新たな市場を作っていくためには「未完成プロダクト」の構想も大々的に発表すべき?──ESG経営の“全て”を支援するプラットフォームを、ゼロボードだけが描ける理由とは
Sponsored地球温暖化、森林火災、海面上昇。環境破壊によって蝕まれた地球の変化は、直近数年でことさらに深刻化している。これを受け、世界各国でも企業活動に対する規制や情報開示の要請が強化されつつある。2023年1月よりEUが発効したCSRD(企業サステナビリティ報告指令)や、同年7月に採択が発表された電池規則は、グローバルに進出する日本企業も対象となるものだ。
この時流に迅速な対応を見せたのは、企業の脱炭素経営支援を行うゼロボードである。2023年8月、大々的なリブランディングと共に「Zeroboard Sustainability Platform」構想を発表。ESG関連の情報開示や規制対応に迫られる企業を、複数プロダクトとコンサルティングサービスを連携し、全面的にサポートするプラットフォームを提供することを宣言した。
この強烈なプレスリリースの背景にある狙いは何なのか。そして、このプラットフォーム構想の先にある未来とは。戦略を担う代表取締役渡慶次道隆氏に加え、前例のないプロダクト開発の舵取りを担うCTO木戸祐亮氏に、ゼロボードの「今」と「未来」のユニークな姿を聞いた。
- TEXT BY YUKI YADORIGI
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
めざすは世界が活用する「脱炭素OS」──ゼロボードの大々的リブランディングの狙いとは
渡慶次今回のプレスリリースで公開した「Zeroboard Sustainability Platform」は、最新の開示要請に対応したデータの収集から可視化・開示を可能とするプロダクトと、高度なコンサルティングの組み合わせによって、企業のサステナビリティ経営に関する課題をワンストップで解決するソリューションです。これは日本にとどまらず世界に先駆けたビジネスであり、経済社会の全体効率化を実現する構想でもあります。
木戸私たちがつくろうとしているもののスケールは極めて大きく、捉えにくいところもあります。そこで、チームの目線を合わせる象徴となっているのが「脱炭素OS」という言葉です。
私たちはこれまで「データプラットフォーム」という表現で開発と提供を進めてきましたが、これからは「脱炭素OS」という言葉を目印に新たな方向への成長をめざします。
OSという言葉から想像されるように、誰もが使いやすいUI/UXを備えたプラットフォームとなり、その基盤上でさまざまなプロダクトやソリューションが活用されていく世界を生み出すことで、より多くの企業が脱炭素経営を実現できるようにしていくのが私たちの使命です。
渡慶次「脱炭素OS」としてトップランナーの地位を築きます。そうすることで、ESG経営全体へ広く貢献できるようになると考えています。
これまでGHG(温室効果ガス)排出量算定・可視化クラウドサービス『Zeroboard』を提供してきたゼロボードは新たに「Zeroboard Sustainability Platform」構想を描き、2023年8月に大々的なリブランディングとして発表した。
ESGデータを効率的に収集・可視化するデータマネジメントモジュール、グローバル規制にも対応したサステナビリティ領域のコンサルティング、そしてパートナーとの連携によるESG領域をカバーするソリューション提供を合わせたものを、プラットフォームと称してグローバル規模で展開していく。これまで注力してきた脱炭素から、さらにサステナビリティ(あるいはESG)全般へと解決領域を拡大し、ゼロボードは世界のサステナビリティ経営(ESG経営)を支えていく存在へと昇華していく。
渡慶次私たちが実現したいゴールまでの道のりは遠く、やるべきことは山積みです。今回の発表を経て、グローバルにおいて重要な役割を担うこと、世界共通のOSをつくることへのプレッシャーは各段に増しました。一方で、それを実現できる土台となる組織づくりは着々と進んでいます。自分たちならできる。そういった確信が芽生えはじめています。
木戸めざすゴールは創業時から一貫してぶれていませんが、その時その時の顧客ニーズと社会情勢に応じながら開発方針を調整する必要があり、実装を担う設計・開発のプロセスは容易ではありません。
