「現場の”感情”を無視するとDXは失敗する」──250万人の労働者を救うロジスティクスDX・シマント和田氏が語る、デジタル至上主義が見落としがちな視点

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インタビュイー
和田 怜

メガバンクで、支店での個人顧客・法人顧客向け営業担当や本部での企画業務などを担当。業務システムに収納されているデータや支店から報告されるエクセルデータを統合し、分析用のデータに加工するのに苦労した経験から、データ活用とそれを可能とするデータベースの技術に興味を持ち起業した。システムや組織に蓄積されたデータが現場に役立つ情報として十分に還元されていないという経験が、「DXやAIに関するプロジェクト企画が先行するものの、データ連携部分がボトルネックで進まない」状態を解決する、という現状のビジネスの原点となった。

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Amazonや楽天市場など、魅力的なECサービスの台頭により、我々は自宅にいながらその利便性を享受できるようになった。そのメリットをより多くの人が最大限に実感したのが、新型コロナウイルス感染症の流行だろう。

初めて全国に緊急事態宣言が発令された時期、百貨店やショッピングモールが閉店の判断を下すなかでも、我々はECサービスを使っていつでも非接触で買い物を楽しむことができた。

スマホ1つで注文した品が翌日に届くというUXは、人々のライフスタイルを大きく変えてきた。しかし、その裏では、今当たり前のように受けられているサービスを今後は受けられないかもしれない深刻な課題が存在しているのだ。

それは、物流業界に従事するエッセンシャルワーカーたちの労働問題だ。彼らの業界は基本的に24時間体制。昼夜問わず、我々が休んでいる間にも約250万人もの老若男女が働いている。決して恵まれた報酬や労働環境ではない状況のなか、こうした人々の尽力によって、日本の物流インフラは支えられているのだ。

今回は、そんな利便性の裏側にある負を解決する起業家を訪ねた。デジタルの力でサプライチェーン・ロジスティクスに改革を起こす、シマント代表取締役の和田 怜氏だ。

元バンカー出身の彼がTechを武器にレガシー産業を変えていく。日頃、現場の葛藤に向き合い、非効率の改善に心血を注ぐITコンサルやSEの方々にこそ、一読してもらいたい。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「従業員に人間らしい暮らしを…」過酷な物流現場のリアル

「ほぼ24時間稼働で現場を回さねば、仕事が追い付かないのが物流業界の現状です。何とか改善し、朝から晩まで働いている従業員たちに、人間らしい暮らしをしてもらいたいのです」──。

これは、和田氏がプロジェクト先でクライアントから言われた一言だ。彼自身、現場の過酷さを目の当たりにすることで、その言葉の重みが理解できたと語る。

株式会社シマント 代表取締役 和田 怜氏

和田近年では外国人労働者の姿が見られることからも、物流業界の人手不足がうかがえます。また、華奢な女性がダンボールを重そうに運ぶ姿を見たこともあります。そうした状況を見ると、この業界は現場の努力によってギリギリの状態で何とか仕事が回っていることを実感します。

我々が取り組むDX事業なら、こうしたロジスティクスの課題を解決できますし、社会的意義も高い。そんな想いから、この課題解決に懸けようと心を決めました。

上述したように、近年ではEC市場の隆盛やコロナ禍の影響により、物流のニーズが拡大し続けている。国土交通省の調べでは、2020年の宅配便等の取り扱い個数は約48億個で、昨年対比で111.9%も急増しているのだ。2035年には、”88億個”と現在の倍の数量まで膨らむという試算もある。

これに対し、荷物を運送するドライバーは年々減少。その理由は単なる高齢化だけではない。運送事業に従事する労働者は他業界に比べて労働時間が2割長く、かつ賃金は1〜2割低いといった、根深い労働環境の問題があるのだ。

和田氏は物流業界の特徴について、前職の業界と比較しつつ次のように語る。

和田私が過去に携わっていた金融業界では、例えば融資する桁が変わったところで、従業員の作業工数にはさほど影響がありません。極端な話、500万円を貸すのと、5,000万円を貸すのとで我々の事務的な手間は、極端に言うとほとんど変わらないわけです。しかし、物流業界では取り扱う物量が増えると、文字通りそのための業務量は、物量が増えた分だけ増えます。

こうした物理的な大変さに加え、和田氏が切り込むBtoBの物流においては、次のような非効率な課題が残っている。

和田それはサプライチェーンのなかで用いられる、荷物の量や配送先といった情報を含むデータの仕様に共通の規格がなく、すべて現場の手作業によって振り分けが行われているという点です。

