大手企業も、「ワクワク」があれば変えられる━ベンチャーから来た30歳の若手が、大手企業を“内側”から変革し、わずか一年で受注数を数倍に。プレイドの新事業『STUDIO ZERO』の全容に切り込む

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インタビュイー
仁科 奏

早稲田大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。NTTドコモにて営業企画職、Salesforceにて営業職とカスタマーサクセス職を経験後、プレイドに参画し、営業をリードしながら事業成長に貢献。その後PR Tableに執行役員CFOで入社し、CPOなどを兼務しながら事業成長を実現。再度プレイドに復帰し、事業創造・事業共創を行うSTUDIO ZERO事業を立ち上げ、管掌している。

石井 晃樹

リクルートスタッフィングにて、大手金融機関への人材紹介、及びスタッフの就業戦力化支援を担当。後にサイバーエージェントで広告運用、プロモーション企画、実行、チームマネジメントを一貫して担当。プレイドでは金融機関のクライアントを中心にKARTEを通したCX戦略の提案、伴走に従事。現在は、STUDIO ZEROで事業開発・共創を推進中。

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若干30歳ながら、『STUDIO ZERO』の立ち上げ期から第一線で活躍してきた創業メンバーの一人である石井氏。スタートアップのCXOクラスや事業会社の役員候補、戦略コンサルの出身者が多い『STUDIO ZERO』において、この若さで代表の仁科氏に「エース」と言わしめる実力者だ。

昨年からは大手保険会社に単身出向し、『STUDIO ZERO』が目指す「顧客体験/CX経営」を体現する事例の先駆者でもある。なんと、長年多くの支援会社が挑戦しながらも実現できなかった「保険サービスのDX」という課題を1年でクリアし、受注数数倍という圧倒的な成果を叩き出したのだ。

しかし、同氏の功績は「紙ベースの業務をデジタル化した結果、営業効率が良くなった」という単純な話ではない。大企業の内側に単身乗り込み、周囲のベテラン社員を巻き込みながら、プロジェクトを通して組織のあり方すら大きく変革してしまったことに大きな価値があるのだ。業務のデジタル化や受注数アップは、あくまでその結果のひとつに過ぎない。

プレイドの新戦略である『STUDIO ZERO』について紐解いていく全3回のインタビューも、いよいよ最終回。今回は、第2弾でインタビューした『STUDIO ZERO』代表の仁科 奏氏と、『STUDIO ZERO』事業本部でCX Directorを務める石井 晃樹氏にインタビューを行う。

石井氏の挑戦のスケール、その姿勢、マインドは、同世代のビジネスパーソンの視野を一段引き上げること間違いなし。ぜひ、最後まで注目してほしい。

  • TEXT BY HANAKO IKEDA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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“出向”として大手企業の内部に深く入り込む。
紙ベースのサービスをデジタル化し、受注数の大幅な改善を実現を実現

仁科石井がすごいなと思うのは、過去数十年実現できなかったことに対して新しい知見を全部盛り込んでブレイクスルーを起こしたことなんです。それができない人、会社はかなり多い。言うのは易し行うは難しで、プランニングまではできても実行ができないケースが世の中には溢れています。

でも彼は実行して、受注率、売り上げ増という成果を残すにまで至っているので、そこには天と地ぐらいの違いがある。貪欲に学びながら、出向先の営業現場のメンバーを巻き込んでプロジェクトを進めていく力があったからこそ実現できたことだと思います。

『STUDIO ZERO』の中でどんな動きをしているのか……と気になった読者がいるとしたら、いい意味で、その期待を裏切ることができるだろう。なにせ、この石井氏は大手保険会社の法人営業チームで週2〜3日勤務するという“出向”をしているからだ。

そう、これこそ、石井氏が『STUDIO ZERO』の象徴的な取り組みとして実際に担っていることなのである。

石井『STUDIO ZERO』には4つの事業部がありますが、私は今のところPLAID Unison、PLAID Accel、PLAID Chimeに関わっています。

中でも印象的なのは、PLAID Unisonとして大手保険会社に出向したことですね。団体保険を担当する営業組織で、保険収入をどれだけ伸ばせるかを組織のミッションとしています。

