連載パナソニックが提唱するミッションドリブン 〜人生100年時代の新・キャリア戦略〜

これからの時代の「ものをつくる前に、人をつくる」を実現する
──パナソニックCHRO・三島が目指す「社員が主語になる」組織づくり

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インタビュイー
三島 茂樹

1987年、松下電器産業入社。本社および事業部門の人事責任者を歴任。エコソリューションズ社(旧松下電工)照明事業部門人事責任者、コーポレート戦略本部人事戦略部部長などを経て、2019年4月より現職。

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雇用の流動性の上昇、副業の普及、リモートワークの定着……働き方の変化に関するトピックは、数えられないほどある。

小回りの効く経営をしているスタートアップやベンチャー企業であれば、そうした変化にも対応しやすいかもしれない。しかし、創業約100年、グループ全体で約26万人もの社員を抱える大企業であればどうだろう。それほどの雇用を支える大企業が、その組織のあり方を変化させることに対する困難さは、筆舌に尽くしがたい。

その大企業の名は、パナソニック。約26万人の、そしてこれから入社する社員たちの「働く」を変革する大きなミッションを担う同社の人事部門を率いるのは、CHROの三島茂樹氏だ。1987年に松下電器産業入社し、本社および事業部門の人事責任者を歴任。2013年10月より同社本社人事責任者、2019年4月よりCHROを務めている。

本記事では、三島氏に独占インタビューし、これからのパナソニックの組織づくりへの想いを明らかにする。これまでのHR領域における自身の「反省」も経て、創業者・松下幸之助の遺した言葉「ものをつくる前に、人をつくる」を、これからの時代の価値観に寄り添う形で実現しようとする三島氏が考える、「社員が主語になる」組織づくりとは?

  • TEXT BY RYOTARO WASHIO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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人事はエンプロイー・ジャーニーの「伴走者」

三島私がCHROに就任してから2年が経ちましたが、いまこそ人事部門のミッションを見直し、人事が変革をリードすべきときだと感じています。そこで、2020年度は1年間かけて、パナソニックにおける人事組織の存在意義や提供価値をボトムアップで考えてきました。

そして、私たち人事のミッションは「Become the Best Place to Work」とすることに決めました。「パナソニックは」という会社が主語の言葉を使うことをやめて、「一人ひとりの働く社員」を主語とし、お客様へのお役立ちのために挑戦する社員にとって、最も働きやすい環境をつくる。そのミッションを果たすために人事はどうあるべきかを捉え直しているところです。

三島氏は、これからの人事の役割を「『挑戦する個人』に寄り添い、ときには励まし、助言し、挑戦を阻むものがあれば取り除く役割」と表現する。新卒でパナソニックに入社して経験を積んできた人もいれば、他社からの転職によってパナソニックに入社した人もいる。個人の想いや価値観、置かれた環境によっても、一人ひとりのキャリアは千差万別だ。個々人のプライベートにおいても、さまざまな選択や挑戦がある。その人生の歩みを 「旅」になぞらえて、その旅の「伴走者」を務めることこそが、彼の考える「理想の人事」だというのだ。

パナソニック株式会社 執行役員 CHRO 三島茂樹氏

三島お客様へのお役立ちのために「挑戦する個人」は、それぞれに志やWillを抱いています。その実現を、人事がしっかりと支援できるようにしていきたいと考えているんです。まずは、一人ひとりの志やWillを受け止め、抱えるペイン(不安や不都合、不足)を理解し、一緒に取り除くことで、挑戦に寄り添っていくような役割を担っていきたい。

このように考えるようになったのは、41歳のとき。社内の異なるカルチャーの5部門が統合されることで誕生した事業部門のHRの責任者を経験したことがきっかけです。私の上司でもあった、その事業の経営責任者は、私にその事業部門の社員約1,800人のうち、「事業をこれから担っていけそうなグローバルに活躍する人材約80人にまつわるキャリア開発を私に預ける」と言いました。