まず整理すると、BtoBにおける物流とは、工場から物流センター、物流センターから卸売会社の配送拠点へと荷物が渡っていきます。そして我々が、現在支援している物流センターのポジションは、メーカーと卸の間に入り、荷物を振り分ける”ディストリビューター”と位置付けることができます。

その流れのなかで用いられる発注データは各社バラバラの仕様。これが現場の長時間労働を引き起こしている要因のひとつなんです。

極端な話、物流企業が30社のメーカーと取引をしている場合、30種類のフォーマットでデータが送られてくるということです。バラバラのフォーマットで発注データを受け取った物流センターは、まずデータを統一されたフォーマットに加工しなければなりません。具体的に言うと、積荷の配送先、荷量、品目、荷姿(梱包された荷物の外見や形状)などの表記や単位を全社分、統一するということです。

物流のコア業務はあくまで配送にあると思いますが、その前段となる配送手続きに驚くほど手間が掛かっているという状況ですね。

驚くことに、ある現場では、このデータの加工だけで10数名の人手×4〜5時間の工数が”毎日”掛かっているとのことだ。

この話を初めて聞いた側からすると、「フォーマットを統一させれば解決する問題なのではないか」と思うだろう。しかし、現実には「それは難しい」と和田氏はいう。

和田荷主である各メーカーと物流センターとでは、どうしても発注側であるメーカーの方がイニシアティブを持ちます。

「業務フロー変更などの影響範囲が大きいから」というものや「昔からやっている業務を変えたくない」など、様々な理由によって、物流の現場側がメーカーの意見を受け入れながら手作業で最適化しているわけです。

データの発生側を変えることはできない。だったら物流現場が手作業で行っている業務をシマント独自のデータベースで自動化。業務効率を促進しようというのが我々の狙いです。

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シマントが取り組むのは「発注データの統合」と
「配車割り付け業務の自動化」

物流業界の業務効率化に取り組むシマント。その提供価値は、「ステークホルダーからの異なるニーズに対し、常時カスタマイズ可能なデータベースを提供することで、物流業務を効率化すること」にある。

前述したように、物流業界では永きにわたる現場の創意工夫によって、荷主が求めるサービス水準を維持してきた。しかし、人手不足にコロナ禍の影響も相まって、これまで当然とされていた物流現場の改善を余儀なくされているのだ。

そんな物流業界に向けて、シマントが取り組む施策は2つある。1つはすでに話にあがった「メーカー各社から送られてくる発注データの統合」。そしてもう1つは「配車に関わる業務の自動化・デジタル化」だ。

和田我々が取り組む物流における配車業務の効率化領域は、一般に”割り付け”と呼ばれる「運んでほしい荷物と運ぶための車両の組み合わせ」を考えるところです。

ゲームのテトリスをイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。要は、どのメーカーのどの荷物をどの車両に何個積めば効率よく収まるのか、パズルを解くように考えていくわけです。

和田ここもこれまで人が担ってきたアナログ業務なのですが、我々の開発したシステムを使えば、荷物と車両の組み分けを自動生成することができます。

また、配車を組み合わせた後でも物流の現場では荷主のオーダーや在庫状況に応じて状況が変化するため、配車割り付けの組み直しや微修正を配車マンの判断により修正できる仕組みも備えています。

話を聞いている限り、業務効率が改善されることはイメージできる。しかし、その仕組みが導入され回り出すまでには多くの連携が必要そうに感じるが、この点についてはどうなのだろうか。和田氏は、導入にはハイタッチとテックタッチの2パターンがあり、現在のシマントにおいてはハイタッチなアプローチが多いと語る。

一般的に、ハイタッチはいわゆる「大口クライアント」への導入を指す。対応できるクライアントの数は絞られるが、その分、個別のニーズに細かく応えることができる。 対して、テックタッチは1社あたりの対応工数は下がるものの、テクノロジーを活かして広範囲かつ多くのクライアントに対応できる特色を持つ。

和田企業規模が大きくなればなるほど、現場に入り込んで個々の現場の事情に照らし合わせながらプロジェクト対応していかなければ難しいと思っています。現場の人たちにも正解がわからないケースは多々ありますから、現場業務と照らし合わせながら調整していくようなイメージですね。

他のIT企業やスタートアップの場合、開発したプロダクトの規格に沿わせるべく、単に「データを標準化して使ってください」とクライアントにひと手間を求めるケースが殆どだという。