そこでの自分のミッションは、保険の申し込みのデジタル化。今までずっと紙の書類ベースで行われていたものをシステム化して、WEBから申し込みができるようにするというプロジェクトです。

「“WEB化”であれば、既存のITコンサルティングファームの独壇場ではないか」と疑問に感じた読者もいるだろう。しかし、『STUDIO ZERO』のユニークネスは、そのプロセスを企業の内部に "いちメンバーとして”深く入り込むことにある。

石井従来の、コンサルティングビジネスだと、コンサルタントとクライアントのIT部門が主導してデジタル化を推し進めていくケースが多いと思います。

一方、『STUDIO ZERO』では、実際に一番顧客に近い“営業部のメンバーの1人”としてシステムを作り上げたんです。

また、システムを“作る”で終わりではなく、その先の“成果”までセットで一緒に責任を背負わせてもらったところが『STUDIO ZERO』らしさなのかなと思ってます。

営業部の一員として顧客の声を聞きながら作り上げたことで、100%完璧ではないですが現場のオペレーションやCXを意識した設計にできたのではないかと思ってます。

仁科プロジェクトの結果として、受注数が昨対で数倍になったよね。クライアント側の期待以上の成果だったこともあり、今では先方のいろんな部署の部長・役員から、石井に直接相談が来るんですよ。

石井元々WEBからの申し込み導線はまったく無かったところに申し込みの手段を増やした形なので、受注数へのインパクトもそれだけ大きかったですね。

プロジェクトの開始時点では「何月に保険のWEB申し込みサイトをローンチさせる」というゴールだけ決まっていたので、そこから逆算して、何が必要かを組み立て、周りを巻き込みながら設計して開発して…みたいなところを全部やらせてもらいました。

仁科ことの始まりは、ビジネスパートナーである大手保険会社の部長の方々とリモートでお話ししていた際に、「『STUDIO ZERO』のメンバーが実際に我々の組織の中に入ってもらった上で、一緒に改革を起こしていくのは面白いのではないか」という話が挙がりまして。

契約書類や、リーガルチェック等にある程度の期間はかかることがわかったので、誰をアサインしようかと考えた時に真っ先に浮かんだのが石井だったんです。

準備も整い、クラケン(プレイドCEO倉橋 健太氏)に石井を出向させることを伝えると「え。本当に出向するの?」と最初は驚いていました(笑)。

石井ともプロジェクトの開始前と、開始後も月一くらいでどのようにプロジェクトを進めていくか相談してたね。

出向初日に持っていくお土産をどうするかの相談もね。

石井お土産を大量に準備できたおかげで初日からうまく馴染めました。組織に早く打ち解けるためには、お土産一つとっても戦略的に準備しなければならないということを身をもって学びました。

石井氏が実際に準備したというお土産
実店舗は関西にしかないというGOKANのスイーツ

https://www.patisserie-gokan.co.jp/item/

石井僕がやったことは、「スタートアップからやってきたPM」として、大企業の組織に新しい風を吹き込みつつ、難度の高い調整事項は僕自身が力強く推し進めていったような形ですね。

外からやってきてプランニングをする担当というよりかは、組織の一員として僕の仮説を出向先の方々に率直に伝えて、それに対して意見をもらいながら、一緒にプロジェクトを前に進めていったようなイメージです。

結果として、クライアントの組織の雰囲気も全然違うものになりましたし、サービスのデジタル化もうまく進んで、最終的には受注数が昨対で数倍という成果を達成することができました。

仁科PMだけの動きに終始せず、営業としてフロントに立たせてもらいながら進められたことも『STUDIO ZERO』らしさですね。石井がフロントとして担当したのが、クライアントの大手保険会社にとってもものすごく重要なお客さんだったんですよ。

先方の営業組織はほとんどが新卒からの叩き上げで育ったベテラン社員。スタートアップだからとか関係なく、外部から来た人間に大事な顧客を任せるのは、普通怖いはずですよね。

