「セオリー通りのSaaS」では、社会変革など生み出せない──プレイド倉橋×仁科が描く、未来創造のためのスタートアップ進化論

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インタビュイー
倉橋 健太

大学を卒業後、楽天株式会社に新卒入社。楽天市場におけるWebディレクション、マーケティング、モバイル戦略、広告戦略等、多岐にわたる領域を担当し、楽天市場事業の成長に貢献。 2011年にプレイドを創業。2015年3月にCXプラットフォーム「KARTE」をリリース。

仁科 奏

早稲田大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。NTTドコモにて営業企画職、Salesforceにて営業職とカスタマーサクセス職を経験後、プレイドに参画し、営業をリードしながら事業成長に貢献。その後PR Tableに執行役員CFOで入社し、CPOなどを兼務しながら事業成長を実現。再度プレイドに復帰し、事業創造・事業共創を行うSTUDIO ZERO事業を立ち上げ、管掌している。

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プレイドといえば、CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE(カルテ)』。ウェブサイト、アプリの訪問者の行動をリアルタイムに解析し、あらゆる接点で個々のユーザーに最適なコミュニケーションを可能にするこのプロダクトで急成長したプレイドは、2020年12月に上場も果たした後も、その高度な提供価値のプロダクト群により着実な成長を続けている。

そんなプレイドが遂に、本命となる事業を始めた。いや、『KARTE』ももちろん本命であったわけなのだが、FastGrowから見れば、これからの展開こそがプレイド倉橋氏の思い描いてきた「理想の社会づくり」を加速させるはず。そう感じずにいられない。

2021年に立ち上げた『STUDIO ZERO』に関する思いを聞けば、あなたもきっとそう感じる。日本を代表する大企業あるいは行政・公的機関をパートナーとして、社会と産業のあらゆる変革を実現していくのだ。

ただ、うがった見方をすれば、「プロダクト開発で得た知見を活かしたコンサルティング事業を進めるだけ」に思えるかもしれない。だが、冷静に考えてみてほしい。あの倉橋氏の描くビジョンが、そんな単純なものであるはずはないだろう。

FastGrowは、これから全3回にわたって、プレイドの新戦略を紐解いていく。この第1回では代表取締役CEOである倉橋氏と、『STUDIO ZERO』代表の仁科氏にインタビューを実施。SaaS企業というイメージの強いプレイドが、「産業変革創発集団」とでも言えそうな新たなチャレンジを始めた背景や、『STUDIO ZERO』の独自の提供価値についてとことん深掘りしていく。

  • TEXT BY HANAKO IKEDA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「企業よ、前を向け!」と吠える倉橋氏が挑むは、
皆が本音で取り組むための社会変革構想

仁科『KARTE』は、さまざまな経営課題を解決できる、唯一無二の強いプロダクトだと思います、手前味噌ですが。僕は一度、プレイドを離れてスタートアップのCFOをしていました、その頃にもユーザーとして、そう思いました。

でも、プレイドとして本当にやっていきたい「社会変革」を目指す中においては、プロダクトの力だけでは足りない。少なくとも、僕とかクラケン(倉橋氏)の存命中には間に合わないですよね。

倉橋「存命中」って(笑)。

でもまあ、確かにそう。「プロダクト」だからできる部分と、「プロダクトだけ」ではできないことがあるわけですよね。

倉橋氏と仁科氏が等しく抱いている、「なぜ多くの企業が、もっと“前”に進もうとしないのだろうか?」という疑問。これが、プレイドが解消しようとしている大きな社会課題だ。

目先の売上や利益、そのために取り組む「顕在化している業務課題」や「アナログな業務の代替」という価値を生むプロダクト。こうしたものについて、二人は「後ろにある課題を解いているだけ」と一刀両断する。

倉橋企業がもっと“前(=未来)”を見て、“前”(=未来)に進む。そのための課題解決に取り組むことができなければ、社会変革なんてできません。

顕在化していない課題はシミュレーションしきれないし、不確定要素も多くて、どこまでを目標にして初期設定すればいいかもわからなければ、本当にそれがビジネスになるのかどうかもわからない。端的に言えば「取り組むのが大変、かつ、プライオリティが上がりづらい」んです。だから、事業やプロダクトとして取り組む人は少なかった。

『KARTE』を、守備範囲の広い高度なプロダクトに組み上げてきた理由はまさにここにあります。「解きやすい課題」や「見えやすい課題」を解くプロダクトではなく、「事業の未来を変えるための大小さまざまな課題」を同時に解くプロダクトにしていきたかったんです。

僕らも昔、言われましたよ。「なんでもできるプロダクトは、なんにもできないプロダクトなんだよ!」って(苦笑)。そう言われても、自分たちを信じてここまでやりきって、ようやく今、ほかにないプロダクトになってきました。

上場を経て、プロダクトをさらなる成長軌道に乗せている倉橋氏。だが、このように語る中にも、満足感は一切示さない。それもそのはず。冒頭で記載した通り、ここからが“本番”なのであり、「プロダクトだけ」を超えて大きな社会的価値を発揮するフェーズなのだから。

