“本質的な価値”を追求するから、コンサルもプロダクトもうまくいく──イノベーション創発ファーム、エッグフォワード
【隠れた急成長企業の秘密Vol.1】

「事業成長」とは何だろうか?スタートアップの経営をめぐり、議論が活発化している。その理由は社会変化だ。新型コロナ禍がわかりやすい一例だろう。そして昨今の、アメリカを中心とした経済活動の停滞。「赤字を掘ってでも売上拡大を図る」という戦略が、かなり受け入れられにくくなっているように感じられる。

だからと言って、イノベーションを起こすことをあきらめてはいけない。支出を絞ることと、イノベーションを目指すことは、一切矛盾しない。常に、この世界に大きなインパクトを創発していくことを目指そう。そのために、本質的な価値を追い求めよう。その先にようやく生まれるのが、「事業成長」という結果だと考えるべきだ。

そんなテーマで今回取り上げるのは、徳谷智史氏率いるエッグフォワード。「組織コンサルティングの会社」というイメージがあるだろうか。そうであるなら、すでに“本質”を大きく見誤っている。一言で言えば、「イノベーション創発ファーム」というのが、同社について本質を突いた表現となろう。

確かに、元コンサルタントの徳谷氏が、組織や人財の進化を念頭にコンサルティング事業をしていたという事実はある。だが、それはほんの一部だ。常に大きな変化を遂げるためのチャレンジを欠かさないのが同社の強みであり、唯一無二の姿を形づくる要素だ。その現在地と未来図を追っていこう。

  • TEXT BY TAKASHI OKUBO
SECTION
/

イノベーションの本質は、「新しい価値を波及させる構造」

創業から約10年。事業規模で業界でもトップクラスにまで拡大してきたエッグフォワード。もちろんじわじわと成長を続けていたわけだが、この2年ほどの急成長が特に顕著である。契機は、やはりコロナ禍。一瞬、ダメージを受けたものの、徳谷氏の「むしろアクセルを踏む」という意思決定により、変化する市場を捉え、数百%増と急成長した。非常にわかりやすい。だがここでも敢えて言いたい。「事業成長は、結果の一つでしかない」と。

エッグフォワードの掲げるイノベーションとは、「社会に新しい仕組みが波及していく構造そのもの」を指す。瞬間最大風速的な変化のことでは、決してない。「より深い社会変革を起こし続ける仕組みや構造を、持続的に提供すること」だと言えよう。

そんなイノベーションを創発しようとし続ける中で、代表の徳谷氏が繰り返し発する言葉がある。それが「本質的価値」だ。さらに、合わせて出てくるのが「構造」「波及」。意思決定の軸となるのが、常にこうした哲学である。

短期的な売上拡大は、ほとんど眼中にないと言っても良い。直近の事業展開を見ても、それは明らかだ。その実態をここから、もう少し具体的に見ていこう。

SECTION
/

労働集約性と属人性を削ぎ落とし、“もはやコンサルではない領域”に到達

エッグフォワードが展開するコンサルティング事業は、経営戦略を導き出すだけのものでもなければ、組織開発を後押しするだけのものでもない。戦略コンサルとも組織コンサルとも全く異なる事業として展開している。なぜか?ここでわかりやすく説明するなら、ビジョン─事業─組織─人を連動させて変革する「人的資本経営」を、時代に先駆けて研究・実践してきたことが、その背景にあるということになる。

掲げているミッションは、「いまだない価値(Egg)を創り出し、人が本来持つ可能性(Egg)を実現し合う世界を創る。」だ。“戦略コンサルティング”や“組織コンサルティング”と呼ばれるような事業のみで、これを達成できるだろうか。徳谷氏は厳しい表情を見せ、「価値提供の手法はどんどん複雑化している」と指摘する。

エッグフォワードのソリューション紹介より

事業戦略、組織戦略、人材戦略を、すべて連関させることで、企業変革を確実に成し遂げていくことができる。これが、今のエッグフォワードが持っている、一つの答えだ。「他のどの企業も、実現できていないこと」だと胸を張る(例えば後述するように、プロダクト型の事業を増やしているし、スタートアップ投資まで実施している。より具体的には、追って別の記事で語ってもらう)。もちろん、常に新たな解を追い求めている。

そして、「この解をもとに、より大きなインパクトを生み出すこと」に、自然に手を広げている。「どうすればイノベーションを起こし続け波及させるための仕組みや構造を見出すことができるのか」を徹底して探究しているのだ。その取り組みが、「ソリューションをパッケージングしたサービス化」や「ソリューションを自動化したプロダクト化」、そして一見“飛び地”にも見えるような「BtoCプラットフォーム事業の創出」だ。

コンサルティング事業を否定しているわけではない。より本質的なコンサルティング事業の在り方を追い求める中で、事業モデルを進化させてきた。「属人性」と「労働集約性」について、不要な部分のみを削り、SaaSなどさまざまなビジネスモデルの強みを取り入れ、より多くの企業に、より多くの価値を波及させるために、より構造化されたかたちで届ける。

その結果として、先に触れた数百%成長の事業成長がある。そして今後もその成長が続いていくのだ。

さらに言えば、「属人性」と「労働集約性」をそぎ落とすことにより、(さすがに詳細な数値は明かされないが)非常に高い利益率も実現させているという。後に触れるが、投資事業にも乗り出すことができているゆえんでもある。

