連載パナソニック株式会社

あの会社のAIも、今は全く使い物にならない?
先端技術は本当に「くらし」を便利にするか

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インタビュイー
仙田  圭一
  • パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター リビングスペースソリューション部 部長 

京都大学大学院を修了後、1997年に松下電器産業(現パナソニック)入社。エンジニアとしてカーナビおよびデジタル家電向けシステムLSIの開発などに携わった後、企画担当として103インチのフルハイビジョンプラズマモニターや「VIERA Link」のプロジェクトを立ち上げた。その後、R&D構造改革の担い手としてBtoB事業へのシフト等に携わり、2015年オープンのWonder Life-BOXのプロデュースや、2016年オープンの共創型ラボWonder LAB Osakaの企画・運営、AI・IoT・ロボティクス・センシング分野の技術者が集結して東京有明地区に開設されたパナソニックラボラトリー東京(ヒトティクス研究所)に従事。パナソニックが目指す新しい価値の創造を牽引している。

飯田  恵大
  • パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター イノベーション推進部門 主任技師 

名古屋大学大学院にてWebアプリケーション等の研究に携わり、修了後の2007年に松下電器産業(現パナソニック)入社。エンジニアとしてブルーレイ/DVDレコーダー「DIGA」にWeb技術を活用する事業等に携わった後、クラウド関連やスマートハウス関連事業へ参画。2015年には、IoT機器のCerevo社とのコラボレーションによって、スマートマイク「Listnr(リスナー)」を共同開発。2016年から現職に就き、パナソニックラボラトリー東京にて主にコミュニケーションAI関連の領域でR&Dに携わっている。

岸  竜弘
  • パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター イノベーション推進部門 博士(工学) 

2013年に早稲田大学大学院の創造理工学研究科を修了後、そのまま先進理工学研究科にて博士課程に進み、日本学術振興会の特別研究員も務めた。ロボティクス、ヒューマノイド、ヒューマン・ロボット・インタラクションの分野で研究を進め、Ph.D.を取得後の2016年度から早稲田大学理工学研究所次席研究員(研究院助教)を務めた後、モノ作りへの情熱から2017年にパナソニック入社。自律移動系製品のプラットフォーム開発など、主にロボティクス領域のR&Dに携わっている。

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「AIってすごい!」「ロボット技術が、とうとうここまで来た!」「IoTで世界は一変する!」

……そんなバラ色未来予想コメントが、ネット上やリアルな会話の中で交錯する今日このごろ。

そこに水を差す気など毛頭ない。

最新テクノロジーと、それに基づく前例なきビジネスイノベーションの数々が、間違いなく世の中を劇的に変えつつある。

だが、実態はどうなのか?

尖った技術の先端にいるエンジニアや、イノベーティブなビジネスでフロンティアを目指すプレイヤーたちは、どんな「産みの苦しみ」の中にいて、そこでどんな喜びをモチベーションにしているのか?

本音を深掘りするべく、パナソニックの異端児たちに語らってもらった。

  • TEXT BY NAOKI MORIKAWA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「生活を変えうるAIスピーカー。ただ現状は、世界的展示会でGoogleですら冷や汗をかく実用度」

 

毎年ラスベガスで開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)は、エレクトロニクス業界のみならず、名だたるモノ作り企業が世界中から最新技術をひっさげて集う一大見本市だ。

先頃開催された会場でひときわ注目を集めたのがAIスピーカー。そこで仙田圭一氏は、笑うに笑えない情景を目にしたという。

仙田Googleのブースで「Google Home」のデモをやっていたんですが、司会者が何度「OK Google」と話しかけても、「わかりません」の返答しかしなくて。

誤解しないでくださいね。僕らもAIやIoT、ロボティクスの領域で悪戦苦闘しているし、Googleのことはその技術力だけでなく、ビジネスや研究の姿勢についても心から尊敬をしているんです。

ですから「あのGoogleでさえ、こういうことがあるんだな」と思ったし、現状の音声認識の精度や、それに付随する様々な技術の問題点を思い知らされる機会だったんです。

 

