連載コロナ禍の苦境を乗り越えた5人の経営者──未曽有の“危機”を乗り越えるための思考法

【みずほ銀行コラボ企画】「事業はなによりまず、“楽しむ”こと」──食べられる家をつくる?fabula・町田氏が感じた、経営者が大事にしたい、たった一つのこと

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インタビュイー
町⽥ 紘太

1992年生まれ。東京大学工学部卒。幼少期をオランダで過ごし、環境問題に興味を持つ。東京大学生産技術研究所 酒井(雄)研究室にて、「100%食品廃棄物から作る新素材(特許技術)」を開発。2021年10月、小学校からの幼馴染3人で、「あらゆるゴミの価値化」をめざして、fabula(ファーブラ)株式会社を設立。無価値物として廃棄されたゴミにストーリーを見つけ出し、ゴミから感動をつくる。好きな食品廃棄物は、みかんの皮。趣味は旅行で、これまで60ヵ国以上を旅してきた。好きな街はヴェネツィア。

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本記事は、みずほ銀行とFastGrowが全5回の記事を通してお送りする、“コロナ禍の苦境を乗り越えた5人の経営者たち"と題するコラボ企画。(本記事はその第2弾に該当。記事末尾のリンクからは、みずほ銀行専用サイトで動画でのインタビューも視聴可能)

2020年2月。突如あわられた未知なる感染症が日本に波及し、国民全員が先の見えない道に放り出された。その感染症は、今なお我々の生活を脅かし続けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だ。この厄災により、多くの中小企業や小規模事業者がダメージを受け、明日の経営に不安を抱いているのではないだろうか。

「そんな経営者たちを少しでも応援したい」「自分の経験から、明日の糧になるヒントを得て欲しい」。そんな想いで駆けつけてくれたのは、自身もコロナ禍の影響を受けた5名の経営者たち。

今回語ってくれたのは、fabula株式会社(以下、fabula)の代表取締役CEO 町田 紘太氏。野菜や果実といった食品廃棄物を食器や建築材料に転換させるといった、常識を覆す革新的な取り組みを行っている企業の経営者だ。立ち上げは2021年10月。世間では新型コロナウイルス感染症による感染者増加率がピークを迎え、深刻な社会状況に陥っていた。そんな状況下で起業した同氏だからこそ語れる、逆境に負けない経営者としてのスタンスに、スポットをあてていく。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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コロナ禍時の創業ゆえ、ウェットなコミュニケーションの取りづらさが前提に

「会社を立ち上げたのがコロナ禍に入ってからなので、事業状況については新型コロナウイルス感染症が流行する以前と比較ができないのが正直なところです」。そう町田氏は言う。また、幸いなことに、立ち上げ後も“コロナ禍だからこそ”感じた特別な困難はなかったとのこと。

町田強いてあげるなら、働き方の点でしょうか。もともとリモートワークに抵抗のないメンバーの集まりではあったので、コロナ禍で世の中にリモートワークが浸透していくのに合わせて、我々も自然とその働き方がベースとなっていきました。

fabulaは、町田氏と小学生時代からの幼馴染3人で創業した会社。そのため、経営陣でありつつ、結びつきの強い友人同士でもある。そうイメージすると、リモートワーク下においても特にコミュニケーションで苦労することはなさそうに思えるが、「そう簡単にはいかない」と町田氏は語る。

町田気心知れた友人であり、経営を担う同志でもある。そんな自分たちの関係性を良好に維持するためには、真面目な話をする時間とふざけ合える時間の双方が必要だと感じていて、そのバランスを起業後も崩さないよう意識してきました。

一緒に食事をする機会があれば、「それ、昔も食べてたよな」とちょっとした雑談が生まれます。しかし、リモートワークになると、その“ちょっとふざけ合う時間”を持つことが難しく感じました。

こうした雑談は、関係性の維持だけではなく、アイディアの創出にも役立つものです。事業の立ち上げフェーズだからこそ、「こうなんじゃないか、ああなんじゃないか」「こんな機能が付けられるんじゃないか」という柔軟な発想が必要だと思うのですが、リモートワークだと例えば、プロダクトのプロトタイプを見せながら細部の仕様をディスカッションするといったことが、対面時と同じようにはできないなと感じています。

