連載Unicorn Night 令和から始めるスタートアップ

ゴールドマン・サックスから、創業間もないマネーフォワードへ。
激動の環境変化から学んだ「スタートアップで働く意味」

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登壇者
金坂 直哉

2007年、東京大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス証券株式会社の東京オフィス、サンフランシスコオフィスにて約8年間勤務。テクノロジー・金融業界を中心にクロスボーダーM&Aや資金調達のアドバイザリー業務、ゴールドマン・サックスが運営する投資ファンドを通じた投資及び投資先企業の価値向上業務に携わる。2014年よりマネーフォワードに参画し、2015年から2019年までCFOを務める。金融機関・事業会社との資本業務提携、2017 年の東証マザーズ上場、2018年の海外公募増資、M&A 等を主導。2019年9月、成長企業向けにフィナンシャル・アドバイザリーや成長企業経営支援サービスを提供するマネーフォワードシンカ株式会社の代表取締役に就任。

坂 祐太郎
  • ジャフコ グループ株式会社 パートナー 

2012年、新卒で株式会社ジャフコ入社。主な投資先はマネーフォワード、Chatwork、WACUL、GIFMAGAZINE、スマイループス、papelook等。ForbesJapan社主催『日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング』2017年第2位。

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スタートアップで働くリアルは、業界外の人には意外に知られていない。情報が不足しているがゆえに、転職を躊躇するビジネスパーソンも少なくないのではないだろうか。

6月某日、『Unicorn Night 令和から始めるスタートアップ』と題したイベントが開かれ、第一線で活躍する起業家やVCたちが集結。スタートアップでキャリアを築きたい全ての人々に向け、セッションごとにテーマが設定された。

株式会社マネーフォワード 取締役執行役員の金坂直哉氏をゲストに招いたのが、「What an investor does. Job in Startups.~スタートアップはひとりじゃない~」と題したセッションだ。聞き手は、同社を上場まで導いたベンチャーキャピタル・株式会社ジャフコの坂祐太郎氏が務めた。

金坂氏は「最初の1年は資金繰りが厳しく、過酷な日々が続いた」と過去を振り返りつつ、「スタートアップは、没頭できるテーマを見つけられた人には適した環境なのではないか」と指摘した。大企業とスタートアップ、二つの環境で駆け上がってきたリアルな声がつまびらかにされたセッションの様子を、ダイジェストでお送りする。

  • TEXT BY HAYATE KAWAJIRI
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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ファイナンスから机の組み立てまで。ゴールドマン・サックスからスタートアップへの“波乱万丈”転職物語

マネーフォワードでCFOを務め、同社を2017年の東証マザーズ上場に導いた功労者・金坂直哉氏は、世界最大規模の金融グループ、ゴールドマン・サックスの出身だ。

M&Aや資金調達のアドバイザリーに従事していた金坂氏が、まだたった30名しかメンバーがいないスタートアップへと転職を決めた背景には、アメリカの西海岸で目にした“衝撃的な光景”がある。

株式会社マネーフォワード 取締役執行役員 金坂直哉氏

金坂ゴールドマン・サックスに勤めていた頃、サンフランシスコで1年ほど、スタートアップ関連のプロジェクトに従事していた経験があります。当時はまだ、日本ではスタートアップへの注目度が今ほど高くなかった頃です。もちろん僕も、スタートアップへの転職を考えたことはありませんでした。

しかし、西海岸で親しくしていた、とある起業家のアドバイスによって、将来的なスタートアップへの転職を意識することになります。今でこそ世界的な企業となったライドシェアサービス「Uber」が、既存のタクシーサービスを刷新していくなど、新しいサービスが世界を変える予兆を肌身で感じていた折に、「とにかく早く、スタートアップで働くべきだ」とアドバイスを受けたんです。その場では踏み切れませんでしたが、気持ちは揺れ動きましたね。

アメリカから帰国後、1年間はゴールドマン・サックスでの仕事を継続したが、従事していたプロジェクトが落ち着いたタイミングで、マネーフォワードからCFO候補としてのオファーを受ける。金坂氏は前職への思い入れがある一方で、「自分の経験がスタートアップに役立つのではないか」という期待も感じていた。決意したのは、転職の道だった。

マネーフォワードへの投資を担当していた坂祐太郎氏いわく、超がつく一流外資系企業からスタートアップへの転職は、当時はまだまだ珍しかった。今でこそ日本を代表するスタートアップとなったマネーフォワードだが、当時は設立3期目のベンチャー企業だっただけにに、金坂氏の入社にはかなり驚いたという。CFO候補として入社したとはいえ、金坂氏の業務は担当領域のファイナンスだけでなく、“スタートアップならでは”の泥臭い作業から始まった。

金坂マネーフォワードに入社してからの仕事は、「なんでも」と表現するのが正しいでしょう。メインのCFOとして資金調達の業務はもちろん、机の組み立てでも、必要なことは何でもしていました(笑)。