石井1年一緒にやってみて出向先の皆さんに思うのは、すごいなと素直に思う人が多いこと。組織の中でそれぞれのミッションを持ちながら、ものすごく能動的に、いろんな改善の積み重ねをしてきた人が本当に多い。自分の中の「大企業」のイメージがガラッと変わりました。

その人たちをいかに巻き込んで、いかに「作って終わり」ではなく、進化し続けるプロダクトにするか、みたいな部分も結構意識していましたね。

仁科石井が単身で出向してここまで成果を出せるのは、わからないものに対する貪欲な吸収力とか、様々な視点からフィードバックを試してみよう、やり直してみようっていう姿勢がベースにあるからなんだろうなと思う。素直さ・愚直さ・速度が、『STUDIO ZERO』の中でも頭一つ抜けているなって気がします。

保険業界についての知識はほとんどない状態で出向が決まったというが、出向にあたっては保険というビジネスモデルや営業手法だけでなく、そもそも保険というものがどのように生まれてきたのかという歴史から勉強し始めたというから驚きだ。

「この業界一筋で20年やってきている人と対等に渡り合っていくためには必要でした」とあっさりと話す石井氏だが、知識が必要になった場面で一気にインプットする、学びに対する貪欲さも彼の強みの一つなのだろう。

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部外者が「これ、いらなくないですか?」と、組織の課題に正面から声をあげることに価値がある

繰り返しになるが、大手保険会社の事例は「紙ベースだったサービスをデジタル化したら成功した」という単純な話ではない。これまでも複数のコンサルティングファームをはじめとした外部企業が提案はしてきたが、実行までは至らなかった課題をたった1年で解決し、事業として、組織としても大きな成長を遂げられたことに価値があるのだ。

とはいえ、この成果を生み出すに当たって「石井氏が大ナタを振るって自ら変えた」というわけでは決してない。変化のきっかけを泥臭く作り続けることで、既存メンバーたちが主体となってさまざまな動きが生まれていったということなのだ。

もちろんそのためには先方の「受け入れ体制」が必要不可欠であったことは言うまでもない。

仁科先方の営業組織としても、出向者を受け入れるっていうのは史上初だったんですよ。なので先方の取締役専務、部課長と、僕とクラケン(プレイドCEO倉橋 健太氏)が何度も事前に話し合い、受け入れ態勢の部分はしっかり詰めました。

正直に言えば、石井は貴重な戦力、トップセールスの一人なんですよ。その彼を出向させるというのは、プレイドにとってもリスク。だからこそ「うちのエース出すんで、万全の協力体制を敷いてください」と相手に対しても本気で協力をお願いすることができる。

このように、お互いができるだけ対等な関係になるような調整にまずは尽力し、その中でこちらの本気度を繰り返し伝えることができたので、先方もしっかりとした受け入れ体制を整えてくれたんです。

石井僕にとっても、先方がすごく前向きな受け入れ態勢を作ってくださったのもありがたかったです。役職者の方々からも直々に「期待しているよ、何か困ったことは言ってね、遠慮すんなよ」みたいな感じで、そこはもう強力な支援をいただいたので。だからこそ自由に動けたっていうのもかなり大きいです。

トップ層同士での綿密な連携と、石井氏自身の圧倒的な努力があってこそ実現できた結果ということだ。しかし、長年コンサルティングファームをはじめとした外部企業が解決に至ることができなかったプロジェクトの過程においては、困難も多かったのではないだろうか?

石井確かに苦労も多かったですが、例えば社内用の提出書類がめちゃくちゃ多くて、その書類作成に工数がかかるっていうのはありました。個人的には「これ、本当に必要なのか?」と思うものも多かったので、それも改善箇所として部課長さんに伝えることはしてましたね。

仁科事業組織が肥大化していくと、過去誰かが決めたルールが、当時は最適解だったけど、次第に組織にとっての制約になっていくっていうのはよくあるじゃないですか。 僕ら自身も気をつけなきゃいけないんですけど、それを見直していくっていうのはすごく大事なことで。今回の事例では、そうした過去のルールのうち、改めて見直すと今現在の状況にはあまりフィットしないものが意外とあったっていうことですよね。