この大規模かつ時間のかかる開発に挑むエンジニアたちのモチベーションの源泉は、「住みよい環境を次世代に継いでいくこと」です。私たちは未来を見据え、長期的に価値あるものを生み出す姿勢で開発に臨んでいます。
今回のリブランディングがどのような意味を持ち、どんな未来につながっていくのか。企業のサステナビリティ経営と価値向上、そしてその先にある持続的な社会の仕組みづくりという壮大なゴールをめざすゼロボードの「今」を、渡慶次氏と木戸氏の言葉から紐解いていく。
グローバル規模で高まるサステナビリティ経営の要請に具体な解決策を提供
「Zeroboard Sustainability Platform」は、簡単に言えば企業がESG経営を実現するための情報と打ち手を一元化するプラットフォームだ。これまで『Zeroboard』を通じて企業のGHG排出量を算定・可視化してきたうえで、なぜいまプラットフォーム構想を打ち出したのか。渡慶次氏に大々的なリブランディングを決めた理由について聞いていく。
渡慶次このタイミングでリブランディングを発表したのは、グローバル規模で進む規制・開示要請に対応しなければならない各国企業のニーズに応えられる存在であり続けたいという想いからです。
欧州ではCSRD(※1)や電池規則(※2)などサステナビリティ情報開示の法令化や、TNFD(※2)等の新たな開示フレームワークがマーケットで注目されるなど、企業の対応が迫られる重大なアジェンダが矢継ぎ早に増えているのが現状です。
海外拠点を持つ、あるいは海外に販路を持つ日本の企業は、こうした規制や開示要請を把握し、数年のうちに対応できる体制を整えなければなりません。それをサポートする役割を「Zeroboard Sustainability Platform」が担っていくんだという意気込みと見通しを示し、安心と期待をいただきたいと考えました。
また、このリブランディングの発表を通じ、ゼロボードだからこそ描いている未来についても認知を拡げたいという狙いもあります。
とはいえ「Zeroboard Sustainability Platform」はまだ完成していない。発表内容に含まれるプロダクトや機能のうち、開発中のものも少なくない。
このタイミングで大々的にプレスリリースを行う判断は、日本のスタートアップとしては珍しい。CTOとして木戸氏は、この経営判断をどのように受け止めているのだろうか。そして、リブランディングを発表することにどのような勝ち筋を見出しているのだろうか。
木戸ブルーオーシャンな市場に挑む会社としては、「この方向でいく」というメッセージを大々的に打ち出すのは正しい判断だと思います。もしも業務効率化SaaSのようなレッドオーシャンの市場で戦うとすれば、プロダクトを完成させてから発表するほうが妥当でしょうが。
たしかに、「手の内を明かす」という解釈もできるかとは思いますが、海外にも拠点を持つ体制を整えた私たちに、後出の企業はそうすぐには追いつけないと踏んでいます。また、すでに『Zeroboard』を通じて多くの大企業と深く連携できているのも、私たちの強みのひとつですね。スタートアップが入り込むことが難しい領域に、大企業の力を取り入れつつ、戦略的に入り込めていると思います。
同じく2年前に『Zeroboard』の構想を発表したときと比べれば、環境問題に対する意識は一層高まり、競合他社の存在感も大きくなっています。一方で、たった一社でサステナビリティ経営やESG対応といった幅広い分野を網羅するサービスを提供するのは、非常に難しいのも事実です。異なる領域を狙うプレイヤー同士が切磋琢磨しつつ、全体としてグローバルなサステナビリティ経営の枠組みを実現していくというのが私たちの基本的なスタンスです。セオリー通りの「選択と集中」が、今後の事業戦略の鍵となります。
開発を進めていく立場としては、「要件に応じてスピーディに対応すること」が求められるだけであり、今までと変わりません。欧州の状況をいちはやくキャッチアップするため、アムステルダムで活動しているリサーチャー兼コンサルタントのメンバーとの連携を強化しつつ、しっかり開発に落とし込んでいきたいです。
話を聞いてみると、このタイミングで打ち出された「Zeroboard Sustainability Platform」の構想は、戦略的かつ確信を持ったものだったとわかってくる。とはいえ、海外含めほとんど前例のない事業のかたちであり、参考にできるものも少ないため、簡単な経営判断では決してなかったはず。その背景を紐解くため、構想の内容についてもうすこし詳しく聞いていこう。