仙田氏のこの経験談を受け、飯田氏も苦い表情でこう語る。

飯田私は2015年に、ベンチャーのCerevo社とともに、「Listnr(リスナー)」という製品の共同開発プロジェクトに携わっていたんです。言葉ではなく、赤ちゃんの泣き声や、指を鳴らす音などをトリガーにして家電機器などを操作する、スマートマイクと呼ばれるデバイスです。

その開発途上でも相当苦労をしました。先進的なAIを活用していても、家庭で発生するいろいろな生活音を拾って誤作動してしまい、改善するまでに幾度も試行錯誤をしました。

今をときめくAIではあるが、その技術が持っている可能性を形ある製品にしたり、サービスに活用したりしようとすれば、まだまだ課題は山積しているということ。しかも事はAIに限らない。

博士(工学)の学位を得て、ロボティクス関連領域でつい最近まで大学で助教を務めていた岸氏もこう話す。

産業用ロボットのように主に工場で使われている物ならば、常に技術者がそばにいますから、少々の不具合が発生しても対応が可能です。

ところが、最近よく言われる「暮らしの中にロボット技術が入っていって未来の生活が」みたいなことを実現しようとする場合、そうはいきません。

生活の現場でロボティクスの強みをきちんと発揮できるようにするには、超えなければいけない課題がたくさんあるんです。

社会が新技術によって進化する過程で、こうしたリアルな障壁にぶつかるのは当然のこと。だが、注目すべきは、その障壁の超え方。

仙田氏や飯田氏のような技術者が切磋琢磨したり、岸氏がかつていたアカデミック領域の研究者たちがトライ&エラーを繰り返すだけで超えられるのかというと、そう簡単にはいかないようだ。

仙田例えばAI。今回が3度目のブームだと言われています。

1960年代や1980年代にも、それぞれ人工知能のブームが来ました。もちろん、そこで培われたものがあったからこそ今のAIにつながったわけですが、少なくとも第1次と第2次のブームは直接的に産業界に革命を起こすまでには至らなかった。

第3次ブームの根幹を成している機械学習やディープラーニングの発想にしても、トロント大学のヒントン教授らが2000年代になって提唱し始め、ようやくその成果の一部が今になって世に出始めたところなんです。

「だから今度こそ、AIを価値ある製品やサービスに結びつけ、世の中を変え、産業にインパクトを与えよう」。そう誓って、パナソニックは「ヒトティクス研究所」というコンセプトでパナソニックラボラトリー東京を開設。

仙田氏、飯田氏、岸氏ばかりでなく、AI・IoT・ロボティクス・センシング分野の技術者が集結し、それぞれのテーマを達成するべく日夜アプローチしているという。だが、単に自らの領域で「がんばっています」ではダメなのだと仙田氏。

仙田機械学習についての技術論や、ディープラーニングの精度を上げるための方法論ならば、各界の先生がたによってアップデートされています。

その一方で、これらをビジネスイノベーションに結びつけるため、世界中のプレイヤーがベンチャー、大企業を問わず必死で考え抜いてもいます。

でも、大切なのはデータなんです。「データがあってナンボ」というのが今のAI活用の基本中の基本。理想的な技術が膨大なリアルデータと出会って、適切なかけ算が行われた時、初めてAIはその可能性を開花させる。

じゃあ、誰がそのデータを持ってくるんだ、という話です。

ロボットの世界でも、やっぱり人と知恵の融合・集積が不可欠です。

「ロボット工学」と一言でいってしまうのは簡単ですが、その裏では機械工学も情報工学も電気工学も使われています。そのうえ、使われる場面や求められる機能に応じて、異なる専門性も求められてくる。

理論や研究成果が進化しても、じゃあ誰と誰がそれを持ち寄って形にするのか、ということになってきます。

仙田「ドラえもんを生み出すんだ」となれば、夢のような話だから、技術者としては大喜びするけども、いきなりあんなスゴイ代物は作れない(笑)。

そこまでいかなくても「こういう場面でこういう風に動くロボットがあれば、少しは世の中の役に立つ。こういう人たちに喜んでもらえる」という風に切り出していって、形にするのが僕らの務め。

岸が向き合っている自律移動系でいえば、ロボット掃除機だったり、自律搬送ロボットだったり。技術面での専門性の持ち主ばかりでなく、使われる場面を知る専門家や、そこで求められる機能を実現するための人材も結集できなければいけない。

要するに誰かが「座組み」を用意する必要があるということ。

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実用化に向けた「座組み」の牽引役が大企業の役目

技術サイドがいかに進展しようとも、その効力を発揮するためのデータが不足していたり、多様な人材の結集が不可欠になっていたり、というのが実情だという。では、どうすれば解決できるのか?

