INTERVIEW
山田 博之
18-02-07-Wed

「実行管理」で終わってない?
若手マネジャーが身につけたい
「戦略立案」の本質

TEXT BY KYOZO HIBINO
PHOTO BY YUKI IKEDA
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事業が伸びていると戦略がおざなりになる

今回のテーマは「戦略を描く」とのことですが、リーダーになることとどう関係するのでしょうか。

山田「戦略」という言葉はとても広い意味を持っていると思います。難しいものからシンプルなものまでさまざまですし、営業戦略、商品戦略、物流戦略といったように、いろいろな言葉にくっつけて使える便利な言葉でもありますよね。人によってとらえ方や意味が微妙に異なる「バズワード」の典型例だと言えると思います。

そこで、まず「戦略とは何か」を定義することから始める必要があります。私の考える戦略とは、「ゴール達成のための道筋を決めること」。

そう表現すると、リーダーにとって戦略を描くことが重要だという意味がわかっていただけるのではないでしょうか。

たしかに。「ゴールを描いて、周囲を巻き込み、実現まで導く」人材がリーダーだとする御社の定義と重ねると、しっくりきますね。

山田ただ、言うは易く行うは難し。戦略を描くという作業を実際にやることは結構大変なんです。

特に、どんどん伸びている企業でマネジャーになったような人ほど、戦略を描く力が鍛えられないままに、いまの地位についてしまっている危険性があります。

なぜなら、事業が伸びている時のマネジャーは、いまのやり方を変えずに確実に実行していくこと、適切に人員を管理することのほうが中心的な業務になりがちだからです。

伸びているということは、現状、戦略には問題がないということ。とにかくそれを愚直に実行していけば一定の成果につながるので、マネジャーに求められるのは「戦略立案」ではなく、「実行管理」なわけです。

山田過去に大きな成長を遂げた日本企業が踊り場を迎え、なかなか成長できずに苦労している理由の一つが、そこにあるのだと思います。

マネジャーたちは実は既存の戦略に乗っかっていただけで、自分たちでは何も決めてこなかった。だから、いざ新たな戦略が必要なフェーズに入った時に、思うような結果を出せなくなってしまう。

既存戦略が機能しなくなり方針を切り替えなければならない時こそリーダーが必要なのに、その立場の人が戦略を描くスキルを持っていないとなると組織は停滞してしまいます。

そういう状況に陥ってしまわないためにも、若くしてリーダーを志す方たちには、たとえ伸びている時でも自ら戦略を考えだす力を養っておいてほしいなと思いますね。

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「周囲」と「メンバーの状況」を把握してから道筋を決める

戦略を描くには、具体的にはどうすればよいのでしょうか?

山田ゴール達成のための道筋を決めるわけですから、まずはゴールを決めることが必要です。ゴールがあいまいでは、道筋を描き出すこともできません。

ここで言うゴールとは、前回ご紹介したミッションに沿ったものではありますが、より具体的に表すことができるもの。山登りにたとえれば、登る山をどこにするかということです。

高尾山に登るのか、富士山に登るのか、それともエベレストに登るのか。それによって道順も装備も違ってきますし、何よりメンバーに求められる能力が変わってきます。

若いうちは、ゴールとは与えられるものであって、自分で設定する機会はそう多くないかもしれません。しかし、ゴールの設定を他者に依存し続けていると、自分で決めなければならない立場になった時に行き詰まってしまう。

自分に与えられた役割や業務の範囲で、自分なりのゴールを決める訓練をしておくことは大切だと思います。

ゴールが決まれば、次はそこに至るまでの道筋ですね。

山田そうです。「どのような方法でそれを達成するのか」を決めることになるわけですが、ここで重要なのは、「周りの状況」や「メンバーの状況」をしっかりと把握しておくことです。

周りの状況というのは、先ほどの登山の例でいえば「天候」に置き換えるとわかりやすいかもしれません。寒い季節なのか、暖かい季節なのか。晴れているのか、雲行きが怪しいのか。

メンバーの状況も、やはり大きなファクターです。小さい子どもを連れて山を登るのか。体力のある若者と登るのか。それとも経験豊富なベテランとパーティーを組むのか。

こうしたことが明確になって初めて、ロープウェイを使うべきか、歩いて登るのかといった手段を検討することが可能になります。道筋を決めるために周りやメンバーの状況などを確認することを、ビジネスの世界では「環境分析」と呼びます。