それに対して、ある意味何も知らない部外者であった石井が、例えばスタートアップの事例を持ち込んだり、何も知らないが故に「これ、いらなくないですか?」って正面から話したりすることができた。これは注目すべき点だと思います。

また、このプロジェクトにおける最大の成果は「サービスのデジタル化と、それによる受注数アップ」という目に見えるものだけではない。ややもすれば今後数年〜数十年続くであろう大企業の組織カルチャーやしがらみを変革できたことにある。そう、それもプレイドというスタートアップからやってきた1人の若者の力によってだ。

仁科僕が特に面白かったなと思っているのは、後になってクライアント組織の皆さんも「あのルールはいらないよな」とおっしゃるんですよ。みんな心の中では必要ないと思っているけど、過去の誰かが決めたルールに従わないといけなくて、その結果として気づかないうちに生産性が落ちている面があるわけですね。

外から見ているときはそこまで分からないので、なんで遅いんだろうと思うんですけど。実際に組織の中に入ってみると、「これはなくしてもいいよね」というルールやルーティンがたくさんあった。「受注数が数倍アップ」という分かりやすい数字の裏に、こういう無駄をなくして、組織の生産性を高めたっていう成果もあるわけです。

石井組織の中の人が思ってても言えない理由っていくつかあると思うんですが、発言に対する責任が重すぎるというのもある気がしています。

何か言うと、「それは課を代表して言っているの?」「言ったからには、お前のところで責任持ってやるんだよね?」という雰囲気になってしまう。それは良くないと思うんですが、その雰囲気を中の人自身が変えるのってすごく難しいじゃないですか。

これは一例ですが、中の人だけではどうしても気づかなかったり、気づいてもいろいろな理由で変えられなかったりする課題というものは、企業の規模を問わずあるんだなと実感しました。

特にこういう課題に対しては、出向者として僕が言えること、言う意味ってめっちゃあるなと思いましたね。まずは自社が「課題に気づけない」「気づいてはいるけど、変えられない」という状況に陥っていることを認識することが大切で、その上で外部の人間の力もうまく活用しながら乗り越えていくことが重要なのかなと思います。

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「石井さん、来年もいるよね?」と言われても、どこかでは去る。
大手企業に「変革のカルチャー」を根付かせる

石井氏の出向によって、クライアント組織はわずか1年で大きな変革を遂げた。これだけ大きな成果を出していると、クライアントとしては逆に「出向が終わると、せっかく変わり始めたカルチャーも元に戻ってしまうのでは」という不安を覚える部分もあるのではないだろうか?

石井まさに今の課題ですね。やっぱり、この取り組みが終わった後に組織が元に戻ってしまえば意味がないです。いかにこの1年一緒になって変革してきた部分、徐々に染み付いてきたメソッド、スキル、メンタリティを今後も永続的に“文化”として組織に残していけるか、次の年度末までにやらないといけないなと思っています。

仁科ただ、年度末までにとか、クライアントに何をどのように残していくかといった話は、実は僕からは一切言ってないんですよ(笑)。

すべきことを考え、決めて、実行する部分は全て、石井に任せている。既に僕なんかよりも、というのはもちろん、石井自身がクライアントの中の人と同じくらい、もしかしたらそれ以上に企業、組織を変えたいと強く思っているなと感じている。

なので、石井と僕の相談が定例で設けられているのは月一くらい。その度に、1日単位、月単位でどんどん進化していっている。これはすごく興味深いですね。

上司である仁科氏も驚くほど、出向を通して多くのことを学び、成長している石井氏。まだ30歳にして、既に大きな実績を作り上げた彼は、自身のキャリアの行末をどのように捉えているのだろうか。

石井僕個人としては、いろんな問いに向き合っていきたいなという思いが強いです。今動いている案件もすごく面白いですが、今後は違うフィールドにも挑戦してみたい気持ちもあります。

企業の中にあるイシューは本当に多種多様なので、仮に何か一つを極めたとしても、新しいものが見つかることもあると思います。でも、『STUDIO ZERO』にはスタートアップのCxO、事業会社の執行役員、戦略コンサルタントをはじめとした色んな分野のプロフェッショナルの方がいるので、色々な方と一緒に、幅広い課題に対してチャレンジしていきたいですね。自分の武器を増やすというか、自分自身の幅を広げていきたいという思いが今は強いです。