飯田技術の進化と人間の暮らしとの間には、谷間があるんです。この谷を埋めないことにはリアルな変革なんて起きません。

機械と人間との間にある齟齬を埋めていくインタラクション技術としても、AIは非常に有効で期待されているわけですが、そのAI自体がデータ不足という谷を越える必要があるんです。

じゃあ、僕らは実際に何をしているかというと、もちろん技術の研究もしていますが、同時に座組みを作る、という仕事がビジネスイノベーションを産み出す上ではキモになっていたりします。

仙田日本でいえば「2020年のオリンピックに向けて」というのが、イノベーションに向かう発火点になっていますよね。たくさんの企業が新しいことに挑戦しようとする原動力にしています。

パナソニックでも、例えば言語領域でのAIの活用チャレンジとして、多言語対応の観光案内ロボットを生み出そうとしています。

既存サービスのGoogle検索や翻訳を使っても、ある程度の観光案内は可能だと思いますが、現実的にはちょっとした方言とかが入るだけで使えなかったりもする。

やっぱり技術的バックボーンとともにデータを収集して、実証も行えるような座組みが必要。

そういう発想を踏まえて、JTBさんや国立研究開発法人のNICT(情報通信研究機構)さん等との連携をスタートしたんです。この事例以外にも、オリンピックを念頭に置いたチャレンジを各所で展開しています。

どこかの企業との連携が必要なときに「パナソニックです」と言えば、たいがいのところは門を開いてくださいます。

飯田パナソニックが培ってきたブランド力は「座組み」作りで大いに活用できますし、目標達成に必要なのであれば僕らは迷わず自社ブランドを使わせてもらいます。

アカデミック分野から転身して就職しようと考えたのは、自分が好きな研究を続けるだけでなく、それをモノ作りに直接活かしていきたいと思ったからです。

ロボティクスやヒューマノイドの技術を、どうすれば人の暮らしに活用できるか追求したい……そう考えたら、暮らしのことをどこよりも理解しているモノ作りメーカーはパナソニックだ、という結論に至りました。

飯田それは僕も同じ気持ちですね。この会社には人との接点になるデバイスが山ほどある。

トイレに入ったら自動的に便座の蓋が開く、なんて場面でもセンシング技術を使っているし、エアコンが勝手に人の居場所を捉えて、適切な温度調節をするようにもしている。

「その技術本当に意味あるの?」という批判も聞こえてきそうですが、人々の生活を便利にするために研究開発して製品化してきた実績があちこちにあるし、その経験者がたくさんいるから、新たに製品開発の谷間を越えようという時にも理解がある。

仙田飯田が「Listnr(リスナー)」を製品化したいと思った時は、社内で通りそうにないから自分でベンチャーとの座組みを作って、Kickstarterでクラウンドファンディングしたもんね。

飯田あれは無茶苦茶だったかもしれませんが、やってみたら結局社内からもオーケーが出たことには「これもありなんだ」とびっくりしましたけど(笑)。

仙田「やった者勝ち」の社風をいいように利用した例だよな。

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「くらしを100年支えたからこそできることがある」

楽しげに語らう仙田氏と飯田氏だが、2人は天国も地獄も経験している。テレビ・ビデオ・カメラの「デジタル家電・新三種の神器」のヒットによる2007年度の史上最高益時代も、2011、2012年度に2年連続で記録した約7千億円の大赤字時代も知っている。

仙田氏は、パナソニックが経営の舵をBtoCからBtoBへと大きく切り替えていく際に、構造改革の担い手となってきた人物でもある。

しかし「だからこそ胸を張って言えます」と、口を開く。

仙田うちは確かに、良くも悪くも大企業ですが、同時に「なにわのベンチャー」の伝統もきっちり持ち続けてきました。しぶとい「商人集団」だから、あんな大赤字を出しても生き抜いている。

