Web3もあるけど、他にも……?
2022年にFastGrowが注目したテーマ7選──他メディアの記事含め一挙紹介【前編】

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パートナービジネスの先進事例を、AI insideらのnoteから学ぶ

パートナーサクセス社によるプレシリーズAラウンドの2.2億円調達が象徴するように、2022年はパートナービジネス(代理店戦略)に改めて注目が集まる年ともなった。同社の運営するオウンドメディア『Alliance Hack』は、【IRから読み解く】というシリーズでマネーフォワードやAI insideといった上場スタートアップのパートナービジネスを解剖したり、インタビューを次々と公開したりするなど、多くの学びを提供している。

この調達ニュースに先立ち、『企業データが使えるノート』を運営する早船明夫氏はnoteで、3月に「【保存版】SaaSパートナー施策攻略のための10の質問」を、7月には「【識者に聞く】SaaSパートナー戦略の知られざるセオリー」を公開した。同氏は「SaaS企業にとってパートナービジネスはもはや欠かすことのできない営業戦略となっている」と述べ、パートナーサクセス執行役員COO秋國史裕氏のインタビューを交えつつ、具体的なノウハウにまで踏み込んだ発信をしている。

FastGrowでもAI insideとSmartHRの取り組みについて取材し、記事を残した。

だが、早船氏やFastGrowのようなメディアの発信だけで、こうしたトレンドを追いかけられる時代ではない。その早船氏がまた別の記事で「スタートアップ総メディア化時代」と語るのを裏付けるかのように、パートナービジネスを実践する企業による発信も目立っている。

代表的なものが、AI insideによるこのnote。

タイトルにある通り、「パートナーセールス」や「パートナーサクセス」といった概念をさらに飛び越えた取り組みとして「パートナーグロース」を実践する中での考え方やフレームワークを、具体的に提示する。

その内容を「パートナー様を“支援”して成功に導く従来型のパートナーサクセス的な考え方を脱却し、パートナー様の将来事業を共に考え、その実現に寄与して“共に成長”する」と、力強く語る。

上記noteより引用

パートナーサクセス部署のシニアマネージャーが発信する以下のnote では、「パートナーサクセス=代理店販売」に捉われない本質的価値の提供など、現場感が伝わる内容を紹介している。

AI insideは純粋なSaaS企業というわけではなく、企業の新規事業創出自体を支援するという事業特性を持つからこそ、こうした先進的な取り組みを実践し続けることができている。早船氏も先日のFastGrow Conferenceにおいて、AI inside代表取締役社長CEO渡久地択氏に対して深く切り込んだ(早船氏が制作したレポート記事はこちらから

)。

スタートアップのBizDev(事業開発)は、新たな非連続成長を生むための試行錯誤に日々邁進している。2023年もまた、意外な一手を多く観測できることだろう。「我こそは」という事業開発事例の情報提供をFastGrowにもいただけると幸いだ。

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SaaS+FinTech、日本でも各スタートアップが本気モードに

多くのFastGrowの頭に残っているであろう今年公開のnoteと言えば……間違いなくトップ10に入るのがこちらだろう。

アメリカの著名VC、a16zが2020年に打ち出した概念だ(福島氏もはっきり言及している)。日本国内で特にSaaSへの投資・支援を進めるALL STAR SAAS FUNDも、パートナーの湊雅之氏がエンペイCTOの田野晴彦氏とともに「決済Fintech×SaaS戦略」について語っている。湊氏も常にアメリカやヨーロッパのスタートアップトレンドを追っている投資家であり、先駆けてこのビジネス形態に注目しているようだ。

では、日本国内でどのような動きが起きていると言えるのだろうか?2022年のスタートアップビジネスで明らかに目立っていたのは、クレジットカード関連事業だ。先述の福島氏率いるLayerXは2022年8月から『バクラクビジネスカード』を提供開始。メルカリは同11月から『メルカード』を提供し始めた。

今年の新規参入ではないが、2018年創業のUPSIDERは、2022年10月に大手金融機関4社から融資枠で467億円ものデットファイナンスを実施したと発表し、話題をさらった。

すでに一定の市場開拓が進んでいるのではないかとも感じられるクレジットカード決済市場だが、このようにスタートアップの参入や事業拡大が相次いでいる。それはつまり、SaaSをはじめとするITプロダクトを提供する多くのプレイヤーが、決済領域とのシナジー創出を虎視眈々と狙っている事実を物語っているのではないだろうか。

さて、改めて注目したいのが「SaaS+Fitnech」という表現。これはSaaSに後付けでFintech機能を足すという解釈ができる。LayerXはまさにこのストーリーを追っており、メルカリも似たかたちと言えるだろう。エンペイは日々の決裁を自動化するというFintechSaaSとして生まれたモデルだ。

そしてこうした動きの基盤に実は存在しているのが、知る人ぞ知る決済リーディングカンパニーであるGMOペイメントゲートウェイ(GMO PG)だ。LayerXもエンペイも連携企業であり、SaaS企業に対して決済まわりのあらゆる支援を担っている。