あとは、先ほども申し上げた通り、『STUDIO ZERO』が去った後もクライアント企業が自走できるような仕組み作りですね。僕らがいなくても、例えば世界的に注目され始めている、色んなメディアに取り上げられている、採用の競争力がものすごく上がっている…そういう状態をいかに作っていくかという部分は、今まさにチャレンジしているところでもありますね。

「クライアント企業が自走できる状態」を実現するためには、「売り方・サービス自体を変える」という視点も間違いなく必要だという。

石井日本では人口減少の兆候は20~30年前から始まっていて、国内需要がどんどん先細りしていくマーケットです。であれば、今のやり方に固執していると売上が目減りしていくのは明らかですよね。

例えば、保険業界だと、今あるパイを上位数社で割っているという構図が固定化してしまっています。

だから...と言い切れるかはわかりませんが、保険の歴史は長いものの、“商品の売り方”はほとんど変化してきていないんです。いずれ頭打ちを迎えることになる。

だからこそ、それを壊す、新しい価値、見せ方、届け方を作ることで、売り方とサービスの両方を常に新しいものにアップデートしていかなければと感じてます。

仁科この話は、日本でビジネスをしている会社ならみんな思っていることだよね。超少子高齢化社会で資本主義のゲームルールに則るのであれば、いかに国内外に新しい稼ぎ先を作っていくかが生命線になる。これは僕らも含めて日本企業の共通テーマになるし、『STUDIO ZERO』としても向き合っていくべき課題かなと思う。

だから『STUDIO ZERO』では、石井のような事業家をどんどん輩出して、大手企業と組んで事業をたくさんつくってもらい、この高齢化社会に負けないような、社会にしていきたいんです。

長年多くの支援会社が解決できなかった「保険サービスのデジタル化」という大きな課題をたった1年で解決しながらも、まったく満足していない。むしろ、サービスのあり方、売り方というより上段の課題へすでに意識が向いている。これもまた、目先の“とっつきやすい課題”ではなく、社会、産業の変革を起こしうる本質的な課題に正面から向き合い続ける『STUDIO ZERO』らしさのひとつなのかもしれない。

単身で大企業に出向し、出向先の組織を巻き込みながら、自分より圧倒的に経験が長い相手であっても忖度なくコミュニケーションをとり、プロジェクトを成功に導いた石井氏。

なぜ、『STUDIO ZERO』においても前例の無い出向案件でこれほどまでに成果を残すことができたのか、次章では石井氏のキャリアを紐解くことで、『STUDIO ZERO』で活躍しうる人材の要件を明らかにしていきたい。

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自分にとって「真の顧客貢献」を考えたとき、プレイドに出会った

ここまでの話では彼が20代のうちから卓越した成果を出すビジネスパーソンであったようにも見えるが、決してそうではない。他の多くの人間と同じく、20代を日々がむしゃらに過ごし、これまで重ねた経験が一つの線としてつながるように『STUDIO ZERO』で花開くこととなったのだ。

石井新卒ではリクルートスタッフィングという人材派遣会社に入社して、足を使った「THE 人材営業!」という感じで、派遣スタッフさんと企業を繋ぐ仕事をしていましたね。

その後、2社目でサイバーエージェントに転職して、広告運用の仕事を経験。基本的には、仮説検証を通していかに数字を上げていくかという仕事でした。ここでIT周りの最低限のリテラシーと、KARTEの基本的な仕組みへの知識みたいな部分は身についていたので、プレイドに入社してからもキャッチアップはしやすかったかなと思います。

自分より圧倒的に経験が長い相手であっても忖度なくコミュニケーションが取れる姿勢には、この1・2社目での経験が大きく影響しているという。

石井リクルートもサイバーエージェントもけっこう大きな組織なので、年齢層も広くて、いろんな人がいました。その中で、いかにお互い気持ちよくコミュニケーションできるかっていう姿勢は、そこで自然に身についたものかなと思います。人数が多くて上下関係があるチームでも、うまく可愛がってもらいながら周囲と関係構築していくのは得意な方かなと。