その点、シマントは長期間クライアントの現場に入り込み、オーダーメイド式で最適な仕組みづくりを担う。事実、その取引先には膨大な課題の量と規模を抱える大手企業が名を連ねており、日夜、課題解決に向けたディスカッションが行われているのだ。

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「アジャイル型」×「マルチバリューデータベース」がシマントの武器

シマントが物流企業に提供しているサービスを押さえたところで、ここからは同社の強みについても探っていきたい。和田氏は、自社の優位性について「データベースの構築自体をアジャイルに開発できるため、仕様変更に応じやすい」と説明する。

一般的に、システム開発には「ウォーターフォール型」と「アジャイル型」がある。

ウォーターフォール型は最初に決めた設計を決めたあとは、途中で変えることができない仕様。対して、シマントが採用するマルチバリューデータベースに基づくアジャイル型の開発は、データベースの仕様や構造を後から変更可能なため、開発中でも柔軟に仕様を変更・追加することが可能だ。両者の違いとシマントの特徴について、和田氏は建設業界に例えて説明してくれた。

和田IT業界は建設業界と同じく多重下請け構造になっています。ピラミッドの頂点に立つのは大手SIerで、大きいプロジェクトになれば、一般的には複数の下請け構造で総勢数十名~数百名、プロジェクトによっては数千名が開発に関わっているようなケースも多いです。

そのなかでシマントはアジャイル型の開発スタイルを取りつつ、クライアントとシマントで階層構造を少なくしたプロジェクトを担うため、スピード感と柔軟性を発揮できていると思っています。

一般的に多く採用されているウォーターフォール型は、家の建築に例えると、ユーザにとっては「家ができて初めて全体像がわかる」ことだとイメージしていただけるとわかりやすいでしょうか。構造となる柱を立ててしまった後には、途中で大幅な設計の変更は不可能です。

これに対し、我々のプロジェクトの進め方のイメージは3Dモデリングでプロトタイプを作り、全体イメージを掴んでからつくり始めるようなスタイルです。まず、実際のデータから顧客の要求に従って最初のバージョンを作って顧客に見せます。この場合、クライアントも完成品のイメージがつくし、プロトタイプの段階で「ここを変えてほしい」といった要望も出しやすく、柔軟性に富んでいます。

アジャイルでの開発が可能な点は、物流を含めたサプライチェーンロジスティクス領域においてこそ、その真価を発揮すると和田氏は続ける。その理由は、ステークホルダーの多さにあるそうだ。

和田メーカー側の担当者、物流現場の担当者、卸売の担当者と、複数社をまたぐ形で仕事を進めていくのがこの業界です。

メーカーの要求Nに対して卸の要求Nがあり、それらの板挟みにあいながら帳尻を合わせてきたのが物流の現場です。だからこそ、開発においてもスタート時の要件定義ですべての仕様を固めるのではなく、プロトタイプを用いてクライアントと協議しながら、最適な解を見出していけるアジャイル型が適しています。

「この仕様は変えられない」「このパッケージソフトに使い方を合わせてください」と顧客に伝えるのは、真の意味で顧客ファーストとはいえない。対し、アジャイル型で途中の追加要求にも応じられるシマントは、顧客に寄り添い開発に取り組んでいるといえるだろう。

しかし、柔軟な対応を実現するには、時間とコストの問題が発生するのが現実。この疑問に対し、和田氏は「コストや工数の観点でもクライアントに寄り添っている」と答える。

和田そこを実現できるのは、シマント最大の強みでもある『マルチバリューデータベース』という技術を駆使しているからですね。この技術をベースとした開発ツールを持っているため、顧客の要望の追加や変更にも多大なリソースをかけずに対応していくことができるのです。

『マルチバリューデータベース』、システム開発に携わっていない人にとっては聞き慣れない言葉だが、ここで基礎的な情報をインプットしておこう。このシステムは現在主流のリレーショナルデータベース(以下、RDB)とは異なる技術。細かな技術解説は割愛するが、両者の違いはシステムの導入するまでのスピードや、運用の利便性にある。

RDBは、アプリケーションとDBの間にSQLなどを介してデータベースにアクセスする必要がある(アプリケーション側の汎用言語⇄SQL⇄RDB)。そのため、事前のデータベース設計に時間が割かれ、追加・改修を行う際は非常に手間がかかる。ここには一定の手間が掛かり、事業のスピード感にも影響を及ぼす。

一方で、この『マルチバリューデータベース』は、DBがビジネスロジックなどのコントロールを行うため、階層を1つ省略することができる。このため、変更の対応にフレキシブルに対応でき、設計や開発工数の大幅な削減に貢献するのだ。