そこで私は、一人ひとりを理解するところからはじめました。それぞれの家族構成、キャリアへの展望、人生観などについて、ときには海外にいるその社員のもとまで行き、丁寧に彼らの「志」や「Will」を受けとめました。決められた制度や仕組みを運用する人事ではなく、一人ひとりの人生に寄り添うパートナーである人事であれるように意識してきたんです。

一人ひとりと向き合い、その個人の価値観や志に寄り添った機会を提供する。人と真剣に向き合うことは、生半可な気持ちではできません。徹底的に個人と向き合うことで、未来の経営リーダーが育ってくる。人事が向き合うべきことを気付かされた経験でした。

そんな原体験が、現在のさまざまな人事制度や施策につながっている。2018年からスタートした、一定期間を他社で働く「社外留職制度」や社内で別の仕事を掛け持つ「社内複業制度」も、社員が自らの志やWillを実現するための重要な機会だと捉えている。「これからは一律の人事制度やキャリアパスを画一的に押し付けるのではなく、お客様へのお役立ちのために『挑戦する個人』が、その実現のために自ら選択できるようにしていきたい」と三島氏。

三島「挑戦する個人」の視点に立ってペインを解消しながら、志やWillを実現していくためのさまざまな選択肢を用意したい。ペインを解消していくのも人事の役割であり、選択肢を広げていくことも人事の役割。「挑戦する個人」が迷ったり、悩んだ際には相談に乗り、社員の挑戦に寄り添い続けていく。

そうした環境や制度を整えるためには、「まずやってみる」ことが大事だと私は考えています。社外留職制度や社内複業制度も、完璧な状態でスタートしたわけではありません。まずは、少人数でもいいから社員に利用してもらい、声を聞きながら改善していく。社員を中心にアジャイルにつくり上げていくことがポイントだと思っています。

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「パナソニックに足りないのは、強いリーダーである」
──人事トップとしての課題感

「挑戦する個人に寄り添う」という考え方は、三島氏はもちろん、パナソニックが大切にしてきた思想の一つだ。「ものをつくる前に、人をつくる」──そんな思想が脈々と100年以上にわたって受け継がれているのだ。

三島創業者である松下幸之助は、一人ひとりの社員と向き合い、仕事を通じてしっかりと育成するリーダーでした。そのスタンスが表れているのが「ものをつくる前に、人をつくる」という言葉です。

この考えに惹かれたことが、私が新卒で入社を決めた理由の一つです。初めてチームのリーダーになった時から、約26万人の「働く」に責任を持つCHROという立場になった今まで、私の基本姿勢は変わっていません。

三島氏がパナソニックグループ全体の人事を統括する立場になった当時に感じていた課題についても語ってくれた。

三島2013年にグループ全体の人事を統括する立場になったときに、「パナソニックには強いリーダーが足りていないのでは」と課題に感じていました。

パナソニックが展開するあらゆる事業領域において、グローバル競争が激化しつつある。そうであれば、これまでのやり方を根本的に変えていかなければならない。ですから、その現状を変えられるリーダーの育成・採用に注力していました。

松下電器産業に新卒入社し、その後日本ヒューレット・パッカードや日本マイクロソフトで社長を務めた樋口(パナソニック代表取締役 専務執行役員兼コネクティッドソリューションズ社 社長・樋口泰行氏。以前、FastGrow でも独占インタビューを実施した)を招へいし、ジョブリターンしてもらったのも、新たな強いリーダーを必要としていたからです。

私が本社の人事トップに就任したばかりのころは、「強いリーダーを社内で育てるのはもちろんのこと、社外からも採用し、存分に腕をふるえる環境を整えることが私の人事としての仕事なのだ」と考えていました。

