なぜビズリーチはHR Techに張り続けるのか─“逆張りの連続起業家”VisionalのDNA
Sponsored「より大きな社会の課題を解決し、大きなインパクトを与える手段を常に選択してきた」
前職では共同創業したヘッドハンティング会社の経営に携わり、ビズリーチでは人事部長やビズリーチ事業、スタンバイ事業、HRMOS事業などで事業長を歴任。Visionalとしてのグループ経営体制移行に伴い、新たに2020年2月より株式会社ビズリーチの代表取締役社長に就任した多田洋祐氏は、入社後の経験をこのように振り返る。
創業事業である即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」の印象が強いかもしれないが、同グループはそれだけにとどまらず、ビジネスの⽣産性向上を⽀えるさまざまな事業を展開してきた。「人材の会社」ではなく「HR領域からスタートした、テクノロジーの会社」といった方が正しい解釈といえるだろう。
Visionalはなぜ、HR領域からスタートしたのか。そして、多田氏が今後株式会社ビズリーチで描くビジョンとは。
- TEXT BY AYA MIZUTAMA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY KAZUYUKI KOYAMA
社会にインパクトを与える企業は、常に変化を厭わない
多田誰もが知っているような、社会にインパクトを与えてきた企業の多くは、創業事業だけで今の地位を築いているわけではありません。常に時代の変化がもたらす様々な課題やニーズに合わせて事業を転換させ、変化を厭わず成長し続けてきました。
私たちも、社会にインパクトを与えることを目指し、常に先人から学びながら、時代の変化がもたらす様々な課題と向き合う事業を生み出し続けてきました。
即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を創業事業として急成長を遂げてきたVisional。同グループはこの10年間、創業事業だけに留まらず、次々と新たな事業を展開し続けることで躍進を遂げてきた。
先日公開したビジョナル株式会社取締役CTO竹内氏の記事では、Visionalという組織自体が”連続起業家”であり、多様な事業を生み出すことに成功してきたひとつの要因として、あえて”逆張り”とも言える戦略を選択してきたことが語られた。
“新規事業を立ち上げても、それが十分にスケールするより前に、すでに別の事業をつくり始めている。Visionalという組織自体が、連続起業家なんです。”
“営利組織としては非合理的な判断なんですよ。事業の成長スピードだけで考えれば、勝ち筋の見えている1つの事業にリソースを集中させて、高速で伸ばしていく方が正しい戦略です。
それでも我々は、常に中長期的な視点に立って、リスクのある新規事業の創出にプライオリティを置いています。これは創業時から変わらない、弊社のDNAですからね。”
“部署間の越境性が高いことも、我々の組織の特性です。エンジニアやデザイナー、営業などの異職種同士の距離感を近づけて、架橋していくようなマネジメントをしています。
これも、普通の会社ならやらないことです。縦割りで情報を閉じて狭く共有した方が、個別は高速に成長しますからね。しかし、それでは新しい創造は起こらないし、挑戦する土壌も育ちません。”
事実、同グループが展開している事業は現在10を超える。挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」、Zホールディングス株式会社との合弁で運営している求人検索エンジン「スタンバイ」、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」といったサービスもあれば、採用管理から従業員データベース、人事評価などを担う人財活用プラットフォーム「HRMOS(ハーモス)」、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」など、その事業領域は多岐にわたる。
2019年8月には、オープンソース脆弱性管理ツール「yamory(ヤモリー)」もリリース。2020年2月には国内最大級の物流データプラットフォームを運営するトラボックスをグループに迎えて物流領域にも参入し、事業領域を広げ続けている。
「雇用のあり方が変わる」──その予兆を伝える難しさ
多様な事業作りの要諦を押さえながら、10年で売上高214.9億円、営業利益5.23億円(※2019年7月期)、そして1,400人を超える人数規模まで拡大してきたVisional。次々と事業を生み出し続ける中でも、多田氏が代表取締役を務める株式会社ビズリーチが担うのがHR Techの領域だ。
ビズリーチがHR Techへ目を向けたのは、日本の雇用における“負”に起因する。HR領域でキャリアを長年積んできた多田氏も、その現状を身をもって感じていた。
多田日本の雇用のあり方は、欧米諸国に比べ30年以上遅れています。元々アメリカも産業の寿命が長い製造業が経済の中心にあり、終身雇用が成立していました。