和田シマントでは、この『マルチバリューデータベース』を活かしてサービスを展開しています。先ほども述べたように、メーカーから届く発注データは仕様がバラバラですが、シマントのDWH側でエクセルの非構造データやCSVなどデータフォーマットが異なっていても統合してデータベース化します。

もちろん、データベース化した情報の中から欲しい情報だけをピックアップして抽出する検索機能も優れています。つまり、データベースに投入される際には整理されていない情報でも我々のツールに取り込めば、すべて整理整頓された状態で取り出せるということです。

使用する技術が画期的なだけでなく、その技術を用いて展開されるシマント独自のサービスは極めて効率性が高い。事実、従来はシステム統合には構想や設計まで含めてスタートを切るまでに半年〜1年を要するものもあるが、この技術を用いた導入においては僅か2週間程度でスタートを切り、運用しながら統合を実現させていった例もあるとのこと。

複数のステークホルダーから多様な要望を受け取り、合意に時間がかかる物流企業こそ、導入スピードが早くかつ常時カスタマイズ可能な仕組みはまさに求めるところ。こうした企業にとって、シマントの提供するサービスは打ってつけということだ。

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「現場の想いを汲まないプロジェクトが成功できるのか?」
メガバンク出身だからこそ分かる、大組織の力学

シマントの技術的な強みはよく理解できたが、そもそもなぜ非エンジニアである和田氏がこのような事業を展開できるのだろうか。ここで、和田氏の経歴をさかのぼってみよう。和田氏は2001年にみずほ銀行に入行。法人営業や社内のデータ加工、調整業務をするなかで、シマントの事業の種を見つけたという。

本部でデータ集計の仕事に携わっていた当時、毎月さまざまなフォーマットで送られてくるデータに対し、分析以前の仕様の加工、統一に大幅な時間を取られていた。「企画立案業務に取り組むためのデータ集計であるはずなのに、集計の段階で疲弊する。これじゃ本末転倒じゃないか…」と嘆く和田氏の姿があった。

和田たとえば、ある人が預金・投資信託・保険という別の商品を運用していたとします。この預金管理システムには管理コードが「1、2、3」と振られており、投資信託管理システムでは「A、B、C」、保険管理システムには「甲、乙、丙」とそれぞれ違う管理コードが振られているという問題が当時はありました。

また、集計期間の尺度も日次・週次・四半期と商品によって異なる状態。このように前提のルールが整っていなければデータとして有効に使えないわけです。そして、このルールを揃えるデータ加工工程が30〜40もあったというのが、私が当時直面した課題です。高い給料をもらって企画を立てなければいけない人間がこうした事務作業に大半の業務時間を割いているのは、企業として経済合理性に欠けるなと思っていました。

ただ、こうした仕事をしているのは各部署で1~2人程度。社内的にその人たちの仕事ぶりは目に見えにくく、また、根本のコード体系の改修やシステム改修をしようとすると莫大なコストがかかるので、改善の手が入りづらい。しかし、必須の仕事であることは間違いない。

「このような縁の下の力持ちを悩ませる非効率業務を改善したい」と思って調べていたところ、『マルチバリューデータベース』の存在を知りました。その後、この技術を日本に持ち込んだ立役者の一人、データベーススペシャリストの渡邉 繁樹氏をCTOに参画してもらい、起業しました。

社内で見つけた課題を解決するためであるならば、わざわざ独立起業せずとも取り組めたのではないか。みずほ銀行というメガバンクからの起業というのは、なかなか特異な経歴。なぜ、その立場を捨て和田氏は起業を選んだのだろう。

和田銀行内でデータの統合にまつわる仕事をやりたいとも思ったのですが、社内でやるにはリソース的に時間が足りない。また、今さら営業からシステムに異動するのも難しいだろうと。そう考えると、起業という選択肢が最も課題解決のためのショートカットになると思ったのです。

たしかに銀行出身者が畑違いのITで起業したことには驚かされます。当時の私は熱に浮かされてといいますか、課題感が先行し、正直「失敗してもいいからチャレンジしたい…!」と思っていました。そのチャレンジによって一人のビジネスパーソンとしての戦闘力は上がりますし、何かしらの経験値は得られるだろうと。

和田また、業界未経験ということだけでなく、30代後半という年齢での起業も珍しがられました。ただ僕としては、「これ以上、年齢が上がると役職もついて年収はどんどん増えていく。そうなると保身が働いて絶対にやめられなくなるな」と思い、そこを振り切るべく完全見切り発車したんです。