2回の転職を経てプレイドに入社したわけだが、そこに至るまでにはがむしゃらに働き、一度立ち止まって仕事の意味を問い直した経験があったという。

石井元々、20代のうちは1回倒れるまで働きたいと思ってたんですよ(笑)。例えば35歳になったときに振り返って、もっと頑張っておけばよかったなと思っても、もう戻れないじゃないですか。だから20代で1回倒れるまで働いてみたら、35歳でどんな状態だったとしても、多分後悔はないだろうなと思ったんです。

そう思ってサイバーエージェントに転職して、ネット広告の運用を毎日がむしゃらにやりました。広告という領域で、仮説検証を重ね事業を伸ばしていく。今にも繋がる非常に良い経験ができましたね。

IT周りのリテラシー、webマーケティングの基本的な仕組みを学びながら、日々仕事に没頭していた石井氏。そんな中、ある一つの仮説を抱くようになる。

石井短期的な売上や、広告のクリック率や費用対効果といった指標を改善すること以外にも、クライアント企業に価値を提供する手段があるのではないか?と思うようになりました。

広告を通して出会ったユーザー(エンドユーザー)とクライアント企業が、より長く、より良い関係を築けるようにするにはどうしたらいいんだろうか?を問い始めたときに出会ったのが、CX(顧客体験)という考え方だったんです。

本当にクライアント企業のためになるのは何かって考えたら、目先の売上をどうこうするのではなく、その先にいるユーザーのために何ができるのか、ユーザーの体験価値を最大化する手伝いをすることなんじゃないかって、自分の中ですごく腹落ちして。自分がやりたかったのはこれなんだと思って、2019年にプレイドに入社したんです。

長期的な目線で考えたときに、エンドユーザーの顧客体験を追い求めることが、真にクライアントへの価値貢献に繋がると考え、プレイドを選んだ石井氏。配属先ではKARTEのエンタープライズセールスを担当。そして、そこで出会ったのが後に『STUDIO ZERO』の代表となる仁科氏だった。

石井奏さんは僕が入社した時のメンターなんです。入社して最初の3か月の走り出し期に、セールスとして大事なことをがっつり教えてもらいました。毎日書く日報に返事をもらって、トップセールスである奏さんのセールストークを録音して毎日聞いたりとか。

仁科アポ先に僕が同行して、石井がプレゼンしている間に「何分何秒のポイントはこうした方がいいんじゃないか」みたいなトークの修正をバーっと書いて、アポが終わった瞬間に送って、帰り道で振り返りしたりね。

石井「売ろうとしないこと」。これは当時もトップセールスであった仁科さんから学ぶことができた大きな財産です。

KARTEのセールスは、ものを売る仕事じゃない。KARTEというプロダクトを手段として、どんな課題を解決して、新しい価値を生み出していくかという仕事なんです。だから、顧客が抱えている課題や新しい価値みたいな部分の目線をちゃんと揃えて、それを解くためのチームの一員として立ち回ることが、経験として身につけられたのかなと思います。

仁科氏の元で、着実と経験を重ねていく石井氏。しかしここで大きな転機が訪れる。仁科氏がプレイドを一度離れることとなったのだ。

石井とある日、アポに同行してもらったその帰り道で、奏さんがプレイドを辞めるって話を聞いたんですよね。その時は本当にショックで、ちょっと泣いてしまったほどでした(笑)。そのくらい、僕の中では大きい存在なんですよ。

セールスとしてのノウハウみたいな部分ももちろん教えてもらったんですけど、それ以上に「この会社を使って何を成すか」というビジョンの部分を壁打ちさせてもらったというか。新鮮というか、衝撃に近いものがあったなと思います。

その奏さんがプレイドに戻ってきて新しい組織を立ち上げるって聞いて、やっぱりもう1回一緒に働きたいなという思いもあって、『STUDIO ZERO』の立ち上げから入ることにしました。

