「投資家を気にしてKPIを追っていては、経営者にはなれない」
USEN-NEXT HOLDINGS宇野康秀がスタートアップ業界に一石を投じる

インタビュイー
宇野 康秀
  • 株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO 

1963年生まれ。大阪府出身。87年、明治学院大学卒業後、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。89年に独立し、インテリジェンス(現パーソルキャリア)を設立。98年、大阪有線放送社(現 USEN-NEXT HOLDINGS)を創業者である父から受け継ぎ、代表取締役社長に就任。2009年、U-NEXTを設立し映像配信事業や通信事業を手掛ける。14年に東証マザーズ上場。15年東証1部上場。17年、USENとの経営統合でUSEN-NEXT HOLDINGSに商号変更。

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USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO・宇野康秀氏は、「日本を代表する経営者」と言っても過言ではないだろう。

26歳にしてインテリジェンス(現・パーソルキャリア)を創業し、HR業界のリーディングカンパニーに成長させる。同社出身のサイバーエージェント・藤田晋氏の創業も支援。35歳で、大阪有線放送社(旧・USEN)の社長を継ぎ、見事に経営を再建。46歳で設立したU-NEXTを、51歳で上場させた。

宇野氏は2021年、新たなチャレンジに乗り出す。USEN-NEXT GROUPの「100人100社構想」を現実にするための「社長発掘プログラム ”CEO's GATE”」だ。同氏は「起業家が資金調達ばかりに奔走する現状は残念だ」と憂慮。事業づくりに邁進できる環境構築が必要だと考え、事業を伸ばせる100人のプロ経営者を生み出すために本プログラムを実施する。

同社が保有するヒト / モノ / カネを活用し、事業づくりに最大限コミットできるよう支援していく。「サイバーエージェント藤田のような事業家を、100人生み出す」と意気込む構想の中身と、その第一歩として開催される『CEO's GATE』の全容が明かされる。

  • TEXT BY MASAKI KOIKE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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起業家が資金調達ばかりに奔走するのは「残念だ」

宇野氏は昨今のスタートアップ業界について、「起業家が資金調達にエネルギーを注ぎすぎて、事業づくりが疎かになっている」と課題意識を抱く。

株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO・宇野康秀氏

宇野僕もたくさんのスタートアップを見ていますが、トップが資金調達のことで頭がいっぱいになってしまっている会社が多いのは残念ですよね。事業推進もそこそこに、VCのもとを奔走する。なんとか調達できると、その時点で上場したかのような気分になってしまう──資金調達がしたいのか、事業づくりがしたいのか、分からなくなってしまっているようです。

USEN-NEXT GROUPの「100人100社構想」は、1兆円企業グループとなるために、100億の売上規模の会社を100社つくっていこうとする構想。構想を現実化していくために、100人の社長を生み出していく必要がある。

インテリジェンス、USEN、U-NEXT……起業と上場を繰り返してきた宇野氏は、「独立して起業」という形式にこだわることの無意味さに気づいた。事業をつくって社会を変えることが本当に目的であれば、大企業の保有する資金やリソースを活用したほうが、最短距離を歩めると考えるからだ。

USEN-NEXT GROUP内で起業すれば、バックオフィス関連のリソースや社会的信用はもちろん、有線放送サービスを利用している全国75万店舗の小売店や飲食店、デジタルコンテンツプラットフォーム『U-NEXT』の顧客資源、そして多角的な事業展開を支える豊富な人的資源も活用できる。

宇野0→1で事業を立ち上げようとするとき、たとえば、まず仲間集めが大きな課題になります。身近な知り合いから地道にメンバーを集めていくケースが多いですが、10名を超えたくらいで大抵行き詰まりますし、かなり大変ですよね。人数は集まったものの、カルチャーフィットしなくて早期に空中分解するケースもたくさん見てきました。

USEN-NEXT GROUPのリソースを活用することで、そうした苦労を瞬時に突破してほしいんです。「ヒト」「モノ」「カネ」は潤沢に用意しています。あとは、社会を本気で変えたいリーダーになりたい人たちに集まってもらうだけです。

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サイバーエージェント藤田さんを、100人生み出す

2021年2月現在、23の事業会社が立ち上がっている。社員が事業会社の経営者を目指す事例や、すでに起業していたメンバーが外部からグループインする事例も現れはじめているそうだ。