SECTION
/

事業も、プロダクトも、投資も、単なる手段

ここまでの話には、どちらかといえば「連続的な成長」にスポットが当たっている印象を受けるかもしれない。だから、ここからが本番だ。「イノベーション」というからには、非連続的な拡大を知りたい。それを物語る二つの要素に、今回は迫る。

BtoCビジネスのプラットフォーム展開が、一つ目の要素だ。その狙いをあえてわかりやすく表現するなら、「個人に対しても、起点を創ること」。コンサルティング事業というBtoBビジネスだけでなく、その知見やノウハウをBtoCビジネスとしても提供することで、「人と、組織と、世界の可能性の最大化」を図る。単にTAMを拡大したいという話ではない。

エッグフォワードが展開するBtoCプラットフォーム
みんなのエージェント
バーチャルランチクラブ
The 3rd DOORほか開発中プロダクトが複数

バーチャルランチクラブの使い方

とは言っても、いきなり収益性の高い事業ができるわけではない。プラットフォーム型のBtoC事業が複数あるのだが、いずれも単体では赤字の立ち上げフェーズであり、かつ、黒字化までそれなりの時間を要するものだという。徳谷氏も、「ロジカルに経営目線で捉えたら、赤字だから今すぐクローズしたほうがよい」と笑いながら話す。

最近も多くのスタートアップがプロダクトを一つに絞って、まずはPMFを目指す。それに対してエッグフォワードは、赤字である複数の事業を運営し、さらに増やそうとしているのだ。

さて、FastGrowの読者なら「BtoBとBtoC両方のプロダクトを提供している企業なら、ほかにもある」と思ったかもしれない。だが本当にユニークなのは、これらの事業に加えて、ベンチャーキャピタル(VC)のようなスタートアップ向けの投資を非常に積極的に行っていることだ。これが、紹介したい二つ目の要素になる。

すでに、上場しているツクルバ、未上場のファンディーノフライヤーといったようなスタートアップ、更にはシンガポールなどの海外スタートアップも含めて、直近だけでも20社近く、相当額の投資をしている(額は非公表)。さらに、あのUB Venturesにも初期からLPとして出資しているという。投資基準をわかりやすく記載するなら、「社会に必要かつ本質的な、あるべきイノベーションの実現を目指していること」だ。

上述の投資先スタートアップの社名を見れば、VCがこぞって出資したいと思える企業だと感じるだろう。単なる資金提供だけでは首を縦に振らなそうなイメージすら、今では感じる読者もいるかもしれない。そう、資金だけでなく、エッグフォワードの事業に関連した本質的な支援に、大きな期待があるのだ。

ここでも徳谷氏がこだわるのが、投資もあくまで「イノベーションのための構造を創っていくための手段」としている点だ。VCのビジネスモデルも活用してはいるものの、「VCになりたいわけではない」と強調する。

それでも、VCやエンジェルファンドが増え続ける中、資金だけでなくイノベーションの実現まで広く支援できるエッグフォワードの存在は、スタートアップエコシステムにおいて欠かせないものになる。言い換えるなら、日本からイノベーションを起こし続けていくための起点として、欠かせないものになるのだろう。

すでに、スタートアップエコシステム創りの一環として海外の投資家と日本のスタートアップを繋ぐ事業を展開する企業との取り組みも複数始まっている。

SECTION
/

“イノベーション創発ファーム”の現在地と未来図、乞うご期待

先にも触れた通り、人的資本経営への注目が一気に高まっている。人材の価値や能力を最大限に引き出し、企業の社会的な価値を向上させようとする考え方だ。大企業もスタートアップも、新たなビジネスチャンスとして捉える例が少しずつ見えてきた。

そんな世間の注目に、何年も先行してきたわけだ。このこと自体を、イノベーション創発の一つと言わずして、なんと言おうか。「コンサルティングファームは、イノベーションの担い手ではない」という意見を持つ若者も少なからずいそうだ。だが、エッグフォワードではコンサルティング事業自体もイノベーティブにやっているし、そのコンサルティング事業において社会の構造的な不(負)を見つけ、そこを起点としてさまざまなイノベーション創発につながるプロダクトやプラットフォームを構築しているのだ。

世間が注目している人的資本経営は、まだまだ表層的であり、本質を追究できている企業は少ない。徳谷氏率いるエッグフォワードが、人的資本経営を体現する企業として存在している理由がそこにある。創業期から掲げている言葉を、時系列を追って見てみたい。

エッグフォワードは戦略を提案するだけでは終わらない。最終的には、現場での研修やOJTなどのリアルな人財開発までも行う。(中略)「逆説的ですが、狭い視点で人材のみに注目すると、限られた機会しか提供できない。人財に関与していく以上、組織のあり方のみならず、事業そのものまで、幅広く、深く関わることで、新しい可能性を創り出していく、まさに変革していくのが我々の使命」と徳谷は言う。

引用:著名人に聞く|エッグフォワード株式会社 徳谷 智史 氏(2013/9/12)

こちらの記事は2022年07月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

大久保 崇

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

新規会員登録/ログイン