時代を先読みした先にたどりついたプラットフォーム構想
「Zeroboard Sustainability Platform」の理解を深めるため、その前身となった『Zeroboard』時代からゼロボードの事業内容を振り返る。代表の渡慶次氏は、前身となるスタートアップにてエナジーソリューション部門を立ち上げ、電力トレーサビリティシステムやマイクログリッド実証など数多くのエネルギー関連事業を組成してきた。その事業の過程でGHG排出量の算定ニーズがあることを掴み、GHG排出量算定・可視化サービス『zeroboard』(当時は全て小文字)の開発に着手。同事業のMBOを実施し、2021年9月に新たな法人としてゼロボードを立ち上げた。
同社は機能性に富む『Zeroboard』を軸として金融・商社・エネルギー会社などを巻き込んだエコシステム形成を推し進め、国内上場企業におけるトップシェア(※)を獲得。2023年3月には新たにタイに拠点を設け、グローバル進出への歩みも着々と進めている。
今回の主テーマとなっている「Zeroboard Sustainability Platform」構想では、既存のプロダクトである『Zeroboard』に並び、ESGデータを効率的に収集する『Chain Tracer(仮)』、収集後のデータを可視化する『ESG Dashboard(仮)』、そしてサステナビリティ領域の専門チームによるコンサルティングを結び、サステナビリティ経営の高度化と企業価値の最大化を実現するプラットフォームを打ち立てるという壮大な図を描いた。こうした包括的なプラットフォームの構想は、いつ渡慶次氏のなかで生まれたのだろうか。
渡慶次はじめからプラットフォーム構想があったわけではありませんが、「一社ごとにSaaS(=Zeroboard)を売る」というビジネスモデルでは、抜本的な脱炭素化を実現できないことは確かでした。そんな課題感はどんどん強まっていました。
そのため、パートナー企業の巻き込みとエコシステムづくり、データ連携といった戦略は、以前から強く意識していたところです。その延長線上にプラットフォームという答えが導きだされました。
極めて難度の高い「企業のサステナビリティ経営」という課題に真っ向から挑み、大企業と連携しつつ確実かつスピーディな事業展開を実現してきたゼロボード。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。
木戸私たちが挑んでいるのは、いわばベンチマーク不在の戦いです。しかもお客様によってニーズや取り組みの度合いに大きな差があるので、汎用的なプロダクトにしていくのは極めて難しい。
また、渡慶次さんが言っていた「先読み」という戦略は、言い方を変えれば誰よりも専門知識を蓄えるということでもあります。その結果、お客様との間にリテラシーギャップができてしまい、お客様にとって価値を理解するのが難しいプロダクトになってしまうという課題も新たに生まれてきました。
渡慶次いくら時代のニーズを先読みして、それをプロダクトに落とし込んでも、それが必ずしも事業成長に直結するとは限りません。『Zeroboard』に加えるかたちで始めた算定支援のコンサルティングサービスも、そういったギャップを埋めるためのひとつの手段でした。プロダクトを活用いただくまでの道のりを、コンサルティングによって補完したのです。
このように、お客様の状況やグローバルの動向を捉えつつ、ゴール達成に向けての手段は都度調整していく必要があると感じています。「Zeroboard Sustainability Platform」の構想も、そういった道のりの一歩ですね。
木戸渡慶次さんがめざすゴールは明確なのですが、それを形にするには莫大な時間がかかるんですよ。例えるなら、今なお建設途中のサグラダ・ファミリアのようなものでしょうか(笑)。
ゴールは見えているのですが、そのスケールが極めて大きいですし、時代によって開発の最適解が変わっていきます。そもそも実際にコードを書いて開発する以前の部分で多くの苦労があり、時間を要します。
たとえばこんな問いに、プロダクトマネージャーもエンジニアも日々向き合っています。この価値は本当にプロダクトというかたちで提供すべきものなのか?その価値が今後の社会情勢の中で変わりゆく可能性はないのか?他社ではなくゼロボードが取り組むべきなのか?本当に開発優先度が高いものなのか?
