「スタートアップなら、事業に全集中せよ」はもう古い?CxO2人の“社外活動”でMoatを築いた、ファンズの成長ストーリー

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髙尾 知達

司法試験合格後、DeNAに入社、UGCプラットフォーム、モビリティ等の新規事業に法務担当として携わる。その後、大和証券にてIPO支援に従事。フィンテック関連の金融法に関して幅広い知見を有し、政策提言にも取り組む。一般社団法人Fintech協会 理事、一般社団法人第二種金融商品取引業協会「第二種金融商品取引業者の機能の向上・信頼性の確保に関する検討部会」委員、国際金融都市OSAKA推進委員会委員。弁護士(第一東京弁護士会)。著書に『金融機関の法務対策6000講』(共著、金融財政事情研究会)、『企業法務のための規制対応&ルールメイキング ビジネスを前に進める交渉手法と実例』(共著、ぎょうせい)。その他金融法関連の執筆、講演多数。

前川 寛洋

HRスタートアップで、執行役員 経営企画部長を務める。国内外グループ会社の経営戦略策定、500名規模の人事統括、IPO準備等、経営全般を幅広く管掌。その後、ブティックファームを創業し、大手企業複数社で事業戦略、事業開発のコンサルティング・PMOに従事。現在は、ファンズ株式会社にて、全社経営戦略の立案、経営管理、 事業開発、ファイナンスなどを管掌。直近では国内外の機関投資家からシリーズD総額36億円のファイナンスを実施し、累計調達額は約70億円。また、国内最大のスタートアップカンファレンス「IVS2023 KYOTO」では、Head of NEXT CITYを務め、スタートアップエコシステムの拡大にも尽力。

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読者の皆さんは、スタートアップ・ベンチャー企業の事業成功の確度を何で推し量るだろうか。解決したい課題のスケール、事業領域や市場における適切なポジション、それを実行していくメンバーの秀でたタレント性。そんなキーワードを思い浮かべた読者の皆さんに、ぜひ知ってほしい企業がある。金融領域での挑戦、そして同業界における型破りな事業創出を成功させ、今まさに躍進の時を迎えているファンズだ。

同社の存在を、経営人材のタレントの豊富さから知る読者もなかにはいるかもしれない。前回の記事で登場した代表取締役CEOの藤田氏は過去にマーケティング支援事業を行う企業を上場企業へ売却した経験を持つシリアルアントレプレナー。そして取締役CTOの若松氏はシステムの設計・開発やインフラ構築などWebエンジニアとして多岐にわたる領域を経験し、ファンズでは創業時よりプロダクトや技術面から事業を支える立役者だ。

そして今回、話を聞くのは同じく同社をけん引してきた立役者である取締役CLOの髙尾 知達氏と、執行役員CFO(2023年8月29日より取締役CFOに就任)の前川 寛洋氏である。弁護士であり、Fintech協会の理事も務める髙尾氏については、金融領域の論考や動向に目を通している読者にとってはなじみのある存在かもしれない。一方の前川氏は、国内最大のスタートアップカンファレンスIVSで企画責任者を務めるなど、存在感をじわじわと強めている。

そんな両者が、金融というややレガシーな事業領域において、“リーガル”といった守りの観点と、“スタートアップ”としての攻めの観点をどのように的確に融合させ、事業を拡大させてきたのか。そして、これからさらに拡大させていくのか。その戦略の実現を可能とする、ユニークかつ強力な経営陣の力と立ち振る舞い方を、本対談記事で紐解いていく。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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感じたのはスタートアップとして“ホンモノ感”

前川髙尾さんがいわば“フィンテック弁護士”と言えるポジションを確立しスタートアップとしてのファンズの権威性を高めてくれたことで、ファンズは「ゲームのルールに事業を“あわせる側”」から「ルールそのものを“つくる側”」へと転じたんです。スタートアップが業界そのもののルールを動かしていく。非常に珍しいケースですよね。これがファンズ成功の足がかりとなりました。