営業としてのハウツーだけでなく、ビジネスパーソンとしての在り方も伝えていたという仁科氏。 会社員は、経営者の歯車であってはならない──。

これは仁科氏がインタビュー中、重ねて強調していた言葉だ。人にはそれぞれ個人として成し遂げたい目標があり、会社はそのための手段の一つだと。だからこそ、会社員が経営者の目標達成に迎合し、ただ付き従うだけでは、あまりにも勿体ないのだ。

そして、この思想は、現在の『STUDIO ZERO』のオンボーディング体制や、組織カルチャーにも色濃く反映されている。次章では、仁科氏が『STUDIO ZERO』の組織づくりや後進の育成に託した想いについても触れていきたい。

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後進を育て、自分自身も常に新しいことにチャレンジしていくことが重要

前回の記事で、仁科氏は「明日自分がいなくなっても回る組織を作る」と公言していた。そして、それは『STUDIO ZERO』に所属するメンバーにとっても同様だ。初の出向案件を大成功させた石井氏であっても、仁科氏が彼に期待するのは早期の「後任の育成」である。

仁科これから石井に一番期待するのは、早く自分の後任を育成して、自分がやってきたことを下に引き継いでいくこと。同時に、石井自身も新しいことを学んで、新しいことを作りに行って欲しいです。

とはいえ、1年後も彼が同じことをやっていたとしたら、それは石井が悪いんじゃなくて、僕のチームマネジメントの責任だと思っていますけど(笑)。

ともあれ、自分の後任となるメンバーを早く育成して、いつ自分がいなくなってもいいように配置をする。そして、石井自身のチームを作って、そのチームをマネジメントしながら、個人としても新しいことにチャレンジしていってほしいですね。

『STUDIO ZERO』のメンバーは全員「一度できるようになったことに固執しない」という文化を徹底して欲しいなと思っています。今自分ができることはどんどん後進に引き継いでいくことを意識してもらうと、チームとしてできることの規模も広がってくるし、彼自身ももっと難しく、面白いことに挑戦できるようになりますから。

すでに圧倒的な実績を作っている石井氏に対しても、今できていることにこだわらず、もっと先を見据えて動いてほしいということだろう。『STUDIO ZERO』という組織には、「常により上を目指す、もっと良くする」というスタンスがカルチャーとして組織に根付いているように思える。しかし、なぜ組織の全員がそこまで前向きなマインドを持ち続けられるのだろうか?

石井生きていると、仕事でもプライベートでも、不条理な場面に出会うことってたくさんあると思います。

それに対して、気にしないようにしたり、我慢してしまう人がかなり多いと思うんです。

でも、そんな不条理に対して「これは変えられるんじゃないか」という前向きなマインドで向き合う人もいますよね?

そんな人たちはさらに、「そもそも変えることが正解なのか?」っていうところに立ち戻って、いろんな仮説を立てて、「ここを変えたらどうなるんだろう?もっと良くなるんじゃないか?」といった思考を巡らし、ワクワクする感覚すら感じとっているんですよ。

『STUDIO ZERO』に集まるのは、明確に後者の人。

むやみに現状を変えることだけが目的なんじゃなくて、ぼんやりとした理想像に対して、いろんな手段を仮説をもとに試していくのは面白いじゃないですか。それが結果的に「今よりもっと良くする」というカルチャーに繋がっているように思います。

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クライアントの課題を、真面目に解くのは当たり前。
いかに「ワクワクできるか」が鍵となる

ここまで、『STUDIO ZERO』の第一線で活躍する石井氏にフォーカスしてインタビューしてきた。しかし、同氏のマインドがいかに抜きんでているかのトピックが中心で、スキルについての話題は少なめだったことに気づいた読者はいるだろうか。

実は、これには『STUDIO ZERO』の採用戦略も関係している。採用要件を見てみると分かることだが、スキル要件よりは「強い好奇心」「仮説思考」といったマインド要件が中心なのだ。これには一体どんな狙いがあるのだろうか?

