INTERVIEW
小林 傑 柴田 陽
18-03-07-Wed

2度のイグジット経験者が説く
事業アイデアの見つけ方

TEXT BY KYOZO HIBINO
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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起業は魔法じゃない。限界まで会社は辞めるな

まずは連載初登場の柴田さん、自己紹介をお願いします。シリアルアントレプレナーとして、すでに数社の立ち上げと売却をご経験されたそうですね。

柴田はい。数え方にもよりますが、起業したのは4社ほどですね。初めて会社をつくったのは大学生の時。何でも屋さんのような形でスタートして、最終的にはSEOの会社になりました。

その後、マッキンゼーでの勤務経験を経て、オンライン花屋の青山花壇、バーコード価格比較アプリ『ショッピッ!』の運営を手がけるコードスタートを立ち上げ、ほぼ同時期に売却。さらに来店促進サービス『スマポ』を運営するスポットライトという会社をつくり、こちらは楽天が買収する形になりました。

買収された後もしばらくは私が経営をしてきましたが、2015年にバトンタッチして、いまはソーシャルレンディング比較サイト『クラウドポート』の共同創業者という肩書も持ちつつ、次の起業のネタ探しをしているような感じです。

小林起業経験が豊富な柴田さんにぜひ話してもらいたいのは、新規事業なり起業なり、“新しいこと”を始めようとする時のコツというか。

企業が新規事業を始めるにあたって「何からすればいいんですか」とコンサルのところに相談に来るように、個人単位で新しい事業をスタートさせる時も、やっぱり何から手をつければいいかわからないと思う。

正解はないのかもしれないけど、柴田さん流のやり方はどんな感じなんですか?

柴田もちろん人それぞれ、スタイルによるところはありますが、ぼくのおすすめとしては、たとえば会社勤めをしている人が温めてきたアイディアを事業化しようという場合、限界までは会社を辞めないほうがいいということですね。

いまの会社に所属した状態で事業計画をつくりこんで、営業にも行ってしまって、エンジニアに依頼してサービスのβ版をつくったり、WEBサイトを公開したり、あるいはFacebook広告を出したり。

そうやって事業を回しながら、もうこれは法人がないと対応できないという段階になって初めて退職すればいいと思うんです。そのプロセスにおいては、土日などの自由な時間を有効に使いながら、人を巻き込んでいく必要があります。

もし人を巻き込んで事業をつくっていくことができないのだとしたら、それは会社を辞めてフルタイムの経営者になったとしても状況は変わらないと思う。いろんな人が動いてくれるのは、その人自身や事業アイディアがそれだけ魅力的だということだし、そうやって協力してくれる人脈を築く能力があるということの表れでもあるだろうし。

だから会社勤めをしながらでも、できる人はできる。逆に言うと、できない人は、会社を辞めたからといってできるようになるわけじゃない。使える時間は増えますが、何かが劇的に変化するわけではありませんから。

小林たしかに。会社を辞めた途端、急にスキルアップするわけじゃない。

柴田会社にいながら片手間で事業を軌道に乗せられるかどうかというのは、すごくいいテストだと思います。

小林柴田さんがそう考えるようになったのは、何かきっかけが?

柴田そうですね。青山花壇とコードスタートの2社の事業を始めたのは、実はマッキンゼーに在籍中のことだったんです。

正確に言うと、休職できるプログラムを活用して、イレギュラーな形ではあるものの、自分のスタートアップに取り組んでいた。仮に事業がうまくいかなかったとしても戻る場所があったし、別の企業に転職する道もありました。

最終的には「お前、いつまで休むつもりなんだ」という話になり、事業がうまくいく手ごたえがあったので退職しました。そういうことが許されるなら、会社のことはギリギリまで放っておいていい。こんなことを言うと、怒られるかもしれませんけど(笑)。