髙尾金融は規制産業なのでルールとどう付き合うかは常に重要。ただ、法規制への打ち手だけを起点にして本当に良いサービスはつくれません。規制対応としては発明であってもユーザーやステークホルダーが求めているものを提供できなければ意味がない。ファンズが金融領域に挑戦する“スタートアップ”としてどんな価値を提供できるか、どういう立ち位置をとるべきか。こういった視座から僕らの意思決定レベルを高めてくれているのが、前川さんです。

髙尾氏が“リーガル”という観点から政策渉外(ルールメイキング)を、前川氏が“スタートアップ”としての在り方を、と互いにこれまでの功労を讃え合うのは、ファンズが挑む領域や事業の難度が極めて高いという背景がある。

同社が提供する貸付ファンドのオンラインマーケット『Funds』は、資産運用したい個人からお金を集め、Fundsを介して事業資金を借りたい企業へと融資し、返済時に個人がリターン(分配金)を得る事業──いわば「貸付ファンドのマーケットプレイス」だ。

一見「よくある金融サービスと何が違うのか?」と感じる読者もいるだろうが、『Funds』は業界内で、前例のない挑戦として高い評価を集めているのだ。それを端的に表現すればこうなる。

日本では類を見ない「製販一体型」の金融ビジネス──。

上場企業に対して、銀行融資、株式調達に代わる第三の資金調達の選択肢を提供──。

金融商品の固定概念を覆し、スタートアップだからこそチャレンジできる事業や取り組みを次々と打ち出す同社の戦略については、CEO藤田氏とCTO若松氏が下記の記事にて語っているためぜひご覧いただきたい。

そして、上記の記事でも登場したCEO藤田氏の課題意識や視座に強く惹かれてファンズにジョインしたのが、ファンズのCLOを務める髙尾氏と、CFO前川氏だ。

髙尾藤田さんの巻き込み力はすごいですよ。それだけで社長たりうる才能といっても過言ではありません。そして、その熱意、ミッション・ビジョンに深く共感した優秀なメンバーが、初期から一同に集まったのもファンズの強みです。

日本には現在、2,000兆円を超える家計の金融資産が存在し、その5割超を現預金が占めます。これは米国1割、欧州3割と比べてもリスクマネーの供給不足を物語っています。過去30年間GDPがほとんど成長していない日本において、そのひずみは徐々に社会において顕在化してきていると思います。経済が強くないと社会保障制度の維持も難しくなります。

これはもはや、“解決したほうがいい”というレベルの問題ではなく、日本の生存戦略として“解決しなければいけない”問題なのです。この危機意識は私自身がファンズに入社し、藤田さんの熱意に触れて事業を創ってきた中で考え至った境地であり、同時に取り組む課題としてこの上ない面白味とやりがいを感じています。

前川「社長の器以上にその会社は大きくならない」とはよく言ったものですね。そこに関して、ファンズは創業から一貫して極めてスケールの大きい課題に向き合っている会社です。

これまで誰もが切り込めなかった成長資金の供給という課題に向き合い、かつ国民の資産運用課題のど真ん中に切り込む事業領域に挑んでいる。岸田政権になり「成長と分配の好循環」がキーワードになっていますが、ファンズが取り組む課題そのものだと思います。

そして、そこに本気で取り組もうとする、高い能力とバランス感を持った経営陣が集っている。私は、課題のスケール感とケイパビリティ両方を備えたファンズを、スタートアップとして“ホンモノ感”があるとよく言い表しています。

実にストレートなポジショントークだと感じた読者もいるかもしれない。しかし、両者が歩んできたキャリアを振り返ってみれば、彼らがこれほど絶賛するファンズに対する興味も湧いてくるのではないだろうか。

