MBBマフィアの次なる住処──コンサル大手の経験を引っ提げスタートアップCxOへ。FastGrow厳選、MBB出身のCxO特集

近年、消費行動において、企業の想いやこだわり、世界観への共感が重視されることが多くなってきている。読者にも、こうした“共感軸”で商品やサービスを選んでいる方もいるのではないだろうか。

この現象は消費行動だけにとどまらず、キャリア選択においても現出している。給与や福利厚生などの待遇面ではなく、企業の目指すビジョンや経営者の想いを重視する傾向が強くなっているという。

またキャリア領域では、もっと切実な別の変化も起きている。終身雇用が崩壊して久しく、かつ変化の激しい時代でもある現代。そんな時代を生き抜くために、会社に依存せず自律的にキャリアを築こうとするムードが高まりを見せているのだ。

こうした背景から、事業を通じて社会を変革しようとする熱い想いを持ち、かつ若いうちに裁量権のある役割を経験して成長できるスタートアップへの転職も増加している。エンジャパンの調査によると、34歳以下の若手1,067人の内、約7割がスタートアップへ転職したいと考えているそうだ

ただ、スタートアップの世界へ飛び込むのは若手だけではない。自ら起業する人もいれば、社員として入社して取締役に就任する人もおり、関わり方は人それぞれだが、CxOとなるようなハイレイヤーな人たちも、次々にスタートアップでの新たなチャレンジをはじめている。

なかでも、人材輩出企業として名高いマッキンゼー・アンド・カンパニーなど、コンサルティングファームからスタートアップへの挑戦を選んだ人々には、目覚ましい活躍を見せる人が多い。

そこで今回は、「MBB」と略される3大戦略コンサルティングファーム「マッキンゼー・アンド・カンパニー」、「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)」、「ベイン・アンド・カンパニー」出身のスタートアップCxOを紹介する。本記事が、まだ知らないスタートアップを知るきっかけとなればうれしい。

  • TEXT BY ENARI KANNA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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コンサルtoスタートアップを象徴する3名

MBB出身のCxOとしてよく名前が挙がるのが、ラクスル 取締役COOを経て現在はストラテジックアドバイザーを務める福島広造氏、オイシックス・ラ・大地 代表取締役社長の高島宏平氏、キャディ 代表取締役社長 加藤勇志郎氏らだ。

ラクスルの福島氏は、BCGにて企業変革およびテクノロジー・アドバンテッジを担当したのち、2015年にラクスルに入社。経営企画部長やラクスル事業部長を勤めた後、全社の取締役COO及びRaksul事業CEOを経て、現在はストラテジックアドバイザーへ。

また、同氏はBizDevというロールをスタートアップ界隈において一般化させた第一人者でもある。過去のFastGrowのインタビューでは、ものづくり領域における新たなBizDevである「産業変革請負人」についても語ってくれている。事業開発に携わる方や関心を持つ方には、ぜひご一読いただきたい内容だ。

生鮮食品の通販事業を行うオイシックス・ラ・大地の代表取締役の高島氏も、同じくマッキンゼーでの就業経験を持つ。

実は高島氏にとって、オイシックス・ラ・大地は二度目の起業になる。一度目は大学院時代で、友人とともにインターネット関連事業を行っていたのだという。事業は順調に伸びてはいたものの、「この事業を生涯やっていく仕事とするのは違う」と感じ、より具体的で明確な事業計画を立て、もう一度集まることを友人と約束して解散。ビジネスパーソンとしての力をつけ、より鮮明な事業イメージを持つべくマッキンゼーに新卒入社したのだ。

入社後は、Eコマース領域にて活躍。共に会社を営んでいた友人たちとは、入社後も毎週末集まって、事業の方向性を話し合っていた。その結果、「人の役に立っている自分が好き」「自分たちが生み出したサービスで社会を良くしたい」との答えに辿り着き、オイシックスの創業に至ったそうだ。

マンガの影響で「マッキンゼー」を辞めた男 高島宏平・オイシックス社長の好き嫌い(上)

そして高島氏と似たキャリアを歩んでいるのが、キャディ代表取締役社長である加藤氏だ。高島氏と同じく大学時代にIT企業を立ち上げたものの、「このままではWebでしか戦えなくなる」との危機感から、起業を前提として新卒でマッキンゼーへ入社している。