FastGrowでも2022年に取材記事を制作した。この年末に改めて、この企業の強みをじっくり味わってもらえれば幸いだ。

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骨太なWeb3事業、FastGrow注目の2件

トレンドの移り変わりがさらに早まっている感覚が強い。2021年末ごろから日本でも話題をさらったWeb3。最近はやや下火になっている感覚を持つスタートアップパーソンも少なくないだろう。

だが、「Web3トレンドは終わった」とまで見るのはやはり、早計だ。FastGrowは、Web3関連スタートアップの中でも特に骨太な事業を行う2社を取材した。紹介しよう。

まず1社目はPictoria。AIを活用したVTuberを、国内で先駆けて展開するスタートアップだ。その新展開としてWeb3トレンドの波に乗り、NFTプロジェクトを開始。国内外で注目を集めた。

FastGrowは2022年5月の1.2億円調達の時期に取材を行い、その勢いに驚かされたが、その後の順調な事業拡大により12月にはシリーズAラウンドとして2.2億円の調達を発表。Web3ディレクターやWeb3プランナーの採用を拡大させる方針だ。

そして2社目は24karat。企業のマーケティングやブランディングにWeb3の考え方を取り入れるための事業を展開する。

企業のマーケティングは、オフライン中心の時代からオンライン中心の時代へ移行し、近年はOMO(Online Merges with Offline)と称されるようにその融合が図られている。こうしたトレンドの最先端を行くのが24karatだ。ブロックチェーン技術を活用することで、オンラインとオフラインとのつながりをより強固で確実なものとし、ブランドのファンを増やしつつ熱量を最大化させる。

同社がユニークなのは、Web3の波に、狙って乗ったわけではない点だろう。ブロックチェーンに目をつけ、早くから事業化を進めていたところ、波がやってきたという流れだ。だから展開が早く、完成度もすでに高い。今後の動きに期待が高まる。

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「成果を出す組織」の最適解はどこに?
気になるアメーバ組織とハイ・シナジーコミュニティ

スタートアップが拡大していく中で、事業よりも難しいと言われるのが、組織。それぞれの企業でそれぞれに最適解を探し続けるしかなく、他社の真似事でうまくいくものではない。なのだがそれでも参考にできる点はある。この2022年に取材した中から、特にユニークな2つの例を紹介しよう。

国内唯一というレベルでティール型組織を実現させたネットプロテクションズ。BNPL(後払い)事業における日本のリーディングカンパニーだ。その中で、プロダクト組織はさらにユニーク。まず、「プロダクトグループ」などというわかりやすい組織名を使っていない。「ビジネスアーキテクトグループ」と称する。

この名が示すのは、開発だけでなくビジネスサイドまで当然のように視野に入れ、活動すべきという考え方だ。だが、「ビジネスもわかるエンジニア」あるいは「経営視点を持ったエンジニア」と言えば聞こえは良いものの、そんな存在を生み出し続けるのは至難の業だ。

ネットプロテクションズは、これを仕組みで解消しようとしている。職務上の「責任範囲」に加え、「意識範囲」を設定し、アメーバのように広く染み出して一人ひとりが活動しているというのだ。その様子を表したのが下図。取材に基づき、一般的なITベンチャー企業との差を強調するかたちで制作した。

もちろん、言うは易く行うは難し。実践にあたっては、一人ひとりの意志こそが重要になってくるのだが、仕組みとしては非常に参考になる。

詳しくは、同社で20年にわたりCTOを務める鈴木氏のインタビューから学んでもらえれば幸いだ。

もう一つ、SEPTAが提唱する、ハイ・シナジーコミュニティを紹介したい。同社は、フリーのコンサルタント向けマッチングサービス『CoProJect』を展開するスタートアップだ。

会社組織をはじめとしたさまざまなコミュニティがこの社会には存在する。それらが、この時代に合ったかたちで、より大きな価値を生み出すためにはどのような構造になるべきか。そう考えを巡らせ、創業者の山口貴士氏がたどり着いたのがハイ・シナジーコミュニティの考え方だ。端的に表現すれば、下図のようになる。

win-winや三方よしといった考え方は、スタートアップの取材においてよく出てくるワードだ。新たな事業を起こしたり、大きな受注を実現したりといった際には、必ず意識される。その上位互換ともいえる考え方としてのハイ・シナジーコミュニティは、多くのビジネスパーソンが活用できるものである。

同社の取り組みにはかのReapra Japanも賛同の意を示し、20〜30年かけて成すべき社会変革として、SEPTAの事業を後押ししている。

そんな“組織づくり”をミッションの軸に据えて事業を展開するSEPTA。例えば「BizDevキャリアを目指すなら◯◯」「SaaSのエンプラセールスなら◯◯」などポジションやロールごとに読者が想起するスタートアップがあるかと思うが、「次世代型の組織創りを模索したいのならば、SEPTAへ」──。このメッセージもFastGrowから提唱しておこう。

この“ハイ・シナジーコミュニティ”の詳細が気になる方はぜひ、山口氏のインタビュー記事にてその目で確認してみてほしい。

残りの3テーマは、後編にて。

こちらの記事は2022年12月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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