INTERVIEW
九岡 佑介
18-02-26-Mon

Kubernetesも導入!
「攻めと守り」を両立させるfreee。
サービス開発の裏側

TEXT BY NAOKI MORIKAWA
PHOTO BY YUKI IKEDA

開発管理→フロントエンドエンジニア
→バックエンドエンジニア→スマホ向けアプリエンジニア
→インフラエンジニア。

たった10年の間に、これだけのレイヤーや領域を渡り歩き、
尖った技術にこだわりながら、いくつもの役割を担ってきた九岡佑介は、
OSSやRuby on Rails界隈じゃあ名の知れたエンジニア。

そんな九岡が魅了され、たどり着いたのがfreee。
沸騰するFinTechムーブメントを代表する企業の1社だが、
今まではどんな技術者がどうやって開発や運用をしているのか、あまり知られてこなかった。

そこで「隠れていたわけじゃないです」と笑う九岡に、
エンジニアにとってのfreeeの魅力について話してもらった。

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「30を過ぎても腕で勝負したいエンジニアなら絶対freeeに惚れる」。そう言い切る2つの理由

先進技術を多様な金融サービスに結びつけたFinTechムーブメントは、脚光を浴び始めてから早くも数年が経とうとしている。今もなお次々と新しいプレイヤーが生まれ、新鮮な話題を提供しているわけだが、その一方で着実に事業を確立し、すでに市場での地歩を固めた企業もある。

クラウド会計ソフトのシェアにおいて№1の座を得ている(注1)freeeは、その代表的存在だ。

(注1)3強が戦うクラウド会計ソフト市場(1) 導入ユーザーの動向を徹底調査 - BCN RETAILより

2017年11月には、「人事労務 freee」がASPIC IoT・クラウドアワード2017にてASP・SaaS部門の「基幹業務系分野グランプリ」を受賞。業績だけでなく、提供サービスのクオリティや先進性でも高い評価を得ているfreeeだが、腕に自信を持つ尖ったエンジニアたちは独自の視点を持って「働く環境」を模索している。

「そこで自分は何をやろうと思えるか?」「純粋に最適な技術を追求していけるような環境があるのか?」などなど。freeeから入社のオファーをもらった時の九岡も、まさにこうした視点から自らの進路を考えたのだという。

九岡もちろん、「クラウド会計ソフトfreee」は以前から知っていたのですが、オファーをいただいたことから、あらためて会社としてのfreeeがどういう企業で、どういう事業を展開しているのかを調べていきました。

その結果、いくつもの魅力が見えてきました。例えば、あえて個人事業主や中小企業というスモールビジネスにユーザーを絞ったことで、埋もれていた市場を開拓し、そこで伸び盛りのビジネスをやっていて、貪欲に機能やサービスを増やしていること。

会計関連のデータを取り扱う以上、基幹システムをしっかり構築して、円滑かつ安全にまわさなければいけないはずだけれども、そこもしっかり実行できていること……などなどです。こんな風にいろいろわかってくるにつれ、「FinTech企業で面白いことができるとしたら、freeeしかないかもしれない」と思うようになりました。

でも、技術に関わる事柄については、過去のメディアへの露出などを見ても、あまり語られていなかったんですよ。

時代の先を行く発想と、過去に例のないアプローチや、ユニークなサービス。どんな技術をどう回している?それが知りたくて、九岡は本気で調べ始め、freeeメンバーとの対話も積み重ねていった。

そして、その過程で「ここしかない」と確信したのだという。理由は2つ。1つはきわめて技術的なこと。そしてもう1つは、意表を突くような内容だった。

九岡まず興味を持ったのが「特定の技術だけにロックインしていなかった」ことです。一言でクラウド会計ソフトといっても、実際に使う立場になって触ってみると、実に多彩なサービスの集合体なんです。

これまで様々な企業でいろいろな役割に就いた僕としては、OSS(オープンソースソフトウェア)を含め、数多くの技術や言語、プラットフォームを使ってきたので、「このサービスならば、こういう技術でこう作ったほうが良い」みたいな発想が浮かぶわけですが、たいていの企業は何かしらのしがらみなどもあって「すべてこのベンダーの技術で」とか「言語はこれとこれだけ」みたいになりがち。

