちのひとつ。いま急激に伸びているアプリとかサービスのような、社会的に注目されている会社をいち早くキャッチするのは投資家としては大切です。

しかし、投資判断に必要な情報は、ある程度決まっているものです。だから、「この業界は伸びそうだ」という確信がもてる情報さえ集められれば、その領域をグロースさせるために執行すべき具体的な戦略」にまで深く入り込む必要はありません。それよりも、次に伸びそうな市場や、新しい事業に目を配るべきです。

反対に、起業家にとっては自分が「ここだ!」と決めた分野において、常にネットやメディアでは取り上げられていない最先端の情報に触れていることが大切です。起業家なのに「トレンド」のような情報ばかり追い、踊らされてしまっている人は少なくないです。

もちろん、自社事業の成長のためにトレンドを把握することはとても重要ですが、自社と結びついていないニュースの追っかけは、本質的な情報収集ではないと思っていますし、行いがちな人が多い気がします。

起業家の仕事は「事業に関する意思決定」と「組織マネジメント」であるはずです。そのため、時間は有限で、成したい目標に対して全く足りないはず。本気でいまの事業を伸ばしたい起業家であれば、「トレンド」を追っている余裕や時間なんて、本来はそれほどあるわけがないんです。いま自分が求めている「情報」は、投資判断か、事業の成長か、あるいは意思決定なのか。必要な情報をレイヤーに分けて考えるようにしています。

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「志」が執念を生み、能力差すら埋める

金さんが投資判断を行う際、大事にしているポイントはありますか?

僕が最も大事だと思っているのは起業家の「志」ですね。正直なところ、頭のいい人がちゃんとやれば数億、数十億円規模の事業を生み出すことはできると思います。でも、「志」がない起業家ではそれ以上伸ばしていくことはできません。

なぜでしょうか?

例えば、事業が200〜300億円に成長したとしても、数千億円の規模にまで伸ばせる余地があるかを考えていなければ、市場選定の段階で間違ってしまうことも有りうる。そうならないためにも、始めから徹底的に情報を集め、長期的な戦略を立てなければいけません。

そして、事業が長期的に続いていく中でも、その分野における最新情報に触れ続けられるよう、自分自身をアップデートしていく必要がある。思っている以上に泥臭い作業です。いくら経営の能力があっても、「志」がなければ、あらゆる手段を活用して最先端の業界情報に触れ続けるのは難しい。

実際、僕が「この人の事業は伸びなさそうだな」と感じる起業家は、事業シナリオに関して議論しているとき、「それに関してはデータがありませんでした」と簡単に言う人です。

「それ本当なの?一体どれくらい必死に集めようとしたの?」と、僕は思ってしまいます。事業が伸せる人と伸ばせない人の差は、「情報やデータに対する執念」にあると思います。

他の企業を見ていてもそれを実感します。経営がうまくても志のない企業は、ある程度の規模に成長したら頭打ちになるんですよね。志があって、執念を持っていれば、多少の能力差なんて埋められると思います。

「情報×地頭=意思決定」であり、地頭よりも情報のほうが何十倍もレバレッジが効きますからね。もちろん、能力があるに越したことはないですが(笑)。

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「どんな情報に浸かり続けたいか」で事業領域を選べ

志の有無が情報収集の面でも、大きな差を生むということですね。これから起業を考えている方に向けて、情報収集の面からアドバイスをいただけますでしょうか。

自分が「その領域の先端情報を得るために身を捧げることができるか?」という観点から事業を考えてみるのは、一つの手だと思います。なぜなら、起業家や事業家の本分は、あくまで「自身の意思決定」によって、世の中に新たな価値を提供することだと思っています。そのためには、自身が最もその領域の最前線に立たなければならない。最前線に立つには、生半可なコミットでは無理です。大量の時間を要します。それでも、やり切りたいと思う領域なのか。

僕の場合は「社会にインパクトを与える大きな事業を生み出したい」という目標があります。なので、僕にとって成功が見えている分野であっても、市場規模が小さければ僕はそこに時間やコストをかける気になりません。たとえ取り組んだとしても長く続かないでしょう。

「好きなことで起業すべき」と語る方もいますが、僕は「好き」というのはその領域で長く活動し続けられる動機の一要素でしかないと捉えています。好きな分野であっても、それが瞬間風速的な興味ではないか?と自分を疑ってかかるべきです。

反対に、モチベーションをキープし、深く掘り続けることができる理由を見つけられるのであれば、必ずしも「好き」な分野でなくとも良い。「何が好きか」よりも、「その領域の最前線にい続けるために人生を割く覚悟が持てるか?」で考えることが、起業時の領域選定においては大事なのだと思います。

こちらの記事は2018年10月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

高橋 直貴

写真

藤田 慎一郎

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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