しかし、30年以上前に産業構造が変化するとともに、より寿命の短い産業が中心の社会となり、雇用の流動性も上昇していきました。その結果、企業は優秀な人材を採用できるように待遇や福利厚生を充実させるなど、従業員と向き合う文化が生まれました。
それが企業と従業員との関係性において、本来あるべき姿だと考えますが、その姿と日本の現状には大きな乖離が存在しています。
アメリカではその領域にテクノロジーが入ることで大きく雇用のあり方が変化し、市場も急成長を遂げています。今後、日本にも同じような変化が起きる可能性は高いでしょう。
今後起こりうる社会変化を予期すれば、HR Techという領域は社会の課題のど真ん中になる──。
そんな予兆を感じ取っていた同社は、この領域の課題を解決する足掛かりとして、約10年前に即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を生み出した。
求職者にとってはハイクラス求人サービスとして認知されている同サービスだが、企業にとっては採用したい人材に直接声を掛けられるデータベースの提供でもある。企業が候補者を直接スカウトをする仕組みを通し、企業と求職者の関係性を対等にリデザインしたのだ。
多田氏によると、アメリカでは「ダイレクトソーシング」といった言葉を用いて、すでに概念は認知されていたという。
多田ビズリーチを始めた当初は、「海外ではダイレクトソーシングが当たり前になっている」と、変化の兆しをお客様に伝えていました。しかし、海外を例に出してしまうと「海外の話だから、うちには関係ない」と言われてしまう。聞く耳さえ持っていただけない日々が続きました。
2010年代初頭の日本で、その価値は伝わりにくかった。従業員と企業との関係性や、雇用環境の変化に敏感でなければ重要性は理解しづらいだろう。
多田氏は、社会の流れといった大きな文脈ではなく、目の前の採用課題の解決という文脈から変えていくアプローチに切り替えた。
多田「企業から求職者のデータベースにアクセスし、主体的に働きかけられる新しい手法を活用してみませんか?」というコミュニケーションに変更してみました。
そこから、直接的な採用手法という狭義の意味だけでなく、企業が必要としている人材を採用するために、あらゆる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用活動を広義の意味で表現する「ダイレクトリクルーティング」という言葉を意図的に生み出し、この概念を地道に広めていくことで、徐々にご導入いただける企業様が増加しました。
ビズリーチはシェアを着実に伸ばし、同社の基盤を作り上げるにまで成長を果たした。
一方、2019年の日本では、トヨタ自動車社長の豊田章男氏が「終身雇用は難しい」と発言したり、銀行やメーカーなどが景気にかかわらず希望退職を募ったりする動きが加速。多田氏が予見した「30年以上の遅れ」への変化が起こりつつある。
今こそ「働き方」「企業と従業員の関係性」が変わるタイミングーHR Tech企業としての使命とは
事実、ここ数年で「企業と従業員の関係性」も変わりつつある。双方が「いかに情報と向き合うか」を問われているのだ。
多田これまで企業と従業員には主従関係があり、従業員は相対的に弱い立場にあったのが、雇用関係の主体が従業員に移る時代がきています。
従業員は転職先候補となる企業の情報を得やすくなり、労働環境の相対的な比較も可能になります。だからこそ、企業、従業員双方にとって、情報の発信と取得がより重要になると考えています。
ビズリーチが取り組んできたダイレクトリクルーティングは、今では日本を代表する大手企業からも受け入れられるようになり、既存の採用市場に新たなムーブメントを起こした。
今ではさまざまなサービスが後を追うように登場し、マーケットが拡大し続けてもいるが、同社はその環境に甘んじず、「エンプロイーエクスペリエンス(従業員体験)」を重視して、さらに先へ進む。
この領域で2016年から取り組むのが、データを用いて従業員のパフォーマンス最適/最大化を掲げる人財活用プラットフォーム「HRMOS」だ。採用管理や、社員データベースといった機能単位で語られることが多いサービスだが、目指すのは人や組織の「定量化」とその「測定」にある。
多田今までの人事システムは、企業が従業員を管理するツールでした。しかし、HRMOSは従業員自らがパフォーマンスを発揮するために、人や組織のデータを用いて自分のキャリアや方向性を考えるヒントとして活用されるツールを目指しています。
キャリアの複雑性は非常に高く、自分のスキルや経験だけでなく、チームや上司との相性、業務内容、目指す理想像、働き方など多様な要素が掛け合わされる。その中で、適切な道筋を示すには、経験則だけでは到底難しい。
企業は、そういったデータを蓄積した上で従業員にインフラとして提供し、個々がよりよく働けるようサポートをする。HRMOSはテクノロジーを活用することで、そうした世界観を目指しています。
