連載インターネットの可能性を拡張し続ける10名の“GREEマフィア”
「お料理動画」からベンチャーキャピタルまで。
インターネットの可能性を拡張し続ける10名の“GREEマフィア”(後編)
アメリカのスタートアップシーンでは、Elon Musk(イーロン・マスク)、Peter Thiel(ピーター・ティール)、Reid Hoffman(リード・ホフマン)など、 PayPal出身の大物起業家が、“Paypalマフィア”と呼ばれ注目されている。FastGrowでも過去に日本の大企業を題材に、リクルートやサイバーエージェント出身の起業家を紹介してきた。
だが、まだまだ起業家人材を輩出する企業として注目すべき会社がある。第3弾として紹介するのはモバイルゲームで頭角を表し、いまもなお「探検ドリランド」などのスマートフォンゲームで市場を牽引している企業──グリー株式会社だ。
“インターネットが世の中に与える変化は、まだ始まったばかりです。いくつもの可能性が、未だ可能性のまま残されています。グリーはこれらの可能性を実現すべく、使命感と情熱を行動に移します。”(グリー「コーポレートメッセージ」より)
本記事では、「インターネットを通じて、世界をより良くする。」をミッションとするグリーのDNAを受け継ぎ、 スタートアップ業界に新たな風を巻き起こす10名の起業家を取り上げる。後編では、2015年以降に創業し、わずか4年で頭角を現している企業を紹介していく。
- TEXT BY MONTARO HANZO
吉田大成(株式会社エブリー代表取締役)
1980年生まれ。名古屋工業大学大学院工学研究科修了。モバイル通信に関する研究をするなかで、インターネット領域で新サービスを生み出したいと思い、エンジニアとしてIT業界最大手のヤフーに2005年新卒入社した。
その翌年、グリーへ転職。「釣り☆スタ」「探検ドリランド」など、ヒット作を数多く手がける。PCオンラインゲームで主流となりつつあった「都度課金制」をモバイルに取り込むなど、時代の変化に合わせたゲーム事業を立ち上げていった。
グリーに勤めるなかで動画市場に可能性を見いだし、動画での新規事業立ち上げを提案するも受け入れられず、起業を決断。2015年にエブリーを設立した。
株式会社エブリー
主要サービスは、アプリダウンロード数が1200万(2018年7月時点)を超える日本最大級のレシピ動画アプリ「DELISH KITCHEN」。その他に、ライフスタイル動画メディア「KALOS」、ファミリー向け動画メディア「MAMADAYS」、ライブコマースアプリ「CHECK」がある。
荻野調(財産ネット株式会社CEO)
1973年生まれ。ハーバード大学で修士号、東京大学で博士号を取得後、1998年にタイタス・コミュニケーションズに入社。2000年にソニーに転職し、10億円規模の新規事業立ち上げや、企業合併などにも携わる。
その後「多くのプロジェクトを回したい」という思いから伊藤忠系、住友系のVCに転職し、100社弱に投資。20〜30社ほどのIPOや買収に至った。
2011年よりグリーに入社。グローバル事業の立ち上げや、事業開発部や子会社の提携・投資・Exit・事業立ち上げ・事業売却など「子会社の整理」を担当。2015年に同社を退職し、財産ネット株式会社を設立した。
起業当時、事業に対するこだわりは特になかったが、ブームが訪れていたFintechに海外の最先端事例を日本に持ち込む「タイムマシンモデル」を適用しやすいことから、金融業界に主軸を置くことを決めたという。
財産ネット株式会社
主要事業「兜予報」のコンセプトは「ニュースが出てから株価に織り込まれるまでの30分をチャンスに変える」。情報アナリストやトレーダーがニュースを解説し、株価への影響を分析した情報を掲載している。デイトレーダーを中心に愛用されているサイトだ。
大久保泰介(株式会社シロップ代表取締役社長)
1987年生まれ。同志社大学経済学部卒業。大学在学中、留学先のロンドンにてグリー創業者の田中良和氏のプレゼンテーションを聞く機会があり、同氏の「日本からGoogleをつくる」というミッションに共感し、2012年にグリーに入社した。
同社では国内・グローバル採用プロモーション業務に従事。採用戦略設計からSNSリクルーティング、採用サイト・マテリアル制作(WEB/紙/ムービー)などに携わる。その後、経営管理本部へ異動し、財務管理会計業務、新規事業企画に従事。
2015年、株式会社シロップを創業、現職に至る。「人が動物と共に生きる社会をつくる」をミッションに、保護犬・保護猫と飼いたい人のマッチングサービス「OMUSUBI(お結び)」など、ペットに関するインターネットサービスを中心に事業展開している。
株式会社シロップ
保護犬や保護猫と飼い主を繋ぐマッチングサービス「OMUSUBI(お結び)」があるの他に、獣医や動物の専門家が執筆するメディア「ペトこと」など、ペットに関わるインターネット関連サービスを開発・運営している。
河野剛進(株式会社バカン代表取締役)
1983年生まれ。東京工業大学大学院修了(技術経営)。新卒で株式会社三菱総合研究所に入社し、市場リスク管理などの金融領域における研究員として勤める。
2011年にグリーに入社。経営管理・新規事業立ち上げや、米国支社での財務・会計に従事する。その後、“GREEマフィア”前編で紹介したエルピクセル株式会社において経営企画室長を務め、シンガポールでの合弁会社の立ち上げに参画。2016年、株式会社バカンを設立した。
社名の「バカン」は「空いている場所」を意味する語「VACANT」からとった。社名通り主要なサービスは、さまざまな場面の「空き」情報を伝えるサービスだ。
株式会社バカン
主要サービス「VACAN」はレストランやカフェの混雑状況を伝える「空席情報プラットフォーム」。現在、相鉄ジョイナスや日比谷シャンテや、駅ナカ施設などへの試験導入が行われている。同社は他にトイレ空席情報サービス「Throne」や、飲食店の料理を弁当として取り置き、受け取ることのできる「QUIPPA」がある。
山岸広太郎(慶應イノベーション・イニシアティブ代表取締役社長)
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社日経BPに入社。3年半近く勤めたのち退社し、2003年に編集長として「CNET Japan」の立ち上げに参加した。
2004年、田中良和氏とグリー株式会社を創業。同社にて取締役副社長を10年間務め、事業部門を統括してきた。田中氏とは、大学時代にベンチャー企業「ネットエイジ」にインターンとして活動している際に知り合った仲であった。
2015年12月、慶應イノベーション・イニシアティブの設立と同時に、同社の代表取締役社長に就任。大学の研究開発や東大発ベンチャーに出資し、学術界とビジネスの橋渡しを担ってきた。現在、グリーには非常勤の取締役として残りつつ、慶應イノベーション・イニシアティブでの活動をメインとしている。
慶應イノベーション・イニシアティブ
慶應イノベーション・イニシアティブは、慶應義塾大学が設立したベンチャーキャピタル。現在のポートフォリオは人工知能開発、デジタルヘルス、再生医療・医薬品領域があげられる。
こちらの記事は2019年05月27日に公開しており、
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姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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