社内には、最先端の高度な知見を持つ専門家チームを置いています。私たちも開発陣としての目線から専門知識をキャッチアップしなければ、良いプロダクトをつくるための社内協議も進まないので、非常に難度の高いことをやっていると感じます。このように、それぞれの現場で多くの思考と工夫が必要になってくる点が、この事業の難しく、そして面白いところですね。
渡慶次ちなみに、木戸さんが引っ張ってくれているからこそ、メンバーの多くが「とてつもなく難しいプロダクトだけど、挑戦する価値がある」と思ってくれているんです。これまでの経験と知見を存分に活かし、苦労しながら取り組んでくれている姿がとても頼もしいですよ。
ゼロボードの顔として渡慶次氏がスポットを浴びる機会は多いが、その事業構想を緻密な設計によって実現してきたのは、CTOの木戸氏と、率いる開発チームである。渡慶次氏も以前、「ゼロボードはあくまで、プロダクトの会社だ」と強調していた。
誰もが不可能と思えるような、時代を超える大建設に挑むチームの裏側が、ハードシングスのエピソードから垣間見えた。
唯一の「脱炭素OS」としてわかりやすい脱炭素化の道を示す
さて、ここで「Zeroboard Sustainability Platform」からすこし離れ、冒頭に木戸氏が述べていた「脱炭素OS」という言葉にも着目してみよう。今後ゼロボードがどのような価値を提供していくか伝えるための言葉として「脱炭素OS」を掲げているわけだが、なぜ“OS”という概念をここで打ち出すのか、改めてその意図を渡慶次氏に聞いていく。
渡慶次国際社会を脱炭素化させていく道のりは、極めて難しいものです。そのプロセスをゼロボードが明確に示していけるのだとわかりやすく伝えるため、イメージしやすい「OS」という言葉を冠しました。
私たちが日ごろ使うPCやスマートフォンを使いやすくしているのは、OSですよね。OSは、そこにどんなアプリケーションを入れればより良い使い方ができるのか、ユーザーに道筋を示す役割を果たしています。
これと近しい役割を、まずは脱炭素社会の実現に向けてゼロボードが果たしていきたいと考えています。
サプライチェーンや金融機関との連携をさらに強め、さまざまなアプリケーションやソリューションをこの「脱炭素OS」上に載せていくことで、サステナビリティ経営に挑むユーザーの利便性を高めていく。その結果、ステークホルダーが総じて地球環境に配慮した最適な経営を実現できる。こういった道のりを示唆する言葉として、OSという概念を用いると私たちの役割をイメージしやすいのではないでしょうか。
これまでゼロボードは「データプラットフォーム」という言葉で自社の役割を説明してきました。『Zeroboard』を通じ、企業がデータを連携していくことを伝えていたのです。しかし、脱炭素化を実現するためには、データ連携だけでなく、社会あるいは企業そのものを操作していくようなアプローチも求められます。OSという表現のほうが、めざす姿に適していると考えました。
木戸プロダクトをつくるにあたっても、OSという共通認識ができたことで、一層「誰にでも使いやすい直感的なユーザーインタフェースを目指す」というゴールが明確になりました。ルールメイキングとともに開発を進められる強みを活かしつつ、ゴールまでの道のりを短縮・効率化していきたいと考えています。
しかし、現状は「使い方がわからないお客様に対してOSを用意したばかり」という段階です。ここからお客様に業務プロセスを理解していただき、OSを活用していただくのが一番難しい部分ですね。
文書を書くならばテキストツールを、計算したければ表計算ソフトを。では、脱炭素化は何を使えば……?今、お客様のなかでは脱炭素化という目的と、それを実現する手段がつながっていないのです。
