社員0人でM&Aは、AI時代の新機軸となるか?──AGENT SUCCESS野村が選んだ、いまCCHグループにジョインする意味
株式会社AGENT SUCCESS、売上高136億円・従業員489名(正社員)の株式会社CCHグループに参画
人材紹介事業を立ち上げたいなら、まず個人で始めて、うまくいったら法人化し、軌道に乗ったら規模を追う──スタートアップの世界では、そんな順番が当たり前だとされてきた。
株式会社AGENT SUCCESS(東京都渋谷区、代表取締役・野村真央)は、その順番をあえて踏まなかった。人材紹介業の立ち上げ支援という、まだ立ち上げて3年に満たない事業を、売上高136億円・従業員489名(正社員)を擁する株式会社CCH(東京都板橋区、代表取締役・高鍬仁一)グループの一員とすることに合意したのである。
FastGrow編集部が最初にこの話を聞いたとき、正直に言えば「なぜ、このタイミングで」と思った。AGENT SUCCESSの事業は、リファラルや自著の書籍、YouTubeといったインバウンドの導線だけで、すでに十分な引き合いを得ている。無理に規模を追わなくても、1人の経営者として事業を回し続けるという選択肢は、当然あったはずだ。
そもそも、AGENT SUCCESSとは?
AGENT SUCCESSが手がけているのは、人材紹介業そのものではなく、人材紹介業を「これから始めたい会社」の立ち上げ支援である。
依頼者の顔ぶれは大きく3つに分かれる。
採用難を背景に人材紹介という新規事業を検討し始めたレガシー企業や製造業。
新規事業をとにかく作り続ける会社。
そして、競合の激化を受けて、既存の人材紹介事業をハイクラス領域などへ伸ばし直したい会社だ。
この市場、実は数字だけ見ると「飽和」に見える。
厚生労働省の職業紹介事業報告書などによれば、有料職業紹介の許可を取得した企業は全国で32,300社。しかし年1件以上の成約実績がある稼働事業者は推計40〜50%にとどまり、倒産した企業の約70%は従業員5名未満の零細事業者だという。
年商1億円超に到達できるのは、全体のわずか3〜5%。免許さえ取れば戦えるわけではなく、「設計とノウハウの差」がそのまま生死を分ける市場だ。
AGENT SUCCESSが50社以上の支援実績を積み上げてきた背景には、この構造がある。
野村氏は、慶應義塾大学卒業後、新卒で株式会社いえらぶGROUPに入社し、転職サイトのディレクターを担当した。その後アデコ株式会社に転職し、就活エージェントとして学生の集客と就活支援に従事。さらに株式会社WARCでは、スタートアップ×ハイクラス領域の転職エージェントを経験している。人材紹介業界でのキャリアは通算10年に及ぶ。
きっかけは、WARC時代に数多くのスタートアップ企業のクライアントと接したことだったという。
事業をゼロから作ろうとしている経営者と話す仕事の方が、自分の性に合っている──候補者を1人ずつ紹介するより、事業の型そのものを設計する方が頭を使えて面白い。そう感じたことが、2023年の創業に直結している。
以来、AGENT SUCCESSは50社以上の企業に対し、事業戦略策定・エージェント教育・組織構築をハンズオンで伴走支援し、「人材紹介事業の立ち上げ支援」という前例のない市場でトップのポジションを確立してきた。海外展開にも意欲的で、インドネシア・ベトナム・インドのスタートアップへのエンジェル投資や、ミャンマーの日本人学校との提携も進めている。
掲げるビジョンは「すべての企業を人材紹介会社に」。
いまも野村氏は、自ら大人数のチームを抱えて管理するようなやり方は志向していない。むしろ支援先ごとに5人以下の小さなプロジェクトチームを切り出し、そこに密着して立ち上げから軌道に乗るまでを一気に「ブースト」していくスタイルを理想としている。規模の大きさよりも、1つひとつの立ち上げに深く入り込む解像度の高さを競争力にしてきた会社だと言える。
気になる競合ニュース。
崩れ始めていた「1人でもやれる」という前提
ここまでは、よくある成長企業の話に聞こえるかもしれない。
だが、FastGrow編集部が今回の参画の背景を伺う中で興味深かったのは、野村氏がここ最近の市場変化をどう捉えていたかだ。
同じ人材紹介立ち上げ支援の領域に、個人や少人数のフリーランス的なプレイヤーが目立って増えてきている。以前はほとんど存在しなかったタイプの競合だという。
加えて、採用管理ツールや生成AIを使ったコンサルティングサービス、求人プラットフォームなど、隣接領域からの参入も相次いでいる。
つまり、1人の経営者が知見と機動力だけで戦える時間は、思ったより短いのかもしれない──そう気づいたことが、グループインを検討し始めた最初のきっかけだったという。
ここで面白いのは、野村氏の結論の向き先である。生成AIの普及で、1人でも事業を回せる「エージェンティックな働き方」がやりやすくなっている今だからこそ、多くの起業家は「だったら、もっと個人で粘れる」と考えるかもしれない。
だが野村氏が選んだのは逆だった。同じ土俵に立てるプレイヤーが増えるならなおさら、早いうちに大きな組織のリソースを得て、規模と速度で差をつけに行く。
