社会変革を巻き起こすスタートアップの、ミッションクリティカルな事例5選

「私たちは、社会を変える存在となる」。

壮大なミッションを掲げるスタートアップが増える中で、そのミッションと、実際の事業との接続が見えにくい例も増えてきている…。そう感じている読者も少なくないのではないだろうか。「この事業でなぜこのミッションが実現できるのか」──。今日はこの疑問をFastGrowの独自リサーチと考察によって解き明かしていきたい。

本特集で選定する企業軸は、“社会変革”。

文字通り壮大な“社会課題の解決”をキーワードに据える、要注目のスタートアップたちである。もちろん、“事業の急成長”という足元の内実も伴っている企業たちであることは、FastGrow読者なら一目瞭然だろう。

  • TEXT BY SATORU UENO
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ECロジスティクスを変革し、
日本の未来をスケールする──ロジレス

「なぜECロジスティクスの変革が、日本の未来のスケールにつながるんだ?」「EC物流に特化した、効率化SaaSの会社でしょう?」

ひょっとすると、読者の脳裏にはこんな疑問が浮かんでいるのかもしれない。しかし、それでは本質を見誤ることになる。結論から言おう。ロジレスは日本の社会変革を担うポテンシャルを秘めた、要注目のスタートアップだ。同社は日本社会が抱える深刻な生産性課題を解決する力を持つ企業である。

さて、まずは我々FastGrowと読者の認識ギャップを埋めるべく、事実を押さえていこう。今、日本は世界に先立って“少子高齢化→生産年齢人口の減少”に直面しており、マッキンゼーからは「このままでは2030年に向けてGDPがゼロ成長になる」とも指摘されている。この課題に対する具体的な解決策としては、“これまでの2.5xの生産性向上”が必要不可欠。そして、そのための手段として主に“自動化”が挙げられているのだ。この課題解決を、“EC×物流”という2つの業界起点で行なっているのがロジレスだ。

まず物流業界においては、生産年齢人口の減少によって慢性的な人手不足が起きている。そしてEC業界においても、今日のEコマースの発展により、EC事業者に求められるサービスが量質共に激化。つまり、両業界ともに、既存の人的リソースだけではどうにもならない状況に陥っているのだ。

そんな状況のなか、同社のプロダクト『LOGILESS』は、EC事業者と倉庫事業者が一つのシステムを利用し、ほぼ完全な自動出荷を実現することができる仕組みを提供している。

ECの売上拡大をしようとした際に、受注後のバックヤード業務が滞ることがネックになり、新規受注を止めなければいけないというEC事業者は実は多い。なぜバックヤード業務が停滞してしまうかというと、EC事業者が使うOMS(受注管理システム)と、倉庫事業者が使うWMS(倉庫管理システム)は通常は別システムであるがゆえにシームレス、リアルタイムに情報連携することができない。そのため受注~出荷の一連のプロセスを効率化することが難しく、そこにはどうしても生産性向上とは真逆の非効率さが生じていた。

そこに対し、同社が生み出した仕組みが広まっていくことで、日本のEC物流の生産性が飛躍的に向上していく。いま、ロジレスにはそんな期待が集まっているのだ。物流とEC、日本の主要業界とも言えるこれらの領域にまたがり、同時に生産性向上を実現していく。極めてユニークなポジションを取るスタートアップではないだろうか。

さらに言えば、ロジレスが挑むこの課題は世界共通。先に述べた、少子高齢化社会にもっとも早く突入していく日本でこの課題に取り組むということは、ここで築いた事業、プロダクトを世界にも広げていけるということ。

日本の未来だけでなく、果ては世界の未来をもスケールさせるポテンシャル。ここまで読めば、同社が掲げる社会変革のミッションと、その事業との間を結ぶ線がくっきりと見えてくるはずだ。