この部分を、リーディングカンパニーとしてしっかり紐解きつつ、OSを基盤として広く活用していただくところまで導くことが、今後注力する課題だと認識しています。
「Zeroboard Sustainability Platform」構想と、提供価値を象徴する「脱炭素OS」。その双方の解説を聞いたところで、改めてゼロボードの今後の展望を聞いていこう。めざすゴール実現に向けて、進捗は何%程度なのか率直な意見を聞いてみた。
渡慶次数%というところでしょうか。そもそも、理想像の定義もまだ確立はできていませんね。
木戸私も数%という感覚です。『Zeroboard』を通じてGHG領域での理想像は見え始めていますが、ESGやその他の分野への展開を考えると、まだまだできていないことだらけですね。
これまでも事業として非連続な成長を続けているゼロボードの歩みを考えれば、想像以上に低い数字である。進捗率を今後上げていく要因は、何なのだろうか。
木戸まず、コンサルティング領域をプロダクトでカバーしていくことが挙げられます。注目されるLLM(大規模言語モデル)を取り入れ、コンサルティングが担う領域をAIに任せていく取り組みも、こうした狙いがあって始めたことです。「脱炭素とはそもそも何なのか」といった体系的な疑問に答えることはLLMの得意分野ですから、お客様の疑問に答える機能をすこしずつプロダクトに反映していきたいですね。
人の力を要する領域を効率化していくのはITの本領ですから、今後もニーズの高いところから順に要件を把握し、プロダクトの機能開発を進めていくことになるでしょう。
一方で、ゼロボードは単なる“プロダクト売り”ではありません。お客様に最適なソリューションを届けるために、コンサルティングという手段も必要不可欠だと考えていますし、今後もその価値が消えることはありません。開発の起点となるユーザーニーズをコンサルティング領域からすくいあげ、効果的・効率的に進めていくことを今後も意識していきます。
構想実現のためには、やはりプロダクトの進化が鍵となる。コンサルティングによって顧客視点の課題を抽出しつつ、一方でグローバルな要請を受けた機能改善にも取り組んでいく。この両面からプロダクトに磨きをかけ、壮大なビジョンを実現する仕組みをつくり上げていくプロセスは、非常にチャレンジングかつ意義を感じるものと言えるだろう。
地球もステークホルダーである──100年後に想いを馳せ、社会全体の効率化に挑む
ここまで見てきたように、同社は「見えている具体的なユーザーニーズ」ではなく、「これから確実に生まれるであろうユーザーニーズ」を先取りしたプラットフォーム構想を描いているわけだ。その緻密さ、あるいは唯一無二の解像度の高さをうかがい知ることができたのではないだろうか。
だが、二人の話はこれで終わらない。プラットフォーム構想のさらにその先の未来も当然、この地球にはあるのだ。
渡慶次私たちが向き合っているのは、人や企業が生まれ活動している「地球環境そのもの」です。もの言わぬステークホルダーである“地球”に対して、サプライチェーンのなかの誰が多くの負荷をかけているのか。それを可視化したうえで、最適なソリューションを適切な形で経済社会に組み入れていく必要があります。
いま、気候変動という大きな課題が差し迫るなか、私たちは社会全体の効率化と改善を担っていくべきだと言われ始めていますが、ほとんど進んでいません。次の世代が住みよい地球を守っていくために、すべきことをする。これが私たちの使命です。
こうした考えが「経済活動の縮小」につながると危惧する方もいるかもしれませんが、脱炭素を大きく前進させるイノベーションの登場を待ちながら、社会全体の効率化・最適化を可能とするOSとして機能する。それが、成長と脱炭素を実現する数少ない解の一つだと考えています。対企業ではなく、あくまで対地球の視点をもって事業を推進していることは、ゼロボードの強みとも言えるかもしれません。