振り返ると、本当に大変だった。会社の銀行口座から毎月4,000万円ほど減っていき、「半年後には資金が尽きる」という状況が続いていましたからね。

金坂氏は「エキサイティングな日々でした」と笑うが、スタートアップでは“予想外の出来事”が日常茶飯事。ときに強烈な恐怖感と戦わなければならないこともある。事実、ファイナンスが完了して資金が払い込まれる前は、万が一ファイナンスがうまくいかなければ給料を支払えなくなってしまう恐怖感を持っていたそうだ。

そうした“死線”を幾度も潜り抜け、会社が軌道に乗ったところで、待ちに待った瞬間が訪れる──上場承認の知らせだ。

金坂マネーフォワードで過ごしてきた日々は、「一生に一度、遭遇できるかどうか」の経験だったと思っています。

密度が濃い時間のなかで、もっとも印象的だったのは「上場承認の瞬間」です。東証からの連絡を、全取締役が会議室に集まって待ちわびていました。電話が来た瞬間は全員で歓喜しましたね。社員30名から200名までの成長を共にしてきたこともあり、忘れられない日となりました。

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会社の「フェーズ」を見よ。スタートアップで働く前に注視すべきポイント

イベントの終盤、話題は「スタートアップには、どんな人材が向いているのか」に切り替わった。タフな環境である一方、代え難い達成感を味わえるスタートアップ。大企業から転職した金坂氏だからこそ見えてきた、「適正な人材像」が語られた。

金坂スタートアップは、「没頭できるテーマ」を自発的に見つけ、人生の時間を全力投下したい人に向いているのではないでしょうか。また初期フェーズであればあるほど、与えられた役割に関係なく、あらゆる業務に対応しなければいけません。どんな仕事でも楽しめる“マゾ気質”の方が向いていると思います。

福利厚生や給与の面では、大企業に劣ることも往々にしてあります。ですが、短期的には劣る待遇を飲み込んでなお、一点突破で「こんな世の中に変えたい」「こんな社会をつくりたい」と思える人にとっては、またとないチャンスになり得るはずです。

まずは入社を希望するスタートアップ企業が解決しようとしている社会課題が、自分にとってしっくり来るものなのか、考えてみてください。

「マネーフォワードには、ユーザーとして自社サービスに愛を持って入社してくれる方も多くなりました」と金坂氏は補足する。没頭できるテーマを見つけられなかったとしても、組織に入る理由が明確であれば、スタートアップの門を叩くに値すると言うのだ。

ただ、どんな想いを抱くにせよ、「会社のフェーズは把握すべき」と金坂氏は強調する。

金坂シード期やアーリーステージなど、フェーズによって見える世界は異なります。創業初期のメンバーは、ゼロから社内カルチャーを醸成する過程を味わえ、対応すべき業務の幅も広い。数十人規模なのか数百人規模なのか、組織形態、さらには市場環境にも応じて、経験できる業務内容は全く異なるのではないでしょうか。

「没頭できるテーマ」を持った上で、会社のフェーズが自分の求める環境と適合するかどうかを調べておくと、ミスマッチが起きにくいでしょう。

大企業からスタートアップへ転職するにあたり、とりわけ個人と企業のマッチングを見極めることが重要だと、金坂氏は結論づけていく。セッションでは最後に、スタートアップが求める人物像の一例として、マネーフォワードが求める要件について語られた。

金坂弊社では「Speed」「Pride」「Teamwork」「Respect」「Fun」の5つを目指すCultureとして定義しています。チームワーク(Teamwork)や社内メンバーへのリスペクト(Respect)が大事な一方、プロフェッショナルとしてプライド(Pride)とスピード感(Speed)を持って仕事を遂行しなければいけない。そして楽しみながら(Fun)できるとベストだと思っています。これは新卒採用でも中途採用でも、共通して求めている社内の規範です。

なにより大事なのは、会社と個人の想いが重なることです。自分が共感できる企業が現れた際には、ぜひ足を踏み入れて欲しいと思いますね。

スタートアップのように、十分な組織体制が整っていない未開の地に足を踏み入れることは、誰にとっても怖いに違いない。しかし、金坂氏や坂氏が活きいきと過去の回想を明かしてくれたように、予定調和が起きないからこそ、レールに乗っているだけではたどり着けない稀有な体験を得られる機会となるのだろう。

本イベントで語られたように、「何か信じられるもの」が見つかった人は、スタートアップに挑戦してみるのも一つの手かもしれない。誰にとっても、一度しかない人生だ。

こちらの記事は2019年07月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

川尻 疾風

ライター・編集者(モメンタム・ホース所属)。在学中に、メルマガ・生放送配信やプロデュース・マネジメント支援を経験。オウンドメディアやSNS運用などに携わったのち、現職へ。起業家やクリエイターといった同世代の才能と伴走する存在を目指す。

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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