そんなロジレスが掲げるミッション、描く未来をより深く知りたい読者は、コチラの一読をオススメする。

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いまだない価値(Egg)を創り出し、
人が本来持つ可能性(Egg)を実現し合う世界を創る。
──エッグフォワード

今の日本企業が、果たして価値創出を最大化できているだろうか?あるいは、個々の人財の可能性を最大化できているだろうか?そう問われれば、ほとんどの読者が「できていない、不十分だ」と答えるだろう。この大きな社会課題を捉え、“企業”と“人”のそれぞれ”いまだない価値“を創出することで解決を図っていくのが、エッグフォワードのミッションだと言えよう。

逆に言えば、“人が本来持つ可能性”を、ほとんどのビジネスパーソンが発揮できていないからこそ、このミッションに向き合わざるを得ないわけだ。この意味で、同社は“世界唯一の人財開発カンパニー”と謳っている。企業価値の最大化と、個人の自己実現を両立するという、昨今話題の“人的資本経営”について、より深く、より早く実践してきた企業なのだ。

とはいうものの前述の通り、そのために何をすべきかがわからない、という企業や経営者がまだまだ多い。だからエッグフォワードについても、一見、高尚なミッションに対して、どのような事業をどのように進めているのか、ここで探ってみたい。

その事業は、大きく3つに分かれる。

一つ目は、企業変革の支援(下図の左部、上の2点が主なもの)。“コンサルティング”という言葉で表現されることが多いが、他企業の“戦略コンサルティング”や“組織コンサルティング”といった取り組みそれぞれの本質を捉えなおして昇華させたものである。組織・人事コンサルティングではなく、企業のパーパス実現に向けた、中長期的な事業成長と人財開発の両立こそ、目指す姿だ。リクルートやサイバーエージェント、ラクスル、ユーザベースといった成長企業の支援実績が特に有名だろう。

この事業では、同社が掲げるミッションをそのまま実現することを、クライアント企業に対しても追い求めているとも言えよう。そしてこの提供価値をさらに波及させ、社会インパクトを広げるため、サービス・ソリューションとして昇華させた支援までも行っている。

二つ目は、上図における右側すべて。より、プロダクトやプラットフォームのかたちをとった事業群だ。先に述べた企業変革の支援から抽出した、組織変革と事業成長の本質を提供価値として開発・提供を進めるToBプロダクトとともに、ToCの個人向けプラットフォームも手掛けているのだ。

これは、目指すミッション実現について、裾野を大きく広げていくための取り組みだ。出身者が、戦略コンサルのパートナーから、スタートアップ経営者、起業家、事業責任者など、多岐にわたるとはいえ、少数精鋭で正社員数十名の同社がこれほどの数のプロダクトをローンチしていることに、驚く読者もいるだろう。それもすべてミッション実現から逆算し、「敢えて今のタイミングで、小さくても多数のプロダクトを始める」という意思決定をしているのだ。

そして三つめがスタートアップ投資。といっても、“投資”がメインというよりも、投資先企業のより本質的でサステナブルなバリューアップによる、世の中への提供価値最大化、更にはスタートアップが生まれる社会構造・エコシステム創りを目指す。スタートアップが本質的な価値を広く提供する社会構造になるまでには一定の時間がかかる。だからこそ、エッグフォワード自体もまだ若いと言えるこの時期から始めるという意思決定をしているのだ。二つ目の話と同様に、ミッション実現から逆算した、力強い意思決定だと言えよう。

目指すべき理想に向けて、“企業”と“人”がみな、本質的に変わっていく。これを社会変革と呼ばずして、なんと言おうか。そんなエッグフォワードの内情を余すところなく著したのがこちらの記事だ。ぜひ合わせてお読みいただきたい。

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モノづくり産業のポテンシャルを解放する──キャディ

FastGrow読者なら誰もが知る、正真正銘の社会変革ベンチャー・キャディ。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げ、製造業に特化した受発注プラットフォーム『CADDi』を手掛けている。