しかし、freeeは違っていました。

Ruby on Rails、Go言語などを用いて、各サービスに適したものを作り上げ、そのうえでそうしたバラバラの技術成果を束ねることにも成功していた。

「イケてるなあ」と思いつつ、深掘りして開発環境の中身を聞いてみると、さらに魅力的な話が出てきました。

例えばRuby on Railsのアップデートにしっかり対応していた点。今やFinTechに限らず、様々な業界や領域でRuby on Railsによるアプリが使われているのですが、バージョンアップの頻度が非常に高いため、技術に理解のない経営者が率いる企業などでは最新バージョンへのアップデートが滞っていたりするんです。

freeeはそうではなかった。しかも、経営層の承認を都度取らなくても、現場の判断で自立的にアップデートされていると聞き、「ここはすごい」と思うようになりました。

九岡は目を輝かせて言う。「エンジニアは、いつだって最高の技術を使って、最高なことを、最速でやりたい生き物なんです」と。その理想的な環境がfreeeにはあった。しかも、何食わぬ顔で当たり前のようにこの事実を語るエンジニアたちがいたのだという。

さらに胸アツだったのが「マジ価値」というメンバーの行動指針の存在だと語る九岡。初めて聞く者には意味不明の言葉だが、freeeのコーポレートサイトの「freeeの価値基準」という項目には、下記のように書かれている。

「本質的(マジ)で価値ある」=ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする

さらにこの「freeeの価値基準」には、以下のような項目もある。

「アウトプット→思考」=まず、アウトプットする。そして考え、改善する

以上の2つを合わせれば、「エンドユーザーにとっての本質的な価値につながる、と自信をもって言えることならどんどんやれ。やってから考え、改善していけ」ということになる。

ユニークな行動指針を掲げるベンチャー企業は決して珍しくないが、こうした指針が技術の現場にブレークダウンされ、浸透し、ここまで日常化している環境はめったにない。

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「自分たちが使うサービスでもある」。そう考えれば、取り組む姿勢も変わってくる

以上が2つある理由の内の1つ。理想的な技術環境が備わっていて、それがユーザー視点を持つエンジニアたちによって自立的に日々改善されていて、しかもそのすべてが価値基準と呼ばれる行動指針に直接ヒモづいている。こうなれば技術者たちのモチベーションは上がっていく。

では、もう1つの理由とは何か? 九岡は技術論とは別次元の話を始めた。終始淡々と、微笑みながら話すのだが、これまた中身は熱い。

九岡「スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできる」。そんな世の中にすることをfreeeは目指しているのだと聞きました。「クラウド会計ソフトfreee」も、こうしたミッションから生まれたわけですし、今なお機能やサービスを追加し続けている理由もここにあるんですよ。

freeeという会社のそもそもの成り立ちを示すミッション。同社が成功した秘訣と、今後の可能性をも物語るものだが、すでに数多くのメディアに取り上げられ、多くの人に知られている内容だ。いったい何が九岡の心をあらためて動かしたのか、意味を即座に理解できず問い直すとこんな答えが返ってきた。

九岡だって心に刺さるじゃないですか。僕らエンジニアが30を超えても生き抜くには、現実的に道は3つしかないんですよ。特定技術・サービスからは一歩身を引いて、組織に働きかける「マネージャ」としてチーム、部、会社、業界、国…というような範囲で人を動かしながら生きていくか、プロダクトマネジメント・ディレクション・UI/UXデザイン・テクノロジーなど特定技術に絞り込んで「スペシャリスト」として手を動かしながら生きていくか、その中間のどこか、です。

僕はスペシャリストとして生きていこうと決めました。同様の価値観を持つエンジニアたちも、例えばフリーの技術者として個人事業主になったり、僕のように複数の企業に所属して技術顧問なども営み、いわゆる「複業」をこなしていく立場になったりしています。つまり僕らは『freee』のユーザーでもあるんです。

freeeがミッションを達成すれば、向上心旺盛なエンジニアたちもまた「創造的な活動にフォーカスできる」ようになるということです。こうなったら燃えますよ。

意表を突く返答だった。「実際に『freee』を使っているエンジニアって多いのですか?」と尋ねると、「多いですよ」の即答。freeeの社員になったとしても、バリバリと技術で勝負していくエンジニアを志向するならば、心は常に「ど真ん中のユーザー」でもある。