木戸多くのメンバーが、「地球をより良い環境にしたい」「自分の子どもたちが住みよい環境をつくりたい」という想いを抱き、それを実現するための手段としてゼロボードにジョインしています。そのためのデータ可視化を実現する『Zeroboard』に始まり、現在は企業価値への向上へと結びつくプラットフォームづくりへと歩を進められました。
こうして地球規模の改善に向けてプロダクト開発が進んでいることは、開発メンバー一人ひとりのモチベーションにも直結しています。
「対地球」で物事を捉え、次世代に住みやすい環境を継いでいく。こうした使命が事業の根本にあることが、極めて長い道のりを歩み続けるゼロボードの原動力となっている。最後に、候補者の方々へのメッセージを含めて、ゼロボードが描くゴールを端的に説明してもらった。
渡慶次100年後にはゼロボードが要らない世界、つまり、GHG排出量を気にしなくていいような世界を実現したい。こういった話を、よく社内ではしています。ゼロボードの事業が仕組みとして世界に浸透すれば、そもそもそんな仕組みすら要らなくなるはずですから。
木戸そのゴールに向けて、着々と開発を進められている手応えはあります。ダイエットに例えるなら、今は体重を知ってダイエットを始めようという段階です。これから体型を維持するための手段を伝え、習慣として定着させられれば、ダイエットすら必要なくなりますよね。
私たちの取り組みのほか、新たなエネルギー創出や燃料づくりといった文脈でも進化は続いていきます。ただ「可視化して減らしていく」ことだけが、解決の方法ではありません。きっとそう遠くない未来、そういったまったく別の手段が新たに生まれるとも思います。
渡慶次私たちにはベンチマークと呼べる存在がいませんし、生みの苦しみはやはり大きいものです。一方で自分たちが考えたプロダクトを世に届けていくこの仕事は、創造性にあふれていて面白いと心から感じています。
それと良く勘違いされるのですが、ゼロボードはいわゆるタイムマシンモデルに基づいた戦略ではありません。たしかに規制面は欧州が先んじていますが、ソリューションについては差がありません。各国のリーディングカンパニーと同じフェーズで競いながら、最先端の社会課題に向けて開発を進めている状況なんです。「脱炭素OS」を掲げ、日本発・唯一無二の価値を世界に届けることができる会社だと、自信をもってお伝えできます。
木戸私からも最後に開発視点でお伝えしたいことを話しますね。目先のスピード感を重視して「とりあえずあとで考えればいいや」というスタンスのものづくりはしていません。私たちのプロダクトがサステナブルであることを常に意識し、将来的にも大々的な改修を必要としない設計を心がけています。
そういった長期的な視点を持って開発に臨める環境で働けることは、エンジニアとしてやりがいあるポイントだと感じます。
100年後の地球を考えたことがあるだろうか。そして、その未来に自分ができることがあるなどと想像したことがあるだろうか。「Zeroboard Sustainability Platform」の発表を受けて設けられた今回の対談を通じて見えてきたのは、ゼロボードが挑む未来のスパンの長さと、その実現に向けた確度である。
まさに唯一無二の視座で事業・プロダクトの挑戦に臨むこの2人。感化された読者も少なくないだろう。改めて、この領域への関心を高める機会としてもらえれば本望だ。
こちらの記事は2023年10月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
宿木 雪樹
写真
藤田 慎一郎
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