マッキンゼーでは、重工業、大型輸送機器、建設機械、医療機器、消費財を始めとする大手メーカーに対して購買・調達改革をサポートする経験を積んだ。

その経験をもとに、100年以上イノベーションが起きていない製造業の調達分野における非効率や不合理を解決するため、2017年11月キャディを創業。加工品製作を行う『CADDi MANUFACTURING』などのメーカーの効率化をサポートするサービスを展開する。2023年7月にはシリーズCラウンドにて、118億円の資金調達を実施するなど、大きな飛躍を見せている。

ここで紹介した3名に続き、MBBからは数々のベンチャー / スタートアップCxOが誕生している。ここからは、そのなかでも特に注目の6名を取り上げていく。

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学研を1兆円企業にする挑戦──Gakken LEAP 代表取締役CEO 細谷仁詩氏

スタートアップの多くは、自分たちが事業を通じて課題解決を行うことで、社会変革を目指している。その手段はさまざまだが、とりわけ教育、なかでもよりよい未来を作る人材そのものを育てていくといった、EdTech企業の社会的インパクトは大きい。

そこでFastGrowが注目する企業が、Gakken LEAP である。学研グループが70年以上にわたり蓄積してきた知見を活かし、教育のデジタル化に取り組むために設立された同社。その代表を務めるのは、マッキンゼー出身の細谷仁詩氏だ。

細谷氏は、JPモルガン証券での5年の勤務を経て、2013年にマッキンゼーへ入社。より現場の近くで事業を伸ばす経験を積むべくコンサルを選んだものの、その道は厳しいものだった。在籍中は、スケジュールがタイトなプロジェクトで精神的に追い詰められたこともあれば、大手企業の経営層を相手に自分はいったいどんな価値を届けられるのかと試行錯誤することもあったそうだ。

一方、コンサルとして企業の現場に足を踏み入れる中で、企業変革のボトルネックは、個々の人材のモチベーションの低さや育成不足、能力不足にあるのではと感じるようになった。

そしてこの問題を解消し、「日本からグローバルリーダーとなる人材を輩出したい」「多様な事業ポートフォリオを持つ学研であれば、一人でも多くの人々にブレークスルーを与えられるチャンスがあるはずだ」と考え、学研への参画を決める。21年4月に学研ホールディングスの執行役員に就任したのち、21年12月のGakken LEAP設立と同時に、代表取締役CEOとなる。

代表に就任して2年目となる2023年6月には、初のプロダクトであり、リカレント・リスキリングという、学研としては扱う領域としても初となる『Shikaku Pass』をリリース。従来の学研の主要顧客といえば、子どもを持つ40〜50代のユーザーだった。しかし、このコンテンツでは主に20〜30代の社会人ユーザーを対象とし、新たな新境地を開拓していく格好となる。その意味では、Gakken LEAPとしてはもちろん、学研グループとしても新たな挑戦と言えるだろう。

『Shikaku Pass』はリリース後も進化を続け、リリース当時に学習できた「ファイナンシャルプランナー3級」と「基本情報技術者」に加えて、現在は「ファイナンシャルプランナー2級」や「ITパスポート」の資格取得に向けた学習ができる。今後はさらにラインナップを増やし、「TOEIC」「韓国語」「宅建」「AWS」の講座の開始も予定している。

こうしたGakken LEAPの挑戦を率いる細谷氏だが、実は学研ホールディングスへの入社前から、学研を1兆円企業にするプランを立てていた。

このプランが学研ホールディングスの代表取締役社長の宮原氏の心を動かしたことが、彼が学研に参画する大きなきっかけともなっている。1兆円企業への挑戦はまだまだ始まったばかり。細谷氏のプランはいったいどのようなものなのか、今後のGakken LEAPの動向を通じてチェックしていきたい。

ちなみに──。現時点ではまだ詳細を明かせないが、なんと今月から細谷氏のマッキンゼー時代の後輩もGakken LEAPに参画することが決まっているとのこと。ぜひ、今後FastGrowでお披露目できることを楽しみにしてもらえたらと思う。

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事業成長のための採用にコミット中──ビビッドガーデン COO 山下麻亜子氏

続いては、日本の一次産業にアプローチするビビッドガーデン運営の『食べチョク』から。2017年に誕生した同サービスは、農作物や海産物の生産者と消費者をオンライン上で直接つなぐものだ。

消費者は生産者の顔を見ながら、安心して食べられる食材を選ぶことができ、生産者にとっても自分たちのこだわりやストーリーを発信することで、自らの生産物をより多くの人に届けやすくなるというメリットがある。

誕生以後、着々とユーザー数を伸ばし、日本最大級の産直通販サイトの地位を獲得した『食べチョク』。2023年1月には、シリーズCエクステンションラウンドとして約7億円を追加で資金調達。シリーズCラウンドでの資金調達額は合計で約20億円となった。