そんな会社が先の「マジ価値」を真剣に追求しているとなれば、モチベーションは否応なく上がる。皆が皆、九岡のような発想で働いているわけではないかもしれないが、九岡がほれ込んだ「この会社のエンジニアは全員が自立的に動いている」という特徴を裏付ける要素の1つとも言えるかもしれない。

ともあれ、以上の2つの理由から、九岡はfreeeの一員となった。では今、具体的にどんなことに挑んでいるのだろうか?

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たった1人のエンジニアで5千台のサーバを操る……そういう環境を、日本で最初に作ってみせる

九岡「生産性向上」を目的に、「大量のサーバを少人数で管理しつつ、大人数に簡単に活用してもらえるようにする」というテーマで研究開発しています。

非エンジニアにも理解できるよう、平易な言葉で表現すると、上記が九岡の現在の最優先ミッションとのこと。もう少し技術的な面を補足してもらうと、以下のようになる。

九岡私は今、freeeのインフラを担当しています。クラウドを活用してユーザーの膨大な会計データを扱うわけですから、サーバは何台あっても足りないような状況です。

サーバをどんどん増設すれば当然生産性は圧迫されますから、企業としてはなんとかしたい。そうした課題の解決手段として注目されているのがKubernetesというシステムです。

Dockerコンテナ群をオーケストレーションするためのOSS、と表現してもわかりづらいかもしれませんので、その効果のほどを簡単に言ってしまうと、うまく活用すれば、それまで数十人のインフラエンジニアが必要だったサーバ管理をほんの数人で可能にしてしまう可能性を秘めた技術。

システムの設計限界だけで言えば、1人で5千台のサーバを保守運用することも可能な技術なんです。最新の技術ですから、日本ではまだ本番運用している企業は少ないのですが、freeeはこれを少しずつ導入し始めています。

これこそ九岡が入社数ヶ月で手がけ始めた「マジ価値」。Kubernetesの導入が進み、freeeのインフラ領域が少数精鋭のエンジニアで動くようになれば、他のエンジニアはフロント領域のアプリエンジニアとして創造的な活動にフォーカスすることも可能になる。

freeeがプロダクトとサービスを通じてユーザーに提供しようとしている成果を、社内においても達成できるというわけだ。「理想的ですね」と口にした途端、九岡が微笑んだ。

九岡だって、理想ドリブンの会社ですから(笑)

今一度、freeeのコーポレートサイトにある「freeeの価値基準」を見てほしい。先の「本質的(マジ)で価値ある」「アウトプット→思考」とともに「理想ドリブン」が並んでいる。その意味は以下の通り。

「理想ドリブン」=理想から考える。現在のリソースやスキルにとらわれず挑戦しつづける。

理想ドリブンでマジ価値を達成する。それが九岡のミッションであり、そのために日本ではまだ馴染みのない先端技術を本番環境で扱うことができている。エンジニアとしての達成感も十分というわけだ。

今後は九岡のみならず、他のエンジニアもKubernetesをはじめとする先進技術を使いこなせるようにしていく必要もあり、ミッションはさらに加わっていく様相とのこと。そしてこれもまた「freeeの価値基準」の1つにつながるのだという。

「あえて、共有する」=人とチームを知る。知られるように共有する。オープンにフィードバックしあうことで一緒に成長する

社内ではこれを「あえ共」と略して呼ぶのだというが、なにはともあれ、これで本記事のタイトルに用いた暗号のような言葉の意味が解明できたはず。

世界最先端のOSSも含め、最適な技術を用いて、真にユーザーに価値をもたらすサービスを構築し、なおかつそれによってエンジニアとしての成長ばかりでなく、自らの価値にもつなげていける。

チームとしての成長、会社としての成功に明確に貢献していくこともできる……できすぎたような話だが、freeeでは、そんな理想論が当たり前にドリブンしているのだ。

[文]森川 直樹
[撮影]池田 有輝

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