倉橋この先の時間軸を考えれば、今のプレイドの事業展開では、ぜんぜん物足りないとも言えるんですよね、正直。

倉橋氏と言えばプレイド。プレイドと言えば『KARTE』。そんなイメージを持つ読者がきっと多いはず。だがこのインタビューで、FastGrowの取材陣は全く新たな感覚を覚えた。それは、「プレイドのミッション達成のために、『KARTE』を大きく超えるインパクトを発揮しうるのが、『STUDIO ZERO』である」ということだ。

倉橋我々の事業は最近までずっと、プロダクトに振り切ってきました。ようやく、そのプロダクトに絶対的な自信を持てる状態になったので、ミッションに対して逆方向からもアプローチするような事業を始めたというわけです。つまり、目指すミッションは当然のことながら変わっておらず、いわば“反対側”からも山を登り始めたんです。

この新しい事業は、『KARTE』などによって培われてきたデータ基盤とノウハウをフル活用している。そのためか、立ち上げから常に売上の成長が続くなかで「提案らしい提案を、ほとんどしたことがない(仁科氏)」というのだ。しかも相手は、大きな決裁権を持つであろう名だたる大企業の経営者・部長クラスであるにもかかわらず。

なぜそんな新規事業を、プレイドが進めているのか。そして、プレイドが目指すミッションの実現を、いかにして加速させていくのか。

そのキーとして、この『STUDIO ZERO』にまつわるスタートアップ成長論を、2人から深く聞いていく。

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顕在化していない課題こそ、変革の鍵。
『STUDIO ZERO』は、産業の変化に正面から向き合う

CXプラットフォーム『KARTE』は、サイトやアプリに来訪しているユーザーをリアルタイムで解析・可視化し、顧客理解からパーソナライズまでを一気通貫で実装できるSaaSプロダクトとして、高い知名度を誇っている。プレイドは、2015年にリリースした『KARTE』とそこに集まる「*1st Party Customer Data」を中心に、様々なプロダクトやソリューション、プロフェッショナルサービスを展開している。

そんなプレイドが、上場の翌年に立ち上げた『STUDIO ZERO』。企業や行政、あるいは投資先企業などと共同で、さまざまな事業を創出していく。FastGrowなりに解釈するなら、「産業変革創発集団」とでも言えようか。

*……1st Party Customer Data:企業が取得した顧客情報(氏名・年齢・メールアドレス・購買履歴・行動情報など

倉橋10年単位の比較的長期の時間軸で事業創出に取り組むべく、人材や資金、プレイドが培ってきたテクノロジーを積極的に投下していくのが『STUDIO ZERO』です。

STUDIO ZEROの事業展開についての概念図(提供:株式会社プレイド)

倉橋私たちのようなテックカンパニー/プロダクトカンパニーは、経験や人脈がモノを言うセールスカンパニーとは異なり、それらの制約なしにチャレンジできる環境となっていることが強みのはずです。これまでの『KARTE』を中心とした事業展開でも、多くの若者に成長機会を提供してきた自負があります。

この『STUDIO ZERO』では、それをさらに加速させていきたい。と言っても、「産業の変化に正面から向き合う」という仕事でもあるので、敷居が高いように思われるかもしれませんね。だからこそ逆に、年齢や経験に囚われず、大きな変化に真正面から取り組める環境をここでは常に用意していきたいんです。それでこそ、テックカンパニーであり、スタートアップだと思います。

倉橋氏が繰り返し強調するのは、「社会の変化に正面から向き合うビジネスが、この世の中にほとんどない」ということ。

倉橋「生産性を管理してボトムラインを改善する」のも当然重要なのですが、それよりも「トップラインを向上させていくために、事業の可能性を引き出す」ようなプロダクトとサービスを展開したい。我々プレイドはずっと、「売上や利益の向上」という価値貢献を見据えて取り組んできたんです。その先鋒となるのが、『STUDIO ZERO』です。

テックプロダクトの多くが、提供価値としてコスト改善・業務効率化を主としたものばかりになってしまっていると思いませんか?繰り返しにはなりますが、それも大事で、『KARTE』にはその機能も含まれています。

ですが本来、企業は、売上や利益を増やす成長を目指すことこそが重要なはずですよね?それをやろうとするプロダクトが少ないことを、ずっと疑問に思ってきました。

曰く、企業が解くべき課題は顕在/潜在に分けられる。顕在化しているのが、コスト改善や業務効率化の対象となるような課題だ。ここに取り組むためのプロダクトが、近年多く生まれている。

一方で潜在的な課題は、倉橋氏の言葉を借りれば「事業や人の可能性を発見し育むために、取り組むべきもの」である。個社性が強く、的確に捉えにくい。経営者であればなんとなく感じてはいるものの、ソリューションを一律に定義することができないため、取り組みが進みにくい。