メガベンチャーの法務担当者としてキャリアを積み、スタートアップのIPO支援に携わってきた髙尾氏。

そして500名を超えるHRスタートアップで執行役員を務め、自身でもブティックファームの創業経験がある前川氏。

スタートアップの酸いも甘いも身にしみて経験してきた2人の目から見ても、ファンズの事業はどこまでも魅力的なのだという。

とはいえ、もちろんファンズの歴史は創業の瞬間から全てが順風満帆に進んできたわけではない。どのようにして同社はビジネスを拡張してきたのか、そして次のステージとは。同社の持続的な成功の背骨となる強さ、髙尾氏と前川氏がいかにしてファンズを支えてきたのか、次章よりその核心に迫っていこう。

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ロビイング活動を怠るな。
勝ち筋は、ルールを“つくる側”に周り、ゲームをコントロールすること

日本では類を見ない「製販一体型」の金融ビジネス──。創業初期、Fundsにはどうしてもある種の「うさん臭さ」が生じてしまっていたという。

「Fundsで資金を調達するとなったとき、調達企業の社外取締役や監査役などから『待った』がかかることも、少なくなかった」と二人は振り返る。知名度や信頼を得るまで、案件失注やプロジェクトのスタックは日常茶飯だった。この“もや”を晴らし、ファンズの事業に対する信頼性を積み重ねていった立役者が、髙尾氏というわけだ。

前川髙尾さんが“フィンテック弁護士”としてのポジションを確立し、専門家の視座からロビイング活動と対外的な発信を積極的に行ってくれたことで、ファンズの信用性、それに伴って事業の確度は一気に高まりましたね。

特に論考を発表したことは、スタートアップとしても極めて珍しい動き方でしたよね。

髙尾はじめに論考を発表したのは2019年6月のことだったと記憶しています。2018年12月に二種業登録が完了するまでの1年半、私自身二種業、融資型クラウドファンディングというややニッチな分野の規制体系を理解するのに苦労しました。また、未整理の論点も案外多いと感じたので、今後同じようにチャレンジする方の一助になれば……という気持ちで「転換期を迎えた融資型クラウドファンディング 規制の展開とこれからの課題」と題した論考をまとめました。それに対する反響が予想以上に大きかったことが、その後の動きに対する考え方を変えるきっかけになりました。

これまでFundsは既存のルールに事業を当てはめていたわけですが、ルールの方が合理性を失っている場合もあるわけです。もしもフィンテックの領域で自分なりの考え方やロジックをきちんとしたアプローチで伝達することができれば、そのルール自体を構築・策定する側に回れるんじゃないか、と考えたんです。

髙尾氏には弁護士という強力なバックグラウンドと独自のネットワークがある。弁護士はキャリアパスとして官公庁への出向を選択するケースも多く、出向経験のある弁護士仲間たちにアプローチし、キーパーソンとのつながりをつくりながら、髙尾氏は自身の信頼性と発信力を高めていった。

その成功の背景には、「ファンズが解くべき社会課題の特定→その課題のステークホルダーや利害関係を把握→アプローチすべき相手の特定」といった戦略を緻密に検討しながら動いてきた髙尾氏の手腕がある。

前川地道な髙尾さんの努力の積み重ねが、ルールメイキングの成果に結びついていったんです。政策渉外のフロントに立つのが髙尾さんだからこそすばやく引き出せる情報もあって、それがあるからこそファンズは先回りして事業にその内容を反映させることができました。これはファンズの優位性のひとつといっても過言ではありません。

一例を挙げると、ファンズの事業にも関わる規制強化についての情報を、約1年半前からキャッチできましたよね。髙尾さんがいなければ、ファンズの事業はもちろんのこと、この業界の歩みがそこで止まっていたかもしれません。

髙尾詳細を話すことは難しいのですが、融資型クラウドファンディング事業者の1社で不祥事があり、それを受けて政府の審議会で規制強化の方針が議論されていました。詳細にみると、事案の原因に関係しないにもかかわらず業界自体の存続に影響しかねない規制が導入される可能性があることが分かりました。「このまま進むと業界そのものが否定され、ファンズの事業継続も危うくなる」と、当局や自主規制機関などにコンタクトを取って理解を得ることに努めました。

