連載イノベーション・メカニズム

プロダクトアウトは、「ストーリー」があればイノベーションに変わる──“創業者”と“ユーザー”の想いで共創し続けるマクアケの秘密

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インタビュイー
坊垣 佳奈
  • 株式会社マクアケ 共同創業者 取締役 

同志社大学卒業後、(株)サイバーエージェントに入社。子会社3社の創業や経営参画を経て、2013年(株)マクアケの立ち上げに共同創業者/取締役として参画。DEIを意識した時代に即した組織づくりや、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」の事業拡大に従事しながら、全国各地での講演や金融機関・自治体との連携などを通した地方創生にも尽力。ENECHANGE(株)の社外取締役にも就任。著書に『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版、2021)。

徳谷 智史

企業変革請負人。人財・組織開発のプロフェッショナル。京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内PJリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ代表に就任。その後、「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」べく、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサルなど、業界トップ企業から、先進スタートアップまで企業変革/投資を手がける。近年は、AI等を活用したHR Tech分野の取り組み、事業開発や、個の価値を最大化する意志決定・キャリア支援サービスみんなのエージェント他を運営。高校・大学などの教育機関支援にも携わる。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。東洋経済Online連載、著書「いま、決める力」、Podcast「経営中毒~誰にも言えない社長の孤独」メインMC等

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イノベーションって、どのようにして起こるのだろう?どうすれば、自分もイノベーションを起こせるのだろう?そんなあなたに遂に贈る、決定版。連載「イノベーション・メカニズム」。

イノベーション創出ファームであるエッグフォワード代表取締役・徳谷智史氏が、スタートアップのビジネスを対象にその秘訣を解明し、「メカニズム(構造)」として記録するこの連載。第1回目のゲストは、マクアケ共同創業者/取締役の坊垣佳奈氏だ。アタラシイものや体験の応援購入サービス『Makuake』を運営し、プロジェクト数は累計28,000件以上、メディア掲載は月間平均1万件以上と、社会に新たな価値観を創り出したと言っても過言ではない。

「イノベーションを起こそう、まずはニーズ調査だ!」とまず考えるのが王道だと、あなたが思っているのなら幸いだ。何せこの記事では、その考え方を思い切りひっくり返す内容を解明していくのだから。「単なるプロダクトアウト」ではない、徳谷氏が言う、「ストーリー型のプロダクトアウト」を生み出したのが、マクアケだ。

一体その意味は何か?土台となっている「創り手の意志」をひも解くようなかたちで、新時代に求められるイノベーション・メカニズムを解明し、あなたに届けよう。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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共感ストーリーを、プロダクトアウトにかけ合わせたことが、マクアケがもたらした唯一無二の面白さ

坊垣イノベーションとは何か?と聞かれたら、「新しい文化や概念を、結果的に創り出すような事業」と答えたいですね。

徳谷なるほど面白いですね。マクアケさんはまさに、そうしたイノベーションを起こしてきたスタートアップだと感じます。さらに言えば、『Makuake』を利用する事業者さんにも、イノベーティブなプロダクトを世に広げる可能性がある。まさに「イノベーションのメカニズム」を感じさせてくれる事業ですよね。

社会に新たなイノベーションを起こすメカニズムを、事例を基に解明していくこの連載。徳谷氏とFastGrowが、マクアケの事業に感じたのは、「自社事業にとどまらないイノベーションを、メカニズムとして実現させている」という点だ。

徳谷氏による構造化を基に詳しく読み解いていくのだが、まずこのセクションでは概要をおさらいしていこう。

徳谷マクアケさんの事業は、一見、ECや、クラウドファンディングの延長に見えますが、「共感を生むストーリー」を基にした展開を遂げているという点が非常に興味深いですよね。

多くの事業が、顧客のニーズに応える、いわゆる「マーケットイン」の発想で立ち上がります。でもマクアケさんは明らかに、世の中にないサービスを創り出した、「プロダクトアウト」の発想ですよね。ただ、多くのプロダクトアウトのサービスが顧客の支持を得られない中、マクアケさんがなぜうまくいっているのか?それは、「共感を生むストーリー」を高い熱量で語り続ける構造が組み込まれているからなのかなと。