倉橋では、なぜ「トップラインを向上させていくために、事業の可能性を引き出す」ようなプロダクトやサービスが世に生まれにくいのか?経営者の視点になって考えてみましょう。

それは、課題が顕在化していないのにも関わらず、「社会がそれを心理的に受容してくれるのか?」「もしかしたら新たな法整備が必要になるものなのか?」など、全てが不明瞭なためです。そんな中、投下した人員を簡単にリストラすることもできませんので、どこまでを目標にして初期設計すればいいのかわからず......と言った具合に、進めにくい理由ばかりが見えてきてしまうわけですね。一言でまとめると「手離れが悪い」とも表現できます。

だから皆わかりやすいほう、つまり「顕在化している課題」を選んでしまうんです。

でも、先ほども申し上げた通り、トップラインを引き上げ、事業の可能性を引き出しながら、社会や産業に大きな変化を起こそうと思うのなら、足元のとっかかりやすい顕在化した課題に向き合っているだけではダメなんです。自分たちの“後ろ”にある課題ではなく、“前”(=未来)に置かれている課題にこそ、取り組んでいけるようになりたいですよね。

でも、「以前から抱えている課題」に対処するだけで手一杯になっている企業さんも多い。『KARTE』を使いこなしてもらえればうまくいく部分もありますが、そうして外から支援するだけでは変革のスピードがなかなか高まりません。そこで、『STUDIO ZERO』として、中に入り込んで、一緒になって議論して、変化を捉えて、「企業としてどこを目指すのか」「どうやって目標に向かって前進するのか」といったコーポレートイシューにかかわる根本的な問いを基にした取り組みを進めていくんです。

確かに、世の中にある数多のサービスは、SaaSプロダクトを筆頭に「生産性を管理してボトムラインを改善する」というわかりやすい課題を解消するものがほとんどだ。いや、「わかりやすいプロダクトこそが売れて、広がっていく」と表現したほうが正確かもしれない。

しかし、まだ「負(不)」にすらなっていない、顕在化していない課題にこそ、未来を変革する鍵がある。それを、この2人は見据えている。

仁科「そもそも、課題だと思っていることは本当に課題なのか?」「課題をさらに抽象化するとこういったような“業界横断的”な課題になるんじゃない?」」「ならば本当の課題はこちらではないか?」というかたちで、課題を再設定し、軸をつくり直す。そんなケースが非常に多いんです。

このように、クライアント企業の中に入り込んで、一緒になって議論をし、課題や変化を捉えて、未来に向かってどう進んでいくのか一緒に考え、形にしていきます。プレイドだからこそできる、そう感じています。

企業が抱える本質的な課題、いわゆる「コーポレートイシュー」と呼ばれるものに対して、クライアントと一緒になって取り組んでいくのが、そもそも倉橋氏がプレイドでやりたかったことでもあり、『STUDIO ZERO』が得意とするところなのだ。

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経営層がマインドチェンジしていないから、
今もDXできない日本企業

倉橋氏・仁科氏の描く「未来の産業変革」を、異なる角度からも見てみよう。2人が日本社会の課題としてさらに指摘したのが、デジタル化について。「DXの崖」「イノベーションのジレンマ」という2つのキーワードがある。

仁科例えば、経産省ではDXを「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3段階で定義しています。

「デジタイゼーション」は、日常業務(作業)をツールを使ってデジタル化するもの。

「デジタライゼーション」は、そのツールを実際に業務オペレーションに組み込んでいき、業務を効率化するもの。コンサルティングファームやSIer、そしてSaaS企業のみなさんが取り組んでいることが多い部分です。

この二つが、いわば「生産性を管理してボトムラインを改善する」ものです。

実は日本企業は、昔からこの2つは強いし、徐々にできつつあると思うんです。デジタル人材も、事業会社より支援会社に多く存在していますしね。

一方で、「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる領域においては、よく指摘されるように、なかなか進んでいないわけです。より具体的に指摘するなら、「カルチャーを積み重ねて、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革し、売上や利益のトップラインを引き上げること」が今の社会では必要なのですが、できている企業はほとんどいません。

この「デジタライゼーション」と「デジタルトランスフォーメーション」の間にあるのが「DXの崖」です。

『KARTE』を活用し、企業の経営層がしっかり取り組めば、この崖も乗り越えられるはず。だが、実際にはなかなか進まない。それを仁科氏は、プレイドを離れていた期間に思い知ったという。

仁科PR Tableで執行役員CFOを務めていた頃、『KARTE』を導入していました。この時、プロダクトの価値は強く感じていたのですが、日々の業務の中で実際に触れる時間は全然なかったんです。もっと経営に直接活用すべきだと感じていたのですが、なかなかそうはいかない。

そんな中で感じたのが、「『KARTE』はポテンシャルがあるのに、実際には産業変革につながるような大きなコーポレートイシューを解き切れていない」ということです。当事者として、このペインを強く感じました。