さらにその内容を論考として発表し、問題の所在を広く業界関係者に知ってもらい、最終的には審議会の報告書に一定の軌道修正の方向性が反映されました。この時の経験が、フィンテック業界の健全な発展のために環境整備を担っていくというFintech協会理事としての活動のベースにもなっています。

やや逸れますが、官公庁のウェブサイトで公表されている審議会の資料や議事録から得られる情報は多く、それらに目を通しておくことが政策渉外活動の基本です。ずっと追いかけていると流れも把握でき、言い回しに込められた微妙なニュアンスや行間も掴めるようになってきますよ。

厳しい規制と戦いながらファンズが成長し続けられた要因のひとつは、弁護士としての知見とフィンテック領域に高い専門性を持ち、行政を巻き込んだロビイング活動も積極的に行う髙尾氏が地道に“トラブルの種”をつぶしてきたからだ。

前川私が髙尾さんの能力のなかでも特に尊敬しているのが、“国語力の高さ”なんです。報告書やパブリックコメントの回答の記載や表現からそこに内包される事業の可能性やリスクを読み解き、ファンズにとってどのような動きが最適か、あるいはどういう打ち手があるかというのを的確に見極めてくれます。

そのおかげで、ファンズは確度の高い戦略を描き続けてこられました。髙尾さんみたいな能力を持つ人は、スタートアップにはそうそういないんです。

髙尾ものすごく地味な立ち回りですけどね(笑)。いざてんやわんやの状態になってそれを何とか乗り切ると「すごい」と評価されがちですけれど、本当はそうした嵐や火事のような状態を起こさず、事前にトラブルの種をつぶしきることが政策渉外、もっといえばリーガル、コンプライアンスを預かる立場の人間のふるまいとして一番理想的なんですよ。私はそういう役割を担っていると思っています。

ここ数年、スタートアップ・ベンチャー企業が進出する産業が大きく変化し、電動キックボード、民泊、ドローン、NFTなど、法規制が事業に大きなインパクトを与えるケースが増えている。

そうした中で、ロビイング活動、すなわち規制を巡る機関や政治家との対話・協議の役割は日増しに高まっている。今や「スタートアップなら、事業に全集中せよ」という考えは過去のものと言えるだろう。

一方で、機密性の高い仕事なだけに、その仕事の中身が語られることは少ない。しかし、その実態は「どこまでも地味な立ち回りの連続」なのだと髙尾氏は言う。“火消し”ではなく、そもそも“火種さえ発生させない”ことが重要だ──。髙尾氏の表面化しづらいこれまでの献身は、ファンズの確かな柱として結実している。

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「現在地点のボトルネック」と「将来のビジョン」の交点を見極めるのが経営企画の真髄だ

髙尾氏の存在は確かにファンズの競争力の源泉だ。一方でそれだけでは現在のファンズは存在しなかった、と髙尾氏は振り返る。

金融領域のビジネスだからこそ陥りがちな“落とし穴”を避けることができたのは、20代後半にしてCFOを務める前川氏の手腕が大きかったという。

髙尾前川さんが言ってくれたように、法規制などの現状を分析しながら「打ち手としてこれができる」と提案できるところが私の得意なことではあるのですが、そういうリーガル・エンジニアリングで「これは」と思う発明ができるとそれを世に出したくなってしまいます。

でも本来、これは順序としてはおかしいんですよね。本来は「ユーザーやステークホルダーにとって必要だから、この打ち手を取ろう」と考えなければなりません。

この手の頭でっかちというか、プロダクトアウト的な発想は私たちのみならず、金融ビジネスに挑戦するならば誰もが陥りやすい落とし穴だと思います。そこを俯瞰して冷静な意思決定を可能にしてくれているのが、前川さんなんです。

前川前職で経営企画を担っていたこともあり、改めて経営企画は何を担う役職なのか考えてみた結果、私がやっているのは「意思決定を通じてインパクトを最大化する」仕事なんだという答えにたどりつきました。