小林とにかくまずは動いてみようという話ですけど、現実問題として、どこまでできるんだろうと考えると、なかなか難しいような気もする……。

柴田もちろん簡単なことじゃないですよ。それこそ、その人のスタイル、もっと言ってしまえば能力だと思います。わかりやすくエンジニアを例にとると、会社にいながらにして、ヒットするWEBサービスをつくり出したケースなんて山ほどある。

たとえば、写真に一言添えてボケる『ボケて』というサイトがありますが、ぼくが知っている限り、あの運営に完全にコミットして取り組んでいる人は存在しません。

それでもPVなどを考えれば、月間数百万円単位の利益を生んでいるはずです。そういうことが自分でできるなら、それがいちばん早い。

一方で、自分には能力がないけれども他人を巻き込むのは得意だという人は、自分の代わりにサービスをつくってくれる人を探せばいい。いずれにせよ、アイディアだけがあるという状態には価値がなくて、いかにしてそれを具体化できるかがポイントなんです。

その手法や具体化への貢献の仕方は、それぞれの能力やスタイルによる。自分でつくることもできない、人を巻き込むことも得意じゃないという人は……起業しないほうがいいですね(笑)。

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「技術」「規制」「プラットフォーム」の変化を追いビジネスチャンスを掴む

小林新しい事業を始めようとする時、大きく2つのタイプに分かれるような気がしていて。1つは、環境分析をきちんとして、売り出そうとしている商品やサービスにたしかに市場があるということを確認したうえで勝算を持って始めるタイプ。

もう1つは、そんなことはお構いなしで、とにかく自分はこれをやりたいからやるんだと、意思ベースで突き進んでいくタイプ。

これも正解はないんだと思いますけど、柴田さんはどう考えていますか。

柴田いちばん大きい分岐点は、スタートアップ的に大きく勝ちたいのか、それとも、もう雇われない生き方をしたいんだっていう話なのか。それによって考え方はまったく別のものになると思います。

前者の道を選ぶなら、やっぱり市場性を分析するステップは必要。ぼくは、その市場が本当に将来性のあるものなのかっていうのを考える、リトマス試験紙となるようなフレームワークを持っています。

どういうことかというと、「いままでそれがなかったのはなぜなのか」という問いを設定して、ロジカルな答えを見つけられるかどうかテストをするわけです。

そこには「課題」と「解決(策)」という2つのアングルがあります。ビジネスは、誰かの課題を解決してあげることでそこに価値が生まれ、その対価として売上があがる。

ですから、「いままでそれがなかったのはなぜなのか」について考える時、「課題」そのものが存在しなかったというパターンと、課題自体は前々からあるけれども「解決策」がまだ見つかっていないというパターンの2つに分類されることになります。

小林新しい「課題」が生まれた時や新しい「解決策」を講じられるようになった時にビジネスチャンスがある、と。

柴田そういうことです。最近の例で言えば、仮想通貨取引所をめぐる問題が顕在化してきて、どの取引所が信頼できるのかを見定める必要性が発生した。これは新しい「課題」です。

「課題」にせよ「解決策」にせよ、新しい何かが生まれるのは、いくつかの前提条件の変化に起因していると考えられます。最もわかりやすいのは、新しい「技術」の発明ですよね。また、「規制」も新しい問題や解決を生み出すことにつながります。

もう一つは、技術に近いですけど「プラットフォーム」とぼくは呼んでいます。たとえばスマートフォンの普及。スマホという技術が社会に広く行きわたったことによって、新たな問題も生まれるし、解決策としても応用しうる。

大きく分ければこれら3つの前提条件の変化があって、そのあたりを丹念に見ていくことで将来性のある事業領域が見つけやすくなるのかなと思います。

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仮説精度は専門家に聴き込んであげていく

小林なるほど。そのフレームを通して見て、やることを決める。

柴田決めるというよりも、最初の簡単な試験ですね。ここから新しいものを見つけて実際に事業化するものを決めるには、ちょっとしたジャンプが必要になると思います。

たとえば、「技術」が新たな課題や解決策を生み出しているということがわかったとしても、その先に進もうと思えば、どうしてもかなり専門知識が求められる範疇に入ってくる。