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偉大な創業者の言葉を今日的に実践し、未来に進む

ただし、いまとなっては反省もあると三島氏。「リーダーが重要である」という考え方に変化はないが、いささかその主張を強調しすぎたと感じているという。

三島我々がかつて大きな成功を収められたのは、強いリーダーの存在があったからであることは確かです。圧倒的な成長を遂げていた1980年代は、とにかく勝ちに執着するリーダーたちが社内に多くいました。

私が本社の人事責任者に着任した直後は、そのようなリーダーが当時と比べると少なくなってしまったことが課題だと考えていましたし、もちろんその考えは経営トップとも共有できていました。

しかし、今はリーダーの重要性ばかりを強調しすぎたことは反省しています。組織というのは現場でお客様のために挑戦する一人ひとりが変わらなければ、結局はチームとして力を発揮しきれない。リーダーの育成・採用に注力したことは後悔していませんが、経営の持続性を支えるには人・組織・文化を変えていかなければなりません。

その要(かなめ)となるのが、各事業のHRBPと現場組織を担っているリーダーたちです。また、前提として人事が現場のビジネスや、実際にお客さまへ価値提供している社員のことを深く理解しておく必要があります。

かくして、三島氏は自身の視点を「強いリーダーの育成・採用」を含めて「挑戦する個人一人ひとりが力を最大限発揮し続けられる環境を構築すること」に変えた。あくまでも主役は、顧客へのお役立ちを生み出す「挑戦する個人」。だからこそ、人事組織のミッションを「Become the Best Place to Work」という言葉で示した。

三島氏の、方針転換に対する覚悟は強い。偉大な創業者である松下幸之助の言葉にすら疑問を投げかけるほどに。

三島創業者・松下幸之助の「ものをつくる前に、人をつくる」という考え方はもちろん、いまもパナソニックに息づいている。しかし、「人をつくる」という言い方は今の時代にそぐわなくなっているのかもしれません。

もう会社からの見方だけで社員を語れる時代ではありません。その意味において「人をつくる」とは言ってはいけない。主語はお客様のためにお役立ちをしていこうと奮闘している「挑戦する個人」一人ひとりです。彼ら彼女らがそれぞれらしく働き、成長できる環境や機会を提供する。それこそが、これからの人事のなすべきことだと、私は考えています。

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「自分が主語」ではリーダーとしての成果は出せない

主語が会社から個人になろうとも、リーダーの重要性は変わらない。むしろ、一人ひとりの働きがいや成長を重視するからこそ、求められる役割はより大きくなる。だからこそ、事業を力強く前に動かしていく実行力や戦略立案力を磨くことのみならず、マネジメント力の質の変化にも着目している。

三島以前、あるマネージャから相談を受けたのが、「社内でのさらなるキャリアアップの機会になかなか恵まれない」というもの。

そういう悩みがある場合、得てして共通点があります。それは、自らの成果には貪欲である一方、自身のチームメンバーの成功に喜びを感じていない、そういったことに対する意識が持てていない、という点です。そんなとき、私は「あなたが語る物語の主人公は、いつも自分。そうではなく、あなたのチームメンバーが主人公になる物語を描き、その成果や成功を心から喜べる人になってほしい」と話します。

自らの成果ばかりに囚われてしまい、チームメンバーの成功を心から喜べず、メンバーの成長に関心が持てないリーダーではこれからの時代やっていけません。

さらに、三島氏は「良いリーダー」の条件のひとつに「やりたいことへの強い熱意や執着があること」を置いている。

三島没頭できるほどの強い熱意や執着があることが、リーダーとしての前提条件です。それがない人は、リーダーではなく「管理者」なのだと思います。チームをリードしていくためには、本人が「これがやりたい!」「これがお役立ちにつながるはずだ!」と強く思えるものを示し、誰よりも常に情熱を注ぎ、そのために努力をし続けていないといけない。

そのうえで、自分だけが目立ったり、自らだけの成果としてみせたりするのではなく、たとえ不格好であったとしても自らの持ち味を活かしているメンバーに光を当てていくことのできるリーダーが、私が考える「良いリーダー」です。