意思決定は決して合理的なものばかりではありません。そのときの意思決定において誰かが感情的になっていると判断に影響しますし、定性的な情報はあるけどファクトがない、逆にファクトばかりあって情熱がないなど、さまざまな要素が合意形成の中に絡み合っています。それを客観視して、議論に足りていないパーツを探り当てるのが私の役目だと認識しています。

でも、そうやって俯瞰して考えることができているのは、ファンズに専門性を持つ信頼できる仲間たちがいるからこそなんです。私は彼らがいるからこそ、合意形成のうえで重要なタイミングや優先順位を調整することに集中できていますね。

HRスタートアップで執行役員・経営企画部長を務めた経験に始まり、自ら起業したこともある前川氏。その後は大手企業複数社の事業開発のコンサルティングやPMOに従事してきた。前職までのキャリアで数々の企業の経営を見渡してきた前川氏の目は、金融領域に挑戦し、なおかつスケールの壮大な課題に向き合うファンズで、その本領を発揮する。

前川私は常に、企業の「ボトルネックはなんだろう」という問いと向き合い続けています。一方で、長期的なビジョンと戦略を描いていくことも同じく重要であり、両者はひとつの交点で結びつくものです。

会社のめざすビジョンと、今あるボトルネックから伸びている意思決定。これらふたつがミックスして初めて、現在の最適解が導きだされます。そして、そういった最適解と重ねてこの会社の将来性にも私は妄想を働かせていて、スタートアップとして何をやるべきかという問いに向き合いつつ、ファンズの立ち位置を考えているわけです。

経営企画から意見が降りてくると、現場ではよく「実際やってないから好き勝手言えるんだよ」といったフラストレーションが起こりやすい。しかしファンズでは一切そういった“不満の声”は上がってこないという。

髙尾前川さんは意思決定の材料をしっかりそろえ、議論の不足を的確に指摘してくれます。もちろんファンズのメンバーは誰もが事業に対して真剣ですが、そのなかでも前川さんはファンズの方向性を人一倍考えていることが伝わってくる。だからこそ、私たちはストレスなく彼の意見を受け入れられるんです。私は前川さんの視座や姿勢をリスペクトしていますし、前川さんの真髄はそこだと思っています。

多角的な視点から企業としてあるべき成長と社会課題を見据え、議論を適切な方向へと導く役割を果たしている前川氏。試行錯誤のなか惑うことも多いスタートアップの道のりを支えた前川氏の存在は、ビジョンに向けてひた走るファンズの脚力を一層強いものへと進化させたのだ。

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生意気だろうが、会社の成長のためなら進言も厭わない。20代CFOの覚悟

両氏の強みはまったく異なる形でファンズの助走期間の原動力となり、金融という難しい領域での挑戦を実現に向けて支えてきた。そんな二人が互いをどのように思っているか聞くと、それぞれからはリスペクトの言葉が次々と飛び交う。

髙尾本音を言ってしまうと美辞麗句しか出てこないのですが、前川さんを一言で表すなら、とにかくエネルギー量が多い努力家ですね。そのうえでバランス感覚もあるんですよ!ボトルネックの解釈に対する解像度が非常に高くて、解決のために誰にアプローチすればいいかも的確で……。人としての完成度が高いとしかいいようがありません。

前川今日はいい夢が見られそうです(笑)。私の視点から見れば、髙尾さんが社員番号一桁台のタイミングでファンズにジョインしていなければ、Fundsは早々に市場から撤退していたかもしれないと思っています。

金融業界は自分たちがどれだけ健全に経営していたとしても、他社がインシデントを起こしてしまうと、それに伴って規制が厳しくなる業界です。金融業界で事業を展開すると、そういった障壁とも向き合わなければなりません。そして、それらの情報を即座に取りに行って分析してくれていたのが髙尾さんでした。髙尾さんが規制に向き合って対処してくれたからこそ、今のファンズがあるんです。