坊垣まさに仰る通りです。『Makuake』上の人気商品は、企画や開発といった“つくる過程”のストーリーを上手く伝え、共感を生んでいるものばかりなんです。

徳谷たぶん、マクアケのサービス内もそうですし、マクアケさん自体もそうだというのも興味深い点です。マクアケ自体が、応援購入を広げるという「共感を生むストーリー」がきちんとあって、そのうえで、プロダクトアウトの発想でプラットフォームをつくり、広げてきた。その結果として、事業が成長していく。「ただのクラウドファンディング屋さん」では、まったくないと。

とはいえ、マーケットインでサービスをつくるほうが最初は考えやすいと思うのです。坊垣さんたちはなぜ、「ストーリーのあるプロダクトアウト」をここまで進めてこれたんですか?

坊垣そこは、「私たちの意志」を、自身の創業前の体験を踏まえて経営としてとても強く持てていたからかもしれませんね。

徳谷なるほど、そこですね!意志や想いを強く持って立ち上げていかなければ、共感を呼ぶストーリーは生まれないと。ストーリーがなければ、広がりは限定的で、大きなインパクトのある事業になっていくことは難しい。

なるほど、やはり「創業者の原体験や強い意志」は不可欠ですね、だからこそストーリーが活き活きとして、広く共感が生まれていくんでしょうね。

マクアケ自体が、共感を生むストーリーを土台に、理想的なプロダクトアウトを実現している。そして、『Makuake』というプラットフォームを活用する事業者も同様に、共感を生むストーリーを土台としたプロダクトアウトの思想で、製品やサービスを生み出している。根底にあるものとして共通するのが、「創り手の強い意志」だ。

「創り手の強い意志」に裏打ちされた「共感を生むストーリー」を語り、「マーケットインから離れた、理想のプロダクトアウト」を実践していく。いわば、徳谷氏が新しく定義した「ストーリー型プロダクト」のかたちをなすメカニズムがある。マクアケの事業は、こうした構造の中でイノベーションを創出してきたと言えそうだ。

ここから、具体的な実践や考え方を見ていこう。

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「理想のプロダクトアウト」を社会に根付かせる挑戦

まずひも解いていきたいのは、「ストーリー型プロダクトアウト」が生まれた背景。スタートアップの事業モデル検討時にもよく話題にのぼる、マーケットインとプロダクトアウトの議論から、整理していこう。

徳谷改めて、マクアケさんがプロダクトアウト的な発想にこだわってきた背景や理由をお聞きできますか?

坊垣はい。昨今、いろいろな情報やツールが、使いこなせないほどに溢れていますよね。この中では、プロダクトや商品をマーケットインで考えると、どれも比較的似たようなアウトプットに辿り着いてしまうと思うんです。

いつの間にか同じようなサービスになり、差別化要素がなくなってしまう。

徳谷なるほど。顕在化しているニーズを捉えに行こうとすればするほど、似通ったアウトプットになってしまい、革新的な事業にはならないのではないかということですね。

確かに、顧客ニーズに真剣に取り組んでいると、競合と同じような結論に達してしまい、革新をもたらすまでに至らず、淘汰されることも実際少なくありません。世の中にない価値を創出しようとしたスタートアップが結局どこかの二番煎じになってしまうと。

坊垣そうなんですよ。実際に、『Makuake』の中で、継続して購入してくれるファンが付く事業者は、やっぱりこだわりや想いがものすごく強いなと感じます。どう見ても、マーケットインよりはプロダクトアウト寄りの考え方でものづくりをされているんですね。

競合との激しい競争のなかにいて、他と比べて差別化ポイントをつくるようなアプローチは、オリジナリティが生まれにくく、あまり意味のないことだと思います。「何をやりたいか」という想いをブレずに追及していけば、それが1番オリジナルな価値になるはずです。

徳谷非常に面白いです。コンサル出身の私が言うのもなんですが(笑)、まさにいわゆる事業環境分析とかって、だれがやっても同じような結論になってしまうんですよね。それでどこも勝てれば苦労はないと。自社の優位性やアセットが確立されていない場合は、そこに骨を通すものがパーパスや意志の強度ですね。これはものづくりだけでなく、スタートアップも含む、ビジネスの本質ですよね。