若気の至りというか、今だったらやらないかもしれませんね(笑)。やっぱり苦労しましたから。資金繰りの不安とか、実際に起業してみなければわからない辛さはありますよね。

メガバンクからの独立というチャレンジングな選択をとった和田氏。業界未経験ではあるものの、元バンカーという経歴がゆえに出せるユニークな強みもありそうだ。実際、今の事業に活きている知見はどんなものがあるのだろうか。

和田1つ挙げるとすると、我々が現在の主力としてサービスを提供しているのは、大きな組織のお客様が中心です。過去の大組織の一員だった経験から、組織の力学を理解し、バランスを図りながらプロジェクトが進められる点です。業界を俯瞰してみると、DXの多くはトップダウンで行われており、現場の声が置いていかれがちな印象を受けます。

一方で、私はいわゆる大手企業と呼ばれる組織に十数年に渡って身を置いてきました。また、営業担当者として色々な法人のお客さまを見ることができました。そこから感じることは、「日本はとにかく現場が強い」。そうすると何が起こるかというと、総論としては賛成、各論としては反対といった状況に陥りがちです。

トップ側においては、法人営業として数多くの経営者、幹部の方々と接することで、そうしたレイヤーの方々にしか見えない世界や事情があることを学びました。また、現場という意味においては、まさにデータ分析の業務において自分にしか分からない苦労や事情がありました。

大組織の中で大きなプロジェクトを推進していく際には、ステークホルダー(トップと現場)それぞれの事情を鑑みて調和を取りながら物事を推進していく”作法”の必要性を身に染みてわかっているつもりです。

こうした経験から、トップダウンとは真逆の「現場起点でのDX」を行いながら、同時にトップも納得させるプロジェクト推進を行える点が私の強みだと考えています。ベンチャー/スタートアップの世界に身を置いていると、よく「現状の非効率な世の中を革新的に変えようぜ」というメッセージを目にしますが、現場の人間も好きで非効率な仕事をしているわけではないはずです。施策の導入よりも、まずその気持ちを理解して寄り添うことの方が重要で。「無駄を省いて効率的にしようぜ!」と意気込みだけでは、決して現場は付いてこないと信じています。

企業とは人、組織とは人。決して理論理屈や合理性だけで動いているものではない。「テクノロジーやゲームチェンジに頼り『世の中を変える』と豪語する、若き起業家たちとは違う山の登り方があるんですよ」そう言わんばかりの和田氏のメッセージ。事業としてまだ発展途上のフェーズにもかかわらず、既に数多くの大手クライアントから信頼を獲得できる所以を垣間見たように思う。

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物流業界からの1通のメールが、新生シマントを形づくった

先のメガバンク時代に、取り組むべき課題を見出した和田氏。起業直後の事業は、実はサプライチェーンロジスティクスではなく金融業界を対象としていた。

しかし、いくら同業界の出身とはいえ、金融機関へ食い込むのに苦労した。案件を通してもらうまでに多くの時間を要し、プロジェクトが成功しても次のプロジェクトに広がりを持たせるまでには更に多くの時間を要した。また、当時は自社開発したデータベースが汎用的過ぎたため、誰のどんなペインを解決するのかが曖昧だったこともあり、なかなかブレイクスルーしなかったという。

そこに輪をかけるようにやってきたのが、新型コロナウイルス感染症の波だ。それまでのプロジェクト計画は当然、縮小。毎月の資金繰りにもいよいよ不安が見え始め、耐え忍ぶ期間が長く続いた。

「このままだと事業が立ち行かなくなる…」、和田氏がそう感じた矢先、1本の問い合わせメールがシマントに舞い込む。本来なら見過ごすことが多いが、このメールは偶然にも和田氏の目に留まった。

和田そこには、「物流の総量が増えているにも関わらず、人が足りていません。このままだと完全にパンクしてしまいます。アナログでやっている配車作業を、なんとかデジタル化できないか…助けてほしい」と書かれていました。これが2019年の終わり、コロナ禍が始まった直後のことです。

未曾有の事態のなか、この先は金融ですらどうなるかわからない。しかし、物流を含むエッセンシャルワーカーの仕事はなくならないだろうと思い、物流業界へのシフトを決めました。

ですので、物流に完全にピボットできたのはコロナ禍とこの1通のメールがあったからです。そうでなければ、金融から脱却できず、中途半端に事業を続けていたかもしれません。そういう意味では我々にチャンスをくれたこの物流業界に感謝していますし、少しでも恩返ししていければと思って日々クライアントに向き合っています。