髙尾いやいや、それを言うなら、僕らにとっても前川さんを迎えられたのは幸運だったと思いますよ。前川さんの存在そのものが“スタートアップ”なんです。自ら問題意識をもちながらどんどん活躍の幅を拡げて、いまやCFO……著しい成長ですよね。

前川でも、3年前の自分がもしもいまファンズに入ってきたら「こいつうざいな」と思うはず(笑)。入社当初の私は、すごく生意気でした。前職とは違う環境や職種で活躍しなければというプレッシャーもあって、ひとり生き急いでいるところがあったかもしれません。周囲の皆さんにアドバイスをもらいながら、すこしずつ“ファンズナイズ”されてきて、現在に至ります。髙尾さんにも本当にお世話になりましたよね。

髙尾たしかに入社当時の前川さんは、控えめに言って生意気でした(笑)。

前川さんは本気でファンズを成長させようと思ってる。そのためなら多少生意気だろうが、どんどんファンズの当時の経営陣に進言していく。

もし、そんな彼の心からの進言を受け入れることができない経営陣だったら、この会社の成長もそこで止まっていたと思います。

「受け入れられないなら、ファンズを自分の活躍の場所にしなくてもいいと思ってます」と言ってきたときは、流石に驚きましたが、そこまで言われたら、むしろぜひうちで活躍してほしいと思いました。

そう語る二人の間には、終始互いを尊敬しているからこそにじみだす信頼の念が感じられた。難度の高い壁を乗り越えてきた仲間だからこそ、より互いの強みや能力を認め合える。二人の会話からは、そんなファンズの一側面を知ることができた。

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CLOの採用は6人目。スキルフルな人材は“壮大な物語の序章”にこそ惹かれる

ここまで二人がいかに高い視座をもち、互いの強みを活かしてファンズの事業成長を支えてきたかを描いてきた。しかし一方で、彼らのバリューを求める企業はたくさんあるだろう。またこれほどスキルフルな人材であればキャリアの選択肢はいくらでもあるはずだ。

なぜ、ファンズという会社での活躍を選ぶのか、せっかくの機会なので、2人のキャリア感についても触れていこう。

前川私が今までのキャリアで一貫して考えてきたテーマは、企業のボトルネックの解決です。ボトルネックはなんだろう、解決しなければならない問いはなんだろうと突き詰めていくと、問題の抽象度とレイヤーはどんどん高まっていくんですね。その結果、最終的にそれは「何が人々の幸せに直結するのか」という問いにつながっていくんですよ。

私がファンズに入社した理由のひとつは、コロナ禍になって日本に暮らす人々がいかに「お金の不安」を抱えているのか知ったことです。コロナ禍のムードがあったからこそ、私の身の回りの人も含め、初めてその不安を声に出せた人が多いんでしょうね。「お金の問題」は、これほど成熟した日本という国のなかでも解決されていません。だからこそこのテーマに興味をもったし、解決のためにチャレンジしたいと思ったんです。

髙尾前川さんが話した解決すべき課題の大きさという意味でファンズの事業にやりがいを感じるというのに加えて、私自身は「大きな課題に向き合う企業のなかで自分が役立てるか」という基準もキャリア選択の軸になっています。

私の前職は証券会社で、上場前の会社のコンサルティング、株式の引受業務を行っていました。そのなかで見ていても、私のような法務バックグラウンドのメンバーをスタートアップが採用するのは、普通はだいたい20~30人の間なんです。これは当時の私にとってジレンマでした。スタートアップで腕を振るいたいが、本当にやりたいゼロイチを創り出すフェーズで自分の職能が決定的に必要とされているわけではない、と。もちろん、これは事業ドメインにもよります。規制業種の方が事業を創る際にリーガルの力が求められることが多いと思います。

ファンズは、当時はクラウドポートという社名でしたが、6人目の従業員として私を迎えてくれたんです。それだけ自分の能力に期待してくれている、自分が提供できる「打ち手」でこの会社のゼロイチを生み出していくんだという覚悟と興奮に突き動かされてがむしゃらに仕事をしました。