徳谷氏が興味を持ったのは、マクアケのイノベーションの土台になっている考え方が、マーケットインでもなければ、よくあるプロダクトアウトとも異なるという点だ。

徳谷プロダクトアウトを意識した結果、お客さんが全然付かない企業や事業が星の数ほど多くあります。一方で、最初からニーズに即したものだけ作って目先の売上ばかりを追い続ける事業や企業もありますが、目先の受託に右往左往してしまい、なかなか一定以上発展していかないという課題を抱えやすい。

マクアケさんのビジネスは、このような両極端な事態を超えていく構造にチャレンジしたのだと感じます。

坊垣はい。この世の中がどんどん「マーケットインだけ」になっていく感じがしていて、不安を覚えています。マーケットインはあくまで手段であり、大切なのは「その先に何を目指しているのか」のはず。

ですが、「プロダクトアウトだけ」でもなかなかうまくいかない。そこで私たちは「共感」が生まれるように支援してきました。

徳谷その「共感」が、創り手の意志から生まれるストーリーによってかたちづくられるということになるわけですね。

最近「パーパス」という言葉が良く使われます。マクアケさんの事業で起こってきたのは、「パーパス」に基づくストーリーを描き、語り続けたということ。『Makuake』を使うことで、パーパスに基づいてものづくりを行い、その裏にあるストーリーを確実に伝えることができるというわけですね。

単なるネット通販でも、クラウドファンディングでもなく、ストーリーのあるプロダクトを応援して購入できる購買の在り方や社会こそ必要になると。

坊垣そうですね。マクアケではプロジェクトページ作りのお手伝いをしているんですが、当然そのなかで似通った商品は出てくるものなんです。でも、似たモノでも作り上げられるストーリーは異なるんです。そこが結果的に、差別化の重要なポイントになっています。差別化を意図したわけではなかったとしても。

ストーリーを伝える手段が、SNSやnote、そして『Makuake』と増えてきたからこそ、ものづくりに込めたこだわりや想いといったプロダクトアウト的な部分が大きな武器になり得るのではないかなと、最近改めて感じます。

本間製作所が『Makuake』で開いたプロジェクトページでは、「ストーリー」が意識的に語られている

プロダクトが生まれたストーリーを伝えることが、結果として差別化につながる──。坊垣氏はそう説く。徳谷氏も強く共感を示す。これが、「理想のプロダクトアウト」だということなのだろう。

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ストーリーが生まれるパーパスを、いかに持ち、いかに実践するか

次に着目したいのが、「創り手の意志=パーパス」だ。マクアケで言えば、「坊垣氏が創業者として胸に抱いてきた想い」の部分にあたる。

「理想のプロダクトアウト」の枠組みが見えてきたとしても、それを成功するまで突き詰めることこそ、難しい。この点において、最も重要なのが意志あるいはパーパスになっていきそうだ。

徳谷誰にどのような価値を与え、その結果としてどのような変化をこの社会にもたらすのか。企業として、これが曖昧な状態では、事業づくりにおける重要な意思決定ができなくなっていく可能性があります。パーパスあるいはミッションやビジョンが大切と言われるゆえんですね。

坊垣さんを始めとしたマクアケ経営陣のみなさんは、それを精緻に言語化しているから、社会に新たな文化を醸成する事業をここまで大きくすることができたのではないでしょうか。

特に、事業をスケールさせていくための意思決定と、ビジョンへのこだわりは、時に対立しますよね?どのように議論してきたんですか?

坊垣そこは、時に経営陣の役割分担も重要なのかもしれません。共同創業者3人は、全員そこのバランスは併せ持ったタイプだとは思いますが、今はサービス全体のプロデューシングを行う立場の私がビジョンをもっとも強く意識していて、中山が中長期での事業スケールを共同創業の木内とともにデータや市場分析の側面からサポートしてくれる、そんな関係性だったりします。

この「創業メンバーの役割分担」も重要なメカニズムの一つなのだが、ここでは一旦脇に置いて、坊垣氏がなぜ、ビジョンへの想いを強く抱き続けられているのか、について確認していきたい。

「日本でクラウドファンディングを始めたREADYFORさんは、日本の寄付領域の文化を変えた、ないしは強化したと思っていて、これも間違いなくイノベーションです」と坊垣氏は補足しつつ、語り始める。

株式会社マクアケ 2022年9月期決算説明資料から

坊垣私たちは、クラウドファンディングの事業者としては後発です。それでもなぜ挑戦しようと思ったのか?それは、この仕組みを「日本の良さを伸ばすために使いたい、そういう事業が存在する必要がある」と思ったからなんです。

日本には「ものづくりの強さ」があります。ものづくりで発展してきた経験を持つ国で、技術力や製品力は今もなお世界に通用する圧倒的な強みがある。にもかかわらず、日本企業の多くがマーケティングやプロモーションを苦手としているせいか、うまくいっていないように見えませんか?