そんな『食べチョク』というサービスやビビッドガーデン全体の成長を牽引しているのが、COOの山下麻亜子氏だ。マッキンゼーに新卒入社し、7年間経験を積んだのち、2020年6月ビビッドガーデンに入社。その後は2021年2月取締役に就任し、2022年5月にはCOOへとステップアップした。

マッキンゼーでは消費財や小売業の全社戦略などに携わっていたという山下氏が事業会社への転職を決める要因となったのは、事業会社への出向経験や、新規事業立ち上げのプロジェクトへの参加だ。事業会社の面白さに目覚め、「事業をつくりマネジメントする側に行ってみたい」と考えるようになった。

しかしコンサルから事業会社の転職となると、年収を維持することは難しいイメージがある。その点は気にならなかったのだろうか。結論から言うと、年収よりも得られる経験を重視して、ビビッドガーデンでの挑戦を選んだのだという。

山下氏は以前登壇したイベントでも、「今、事業と経営にコミットできるようなポジションに就くことは、何十年というトータルのキャリアを考えたときにすごく良い経験になると思ったので、年収の部分はそこまでは気にしませんでした」と話している。

現在COOという、入社時の希望であった「事業と経営にコミットする」ポジションに就く山下氏。そんな彼女の目下のミッションは、事業成長のための「組織づくり」だ。COO直下で採用や組織活性化を担うチーム・People Empowermentチームを率いながら、これからのビビッドガーデンの成長を加速させる人材の採用や、そうした人材がパフォーマンスを最大限発揮できる組織づくりに力を注いでいる。

これまで経験のなかった人事領域にも挑戦し、自身のスキルを高め続ける山下氏。彼女がこれからどのように羽ばたいていくのか、それに伴ってビビッドガーデンはどうなっていくのか。FastGrow編集部としても、引き続き追っていきたい。

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徹底した数値化で成し遂げた急成長──FLUX 代表取締役CEO 永井元治氏

徹底した結果主義を取ることで有名なベイン・アンド・カンパニー。その精神を受け継いだ永井元治氏によって設立され、まさに“結果を出している”スタートアップがFLUXだ。2018年の創業から5年となる2023年6月には、早くもシリーズBラウンドで44億円のシリーズBラウンドでの資金調達を実施。累計資金調達額は56億円となった。

26歳という若さで起業し、この輝かしい成長を成し遂げている永井氏。彼がその才覚を表し始めたのは大学時代。慶應義塾大学法学部の在学中に、学業の傍らアジア最大規模の国際学生会議「ハーバード大学アジア国際関係プロジェクト」の運営リーダーを務めた。ハーバード大学および慶應義塾大学の教授陣はもちろん、楽天・三木谷浩史氏、サントリーホールディングス・新浪剛史氏などの著名人が登壇し、数百名規模が参加するイベントの運営を見事にやってのけたのだ。

就職活動では、「たくさんの世界を覗き、様々な人と言葉を交わしたい」との好奇心から、多様な事業や業界に関われるコンサルティングファームを志望し、ベイン・アンド・カンパニーへ入社する。同社へ在籍していた2年半の間に、大手通信キャリアの戦略立案や投資ファンドのデューデリジェンスなど10のプロジェクトに関わった。特に、デューデリジェンスは印象深い。知らない業界について1〜2週間という限られた時間で調べ上げることで得た現状分析や将来予測を精度高く行う力は、会社経営にも活きているという。

そして、最初の昇格が決まったことをきっかけに退職。転職も考えたが、「若いうちにリスクを取りたい」との想いから、学生時代からの友人である平田慎乃輔氏を含めた4人で2018年5月にFLUXを創業した。

創業後は、平田氏の詳しい領域であった、マーケティングや営業を効率化するSaaSプロダクト『FLUX Autostream』をリリース。永井氏自身はデジタルマーケティングの知見はなかったものの、知らない業界について調べて、情報分析をする経験を積んできたからこそ、未知への抵抗感を持つことはなかったという。このプロダクトが顧客に評価され、先述の資金調達を可能にするほどの成長の礎を築いた。現在はノーコードAIプラットフォーム『FLUX AI』を通じて『FLUX Autostream』を含む複数のサービスを提供している。

こうした成長を成し遂げられた理由のひとつが、事業においてはもちろん、組織においても数字にコミットしてきたことだ。FLUXでは、各ポジションの必要スキルを数値化したり、部下のエンゲージメントスコアをマネージャーの昇格条件にしたりと、指標が曖昧になりがちなHR領域でも、明確な指標を設けている。