倉橋その時はありがとうございました(笑)、という話はさておき……。『KARTE』を使って解くことのできるコーポレートイシューや産業自体のイシューはたくさんあるはずなのですが、経営層が自らそのために動くのは簡単なことじゃないんですよね。

だから、『STUDIO ZERO』のようなコンサルティング的・ソリューション的な支援の存在が活きてくる。

仁科今の社会では、業務のデジタル化じゃなく、新規事業と基幹事業のバランスをどう見極めて調整していくのか、それによって産業自体にパラダイムシフトを起こすような展開をどのように推進するのかとか、そういう「ビジネスモデルや業界課題」の根本のイシューを考えることが不可欠です。

なのに多くの企業において、そうした意識が経営陣には欠如していて、優先度が高まらない。それもそのはずで、足元の業務のデジタル化に多くのプレイヤーが集中しているので、それに経営陣の思考が引っ張られてしまっているんです。

でも『STUDIO ZERO』が企業の中に入り込んで、共に産業や企業のあるべき姿を描き、『KARTE』で顧客体験(CX)をしっかり可視化していけば、自ずとこの「DXの崖」を乗り越えるための施策が前に進み出すはずなんです。

そうなれば、より多くの企業が、そのビジネスを的確に変革・進化させていける。

さらに、もうひとつのキーワードである「イノベーションのジレンマ」は、プレイドがより強い当事者意識を持って取り組んでいる課題だ。「企業が持つ既存のアセットに、半ば無意識的に縛られ、産業変革につながるイノベーションのための意思決定をなかなか進められない」と2人は指摘する。

仁科既存のアセットに基づいた事業展開や意思決定を、企業はしてしまうものです。

そこで私たちは、「顕在化していない課題」を、雑談のようなコミュニケーションの中から探り、「やったほうがいいですよね?」「やらなくて大丈夫ですか?」といったかたちで、実際の取り組みにつなげるようにしています。

こう問われると、経営層や事業部長のみなさんは、「そうなんだよ、本当はやらないといけなくて……どうすればできるだろうか!?」と考え始めます。そこで的確な支援ができれば、確実に変わります。

倉橋氏も「本当にその通り」と語気を強める。

倉橋多くの企業が本来ありたい姿、理想、目的を既に内在的に有しているんです。我々の役目は企業のありたい姿に正面から向き合えるようにすること。

当然それは企業のコミットなしに大きな変化は成し得ないものですので、我々はそこを“共創”する。その結果、企業内の人の価値が最大化され、魅力的な仕事が生まれ、長期的な競争力あるパフォーマンスが生まれるんです。

「日本の大企業は、破壊的イノベーションを起こせない」というイメージを持つ読者も少なくないだろう。倉橋氏も仁科氏も多かれ少なかれ、そうした想いを抱かざるを得ない場面に遭遇してきたのだという。

だが一方で、「経営者の多くが、実は未来を見据えてはいるのだ。ただ、さまざまな理由からうまく前に踏み出せないだけなのだ」とも、2人は語る。そこで背中を押すような支援に対する隠れたニーズが、実は根強くある。

仁科クラケンが話した通り、イノベーションのジレンマを企業と共に乗り越えようとするのが、我々の提供価値の一つです。

逆に言えば、相談されたものをそのまま解いて返そうとすることはほとんどありません。そのほうが、目先の売上や利益はつくりやすいかもしれませんが、やりたいのはそういうことじゃないんです。

「本来こういう潮流があって今この状況になっているので、ご相談いただいたのとは別の、こっちの課題の方が優先度が高いですよね。これを解きませんか?」という風に、そもそも何が課題なのかの根本から問い直すことが非常に多いです。

先ほども言及された「提案活動をあまりしない」という動き方も、こうした社会課題意識に基づいたものであるわけだ。

一見、「経営層を支援する事業会社」のようでもあるから、代理店やコンサルティングファームのような動き方をイメージしてしまう。だが、やはり「支援事業」というよりも「産業変革創発集団」といった姿のほうが、しっくり来る。クライアントと支援会社という枠組みを超えて、対等なパートナーとして共に本質的な課題に向き合う。

コンサルティングファームやアドバイザーとは、似て非なる座組みでの共創体制を、探っているのである。

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倉橋氏の脳内にずっとあり、
必然だった『STUDIO ZERO』構想

ところで、すでに少し触れてもいるが、この事業展開のユニークなところを、敢えて誤解を恐れずに表現するなら、「儲かりにくそうで、スケールしにくそうな事業を始めた」とみえることではないだろうか。

『KARTE』という強いプロダクトがあり、2020年には上場も達成。M&Aや組織・オペレーション改革によって、プロダクトカンパニーとしての高成長を着実に実現しようとしている。

そうした動きに、投資を集中させた方が、企業としての成長は盤石になるのではないか?そう見る投資家も中にはいるだろう。しかも『STUDIO ZERO』の事業領域は、戦略コンサルティングファームのような強力な競合が存在しそうな場所でもある。さらに、目先の売り上げや利益は重視しないともいう。