山田環境分析の手法には、PEST分析や5Forces分析に代表される「外部環境分析」や、バリューチェーン分析やVRIO分析に代表される「内部環境分析」があります。

本稿では各々についての細かな説明は割愛しますが、重要なのは、感覚的に道筋を決めるのではなく、環境を分析し「文書化(見える化)」したうえで道筋を決めることです。

少し話が戻りますが、ゴールを決める時も環境分析のステップを踏んでからのほうがいいのではないでしょうか。

山田もちろん、あまりに非現実的なゴールでは意味がありませんし、現実的に達成可能なゴールを設定するために、ある程度の環境分析は必要だと思います。

ただ、これはいろいろなケースを見てきて言えることですが、最初にしっかりと現状を分析し、そこから逆算して登る山を決めようとしても、案外決まらないものなんです。

「標高1000m級の山だったら登れそうだ」ということがわかっても、じゃあ、たくさんある山の中でどれにするかが決められなかったりする。

むしろ、ゴールを決めるうえでは意思の力が大切です。富士山に登ろう。そう決めてから、登頂するために必要な道筋を考えていく。そういう順序で進めたほうがうまくいくと思います。

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「フレームワーク」はただの道具

文書化(見える化)には、何か決まった手法があるのでしょうか?

山田形にこだわる必要はありません。方針書や計画書といったものに書き出してみて、それをメンバーと共有することが本質です。

それがあることで、自分たちがどこに向かっているのか、どういう環境の中でどういう道筋を選んでいるのかということに対する納得感が各メンバーに生まれます。

20代でマネジャーになるような人は、プレイヤーとして高い結果を出してきた、いわゆるハイパフォーマーだと思います。

そういう人はセンスで道筋を決めることができるし、同じ感覚を持ったメンバーが揃っていれば、直感的に描き出した道筋でも理解・共感してもらえるかもしれません。

でも、さまざまなレベルのメンバーを巻き込もうと思えば、「なんとなく」では伝わらない。ブラックボックスではなく、誰もが目に見える形、読むことで理解できる形にしておくことが必要になってきます。

山田先ほど挙げたようなフレームワークは、戦略を策定するための「道具」の一つですが、教科書に載っているものをそのまま現実のビジネスに当てはめて使えることは稀です。実態に即してアレンジしながら使うことのほうが多い。

たとえば、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3要素を用いる3C分析などは、BtoBの場合には、顧客の先のエンドユーザーをも想定した4C分析とすることがあります。

道具の熟練度は使うほどに増していくもの。繰り返し訓練することで、よりクリアに現状認識を可視化できるようになり、ゴールに向けての道筋も的確に描けるようになっていきます。

その際に重要なことがもう一つあります。それは「引き算」です。

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「やらないことを決める」勇気を持て

引き算、ですか。

山田リーダーとして、やることを決めると同時に、「やらないことを決める」という意味です。

私が以前勤めていた職場で、こんなことがありました。営業部だったのですが、当時の上司が最低契約額を決めて、「これより低い金額の契約は取らなくていい」と明言したんです。

山田しかも口で言うだけではなく、実際に稟議も通さなかった。でも結果として、そこから営業部としての目標数値を達成することができるようになりました。私はその時、引き算の大切さというものを身に染みて感じることができました。

意思を持ってゴールを定めると、何としても実現したいという思いが強くなります。その時、マネジャーになりたての人は一気に目標まで行こうとしたり、不安だから「あれも、これも」やってしまいがちです。

そうなると、メンバーがついていけなくて疲弊するか、全部が中途半端になるか、どちらかの結果を招きます。

登山で言えば、どんな場合でも対応できるように荷物を持ちすぎてしまい、余計に疲れてしまって登れなくなるわけです。

だから、リーダーは必ず「やること」を決めることと合わせて、「やらないこと」を決めた方がいい。そして、エネルギーを「やること」にしっかり注ぐ。それによりスピードを上げることもできます。

もちろん、決めたことがいつも正しいとは限らないし、不安にだってなりますよ。でも、決めた道が間違っていても、早ければ引き返してやり直せばいいじゃないですか。

「戦略」という道筋を立てるとき、一番大事なのは、この選択と集中をする勇気と決断です。決断には責任や不安が伴いますが、その経験こそが今後のキャリアにおいて最も役に立つものとなるはずです。

そして、それを決められる人こそ真のリーダーなわけです。

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株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース シニア・マネジャー 山田 博之
[文]日比野 恭三
[撮影]池田 有輝

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