仁科極端な話をすると、スキルはお金で買えるんです。年収をすごく高く提示するとか、業務委託を増やすとか。でも、マインドはどう頑張っても買えないんですよね。

だからこそ『STUDIO ZERO』の採用では、スキルよりは僕らが求める事業家マインドの素養が少しでもあるかどうかを重視しています。マインドさえあれば、未経験であってもスキルは後から鍛えられるので。

もちろん、高度なスキルや特筆すべき経験があればなお良しですよ。その場合はリーダークラスでの採用になったり、未経験採用とは事情が少し違ってきます。

ちなみに、『STUDIO ZERO』の採用要件にある「必須マインド」は以下の7つ(2023年6月時点)。必要な業務経験も当然あるが、何よりもこれらのマインドがあるどうかが重要なのだという。

  • 自分や家族に真摯に向き合える方
  • 「これをしてみたい!」という無邪気な夢や想い
  • 強い好奇心
  • 利他の精神
  • 学習意欲
  • 仮説思考
  • 最新デジタルツールに対する無邪気な好奇心

仁科これらの素養がないと、恐らく『STUDIO ZERO』は組織として機能しなくなると思うんです。人を出し抜いたり、ただP/Lだけ重視したりするようなコミュニケーションに変わっていってしまう。それは本質的ではないし、僕らが目指したい方向性とは違います。マインドを重視して採用する姿勢は、立ち上げ期から今までずっと変わらず持ち続けていますね。

石井この中でいうと、僕としては特に仮説思考はすごく大事だと思います。

今よりもっと良くする、価値を出すにはどうしたらいいかを考えていくときの手段が、仮説思考そのものだと思うんです。『STUDIO ZERO』では、実現したいゴールに対して色んな仮説を持って、妄想して、実際に検証してみるところまで自分でやれる。それが面白そう、ワクワクすると思える人はすごく向いていると思いますね。

「ワクワクする」という言葉を、石井氏は繰り返し口にした。『STUDIO ZERO』が他の支援会社と違う一番の理由は、もしかするとこの「ワクワク」という言葉にあるのかもしれない。

石井クライアントが抱えている課題を、真面目に解くのは当たり前なんですよ。それだけでは面白くない。

いかにその過程を面白くできるか、相手をワクワクさせられるかっていうのが『STUDIO ZERO』らしさかなと思っていて、そのためにはまず自分自身が楽しまないといけないですよね。

例えば「50年後の航空業界はどんな課題を抱えていると思いますか?」「その課題を解決するために、何ができると思いますか?」みたいなふわっとした問いに対しても、妄想レベルで楽しんで考えられるか。そういうスタンスが大事なように感じます。

カルチャー、発言、言動を変えていきましょう、組織をトランスフォーメーションして、今よりもっと良くしていきましょうというワクワク感がないと、やっぱ人って前向きに変わっていかないし、挑戦しづらいので。

自己効力感を高めて、周囲を巻き込んでいくためにも、この「ワクワク感」っていうのはすごく大事なのかなという気がしています。

全3回の記事を通して、プレイドの新戦略である『STUDIO ZERO』について余すところなくお伝えしてきたつもりだ。この組織が、従来の「コンサルティング」の枠組みにはまったく収まらない、新しい形の事業支援にチャレンジしていることが少しでも伝わっただろうか。

「顕在化した課題を解くことはしない」「クライアント企業を去ることを目標にする」というスタンスもユニークながら、「課題解決を通して、相手をワクワクさせる」という姿勢に、『STUDIO ZERO』の面白さが詰まっているように感じた。第1回から倉橋氏、仁科氏が繰り返していたことだが、企業や行政が抱える目先の課題を小手先で解決することが彼らの目的ではないのだ。

大きな底力を秘めている大企業が真価を発揮できるよう、一緒になって課題に正面から向き合い、よりよい形に作り変えていく。その過程で、クライアント組織のあり方まで変革してしまう。しかも、自分たちが去った後もクライアントが変革しつづけられるかまで考えている。

こんな組織は他にはないだろう。彼らが日本の大企業を変革し、彼ら自身の事業も成長していくことは、日本の将来にとって間違いなくプラスになる全3回にわたる取材を通して、率直にそう思わされた。

こちらの記事は2023年07月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

池田 華子

写真

藤田 慎一郎

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