これまでとはまったく切り口の異なるもののように見える『STUDIO ZERO』という事業。そこに駆ける想いを今一度、深く聞いていきたい。

仁科プレイドのコアコンピタンスのひとつは高い技術力です。その開発力でリアルタイム解析や高い汎用性と柔軟性を実現するKARTEで、連続的な成長はできてきています。

ただ、「データによって人の価値を最大化する」という我々のミッションを、本当に『KARTE』の連続成長だけでこれから達成していけるのかと問われれば、それは難しいと答えざるを得ません。

倉橋というよりそもそも、『KARTE』だけですべてを達成するつもりはありませんでした。『STUDIO ZERO』のような事業がいずれ必要になると、ずっと考えてきたんです。

プロダクトカンパニーとして軌道に乗ったが故に、プロダクトだけでミッションを実現していくことの限界が見えたというのも、『STUDIO ZERO』を立ち上げた理由のひとつだ。

倉橋『KARTE』というプロダクトの場合、「カスタマーデータ」という経営的に重要性の高いデータが取れるわけです。でも、プロダクトはたいていの場合、「事業現場の施策を、より良いものにするためのもの」に過ぎません。価値あるデータがとれているのに、それが会社全体の経営戦略に活用されるかたちにはなりにくい。仁科がPR Table時代にも感じたこの構造に、ジレンマを抱えていました。

でも、良質なデータをもとに、企業内のあらゆる活動が、カスタマーデータを活用できていて、共通の目線や目的を持った状態にある。それこそが我々の目指すところです。

だから、『STUDIO ZERO』という新しいアプローチが絶対に必要だったんです。

ここで重要なのは、「『KARTE』というプロダクトを、戦略的に先に始めた」ということ。プロダクトやテクノロジー、データというのは、将来にわたって常に不可欠な要素です。これはアイデンティティみたいなもので、後から強みに加えようとしても無理。

だから我々は最初はプロダクトに振り切って事業をやってきて、組織づくりやブランディングをプロダクトカンパニーとして進めてきました。そうしてようやく絶対的な自信を持てる状態になったからこそ、ミッションに対して逆方向からもアプローチできるようになったんです。

プロダクトから先に取り組んできたことは、組織の強さにも繋がっていると倉橋氏は語る。

倉橋コンサルティング型の事業から始めて、途中からプロダクトをつくり始めるというパターンもありますが、うまく組織を構築できたという例はほとんど聞かない。なぜか。それは、不可逆性が高いからです。

先にコンサルティング事業で売上が立ってしまうと、後からプロダクト開発に投資して赤字を掘るという戦い方は、社内からどうしても理解されにくいですよね。

汎用性が高くて、人の可能性を引き出して、データの処理が得意で……と、『KARTE』はすごく高度なプロダクトなんですが、その難しい開発が当たり前のものだと考えられている環境になっていないと、強烈なマインドや個性を持つエンジニアは来てくれないし、組織も強くならない。

ひとつのプロダクトで汎用性・高度性・複雑性を全部吸収してやろうとしてきたからこそ、今の面白いチームができたと私は思っています。もちろん、局面局面では、複雑なものを簡単に落とし込む努力もしますが、複雑なものを複雑なままうまく活用するというのも、世の中のためには重要だなと思っていて。それはいま、狙い通りに働いていますね。

SaaSプロダクトのセオリーでは、課題を単純化し、ワンイシュー的にした方がよいと言われる。しかし、『KARTE』はあえて「複雑な課題を解くことに特化した、高度なプロダクト」であることにこだわっているのだ。

そんな中で始まった『STUDIO ZERO』は、立ち上げからまだ2年足らずではあるが「本質的でない、目先の売上にしかならない提案はしない」と決めているという。

仁科「今あるこのアセットを組み合わせたら、楽に儲けられるんじゃないか?」というアプローチは、『STUDIO ZERO』としてはやりません。一時のトレンドに乗っかってしまって、結局事業会社も支援会社も本当に取り組むべきテーマがわからなくなってしまうことって、実はよくある。『STUDIO ZERO』がやりたいのは、コーポレートイシューや業界全体のイシューのような大きなレベルの話からコミュニケーションを始めて、クライアント企業と一緒になって事業をつくっていくことですから。

ただし、このような大きなテーマを真正面に論じながらも、一方できちんと持続可能な事業にしていくというバランスもとって行かなければならないだろう。当然、「そこには難しさがある」と仁科氏は続ける。

仁科最終的に、『STUDIO ZERO』が実現したい「未来の産業変革」を実現するためには2つのステップがあると思っています。

まず一つ目が、「間接的に、産業変革を加速させる」というもの。やはり、いきなり「産業変革につながるような大きなコーポレートイシューを解きましょう!」というのは難しい。どんな大手企業でも、その土壌がまだまだ培われていないケースが多いですからね。

まずはしっかりと企業が「顧客データ」を活用して、人々が本当に求めていることを理解し、トップラインを引き上げることができるような事業やサービスを生み出せるようにしていく。

