連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

船舶のDXプラットフォーム、医薬品のクラウド管理サービス。インキュベイトファンド厳選のスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート

登壇者
寿松木 充
  • インキュベイトファンド株式会社 

新卒でキヤノン株式会社にエンジニアとして入社。 株式会社リクルートキャリアでの経営企画職を経て、スローガン株式会社にてスタートアップ特化のエージェント事業の立ち上げに参画。 セールスマネージャ、営業企画、マーケティング、アライアンスといった広範な業務に従事。 2021年1月よりインキュベイトファンド株式会社へ入社し、タレントネットワークの構築・採用支援を通じた投資先のバリューアップを担当。 千葉大学大学院 情報科学専攻 修了。

戸髙 克也
  • 株式会社ザブーン 代表取締役 

1986 年生まれ、大分県出身。大学を卒業後、採用メディアを主力事業とするディップ株式会社に就職し、その年の営業新人賞を獲得。その後、家業の船舶管理会社へ転職するも、業界の特性上、情報がクローズされた環境に衝撃を受ける。このことをきっかけに IT が成熟していない海運業界でのサービス展開を考え、株式会社ザブーンを設立。

廣田 雄将
  • 株式会社9lione 代表取締役CEO 

1989年徳島県生まれ。大学在学中にプロモーション企業を創業。グーグルジャパンやトヨタ、自治体等をクライアントにしたプロジェクトを受託。その後事業譲渡を経験し、医療系M&Aアドバイザーとして活動し1年間で8病院のM&Aを実施。PMI時にグループ病院の統括事務長を経験。事務長時代に院内残薬の課題に直面し、9lioneを創業。

関連タグ

「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

今回は、創業期のスタートアップに特化して投資を行うVC・インキュベイトファンドとのコラボレーション企画として、インキュベイトファンドの投資先のみが集まる限定回を開催した。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社ザブーン、株式会社9lioneの2社(登壇順)だ。インキュベイトファンドの寿松木充氏も登壇し、クロストークセッションも開催した。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY RYOTARO WASHIO
SECTION
/

インキュベイトファンド
資本と人材の両面から事業成長に伴走する

インキュベイトファンド株式会社

インキュベイトファンドは、創業期のスタートアップに特化し、投資・支援を行う独立系VCだ。現在は、特にDX、パブリックセクターイノベーション、ディープテックの3領域に注力し、投資を行っている。

資本と組織開発の両面からスタートアップの成長を支援すべくコミュニティを形成し、イベント、HR支援なども実施。資金調達を目指すシード・アーリーステージ起業家向けの合同経営合宿『INCUBATE CAMP』や、半日がかりで事業相談の1on1を実施する『CIRCUIT MEETING』などの場を提供している。他にも、大学生・大学院生を対象とした、VCに関する講義イベントも実施。

日本のスタートアップエコシステムをさらに盛り上げるべく、多様な取り組みを展開している。

SECTION
/

ザブーン
“オペレーションのDX”を後押しする船舶管理プラットフォーム

株式会社ザブーン

最初に登壇したのは、船舶管理クラウドサービス『MARITIME 7』を開発している、ザブーン代表取締役の戸髙克也氏。

戸髙氏の実家は船舶管理会社を経営しており、自身も同社で船舶管理の責任者として約10年勤めた経験を持つ。

現場での経験を通して戸髙氏は海運業界の課題を感じたという。その課題とは、IT導入率が低く、業界全体としてDXが進んでいないこと。

戸髙船舶管理は、未だに紙による運用が主流です。一隻ごとに紙の資料で運行状況などを管理しているのですが、これらは長期保存する義務があり、さらに隻数が増えるほど資料も増えます。

また、船員はWordやExcelなどでレポートを作成して会社に送付するのですが、その方法もメールやFAX、郵送などバラバラです。現場からは「紙の資料からデータベースを作成するのに手間がかかる」「一括管理システムが必要」など課題の声が上がっています。

また、船の数は年々増えているにも関わらず、船舶管理を行う人は減少しているため、一人ひとりの負担が増加してしまっています。

『MARITIME 7』は、そうした非効率な船舶管理の現場をDXするサービスだ。資料をデジタル管理し、永久保存を可能にするだけではなく、ダッシュボードから船の平均スピードや燃料の消費量、CO2削減量など、船の運行に必要な情報を可視化。自社内での連携はもちろん、他社との共有もしやすくなる。結果的に運用コスト削減につなげられるのが特徴だ。

『MARITIME 7』は現在、開発段階にあり、2022年2月末のローンチを計画している。

戸髙ターゲットとなる船の数は全世界で約10万隻。その10%が国内市場であり、日本国内だけでも約1万隻のターゲットが存在する、一大マーケットです。その市場規模は、5.8兆円。また、アジア全体に目を向ければ、世界中の船の約半数が集まる巨大市場になっています。