AI時代だからこそ、大きなことをやりたいなら早く大きなグループに入るという選択肢がある──これが、今回の参画を通じて野村氏がFastGrow編集部に語った実感だった。
上場を目指して1人で登り続けるのか、あるいは早期に大きな傘の下へ入るのか。どちらが正しいという話ではない。ただ、後者を自覚的に選び取った経営者の言葉として、この参画は読む価値がある。
出典:CCH会社概要資料より抜粋
CCHグループとのシナジー、そしてその「知られざる凄さ」
参画先のCCHは、営業BPO・営業コンサルティングを軸とする株式会社DEITA(100%子会社)をはじめ、SNS採用支援「ネクスカ」、メディア露出支援、VFX映像制作のWanget、そしてTOBによって子会社化した東証スタンダード上場企業・ホリイフードサービスなど、多彩な事業を展開する純粋持株会社だ。
売上高136億円・従業員489名(正社員)という規模は、スタートアップ・ベンチャー界隈での知名度に反して、決して小さくない。
掲げるミッションは「人材を人財に変える」──今回の参画は、社是と事業の中身が一致した動きとも言える。
DEITAは月間2,000件超商談を行う200名規模の営業組織を持ち、採用課題を抱える企業に日々接触している。この営業網を通じて「採用費を払い続けるより、自社で人材紹介免許を取得して収益化する」という「逆提案」を多くの企業に届け、AGENT SUCCESSへの送客チャネルとする構想だ。SNS採用支援「ネクスカ」の利用企業も、採用コストの高さに悩む層と重なるため、同様に導線として機能させる。
さらにCCHは、製造業や再生可能エネルギー、飲食・小売など幅広い業種でM&Aを実行してきた実績を持つ。例えば、一から立ち上げたタクシー会社案件では、通常半年から1年はかかるとされるM&Aを、買手選定からわずか1か月半でスピード成約させ、2億円以上の特別利益を計上した。ホリイフードサービスへのTOBも、約500名の営業スタッフと飲食コンサルティングのノウハウを掛け合わせるシナジー重視の一手だった。
出典:CCH会社概要資料より抜粋
後継者不在や事業承継を背景にHR業界でも再編が加速する中、AGENT SUCCESSはこのM&A実行力の中核として、CCHが取得・出資するHR関連企業に立ち上げ・業務設計・収益化のノウハウを横展開していく役割を担う。
事業を軌道に乗せる現場力と、企業を丸ごと動かすM&A実行力。この2つが揃って初めて、「人材紹介立ち上げ支援を日本の産業インフラにする」という参画後のビジョンが現実味を帯びてくる。
AGENT SUCCESS代表・野村氏のコメント
AIが業務の多くを代替する時代だからこそ、“人が人を支援する”人材紹介の価値は増しています。しかし、参入したくても正しく立ち上げられない事業者が後を絶ちません。その構造を変えることがAGENT SUCCESSの使命です。CCHグループのBPO200名・ネクスカ・メディア網という強力なアセットと組み合わせることで、これまでとは桁違いのスケールで支援を届けられると確信しています。
企業価値向上の競争から降りたのではない。
ブーストを選んだのだ
冒頭の問いに、一度戻りたい。「大きくなる前に、大きな傘の下に入る」というこの選択は、競争から降りた者の言い訳なのか。それとも、いま起業する者にとっての一つの戦略なのか。
野村氏自身は、後者だと考えている。同じ問いの前に立つ経営者に向けて、こう言葉を残している。
野村いまの時代、新規事業は想像を絶するスピードで立ち上がり、そして消えていきます。これまでは、じっくりとサービスを構築していくことや、顧客との関係性をよくしていくことに時間をつかうことが正とされてきたかも知れません。しかしこれからは誰よりも早く意思決定をしなければ、気づいたときには提供してきたサービスが無くなってしまうことだってありえます。後悔しないよう、自分の直感を頼りに意思決定していただけると嬉しいです。もしEXITしようか迷っていたり、どうやったらEXITできるか本気で相談したいという方はぜひ連絡をお待ちしてます。
「知る人ぞ知る」存在だったのは、CCHグループも同じだ。これだけの事業規模とM&A実行力を持ちながら、スタートアップ・ベンチャー界隈での知名度はまだ高くない。
今回の参画を機に、人材紹介立ち上げを検討する経営者が最初に相談する窓口として、野村氏自身がCCHグループの「顔」の一つになっていくことも見込まれている。
1人で頂点を目指すか、早期に大きな組織へ加わるか。
もしあなたが今、その分岐点に立っているなら、AGENT SUCCESSの選択は、一つの具体的な前例として参考になるはずだ。
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こちらの記事は2026年10月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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