メンバーの成功や成長を何よりも喜びとする──言葉にするだけなら難しくなくとも、実践するのは簡単なことではないだろう。人には常にエゴがつきまとう。三島氏はなぜエゴイズムを排し、メンバーの喜びを自らの喜びにするということに気づいたのだろうか。その根底には、青春時代のある経験が影響していた。

三島学生時代、ずっとバスケットボールをやっていました。大学のチームは日本一を取るようなチームではなかったのですが、関西の上位リーグに在籍していて、私はそのチームの主将を務めていたんです。

主将といっても、スターティングメンバーではなかった。つまり、バスケットボールの実力に関しては同級生や後輩たちの方が上だった。では、なぜ私が主将を任されていたのかというと、誰よりもチームが勝つことが大事と考えていたからだと思っています。自分が試合に出る方法よりも、チームが成果を残すことを一番に考え、部活に取り組んでいた。

必ずしもリーダーがプレイヤーとして優れていなくても、組織として勝っていくことはできるはずだと信じていました。私は確かにいいプレイヤーではなかった。だけど、一人ひとりの強みを活かすことによって、強い組織をつくれると思っていましたし、それができた手応えもあった。しかし、部活と同じように会社という組織でも強い組織をつくれるのかについては、確信めいたものがあったわけでもありませんでした。

そんなとき、創業者・松下幸之助の「私は病弱だから、みんなに任せるしかなかった」という言葉は力になりました。創業者も、周囲を信じて任せることで組織を大きくしてきた。この言葉のお陰で、自分の考えを信じる後押しになりましたし、そのような考えを持つ松下電器産業に入社したいと思うようになるきっかけにもなりました。

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エンプロイー・エクスペリエンスを高め、
一人ひとりの可能性を最大化する

そんな松下幸之助の言葉との出会いを原体験として持つ三島氏は、今後のパナソニックをどのような組織にしていきたいと考えているのだろうか。

三島「挑戦する個人」のエンプロイー・ジャーニーに寄り添い、エンプロイー・エクスペリエンスを高める。そのための人・組織・文化のあらゆる点から、より多様な人が活躍できる会社にしていきたい。(2021年)4月からはCSRも担当することになり、パナソニックがより社会的な責任から何をすべきかを考えていきたいですし、人事領域で得た知見をうまく融合していきたいと考えています。

創業約100年、約26万人もの社員を抱える大企業であるが、「まだまだ大きな可能性を秘めている」と三島氏は語る。「社会にお役立ちしたい」という想いを持ち、パナソニックに集い、日々挑戦し続けている現場の社員たちがいる。その一人ひとりのポテンシャルを最大化していくことがこれからの成長の起爆剤となると、三島氏は考えている。

三島2017年、当社は北米に世界最大級のEV向け円筒形リチウムイオン電池の生産拠点をつくりました。その工場にはパナソニックから何百名もの技術者を派遣しています。その工場は、ネバダ州の砂漠のど真ん中にあり、生活するだけでもとても厳しい環境のなか、必死に開発と製造を進めてくれています。

なぜ、パナソニックがこのような決断をしたのか。それは、テスラを率いるイーロンマスクが描くビジョンに共感し、一緒により良い社会や未来をつくっていきたいと本気で思っているからです。そして、パナソニックの社員は自らの技術や技能や知識をより良い未来を創っていくことに役立てたいと考え、アメリカに渡ることを選択してくれました。

社会をより良くしていくためなら、言葉が通じない場所だろうが、砂漠の中だろうが飛んでいき、自らの力を発揮する。そんな社員のメンタリティがパナソニックにあるんです。社会へのお役立ちと、自らの志を重ね、力を発揮する個人の可能性を最大化していく。志やWillを持ち、「挑戦する個人」にとって、パナソニックが「最高の場所」となることを目指し続けていきます。

こちらの記事は2021年04月21日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

鷲尾 諒太郎

1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。

写真

藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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