そんな状況を変えるために始めました。今もこの想いは全く変わっていません。

徳谷創業ストーリーって、当然どこのスタートアップでも重要なのですが、マクアケさんの事業においては特にそうなのだなと感じます。

その気持ちの強さ、経営陣としての覚悟が、創業時も、これまでの発展の過程でも、そしてこれからも、意思決定に根幹で作用し続けるんですね。先ほども言いましたが、まさに昨今言われる「パーパス」ですね。

よくあるんですよ。どういうパーパスにしたら市場の受けが良いかという質問が。でもこれは、違うと私は思っています。形式だけ併せて一見受けが良いパーパスなんて、魂が籠らないですよね。

マクアケが掲げるビジョン

「ストーリー型プロダクトアウト」は確かに理想の仕組みだが、その実践はもちろん簡単なことではない。必要なのは、「意志」を強く抱き、こだわり続けること。そんな実直さが、坊垣氏の語りから伝わってくる。

つまり、「意志」は、ものづくりの起点において重要であり、かつ、外部要因にとらわれることなくこだわり続けるためにも重要であるということだ。

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ユーザーがマクアケを進化させる

ここまで、ストーリー型プロダクトアウトというユニークな考え方と、それを支える「創り手の意志」にフォーカスを当ててきた。最後に、少し違った観点で、マクアケのイノベーションを語りたい。それは、「イノベーションの波及」についての議論だ。

『Makuake』はプラットフォームの形態をとっており、出品者と購入者をマッチングする、いわゆるリボン型のビジネスモデルとなっている。いずれのユーザーも獲得していく必要があり、難易度の高さを指摘されることもあるモデルだ。

マクアケも当然、この壁にぶつかり、乗り越えてきたわけなのだが、徳谷氏が注目するのはさらにこの先の「進化」だ。

徳谷ストーリー型のプロダクトアウトに重ねて、「リボンモデルだからこその進化」が今後ありそうで、ワクワクします。マクアケさんの事業は、ただのクラウドファンディングでもなければ、Eコマースでもない。「応援購入」という新たなライフスタイルを示し、世の中のあり方自体を変えようとしています。このことが、さらなるイノベーションの創出に向けた強みとなっていきそうですね。

というのも、マクアケさんが自社だけでイノベーションを起こそうとしなくて、たとえばバイヤー、ユーザー、生産者の生産形態、購買形態といったステークホルダーそれぞれがどんどん巻き込まれて、アップデートされていくかもしれない。

要は、事業者にせよ、ユーザーにせよ、社内メンバーにせよ、巻き込まれた人がそのストーリーに共感し、周囲にこのサービスの意義や強みを広げるという自己増殖の仕組みが組み込まれているようにも見える点が、興味深いです。

坊垣そこまでは言語化できていませんでしたが(笑)、言われてみればそうですね。

徳谷逆に事業・組織規模も拡大する中で、社内の方々の位置づけはどのように捉えているのでしょうか?

坊垣はい、まさに、キーパーソンになるのが、当社のキュレーターという存在です。掲載するプロジェクトの掲載情報を具体的に検討し、ストーリーを描く役割を担っています。このロールが、良いオペレーションを構築し続けられるかどうかが、事業拡大のキモになっているんです。

徳谷一定の規模を超えてきた際に、そのキュレーターさんたちによるオペレーションが、さらなるイノベーションの成否を左右するのかもしれませんね。

たとえば、YouTubeという革新的な動画プラットフォームが誕生した後で、それを利用するYouTuberという新しい生き方をするユーザーが出てきましたよね。キュレーターさんたちの現場の頑張りのおかげで、こういった例が『Makuake』でもきっと生まれているはず。これから目立っていくと、面白いですね。