そうなるとやっぱり鉄則は、いろんな人から「最近何が起こっているのか」を聞くことになりますよね。専門誌に書いてあることも結局は二次情報でしかないので、できれば記者よりも先にその情報をキャッチしたい。

ある人からは直近で生じ始めている課題についての話を聞き、別の人からは新しい技術の話を聞く。そういうものが「この技術があれば、あの人の課題って解決できるんじゃないか」というふうに結びついていく。

それはセンスでもありますが、ネタをたくさん持っていれば持っているほど、想像力に左右されずに結びつけて考えられるようになります。

柴田「規制」についても同様で、世間的には突然のことであるかのように「規制が緩和されます」というニュースが流れて驚いたりするわけですが、その分野の当事者、当局の関係者などは「3年後にはこれぐらい緩和されているだろう」という感覚は持っているわけで、そういう人たちにアプローチすることで情報を得ることは十分に可能なんです。

将来の規制の変化をある程度具体的に予測できていれば、そこで発生しうる問題を想像して、それを解決するためのサービスをほかの人たちより先に用意することができる。

サーフィンにたとえるなら、人より早く波を見つけられる、しかも十分に大きな波を見つけられるということ。その波に乗れる位置につけておくことが重要だし、あとはそれを乗りこなすだけのスキルと度胸があるかという話ですよね。

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当事者だけが“わらしべ長者”になれる

小林でも、一次情報を取りに行くって決して簡単なことじゃない。会社勤めをしながらとなれば、なおさら……。

柴田たしかにそうですね。一つは、運の要素も大きいと思いますよ。大学の同級生がたまたまその関係者になっていた、だとか。そういう糸口から、いかに“わらしべ長者”ができるかだと思うんです。

ぼくは2010年ごろ、バーコードで価格比較すると最安店を教えてくれる『ショッピッ!』というアプリを運営する会社を経営していたんですけど、ユーザーが家電量販店に行ってアプリを使うというケースがすごく多かった。

安く販売しているWEBショップの画面を提示して、店舗側と価格交渉するわけです。いまでこそ珍しい光景ではなくなりましたが、当時はまだ「店頭でのスマホ禁止」っていう看板が出ているような時代で、小売店さんにしてみれば非常に厄介なサービスでした。

そのうちに「どういうことか説明してくれ」と呼び出されることが何度かあって。冷たくあしらうこともできるけれど、やっぱり建設的な議論をすべきだと思ったし、そういう気持ちで話をしに行くと、小売店が抱えているネットとの共存に関するリアルな課題を聞くことができたんです。

そこでわかったのは、公式ツイッターアカウントをつくってフォロワーを増やすということはやっているけど、それが売上の増加につながっている実感は得られていないということ。

要は、フォロワーはどうやら実際に来店しているわけではなさそうだという姿が見えてきた。であれば、消費者を実際に来店させ、それが実証できるようなシステムがあればいい。そういう成果報酬型のサービスがあるなら使いたいという反応を得て、『スマポ』の開発へとつながっていきました。

“わらしべ長者”と言ったのはそういう意味で、何もかもが予見できるわけではないけど、何かが起点となって次のチャンスにつながり、新しい事業が生まれるということは起こりうる。

小林できる人はそうやってうまくつないでいくんですね。

柴田そのためには当事者であることが大事だと思います。『ショッピッ!』を運営している当事者だったからこそ呼び出されて、そこで自分が解決できるかもしれない課題に出会えたわけですから。

よく「マッキンゼー人脈でしょ」みたいなことを言われますけど、特段使っていませんよ。最前線にいる人に対して役立ちたいという意思を示して気に入っていただく。結局はそれが王道なんじゃないかなと思います。

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株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 代表取締役 小林 傑 株式会社フィールドマネージメント 執行役員 柴田  陽
[文]日比野 恭三
[撮影]藤田 慎一郎

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