多田氏は「エンプロイーエクスペリエンスを重視する企業でなければ生き残れない時代が来る」と予見する。そこには、海外との比較だけではなく、産業構造や世のあり方が大きく変わっていく時代の変化がある。
多田産業の寿命は年々短くなり、数十年と言われているにもかかわらず、人間の健康寿命は延び、人生100年時代とも言われています。つまり、産業の寿命より人の寿命が圧倒的に長い時代が到来しているということです。
個人がこの時代で生き残るには、キャリアの観点でも次々と新たな道筋を切り拓いていく必要があり、そうなると人材の流動性もさらに増していきます。
「働く」ということがこの時代における大きなテーマとなり、キャリア観が大きく変わっていく中、ここで雇用のあり方も変わらねば、この国の産業の未来さえも決まってしまう。そのようなタイミングだと捉えています。
一生涯のキャリア形成に伴走し、国全体の生産性を向上させるためのインフラになる
その前提に基づき、多田氏は具体的にどのような構想を練っているのだろうか。
それは、個人のキャリアの意思決定に寄り添い、入社後の活躍を含めて一生涯のキャリア形成に伴走していくというキャリアのインフラ構想だった。
多田働く期間が50年とも60年とも言われる時代を生きる我々にとって、「キャリア」を考え続け、自分らしく生きていくために必要なインフラを創ること。それがビズリーチ社の使命だと考えています。
学生は大学に入学をしたらビズリーチ・キャンパスに登録し、先輩からキャリアについて考えるきっかけを得て、具体的、長期的にキャリアを考える機会をつくっていく。20代で初めて転職する人たちがキャリトレで誇れる未来を選択し、その後はプロフェッショナルとしてのキャリア選択をビズリーチが伴走する。
また、我々が提供するのは会社の外の話だけではありません。エンプロイーエクスペリエンスの向上、所属する会社でどのようにキャリアを築いていくか、そのインフラはHRMOSが提供する。
キャリアのインフラを作るということは、ビズリーチ社は生涯一人ひとりのキャリアに伴走するということです。この国の転職サービスは我々も含めてまだ刹那的だと捉えています。
キャリアを考え始めたタイミングから、働くことを終えるまで伴走し続けるサービス。唯一無二のキャリアに伴走してくれるサービスになっていきたいと考えています。
国全体で適材適所が行われ、すべての人が活躍できる社会を作ることができれば、この国の生産性は必ず上がっていきます。
多田氏は丁寧に言葉を選びながらもゆっくりと、そして力強く、その志を語ってくれた。ダイレクトリクルーティングという新たな概念を日本に広めた際もそうであったように、1つ1つの表現にこだわり、新しいインフラを創造するスタートラインに立つ者としての気概を感じる瞬間であった。
最後に「どのような人と一緒に働きたいか?」という問いを投げかけた。多田氏は少し間を置いた後、組織に脈々と受け継がれるDNAを挙げながらこう語ってくれた。
多田人生で何かを為したいというエネルギーがある人。前のめりな人と一緒に働きたいと思っています。
社内にもそういう仲間が集まっていますし、迷ったらより大きな社会の課題を解決し、大きなインパクトを与える手段を常に選択してきました。これが私たちのDNAだと思っています。
逆に言えば、能力やスキルはあまり関係ありません。HR業界に興味がなくても構いません。「何かしたくてモヤモヤしています」といった人でもいいと思っています。
重要なのは、変わり続けられること、変わり続けるために学び続けられること、そのためのエネルギーがあること。
我々には、そういった強い価値観があり、「変わり続けるために、学び続ける」という言葉をグループ全体の価値観を言語化した「Visional Way」に加えました。
とにかく、私たちは高い山を登りたい会社です。その環境の中、能動的、主体的に動ける仲間と一緒に未来を描き、その描いた未来を実現していきたいです。
こちらの記事は2020年04月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
フリーランスの編集者・ライター。株式会社CRAZYにてオウンドメディア「CRAZY MAGAZINE」を立ち上げ、編集長に就任。コーポレートブランディングの変革を目的に、自社の働く環境を発信したのち、2018年7月からフリーランスへ転身。現在は、HR領域・働き方・組織論のテーマを中心に、Web・広告・小冊子の制作から、オウンドメディアの支援等。
写真
藤田 慎一郎
編集者。大学卒業後、建築設計事務所、デザインコンサル会社の編集ディレクター / PMを経て、weavingを創業。デザイン領域の情報発信支援・メディア運営・コンサルティング・コンテンツ制作を通し、デザインとビジネスの距離を近づける編集に従事する。デザインビジネスマガジン「designing」編集長。inquire所属。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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