『STUDIO ZERO』が特定の業界の大手企業の中に入り込んで、経営におけるOSを「顧客中心主義」にアップデートする。いわば、仲間集めをするような感覚ですね。直近3~5年という時間軸で取り組んでいきたいです。

そしてその先、二つ目がいよいよ「直接的に、産業改革を共創していく」です。

これは『STUDIO ZERO』が主体となって、上記で集めた仲間と一緒に新たな事業を作っていく。その結果が社会や産業全体に波及していくことを目指すんです。

この二つを両立するバランス感のあるプレイヤーは、そんなに多くないのかなという感覚はあります。

倉橋氏と仁科氏に、競合の出方が気にならないか?と尋ねても、「むしろ競合となるような会社が出てきてほしい」と繰り返していたのも印象深い。そう、このチームだけで取り組んでいても、社会や産業の変革スピードは高まらないと、本気で考えているのだ。とにかく、日本社会において同じ志の仲間が増えていかなければならない。ピュアにそう考え、取り組んでいる。

『STUDIO ZERO』として企業の本質的な課題に向き合い続けているからこそ、より多くの企業が目先の課題より未来へ向けた大きな課題に立ち向かう必要性を感じているのだろう。

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無敵に見えるコンサルにも、“落とし穴”がある?

とはいえ気になるのが、コンサルティングファームとのすみ分けや、根本的な違いについて、だ。「顧客の本質的な課題に向き合う」という言葉だけ取ってみれば、そう唱えるコンサルティングファームも多いのは事実。実際、『STUDIO ZERO』と他のコンサルティングファームはどう違うのか?意外にも、仁科氏はシンプルに答える。

仁科比較のポイントをどこに据えるのか次第ではありますが、一番の違いは、我々が最終的に目指すのが「クライアント企業を去る」であることでしょうか。

産業変革を創発していくための仕組みやマインド、スキルを提供し、植え付けるわけなので、そうしたものが全部クライアント企業で内製化できるようになれば当然、手を引きます。次の課題を解くため、動き回ります。

コンサルティングという業態の中には、「植え付ける」のではなく、スキルによる価値提供を続けるパターンもありますよね。そうした支援はおそらく、ずっと続けることを見据えているかもしれません。この点は、大きな違いと言えるでしょう。

最初から「去ること」を当然の前提として取り組んでいるというのは、ユニークな点だろう。

倉橋繰り返しになりますが、「クライアント企業が、本来どうあるべきなのか?」「業界として本来どうあるべきだと考えているのか?」という本質的な、大きな問いが出発点になっているので、「去る」というのは当たり前に目指すところですね。

これまでにさまざまな企業の経営者と話をする中でも感じたことですが、皆さんやはり「本当はこうありたい」とおっしゃるんです。そういう考えを胸に抱いているんです。我々のような支援側の人間よりも、当事者である事業会社の方のほうが、解像度高く課題を捉えている。

でも、どうやったらその課題を解消できるのかがわからない。そこに足りていないピースを、『KARTE』や『STUDIO ZERO』を持つプレイドなら持ち込める。そうありたいんです。

会社として・業界としての未来に、何の課題も感じていない企業さんはほとんどありません。皆さん何かしらの大きな問いを抱えている。でも、どうしても目先の売上やコストに集中せざるを得ない。だから本音と建前のズレがどんどん開いてきてしまう。

このように、僕は常に“本音ベース”で事業をやりたいと思っています。本音こそが未来や持続性をつくると信じているから、本音で向き合って、クライアント企業の変革を実現したい。

「そうは言っても、去るまでには相当時間はかかりますが」と仁科氏は笑う。それでも、クライアントと向き合い続けるほど、相手が変わっていくのが実感できるという。

仁科氏が、クライアントから「最近、自分たちの事業開発のイシューがわかってきたので、社内から相談をもらって自分で回答できるようになってきました」と言われたのが心から嬉しかったと語っていたのが印象深い。クライアント自身が顕在化した課題を解けるようになり、いよいよ本質的な問いに向き合うべき余白が生まれてきたのだ。そんなスタイルの支援ができる『STUDIO ZERO』だからこそ、顧客の本質的な課題が確実に前進するのだと思わされた。

サービスサイトに掲載されている、大企業との事例紹介

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まず、「1%のきっかけ」を創れ

コンサルティングファームとの違いについて確認したが、とはいえ現場では、その取り組み方で参考にしている部分もあるだろう。そう問うと、仁科氏が言及したのが、ある大手戦略ファーム経営者のOBの言葉だ。

仁科大学院で師事したその恩師から教わったんです。「プランニングだけでは事業は動かない。それはあくまでスタートのきっかけ、最初の1%であり、99%は事業会社自身が変革し続けて実行していくしかない。大手戦略コンサルティングファームでも、そのように考えている」と。