そういう自負は持っています。しんどい構造改革をやっているからこそ、元気の出る新しい挑戦に皆が本気で取り組んでいる。

「もっかい、ベンチャーに戻るで」という意気で満ちているんです。

「日本の家電はもうダメだ」という論調の中、あぶり出された弱みについても正面から受けとめたという仙田氏。その仙田氏が口にした「なにわのベンチャーの伝統」とはつまり、今年創業100周年を迎えたパナソニックを支え続けている価値観である。

創業者の松下幸之助氏は、二股ソケットのヒットによって日本の電化を一気に押し進め、同社もまた劇的に成長していった。この時期に培われたスピリットが、今もなお伝承されているというわけだ。

「それを言うなら、危機的状況に瀕した他の家電メーカーも、そもそもはベンチャーだったじゃないか」という考えも浮かんでくるが、他社にはない強烈な変革の経験があり、社会貢献を愚直に実行し続けた創業者がいたことは、日本人なら誰もが知っている事実だ。

一方、つい最近新卒入社した岸氏は、パナソニックに訪れた危機的状況を外側から冷静に見ていたという。

学部卒や院卒で理系学生が就職しようとしたら、学校推薦などもあって自由に選べないところもあるんですが、博士課程まで行ってしまうと、自分から望まない限りどこも声をかけてくれないんです(笑)。

おかげで、産業界を客観的に見ることができましたし、家電業界に起きたことも把握していました。でも一方で、仙田が東京に開設したWonder Life-BOXや大阪のWonder LAB Osakaが提示しているような「暮らしのすべてに技術を活用」している企業って、他にはないということにも気づいたんです。

先に飯田氏が示した「技術と暮らしとの間に横たわる谷」を越えるチャレンジ。それを岸氏も望んでいた。だから入社を決めたという。

すると、ここで仙田氏が再び「なにわのベンチャー」論を差し挟む。

仙田パナソニックの原点ともいえる二股ソケットは、要するにコンセントなんです。これが日本中の家庭に行き届いたことで、どの家でも新しい電化製品を購入して動かすことが可能になった。

暮らしのインフラを当社は普及させましたし、いまだにこの分野では圧倒的シェアを誇っています。

つまり、ほぼ1世紀に渡って暮らしの根底を支え続けてきたパナソニックだから、Wonder Life-BOXやWonder LAB Osakaで提示しているような近未来の暮らしも発信できたんです。

谷間を越えるも何も、そもそも「くらし」の根幹となる技術の全てをパナソニックは持っている。だったら、どこよりも先に「未来のくらし」に関わる谷の越え方を提示しなければおかしいだろ──。

そんな情熱がこの集団には宿っているという。

仙田今、様々な技術がもたらそうとしている「未来の暮らし」というのを思い浮かべてほしいんです。

家がさらに快適になることは言うに及ばず、カフェや学校やオフィスという空間もどんどん「快適な住空間」寄りの設計とデザインと機能とを備え始めているはずです。

僕らが働き始めたここ(パナソニックラボラトリー東京)だって、昔のオフィスや研究施設とは全然違う。非常に「家」的なくつろぎを備えた空間になっています。

ベンチャー企業をはじめ、他の成長企業でも同様に、どんどんオフィスが快適化している。結局のところ、Googleにせよ、AppleやAmazonにせよ、パナソニックにせよ、「これからの社会ってこうあるべきだよね」「こうなったらいいね」のビジョンはそんなに変わらないんです。どうやって到達しようとしているか、が違うだけです。

僕らとしては自動運転が普及したらクルマの中だって住空間になると考えているし、その発想で共感できたこともトヨタさんとの連携の一因になっていたりもします。

100年続く「ベンチャースピリッツ」を忘れぬパナソニックには、「快適な暮らし」を支えてきた強みがあります。それがこれからどんどん生きてくるし、多くの外部の方々もそれを知っているから、僕らとの座組みを望んでくれるんです。

 
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「やったもん勝ち」のパッションある人材がリードする企業へ

長年パナソニックを支えてきた仙田氏の「なにわのベンチャー」論には、強い説得力がある。だが、最近入社したばかりの岸氏はどうだろう。

いま流行りの技術系スタートアップに入社し、技術オリエンテッドな事業構築を目指すこともできたはず。あるいはAmazonやGoogle、Facebook、Appleだって、ロボティクス博士の岸氏を欲しがるはず。

そんな岸氏がなぜ日本を代表する大企業であるパナソニックを選択したのか?