創業者である藤田さん、柴田さんと話して取り組む課題の大きさとサービスが提供する価値のインパクトに魅了されましたね。僕らの基幹サービスである『Funds』は当時まだパワーポイントの資料の中にのみ存在するものでしたが、この構想を実現するために自分の能力、熱量を注ぎ込んで不足はない、持て余すことはないんだと確信したことが、入社の決め手になりました。

そんな2人であっても、会社の急成長に自分が遅れを取らないか、一握の危機感を感じることもあるのだという。

髙尾 ファンズのメンバーがとにかく優秀ですから。これは僕の感覚ですが、自分の経験や知見といったものを重ねて視座が上がると、自然と会社をある程度けん引できるようになるんですよ。それで、会社のステージがあがると今度は自分が引っ張ってもらって相互に成長競争をするような感覚でファンズと自分の関係性を捉えています。

でも今のファンズは、前川さんを筆頭にそういう会社をけん引できる人が多くてどんどんステージを引き上げてくれている。その中で自分もおんぶに抱っこにならないように、事業や組織に対してしっかりと良い影響を与えられる存在でいなければいけないと感じますね。成長し続けることを強いられるというか(笑)。

前川「会社の成長とともに自分自身も成長していく」。これは執行役員になったときに髙尾さんがくれたアドバイスなんです!その言葉を聞いて、会社のステージを上げるために自分も成長していこう、その挑戦をしようと吹っ切れられましたし、IVSにも挑戦できました。

髙尾氏が“フィンテック弁護士”としてロビイング活動も積極的に行い、金融業界におけるファンズの権威性を高める一方、前川氏も“スタートアップの人間”として積極的にIVSなどの課外活動に挑戦することで自身の影響力を高める。

ただでさえスキルフルなメンバーが刺激しあいつつ、高め合う環境だからこそ、企業成長もさらに加速していく。それがファンズの競争力の源泉となっているのだ。

髙尾よく「〇〇会社の〇〇さん」という看板を目にしますよね。その企業に所属していることが個人のバリューになる、という。ファンズのようなスタートアップではその逆で、所属するメンバー自身が求心力をもち、「〇〇さんがいる〇〇会社」という形で看板にならなければいけないんです。

実際に前川さんはいまや「前川さんがいるファンズがすごい」という評判を獲得しつつあると思います。これはIVSを始めとして積極的に外部発信を行う姿勢から生まれたものですし、自分自身もバリューやインパクトを提供できる存在でありたいという目標意識につながっています。

前川私も髙尾さんを横で見ながら働ける環境はすごく刺激的だな、と感じています。髙尾さんが「官」の道を切り拓いていくのであれば、私は「民」の部分、つまりスタートアップとしての道を切り拓いていきたい。互いの強みや開拓する領域をミックスできれば、さらに大きなステージでチャレンジできるんじゃないかとわくわくしています。

ファンズの現フェーズは、壮大なストーリーのプロローグにすぎません。これからめざすビジョンを達成するためには、パブリックな存在として影響力を強め、世の中にとって必要なものになっていく必要があるでしょう。本当の勝負は、これからです。

圧倒的スケールのビジョンを描いてひた走るファンズを、それぞれの専門性と特徴を活かして支えてきた二人。互いに切磋琢磨し、外部への影響力を強めていく二人の努力は、ファンズの事業成長へと結実していく。そして、まだまだファンズが描くストーリーはほんの序章に過ぎない。その続きがどれほどの社会的インパクトを及ぼすかは未知数、次章に息をのむばかりだ。

ファンズ株式会社 第二種金融商品取引業
関東財務局長(金商)第3103号
加入協会:一般社団法人第二種金融商品取引業協会
手数料・リスクについて https://funds.jp/terms/commission

こちらの記事は2023年08月17日に公開しており、
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藤田 慎一郎

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