倉橋プレイドにいる戦略コンサルティングファーム出身者と話していても感じたことなんですが、コンサルタントが発揮する強みは、「外から来ているニュートラルな人である」ことでもあるのだと思います。企業の中の人はどうしてもそれぞれのポジションのバイアスが入ってしまいますが、コンサルタントが外から尋ねることで、中にいる人とは異なる情報が得られたり、異なる力学を生み出したりすることがあるようです。これは『STUDIO ZERO』でも同じことが言えますね。

でもその後、生産性を管理してボトムラインを改善するのか、それともトップライン向上の可能性を引き出して未来をつくるのか。後者で大きな強みを持つのが我々です。ここがすみ分けですね。あくまで、共存していく。

我々は上流のコンサルティングだけでなく、プロダクトで実行する環境まで一緒につくっていく。もちろん精緻なプランニングが必要な場面も多いですから、コンサルと正面から競合するというよりは共存するイメージの方が強いんです。

仁科実際に企業さんの中に入ってのプロジェクトの進め方としては、起業に近いかもしれません。ある程度のフィジビリティは、PoCのようなかたちを経てチェックしますが、まずは大義を掲げて、社内外から人を募って、チームをつくる。それができれば、まず新規の事業や施策としての方向性はOKです。

あとはマネタイズポイントや投資計画、マーケティング方針といった戦術面を検証し、規模を膨らませていきます。検証がうまくいったら次のフェーズへ進むという形で進めます。

戦略コンサルティングファームによる変革支援では、最初のプランニングに1年以上の時間をかけるケースもあるみたいです。それが間違っているとは言いませんが、『STUDIO ZERO』はスタートアップのような仮説検証のスピード感も重要視しているので、プランニングは1~2ヶ月ほどで仕上げ、検証の完了までは3~4ヶ月。5~7ヶ月目で検証結果を踏まえてディスカッションをして、大きな方向性を決めて新たに動き出そうというくらいのイメージですね。

倉橋 この“速さ”や、いい意味での“粗さ”が、価値になっているケースは少なくありません。大企業さんの支援だからといって、じっくりと丁寧にやればいいだけじゃないんでしょうね。

また、スピーディーなプロジェクトの進行に加えて、『KARTE』というプロダクトがあることも大きいと倉橋氏は語る。

倉橋『STUDIO ZERO』では『KARTE』の導入を前提にはしていません。ただ、やはり向かう先は一緒なので、ほとんどのケースで活用されていますよ。

CX、つまり顧客体験というのは、しっかりと顧客・エンドユーザーを可視化して、あるべき体験提供・価値提供ができるようにすること。自分たちの顧客をしっかりと理解して、そこに対してすごく効果的に働きかけられるプロダクト群だと。つまるところ『KARTE』というのは、顧客戦略の構築プラットフォームなんですね。

企業という大きな視点で見ると、顧客は経営の中心のひとつ。『KARTE』があれば、自分たちの提供価値と今の顧客がどんな関係性になっているのか、狙った通りになっているのか。ずれている場合はなぜずれているのかをフィードバックすることもできる。

KARTE プロダクトツアー

倉橋戦略も、顧客を軸に設計するものがかなりありますよね。マーケティングやカスタマーサポートといった対顧客の活動が実際うまくいったのか、その戦略が正しいものだったかどうか。これがフィードバックできないと、顧客が全く見えない中、最終的に売上だけで判断するようになってしまいます。

我々がやりたいのは、もっとしっかり顧客との関係性を認識して、企業活動という大きな枠組みで、PDCAがちゃんとまわるようにしていくこと。その上で、何を良しとして、どんな戦略でいくのかを、一緒に設計していきたいんです。

『KARTE』があることで、『STUDIO ZERO』の取り組みでもより本質的な問いに向き合いやすくなるのだ。一方で、プレイドグループとしては、『STUDIO ZERO』の活動を『KARTE』や他のプロジェクトづくりに活かすことは、絶対条件ではないという。

倉橋もちろんそういう取り組みもできると思いますが、それを目的にはしていません。組織を分けているのは、『KARTE』を始めとしたほかのプロダクトの取り組みが、『STUDIO ZERO』の制約にならないようにするためです。

とはいっても中長期的に見れば、プレイドとして『STUDIO ZERO』をやることで、『KARTE』の進化にも繋がるものがあるからやっているわけでもあります。現時点では、両者がすぐに混ざってしまうと、お互いの制約になってしまって良いトライにならないと考えているだけですね。それぞれまったく違う山の登り方をしているようなイメージです。

それぞれ独立して活動しているものの、『STUDIO ZERO』でクライアントとともにつくった戦略や理想像を実現しようとすると、自然と『KARTE』の導入に繋がることも多いのだという。あくまで顧客の本質的な問いを解決することが先にあり、その手段として『KARTE』という強いプロダクトを差し出せる立場にあることが、『STUDIO ZERO』のユニークさであり強みなのかもしれない。