創業は2017年の11月9日。明治維新150周年の日に狙いを定めて興したというストーリーも興味深い。

さて、読者のなかには「キャディのミッションがいかに事業と紐づいているかなど、今更言うまでもないだろう」と思うかもしれないが、その点はFastGrowも同感である。であるからこそ、今回はそのミッションと事業との接続を“より強める”、同社のあくなき挑戦に触れていきたいと思う。

その名も、『CADDi DRAWER』(キャディドロワー)。

製造業における最重要データである“図面”の活用を軸に、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を支援するクラウドシステムである。こちらは2022年6月にリリースされたばかりの、いわばキャディにおける“第二の矢”というわけだ。

プロダクトの細部にわたる紹介はここでは割愛するが、今回の新規事業発端の背景を簡潔に説明するとこうだ。同社の第一の矢となるプロダクト『CADDi』は、製造業のバリューチェーン(設計・調達・製造・販売)における“調達”の領域(4つのフェーズ全体の市場規模が180兆円のなか、調達領域だけで120兆円を占める)で、“受発注の最適化”を行ってきたことは読者もご存じだろう。しかし、同社はここで新たな課題を目の当たりにする。

それは、製造業で核となる“図面データ”の取り扱いについて。当業界では、製品設計や仕様伝達、原価計算や部品製造において、その殆どがPDF形式の2D・画像データで取り扱われている。ここまで読めば勘のいい読者は気づくかもしれないが、この資産とも言えるPDFデータが、各メーカー内、いや各スタッフのPC内でバラバラに山積されており、資産を資産として有効活用できていないという現状があったのだ。

極端な話、“ある製品Aを発注する上で、過去に似た図面があるのでそれを用いればコストカットが実現できるのに、その図面を探し当てることができず、過去よりも高い価格で発注することなった”という事態が起きていたのだ。その他、シンプルに業務効率、生産性の観点でも懸念が残るだろう。「これではハッキリ言って、“モノづくりのポテンシャル解放”などできはしない」──。キャディはそう考えたのではないだろうか。

「真のミッション実現には程多い」「まだ、山の一合目にも満たない」と、そう言わんばかりの同社の攻めの姿勢。まさしく、“ミッションに沿った事業展開”ということができるだろう。

今後キャディがこの第二の矢をどのように展開していくのか?またその先にどんな未来、すなわち社会変革が待っているのだろうか?その行く末をFastGrowも追いかけていきたい。

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出会いからイノベーションを起こす
──Sansan

まず、同社の社名やプロダクトを知らない者はここにはいないはず。しかし、読者の多くが「名刺をデジタル化して、セールスを効率的にするサービスですよね」という認識に留まっていないだろうか?今回は特にそんな読者たちに向け、Sansanが起点となって巻き起こす社会変革について説いてみたい。

Sansanにとって、名刺とは当然ながら手段。目的はあくまで人と人との出会いを創造することだ。同社の具体的な取り組みを記すと、人材採用から、営業、契約、請求といった、さまざまな分野をカバーするマルチプロダクト体制を構築している。

一例を挙げると、これまで『Sansan』は名刺管理サービスとして提供されてきたが、2022年4月に営業DXサービスへと進化。多様な企業情報が閲覧できる“企業データベース”と、名刺やメール、サイト経由の問い合わせなど、あらゆる接点を蓄積・可視化できる“接点データベース”を搭載した。

その結果、過去のデータから、受注傾向の高い業界の企業リストを“企業データベース”から抽出。そこから“接点データベース”を用いてリレーションのある企業にアプローチするといったことが可能になった──。と、これだけではまだ“社会変革”のイメージは湧かないかもしれない。しかし、以下の事例を見るとどうだろうか?

