連載博報堂出身のスタートアップ経営者たち
事業クリエイティブからヒットコンテンツまで。
生活者発想とパートナー主義で社会を揺るがす“博報堂マフィア”(後編)
アメリカのスタートアップシーンでは、Elon Musk(イーロン・マスク)、Peter Thiel(ピーター・ティール)、Reid Hoffman(リード・ホフマン)など、 PayPal出身の大物起業家が、“Paypalマフィア”と呼ばれ注目されている。FastGrowでも過去に日本の大企業を題材に、リクルートやサイバーエージェント出身の起業家を紹介してきた。
だが、まだまだ起業家人材を輩出する企業として注目すべき会社がある。第4弾として紹介するのは、広告代理店として知られる株式会社博報堂だ。
“生活者発想という異なる視点を持った上で課題を共有出来るからこそ、パートナーになれると考えます。”(博報堂「フィロソフィー」より)
「生活者発想」「パートナー主義」をビジネスの原点に置く博報堂の思想を継承し、スタートアップ業界で脚光を浴びる10名の起業家を取り上げる。後編では、2015年以降に創業し、わずか4年で頭角を現している企業を紹介していく。
- TEXT BY HAYATE KAWAJIRI
- EDIT BY MONTARO HANZO
三浦崇宏(The Breakthrough Company 株式会社GO代表取締役)

1983年生まれ。早稲田大学第一文学部に入学。在学中は、映像制作やイベント企画などを手がける。将来は「面白い方法で世の中を良くできる仕事をしたい」と考え、卒業後の2007年に博報堂入社。2011年はグループ会社であるTBWA\HAKUHODOへの出向も経験し、マーケティング、PR、クリエイティブ部門を歴任する。
博報堂独立後の2017年に、株式会社電通から独立した福本龍馬氏とともに株式会社GOを設立。これまで日本PR大賞、CampaignASIA Young Achiever of the Year、ADfest、フジサンケイグループ広告大賞、グッドデザイン賞など、各方面から評価を受けている。
GOは自社事業を“事業クリエイティブ”と打ち出し、従来の広告代理店やPR会社の業務を超えた、プロダクトやサービス開発をも手がける。
また、パートナー企業へのフィー支払い方法の一つとして、固定額ではなく売り上げの配分率で契約を結ぶ「レベニューシェア」を採用。パートナー企業であっても徹底的にクライアントの事業を「自分ごと化」してやり遂げることを信条としている。
The Breakthrough Company GO
渡辺裕介(株式会社チョコレイト代表取締役)

1984年生まれ。一橋大学商学部に入学し、大学生活の4年間をアメフト部に費す。2008年、博報堂に入社。テレビ・ラジオ・雑誌を中心に、企画プロデュースや、プロモーションに携わる。
2014年に同社を退職。翌年2015年にデジタル・ソーシャルの時代にふさわしい新たなコンテンツカンパニーをつくるべく株式会社チョコレイトを創業。ピクサーや任天堂のような、世界一のコンテンツカンパニーを目指している。
映像を軸に、番組、アニメ、映画から、 漫画、ゲーム、雑貨、空間、VRなど、あらゆるエンターテイメントを越境して作り出す“コンテンツスタジオ”を標榜。社内には、映像作家、TVディレクター、脚本家、ライター、漫画編集者など、多彩なメンバーが所属している。クリエイター同士で制作プロデュースチームをつくり、一つひとつのプロジェクトをバックアップする。
株式会社チョコレイト
牧野圭太(カラス/エードット)

1984年生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京大学大学院情報理工学系研究科を経て、2009年博報堂に入社。コピーライターとしてクリエイティブ部門に配属した。その後、グループ会社の1つであるHAKUHODO THE DAYでの業務を経験し、2015年デザインを軸とした事業と出版を手がける株式会社文鳥社を設立。後にブランドスタジオ・カラス/エードットを立ち上げる。「文鳥文庫」や「旬八青果店」など、事業開発とクリエイティブを掛け合わせる業態を目指す。
カラス/エードット

デザインを武器にしたブランドスタジオとして、常識にとらわれないアイデアや長期的な視点でブランドを育てる活動をしている。プロジェクトの根幹となるアイデアと思想を反映した丁寧なアウトプットを志向する。これまでも八百屋「旬八青果店」のブランディングなど、ロゴやグラフィックにとどまらず幅広く“デザイン”を提供してきた。(一部業務は、文鳥社からカラスに移行している。)
髙松雄康(株式会社オープンエイト代表取締役社長 兼 CEO)

1974年生まれ。大学卒業後の1996年、「生活者発想」の理念に共感し博報堂に入社。大手自動車メーカーのキャンペーンを担当する。2005年からはコスメサイト「@cosme」を運営する株式会社アイスタイルで取締役兼COO、CMOなどを歴任。その後、関連事業を運営するコスメコム、コスメネクスト、アイスタイルグローバル(シンガポール)のCEOとして国内外の化粧品関連事業を統括した。アイスタイル社は2012年に、東京証券取引所1部へ上場している。2015年に、株式会社オープンエイトを創業。
株式会社オープンエイト

おでかけ動画マガジン「LeTRONC(ルトロン)」
日本最大規模の女性系動画マーケティングプラットフォーム「OPEN8 AD Platform」や、約10,000本の動画コンテンツを配信するおでかけ動画マガジン「LeTRONC(ルトロン)」、専門知識がなくても動画コンテンツ編集が可能なAI自動動画編集クラウド「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」を提供。
独自のAI技術、データベース、配信技術による“OPEN8 CORE TECHNOLOGY”をベースに、マーケティング、メディア、SaaS事業を展開している。
手嶋浩己(XTech Ventures株式会社共同創業者)

1976年生まれ。一橋大学商学部卒業後、1999年に博報堂入社。約6年間、マーケティングプランナー・ブランドコンサルタントとして勤務する。2006年より株式会社インタースパイア(現ユナイテッド株式会社)取締役に就任、2度の経営統合を行い、2012年末、ユナイテッド取締役となる。
ユナイテッド時代は、グループ経営、新規事業立上げ、M&A及びPMI、ベンチャー投資(メルカリ、ワンダープラネット、dely、トランスリミット、クラスター等)を並走して行い、同社の発展に貢献する。2018年6月にユナイテッド株式会社取締役を任期満了で退任。同年8月、株式会社Gunosy社外取締役(現任)及び、ワンダープラネット株式会社社外取締役就任(現任)。また、2013年から2017年まで、投資先の株式会社メルカリ社外取締役を務めた。
2018年9月にXTech Ventures株式会社の共同創業者兼ジェネラルパートナーに就任(現任)。今後は、XTechグループ内外で自身の事業も手がけていくとしている。
XTech Ventures株式会社

既存産業×テクノロジーで新規事業を創出する、XTech株式会社の子会社。ベンチャーキャピタルとして、志をもって起業を考える優秀なミドル層の起業をサポートや、多面的な経営支援、IPO支援を行うことで投資先企業の飛躍的成長を目指す。
こちらの記事は2019年06月03日に公開しており、
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執筆
川尻 疾風
ライター・編集者(モメンタム・ホース所属)。在学中に、メルマガ・生放送配信やプロデュース・マネジメント支援を経験。オウンドメディアやSNS運用などに携わったのち、現職へ。起業家やクリエイターといった同世代の才能と伴走する存在を目指す。
姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
連載博報堂出身のスタートアップ経営者たち
2記事 | 最終更新 2019.06.03おすすめの関連記事
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