そして、倉橋氏が何年も前から思い描いていた世界観であるということも、驚きを感じさせるポイントだ。思い付きで始めたコンサルティング事業などでは、まったくないのだ。ミッション実現のための長期的な戦略の実行が、まさに今、動いているのだ。

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華々しい経験より、
「クライアントの横に座って議論ができるかどうか」が重要

さまざまな方面から、プレイドと『STUDIO ZERO』について解剖してきたこの記事。最後にせっかくなので、これからの事業拡大方針に基づく、求める人材像も聞いてみよう。いったいどんなスキルや経験をもつ人物であれば、この組織で活躍できるのか、気になる読者もいるだろう。

大企業や行政の本質的な問いに向き合おうとすると、一定以上の経験年数も必要に思えるが、冒頭で触れたように、倉橋氏の思想は「若くてもチャレンジの権利があるのがテックカンパニー」というものである。

ここでも強調されるのは「年齢は関係ない」ということ。そして、それよりも重要な、顧客と向き合う姿勢について語られた。

倉橋先ほど「クライアントの内側に入って」と言いましたが、内側に入るというのはただ仲良くなるとは全く違いますよね。相手の企業文化を理解しようと努め、一方でハッキリと指摘をし、提案していく。議論を重ねて、顧客に信頼していただいて初めて「一緒に何かしよう」となるので、そこに至るまでの努力というか、胆力は必要だと思います。

イメージとしては、「横並びに座って話す」というか。

仁科よくある商談のように、テーブルを挟んで話すのとは違うんですよね。横並びで座って、同じ方向を向いて話さないといけない。

倉橋コンサルティング会社出身のメンバーに話を聞いてみても、似たことを言っていました。やっぱり大きなことをやるために必要なのはそういう部分なのかなと感じます。スキルや能力的なものも当然必要ではあるんですが。

ここでも二人の軽妙な掛け合いが始まり、雰囲気の良さを感じさせる。

倉橋 『STUDIO ZERO』の取り組みの面白さは、企業や行政として本当にあるべき活動にご一緒できることや、ビジョンに忠実に動くことができること。社会の「こうあるべき」に正直に向き合い続けられるんです。

恐らく、既存のコンサルティング業界で活躍している方ほど、これをやっていて本当に社会が変わるのかとか、これは本質なのかと迷う時もあると思います。でも、我々はプロダクトやビジョンを中心に本気で産業を変えようとしている。ここを魅力に感じて入ってきてくれるメンバーは多いです。

仁科例えば、現在進んでいるプロジェクトのテーマでいうと、数万名規模の会社のCHROの方と「人的資本経営を表面的に取り入れるだけなら簡単だが、中長期的な企業変革のためにはどのように取り組むべきか?」という課題について議論しています。

このように我々が日々対峙するのは誰もが名前を聞いたことのあるような大企業の経営陣や、時には市長さんなども。そんな方々とできるだけ対等にお話ができるよう、普段から情報収集を欠かさず、経営に関する事項についての施策を深めています。対話の機会をいただける際には、入念に準備を行い、さまざまな仮説を練り上げたうえで臨みます。そういった状況をしっかりつくったうえで臨み、時にはストレートに「なんで今までこれをやってこなかったんですか?」と意図的に投げかけることで、「いろいろと事情があって……」と素直に答えていただけたりもする。

経営陣には、「左脳では解けないテーマ」が山積しています。これをわかった上で会話することが大事ですね。やってはいけないことのラインは理解した上で、どんな相手にも正面から切り込んでいく姿勢が必要です。

実際、30歳くらいの若手メンバーを育成していると、意外とみんな吸収が早い。こんな時はこう言うといいとか指導すると、次の日にはもう言われたことを試してみていて、50代の役員陣とも対等に話せるようになっていきますよ。

さあ、いつものようにだいぶ長くなってしまったので、ここで一度、筆を置こう。最後に言及された「急速な成長」という部分、2回目以降の連載記事で詳しく聞いてみたいところだ。

唯一無二のSaaSプロダクトを展開し、上場も経て、大きな事業成長を続けてきた倉橋氏。利益創出拡大や、それによる株主還元、そして企業価値の継続的な向上といったさまざまなイシューを抱える中でのこのチャレンジには、やはり目を見張るべき部分が多くある。事業としての実現・成長難度があまりにも高そうで、かつ、目先の売り上げや利益を重視した意思決定もしないというこだわり。

経営者のこうした姿勢が、これまでにない企業や事業を、そしてより良い社会をかたちづくっていくのだろう。仁科氏とのタッグで、プレイドの新章がどのように広がっていくのか、注目してほしい。

次回の記事では、仁科氏に単独でインタビューを行い、事業現場のユニークさについて根掘り葉掘り聞いていく。『STUDIO ZERO』がもつ4つのプログラムや、産業変革創発に対するスタンスについてさらに解き明かしていく。企業や社会の本質的な変革や事業創造に興味がある読者には、ぜひ次回も注目いただければ幸いだ。

こちらの記事は2023年06月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

池田 華子

写真

藤田 慎一郎

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