住友商事

国内のみならず、海外でも『Sansan』を活用。横の情報交換をうまく活用しながら、新しい事業開発に繋げている。

経済産業省

全国の関係職員5,500名が導入し、90%が効果を実感している。『Sansan』を通じて民間企業や専門家と効率的に連携し、そこで得た知見をもとに政策立案へ活かしている。

Sansan導入事例を参照し、要約

行政と民間企業、はたまた国の内外を問わず、人と人との出会いや繋がりをデジタルに置き換えて可視化する。それが各種リサーチや必要なアプローチの時短に繋がり、結果、もはや業務効率という言葉では言い尽くせない程のスケールで生産性向上・機会の創造を生み出しているのだ。

『Sansan』を用いる、行政・民間企業が推進するすべての社外変革の“きっかけ”を同社が生み出していると捉えると、これほどミッションと事業がリンクする企業はないと理解してもらえることだろう。

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未来のソフトウエアを形にする──PKSHA Technology

未来のソフトウエア(ソフトウェア)とは、何だろうか?テクノロジーが急速に発展し、あらゆる産業にソフトウェアが組み込まれていく社会で、人とソフトウェアの在り方は一体どうなっていくのだろう?

そんな深遠な問いを掲げて事業を推進しているのが、AIソリューションを開発・提供しているPKSHA Technologyだ。掲げるミッションは「未来のソフトウエアを形にする」ことである。同社がこれにより実現したいこととは何か?それは、ソフトウェアがコインの裏表のように社会と表裏一体となっていく中で、「人と共進化するソフトウェア」を形にし、個性や人との違いが価値になる、多様性の輝く社会にすることである。

インターネットの普及など、テクノロジーの発展が人々にどれほど影響を及ぼしてきたかは容易に想像できると思うが、「人と共進化するソフトウェア」とは何だろうか?

同社曰く、これまで多くのソフトウェアは、あらかじめ既定された形で動き、機能する静的なソフトウェアが殆どだった。しかし、多様性を持ち、持続可能な社会に向けてこれから必要となるのが、動的な「人と共進化するソフトウエア」と考えている。

「人と共進化するソフトウエア」を理解する一つの例として、分かりやすいのが「機械学習を有したソフトウエア」である。「機械学習を有したソフトウエア」は利用者から得た情報を学習し、回答精度など価値につなげる機能を持っている。一方で、静的なソフトウエアはそうした機能を持っていない。そのため、多くの場合、常に変化し続ける社会や企業、人と、静的なソフトウエアに乖離が生まれ、問題が生じる。これは、企業で使われるシステムが年月と共にレガシー化し、人や組織の動きを逆に既定してしまう事例からも理解できる。

同社は「人と共進化するソフトウェア」の社会実装に向け、2021年からPhase2.0として、①研究開発、②「AI Research&Solution」事業に加え、③AI SaaSに注力している。

①ではアルゴリズムのモジュールを開発し、 では の技術をベースにパートナー企業との共創を通じてソフトウエアを通じて事業を創造。③では②から生まれた共通課題を解くソフトウエアをAI SaaSとして社会に広く横展開する。こうした事業展開それ自体が「共進化」とも言えるし、複雑な社会課題に対して、ソフトウエアを社会実装する同社の強みとも見てとれる。

そんな PKSHA Technologyが注力する AI SaaSの今後の事業展開として、個々のAI SaaSにおけるシナジーを高め、一つのソリューションとして提供していくことである。アルゴリズムモジュールの精度などこれまでの製品としての強みに加え、いかに顧客の課題を解決し、広く利用してもらうか、サービスとしての価値を高めていくことをカギと考えているようだ。

ミッションだけを見ると、あまりに深遠で、イメージは難しいかもしれない。だが、その道筋における足元の事業選択は、むしろビジネス感度の高い読者諸君にとって非常に理解しやすいものとすら言えるかもしれない。

以上5社、社会変革を掲げるミッションとその事業との相関について、FastGrow視点で紐解いてみた。本記事をきっかけに、読者の中にある“スタートアップ観察眼”に幅を持たせることができれば幸いだ。

FastGrowと共に、多面的にスタートアップを解剖していこう。

こちらの記事は2022年08月05日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

上野 智

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