外資系やベンチャー企業で働くという選択肢も、もちろん考えました。でも、AIとかロボティクスが役立っていくステージとしては、世界のどこよりも高齢化が進む日本が最適だと思えた。

さらに、シリコンバレーにあるパナソニックの研究施設では、日本企業とは思えないくらい、皆さんやりたい放題やっていたんです(笑)。

仙田そこはもうSAPで日本のチーフイノベーションオフィサーもやっていた馬場渉さんがグイグイやっていますからね。

生え抜きパナソニック人間としては冷や冷やするところもあるけれど(笑)、そうしてこの会社はどんどん「なにわのベンチャー」を取り戻し始めている。

僕自身も、Wonder LAB Osakaの企画を通す時には、「世界はもはやオープンラボの時代です」と言い切って、音楽入りのムービーまで自作してプレゼンで押し切った(笑)。もちろん、大きな企業だから、ベンチャーと比較したら意思決定の道筋やルールはきっちりしています。

一方で、根本が「なにわの商人」集団だから、隣の席やら斜め前の席の同僚と「ほなやろか」と決めて、「じゃあやります」という、言ったもん勝ち、はみ出たもん勝ちな気質も残っている。

飯田そうですよね。さっきも話に出た「Listnr(リスナー)」だって、ある意味、おきて破りな進め方で、僕自身もびくびくしながら始めたんです。

でも強引に動いてみたら、いろいろな人たちのバックアップもあって通ってしまいました。

いま私がやっている案件も個別の製品ではなく、自律移動系の製品群を動かすためのプラットフォームの開発なんです。それさえしっかりできてしまえば、アプリケーション的に様々な機能を持つ製品やサービスを動かすことが可能になります。

でも、途中で聞かされたんですが、「家電の松下」の時代だったら、こうしたハッカブルな取り組みなんてあり得なかったらしいんですよね。

仙田製品開発にあたっては、技術情報はすべて門外不出がお決まりでした。「ハックさせてどないする」という声は今だってゼロじゃありません。

「はみ出たもん勝ち」とは言ったものの、「ちょっとだけ、はみ出てみる」というのが新しいことにチャレンジしていく秘訣です (笑)。

ハッカブルなプラットフォームの提供者になる、という発想は、それこそ松下幸之助さんが二股ソケットで発信したビジョンとも重なります。

社内に多少の反対派の人がいたとしても、僕個人としてはこのような取り組みこそパナソニックが率先して行うべき活動だと考えています。

「パナソニックの異端児3人」によるこうした議論はいつまでも続いていきそうなのだが、そうもいかない。

最後に真顔で尋ねてみた。「大企業であり、座組みの中心になれるブランド力と実績を持っていながら、『ベンチャー』としての一面も取り戻し、独自の姿勢で走り出したパナソニックで、今後どんな人間が活躍していくのか」と。

仙田自走できる人間。内部でははみ出ることをいとわず、外部とはどんどんつながって協創していける人間ですね。

飯田やりたいと思うことを実現するなら、考えているだけでは駄目。大企業だから使えるリソースは豊富にあるし、活用できる領域の幅も広い。

そういうものをしっかりと使わせてもらいながら、「やりたいこと」に手が届くまで、ラストワンマイルを、最後は気持ちで押し切れる人間でしょうか。

多様な技術を融合・集積するために、多様な人とつながることが大事。

そのためには自分にも何か1つ「これだけは負けない」という専門性や能力を培うべき。そういうものを持てた時、初めて様々なエキスパートと対話し、協力し合えるようになる。

大企業というのは、もっと個人の役割が限定されていて、窮屈な思いをするかと思っていたのですが、パナソニックは違います。

パナソニックは製品数がものすごく多い。だから1つの製品単位でみると、ベンチャーやスタートアップとよく似たチーム編成になっているんです。

そのようなスモールチームの中で、単に技術を深掘りするだけではなく、モノ作りのための仕組みの構築や、人とのつながりなども自ら創造していく必要がある。

そのような「なんでもやったる」感を面白いと思える人がきっと活躍すると思います。

こちらの記事は2018年03月15日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

森川 直樹

写真

藤田 慎一郎

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