これに大きな影響を与えているのが、永井氏のバックボーンである、ベイン・アンド・カンパニーの組織体系だ。同社では、属人的なコミュニケーションが好まれず、すべての意思決定や施策実行が客観的に行われているのだそうだ。そうした環境だからこそ“徹底した結果主義”を貫けるのだと感じ、FLUXでもそのエッセンスを取り入れている。

すでに上場を見据えて準備をしているという永井氏。既存サービス強化にとどまらず、これまでに得た技術やデータを活かした他領域への展開も考えているとのことだ。永井氏はどのような将来を予測し、どんな一手を打つのか。新たな知らせを楽しみに待ちたい。

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これまで培った戦略やデジタルの知見を武器に、新たな挑戦へ進む──カソーク 代表取締役 関彩氏

永井氏と同じくベイン・アンド・カンパニーでの経験を持つのが、カソーク代表取締役の関彩氏だ。

関氏は、京都大学大学院農学研究科を卒業後、ベイン・アンド・カンパニーに入社。全社成長戦略の立案や新規事業創出案件などのプロジェクトに従事した。クライアントの成功のために全力を注いだ6年間は、「とても刺激的で、苦しくもある、それでいて楽しい日々」だったと関氏は回想している。

そんな関氏が転職を考えたのは、プロジェクトで消費財メーカーを担当したことがきっかけだった。ある時、クライアントが新商品を嬉しそうに紹介してくれた。その、自分たちの作った新商品が世に出たことへの喜びに溢れる姿を見て、自社製品を世の中に送り出す喜びを味わってみたいと感じたのだ。

そして2015年にベイン・アンド・カンパニーを退社。コンサルで得た分析スキルを駆使した末に選んだ転職先は、美容系の消費財メーカーであるビーエックス。経営戦略担当としての転職だった。ここでの勤務を通じて、「全員がビジョンに共感できれば、想定以上の効果を得られる」という事業会社の面白さに気づく。

一方で、デジタル領域の経験不足を感じる場面が増えていた関氏。その知見を学ぶため、2020年ユナイテッドに入社をする。ここでは事業戦略部長や人材開発部部長、DXソリューション本部 本部長を経験した。そして2023年、ユナイテッドの子会社として設立された、複業・転職プラットフォームサービス『Kasooku』を運営するカソークの代表取締役に就任する。

以前のインタビューでは、「コンサルティングファームの場合、すべて材料を揃えた上で戦略を立てて報告を行うので、“途中で言っていることが変わる”ということはありません。一方、事業においては、刻々と変わる状況に対して“現時点での答え”を示し続けていく必要があります。そのため、文字通りの朝令暮改が起きることも少なくありません」とコンサルと事業会社との違いを率直に語ってくれた関氏。

こうしたギャップを感じながらも、事業をよりよくするべく試行錯誤を重ねている。企業のマーケティング組織の成果向上を目指すべく、2024年1月にはプロマーケターシェアリング事業を行うThinkPunksと業務提携をするなど、挑戦を続けているカソーク。代表に就任してまだ1年ほどですでに頭角を現す関氏が、これからどのようにカソークを成長させていくのかに期待だ。

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創業3期目にして年間売上10億円の成長企業を率いる──Wonder Camel 代表取締役社長 和田淳史氏

創業からたった3年しか経っていないにもかかわらず、年間売上10億円と破竹の勢いで成長を遂げているスタートアップがある。SAP案件とフリーコンサルタントのマッチングプラットフォーム『quickflow』をメイン事業とするWonder Camelだ。

同社の代表である和田淳史氏は、過去にアビームコンサルティング、BCGに在籍。5年間勤務したアビームコンサルティングでは、SAPシステムの導入や要件定義に従事した。ほとんど身ひとつでメキシコに行きプロジェクトを推進したり、その後はアメリカにも出向するなど、海外経験も豊富だ。帰国後は、「より戦略的な仕事をしたい」との想いからBCGに転職。戦略となるとクライアントの目は厳しくなったが、その分クライアントに貢献できた時の喜びも大きかった。

また、BCGでは得られないベンチャーやスタートアップに関する知見を獲得するために、フィンテックベンチャーでの副業も開始する。平日はBCG、土日はベンチャーと多忙な日々を送るが、充実感も大きかった。こうした小規模な組織でともに試行錯誤しながら喜びを分かち合う経験をしたことで、「自分自身も仲間と共に社会に爪痕を残し、その喜びを分かち合いたい」と考えるようになり、2021年にWonder Camelを起業する。