この意味で、プラットフォームの機能を向上させ、巻き込む人を増やしていくことで、自然とイノベーションが起きやすくなる環境をつくる。そんな展開が、マクアケさんなら可能になり、事業自体がさらに進化していくのだと思うんです。

徳谷氏のさまざまな言語化に、「やはりさまざまな企業・事業・組織を間近に見て蓄積された知見は深い」と声を上げる坊垣氏。最後に、「これからのマクアケが直面するであろう課題」について、語り合った。

坊垣今、サービス全体のあるべき姿をもう一度、理想から問い直す形で整理しています。ユーザーもクライアント(実行者)もさらに増やしていくためには、より広い領域に価値を提供できる体験が必要だという危機意識があります。

徳谷さんから見て、マクアケには、今後どのような課題が出てくると思いますか?

徳谷ありがとうございます。偉そうに言うつもりは全くないのですが……。

短期的には、オペレーションと意志の浸透の強化。ある意味でミドルマネジメント層の強化と仕組み創りともいえます。

さきほど、坊垣さんからあったように、事業規模が拡大する中での、事業者のスト―リーをしっかり支援していく上では、社内のキュレーターの方の関与が大切になる。モデルは違いますが、楽天さんが事業者を支援する成長のフェーズでまさに同じような課題にぶち当たりましたね。

とすると、拡大する中でどこまでその価値を保てるか、且つ、坊垣さんができるだけ多くのメンバーと1on1をしているとも聞いていますが、そうすることももはや不可能になるはずなので……。

坊垣まさに、その通りなんですよ。

徳谷あとは、中長期的には、「これまでの成功と裏腹に」とでもいうべきか。

いま、マクアケ周辺の新規事業をいくつも立ち上げようとされていると思いますが、ここまで強力なストーリー型のプロダクトアウトで強いサービスが立ち上がった成功体験があると結局、「中途半端にやっては、マクアケほどじゃない」ということになりやすい。

リソースについても、マクアケに投下する分と、新規事業側に投下する分の意志決定も非常に難しい判断を迫られます。「余剰リソースで進めて、うまく立ち上がったらいいな」という進め方では、マクアケの次を支える事業を立ち上げる難易度がものすごく高いものになってしまう。

長期的には、パーパスや意志を軸に拡大してきからこそ、創業経営者のみに依存せず、経営の在り方をアップデートできるか。規模が拡大しても組織カルチャーを深化・進化させ、事業を牽引できる責任者を多く生み出せる組織にしていく必要が出てきます。

坊垣どれも絶対にぶつかるだろうなと感じました。中長期のお話は、全然中長期ではなく、すぐに取り組むべきと感じています。経営陣にすぐシェアします(笑)。

徳谷ただ、これらの課題に立ち向かっていくための土台は、力強くあると思います。本当に面白いと思ったのが、ビジョンあるいはパーパスに則って、事業やプロダクトを始めることの重要性を再認識させてくれたことです。

「マーケットの声を聞こう」「顧客に会おう」と言いますが、その通りではありつつも、何でもかんでもそこから始めて、一つひとつ全て対応していては、核となるコンセプトがブレてしまい、本質を見失います。生の声を聞いた上で「じゃあ、何だっけ」と問い直し、自分たちの意思をさらに強めていくことが重要なのだと、改めて感じさせられました。

坊垣パーパス経営という言葉が見聞きされるようになり、今日のような話をする機会が増えました。ただ、話すことは増えたものの、他社がどう考えて実践しているのかを聞く機会はあまりないので、そのインプットがたくさんある徳谷さんから予想含めてお話をいただけたのが自信にもつながり、嬉しかったです。

とはいえ、会社は生き物です。経営陣も原体験が異なる者同士なので、向いている先が同じようで100%同じではない可能性は十分ある。だからこそ、状況に合わせた柔軟な組織体制、役割体制の分担を含めた調整をしなければならないんだろうなと気を引き締めています。

これからの事業展開、いやそれだけでなく、さらに新たなイノベーションを生み出していく中で、マクアケはどのような素晴らしい前例をつくってくれるのだろうか。この対談を基に、マクアケとエッグフォワードの化学反応の結果としてさらなるイノベーティブな事例が見られる日が来るのが楽しみだ。

こちらの記事は2022年11月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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