『MARITIME 7』は、国際ルールの規定に則って開発を行っているため、将来的には言語拡張によるグローバル展開も見据えています。

「中長期的には、海事産業全体をサポートするプラットフォームの構築を目指したい」と語る戸高氏。「事業拡大に向けて、採用も強化しています。ご興味ある方はご連絡ください」と参加者に呼びかけた。

SECTION
/

9lione
“院内残薬”をなくす医薬品管理プラットフォーム

株式会社9lione

続いて登壇したのは、クラウド医薬品管理システム『9lione』を開発・運営している、9lione代表取締役CEOの廣田雄将氏。

廣田氏は、学生時代に起業し事業売却を経験。その後転じた医療系M&Aアドバイザーとしての活動を通じて、「医薬品廃棄」という社会課題を目の当たりにし、同社の創業に至った。

廣田医薬品の不良在庫と呼ばれる「院内残薬」は、一店舗あたり年間約500万円分も存在すると言われています。個人経営の薬局であれば、年間の営業利益にも匹敵する金額です。

さらに、期限が切れた医薬品は処分しなければならず、年間7700億円分の院内残薬が廃棄されていると言われています。高齢化が進み、医薬品の需要が拡大していくに伴って、院内残薬も増えていく、今後大きな社会問題になると考えています。

では、なぜこのような院内残薬が発生してしまうのか。根本的な原因は、「最小ロット数」にあります。例えば、10錠しか必要ない医薬品でも、100錠入っている箱でしか購入できない。そのため、残りの90錠は不要在庫として保管されたり、廃棄されたりしています。

不要な医薬品を再流通させ、院内残薬を削減するのが『9lione』だ。薬剤師や医療従事者が処方箋をタブレットやスマートフォンで読み取ると、医薬品の在庫一覧を自動で作成・更新。さらに、患者の来院日や処方医師の傾向を分析し、需要・消費を予測。これにより、経験と勘によって行われていた発注作業からデータに基づいて行えるようになるため、無駄をなくせる。

さらに、院内残薬を減らすための「医薬品シェア機能」が実装されている。

廣田院内で余った医薬品を、他の薬局などに気軽に譲渡できる仕組みを取り入れています。購入する側は一錠から医薬品を仕入れられるため、安く最適な量を購入できる。一方で、提供する側は、廃棄予定の医薬品を販売し、売上に変えられます。この仕組みにより、医療費の削減につながると考えています。

年内には、『クラウド在庫管理システム』のリリースを予定。受発注データの管理だけではなく、需要予測も可能になるという。

廣田氏は「ガーゼや注射針などの医療機器も販売可能にすることで、医療機関のAmazonに進化できるのではないかと考えています」と語る。「院内残薬ゼロ」というビジョンのもと、将来的には医療費の削減にも寄与したいと意気込む。

採用情報

採用情報はこちら

SECTION
/

業界に興味を持ち、大きな変化を起こしたい人を求む!

ピッチ後は、インキュベイトファンドの寿松木氏も交えて、ザブーンの戸髙氏、9lioneの廣田氏が、組織運営に関するクロストークセッションを実施。まず、寿松木氏から廣田氏に投げかけられたのは「現在、どのようなチームづくりを行っているのか?」という質問。

廣田現在は11名で会社を運営しています。チームは、コーポレート、営業、開発に分かれており、最近は、医薬品管理チームも発足しました。今後は、営業チームのメンバーを増やしたり、セミナー等のWebでの広報を手掛けるチームも作ろうと考えています。さらに、開発ユニットも増やすなど、チームの拡大を構想しているところです。

また、組織形成の過程では「大きな失敗もあった」と振り返る。

廣田1回目の資金調達をする際、サービスが形になりつつあったこともあり、いきなり正社員の営業メンバーを3名採用したんです。でも、資金調達が2ヶ月ほど伸びてしまい、開発も思ったより進まなかった。

そんな中で営業チームを拡大してしまったため、お願いできる仕事もなければ、人件費が増大したことでキャッシュも底を付きそうになった。結局、2名が辞めてしまったのですが、1名はパワフルにサポートしてくれて、なんとか乗り切れました。

一方のザブーンは現在、2名体制で事業を運営。今後1年以内に7名まで社員数を拡大していきたいと戸高氏。寿松木氏は「どのような人材に集まって欲しいか?」と尋ねた。

戸髙海運業界の方でなくても問題ありません。その代わり、海運業界への興味や、何か大きいものを変えていきたいという気持ちは必要です。恐らく入社直後は業界で使われる専門用語が分からないと思うので、半年から1年間くらいは私の営業サポートとして業界を知ることが必要です。1、2名ほど根気強い方がいてくれたら嬉しいです。

最後に、今後採用を強化していくザブーンから必要な人材について触れられ、ピッチは締めくくられた。 

戸髙開発メンバーと採用担当者を求めています。現在、プロダクトの開発段階なので、開発メンバーはすぐにでもほしい状況ですし、今後のチーム拡大を見据えてると採用担当は不可欠。豊富な採用経験を持った方がジョンしてくれれば嬉しいですね。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2022年01月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

次の記事

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

鷲尾 諒太郎

1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。