創業当初は、フリーコンサルタントとしてコンサルティング案件を受注していたという和田氏。しかし、フリーランスに報酬が支払われるのは、稼働月の翌月末以降であることが多く、キャッシュフローに伸び代を覚える。それこそ、マッチングプラットフォームを使えば稼働の締め日から45日ほど待つことも珍しくないのだという。この問題は、フリーランスの挑戦を阻害することにもなりかねない。

自身がこの課題を身をもって感じたことが原点となり、『quickflow』が誕生した。クライアント集めにはフリーコンサルタント時代の支援経験が活き、取引実績のある企業の紹介でまた次の企業へと受注先を広げていった。登録ユーザーは一般的なネット広告のほか、SNSでの発信を通じて集客を実施。こうしてtoC、toBの集客がともにうまくいったことが、Wonder Camelの成長に大きく寄与した。

Wonder Camelでは『quickflow』のほか、転職支援事業、経営コンサルティング事業からヘルスケアベンチャー支援事業まで、幅広い事業を展開している。一見つながりのなさそうなこれらの事業を結びつけているのは、「人々が挑戦しやすい社会をつくる」ことにつながるということだ。

この実現のため、創業3期目にしてM&Aを行いRotoworksを子会社化。企業のDX支援や、エンジニアが上流工程に関わる機会の創出につなげていく。「あと5年で100億円企業を目指す」というWonder Camel。

明確な事業ドメインがなく「人々が挑戦しやすい社会をつくること」であればなんでも取り組もうとするWonder Camelだけに、なおさら今後どんな事業に取り組むのか未知数だ。次はどんな挑戦を行うのか、今後の展開に注目したい。

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儲かる農業の実現に向け、農業改革に取り組む──日本農業 CEO 内藤祥平氏

日本の農業には課題が山積している。高齢化による農業の担い手の減少、それに伴った耕作放棄地の増加、TPPによる価格競争の激化などは代表的な例だろう。しかし、日本の農作物には大きなポテンシャルも秘められている。特に果物は海外で高い評価を得ている。いちごやりんごに関しては、芸術品と称されるほどだ。

この日本の農作物を世界に広めて、日本の農業を儲かるものにすべく日々農業と向き合っているのが、日本農業CEOの内藤祥平氏だ。イリノイ大学農学部卒業後、鹿児島やブラジルの農場でインターンを経験。その後にマッキンゼーの農業セクターに従事するなど、一貫して農業に携わってきたキャリアだ。これらの経験を経て、2016年に日本農業を設立した。

実は内藤氏は、実家が農家などの農業が身近な環境で育ったわけでない。にもかかわらず、なぜ農業だったのだろうか。農業に魅了されたきっかけは、高校時代に自転車で日本縦断を行ったことだった。農家の方からもらったフルーツがあまりに美味しく、「この業界いいな」と思ったのだという。

そこで、農業が進んでいそうなアメリカのイリノイ大学農学部へ留学。進学してみて、学生たちが当たり前に農業をビジネスとして捉えていることに驚いた。しかし、M&Aや海外展開などが行われ、ビジネスとして農業が確立している一方、味は日本の農作物の方が勝っていると感じたという。そこにチャンスを見出したのだ。

日本農業では、農業改革によって日本の農業のポテンシャルを最大限発揮するべく、生産性向上と規模の拡大に取り組んでいる。日本の農作物を世界で売るためには、価格を今よりも抑える必要がある。そのためにも、生産性を向上させなければならない。また、世界のマーケットで戦うための規模を担保することも必要だ。

そのために具体的に現在取り組んでいる事業は3つ。売上の8割を占めるりんごの輸出のほか、“儲かる”農業を実現する仕組みである「高密植栽培」をパッケージ化して農家へ販売している。また、りんごだけにとどまらず、ほかの農作物の輸出も行っているという。日本の農業は国内に限定されていることが一般的ななかで、最初から世界で売ることを前提としているところが同社のユニークポイントだ。

内藤氏のチャンスの嗅覚が正確であったことを証明するように、22年3月期の売上は36億。23年3月期は売上約60億円の見込みだという。売上200億円を目指すべく、今後はさらなる営業拡大、人員確保、仕入れ増加に取り組む予定だ。いつか海外のそこかしこで、日本の農作物を目にする日が来るかもしれない。その日まで、引き続き内藤氏の挑戦を応援したい。

こちらの記事は2024年03月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

えなり かんな

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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