グループ会社化を構想し、子会社社長を募集する企業は少なくない。しかし、USEN-NEXT GROUPの取り組みでは、子会社化は前提としていない。「そもそも親会社や子会社といった概念で捉えていない」と、宇野氏。

宇野リーダーを目指したい人にとって、「子会社社長」というポジションや役職は不満ですよね。USEN-NEXT GROUPは2017年12月にHOLDINGS体制となっていますが、HOLDINGSは事業会社を束ねる“上位概念”ではありません。事業づくりに必要なリソースを提供するプラットフォームなんです。

たとえるならば、「強いサッカーチーム」ではなく、個々のチームの活動を盛り上げる団体である「Jリーグ」のような機能を提供するのがUSEN-NEXT HOLDINGS。それぞれのチームが強くなるためにサポートしたいんです。もちろん、CEOの僕も、「グループを束ねているのは自分だ」「僕がトップだ」という感覚は一切ありません。

事業領域も、USEN-NEXT GROUPのポートフォリオから逆算する必要はない。「必要とされる次へ。」をコーポレートアイデンティティに掲げる同社は、社会の変化や技術進化をキャッチアップし、都度最適なビジネスを生み出していく。

「『本業』や『稼ぎ頭』の事業がどれか、分からなくなる状態を目指す」と宇野氏は意気込む。

宇野かつて僕が立ち上げたインテリジェンスから、サイバーエージェント創業者の藤田晋さんが輩出されました。その後、サイバーエージェントは資本分離しましたが、藤田さんをはじめ同時期に独立した起業家たちとは、いまでも精神的につながっている感覚がある。そうしたつながりを、資本的な関係も加えたうえで、USEN-NEXT GROUPの中で100組生み出していきたいんです。

そして、「100人」であることにも理由がある。

宇野真に革新的なビジネスは、1社だけで生み出せるかわかりません。さらに、10社、20社程度の数だと、無理に事業シナジーを生むことを意識してしまったり、お互い牽制しあってしまったりして、本当の意味で斬新なアイデアが育まれなくなる可能性があると思っています。

ですから100社なんです。100社くらいのボリュームがあれば、変なしがらみにとらわれず、多様なアイデアをもつ人材によって、多様な事業が生み出される。イノベーティブなビジネスが生まれる可能性が、圧倒的に高まります。

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壁打ち機会として使ってもOK。
『社長発掘プログラムCEO's GATE』

「100人100社構想」を現実にしていくために2021年春に開催するのが、『社長発掘プログラムCEO's GATE』だ。

求人内容はシンプルで、「経験不問、職業:社長」。USEN-NEXT GROUP内で社長になりたい人を募り、選考を実施する。通過すると、すぐに社長に就任、または将来の社長候補としてプールされる。

社外の合格者は、そのまま社員として採用。宇野氏は「経営に携わった経験がなくても、事業づくりに関心を持っているのであれば、どんな人でも応募してみてほしい」と門戸を広げる。

宇野すでに事業アイデアを持っている人は、選考の場を壁打ち機会として使ってください。結果としてグループインしなかったとしても、僕たちとディスカッションしていくうちに、アイデアがブラッシュアップされていくと思います。

まだ具体的な事業アイデアを持っていない人も歓迎です。事業づくりに関心はあるけれど、解きたい課題が明確化していない人も多いですよね。そういう人でも、選考の場で僕らと話しているうちに、取り組むべきテーマが見えてくるでしょう。

宇野氏が応募者に求める条件はただひとつ──「事業をつくって社会を変えたい」という想いだ。

宇野「資金調達」や「IPO」を経験したいだけの人、お金持ちになりたいだけの人は、受けに来ないでほしいです(笑)。経験は問いません。大企業一筋で働き続けて来た人でも、起業したことがある人でも、どちらでもいい。事業づくりへのピュアな想いを持った人に、門を叩いてほしいですね。

僕は「事業を伸ばせる人」とは、売上をつくれる人でも、上場させられる人でもなく、その事業が広がることで社会に及ぼされる影響を語れる人だと思っています。投資家の反応や、目の前の些細なKPIばかり追っているのではなく、いかに社会を変えていくのかを、一緒に考えましょう。

こちらの記事は2021年02月12日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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藤田 慎一郎

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長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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