和田氏の想いと革新的な技術によって徐々に改善がなされている物流の世界であるが、まだまだ課題は山積みだ。一例を挙げるとすると、トラックドライバーの人手不足がある。

将来予測として、需要に対し20万人超の規模でトラックドライバーが不足するという見立ても。しかし、これ以上の拘束時間は望めない。そんな事態の悪化を防ぐべく、国も2024年に労働時間の規制強化を準備している。

こうした状況を鑑みるに、これまでは現場の人々が残業につぐ残業で何とか回してきた業務が、もはや立ち行かなくなってきていることがまざまざと感じ取れるだろう。物流業界は既に待ったなしの状態まで追い詰められている。今こそシマントのような救世主の活躍が、切に望まれているのだ。

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顧客課題の解決を、プロダクト開発につなげる。
リアルとデジタルがすり合っていない業界の改善を

コロナ禍を機に、物流・ロジスティクス領域に振り切ったシマント。解決すべき問題は山積みではあるものの、将来的には物流・ロジスティクス業界での知見を活かし、他業界への進出も目論む。具体的には、製造業など業務の現場においてリアルな業務とデジタルデータがすり合っていない領域を目指しているとのこと。

そんな未来を見据えるシマントは採用にも積極果敢。2020年時から社員数を昨年2021年には2倍の規模にまで広げたという。事業にますますドライブをかけていく今、同社が求める人材はどのような人なのだろうか。

和田現状のシステム構築に課題感を持っている人、レガシーが残る領域において業務フローや業界構造そのものを変えていきたいと思っている人ですね。SIerのSEやPM、ITコンサルで活躍しているような人たちをイメージしています。

プロジェクトの構築やステークホルダー間の調整に奔走し、その苦労をわかっている人がたくさんいるでしょう。

また、国内の大手SIerの下請けで切磋琢磨しているような人たちも同様に興味を持って頂けたらと思っています。つまり現場の苦闘を知っていて、そこで奮闘している人たちにジョインしてほしいです。

和田その他、パッケージ販売をしてきたなかで、課題感や物足りなさを感じている人もウェルカムです。パッケージ販売は、クライアントに対し、こちら側の仕様ややり方に合わせてもらうことであり、いわばテックタッチな関わり方になると思います。

その点、シマントではハイタッチに顧客接点を持っているので、クライアントに無理強いさせていることに違和感を抱いている人には、やりがいを感じてもらえる仕事だと思っています。企業に深く向き合い、システム開発しながら業界の課題を把握する。そこからパッケージやプロダクトの開発につなげるといった、事業開発の醍醐味を味わうことができます。

「話はわかるが、いきなり大手企業からスタートアップに転職するなんて簡単じゃない」そんな声が聞こえてきそうだ。

そこで、大手企業からくる候補者が「スタートアップは不安だ」と言ったら、大企業を経てきている和田氏はどのように応えるのか。この問いに、和田氏は「やっていることは大手と変わらないですよ」と返した。

和田大企業とシマントでの課題解決に取り組むという意味では、仕事内容は本質的には同じはずです。一方で、我々の方がよりクライアントの課題解決にフォーカスする時間があるところは違うかもしれません。

大企業での仕事は、その組織構造や規模感ゆえ、どうしても内外含めた説明コストがかかっているところがあると思います。業務時間のうち、クライアントの課題解決に直結する仕事の割合はどうしても少なくなってしまうでしょう。

その点、シマントは顧客の課題にフルコミットすることができます。また、二次請けや三次請けだとクライアントと直接コミュニケーションを取る機会を与えてもらえないケースも多いですが、我々は直接顧客とやりとりしますので、提供価値への反応もダイレクトに感じることができます。

クライアント様との距離が近く、相手の不満を上手く吸収しながらプロジェクトを進められる人にジョインしていただきたいと思います。

このように必要なイシューにだけフォーカスできるところが、スタートアップの環境に身をおいてこそ、だと思いますね。

終始、淡々とメッセージを届ける和田氏。洒落た立地に居を構え、資金調達額をSNSで盛大にアピールするベンチャー/スタートアップとは一線を画する”大人な”社風を感じさせる。

世にいう「イケてるスタートアップ」などという括りには目もくれず、ひたすら事業に、世の課題解決に没頭したいという実直なビジネスパーソンにこそオススメしたい企業だ。

こちらの記事は2022年02月10日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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