雑談の有用性は、fabulaのような気心の知れたメンバーで立ち上げた組織ではなくとも、このコロナ禍で気付いた人も多いはず。

そんなイレギュラーな状況から事業をスタートさせたfabulaだが、事業内容は“ゴミから食器や建材をつくりだす”といった、これまたクセのありそうなもの。一体なにを行っている会社なのだろうか?次章より詳しく話を聞いてみた。

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廃棄物にもストーリーを。
東大の卒論から着想を得た事業の種

fabulaの事業内容について、町田氏は「食品廃棄物から食器や建築物を生み出すこと」だと述べる。詳しい内容について、町田氏は以下のように語ってくれた。

町田“コーヒーの出し殻”や“お茶を抽出したあとのカス”、“規格外のみかん”などといった食品廃棄物を乾燥させ、粉砕して粉にします。その粉に熱と力を同時に加えることで、コンクリートの強度を凌ぐ材料になるんです。この素材を用いて食器や建築物につくりかえるというのが、我々の取り組んでいる試みです。

町田元々この取り組みは、私が大学時代に卒論を書くうえで開発したものです。当時、私が所属していた大学の研究室は、コンクリートに関する研究室でした。このコンクリートと私たちの技術でつくられた素材の強度を比較してみると、コンクリートの4倍、木材より多少低い程度の数値が出ているんです。なぜそれだけの強度が出るのかというと、食物繊維が“骨子”の役割を、糖質が“糊”の役割を担ってくれるためです。

まだ解明中ですが、熱によって柔らかくなった糖質が、プレスによって食物繊維の間を埋めていくことで強度が発現します。世の中にはペットボトルやプラスチックなど、循環再生産した素材は他にもありますが、我々の素材は原材料の色や香りが楽しめるのが他との違いです。

この“食品を建築材料にする”という革新的な技術が世の中に出たのは2021年5月。そしてfabulaが立ち上げられたのが同年の10月だ。コロナ禍という逆境の時代に敢えて起業を選択した背景には、どのような経緯があったのだろう。

町田2021年の5月に技術をリリースしたあと、どうやってこの技術や素材を世の中に広めていくかを考えていました。起業を考え始めたのは、率直に「自分で実装できたら楽しいだろうな」と思ったからです。そこから、多くの友達に声をかけていく中で、今の経営陣である2人に興味を持ってもらえたというのが経緯です。

彼らとはもともと信頼関係がありましたし、友人関係を通して強みや性格も理解しています。また、場面に応じて真面目な話もできる間柄でしたので、事業の推進においてもだらけてなあなあになることはないだろうと。そこから準備を進め、10月の創業に至りました。

事業や技術について2人に話した当時の反応について、町田氏はこう振り返る。

町田最初に声を掛けたCFOの松田は、もともとコーヒーの専門商社勤め。駐在先のコスタリカから帰国してきたタイミングでの声掛けでした。最初は本格的な誘いではなく、自分の技術でどんな世界が創れるのかについて話した程度だったのですが、彼は「この技術は何にでもなる可能性を感じる」と言ってくれ、その場で「一緒に事業を大きくしよう」と話が進んだんです。

そこから、2人で「こいつも組織のメンバーに誘おう」と決めたのが、CCOの大石です。彼は感性工学を専門にしていて、人の感性を活かした住環境の空間づくりを研究していた背景がありました。なので、我々が手掛ける原材料の色や香りが残る素材についても、興味を示してくれたんです。

卒論をきっかけに事業が始まり、頼もしい仲間も得た。しかし現在、fabulaの素材はまだ量産フェーズには至っておらず、一つひとつ開発事例を積み重ねている段階だ。

具体的な取り組みをあげると、2022年の2月上旬に徳島県の上勝町で開催された『GREEN WORK KAMIKATSU』なる催しで、同社が製作したドリンク用コースターが参加者に提供された。このイベントは、ゴミをそもそも発生させない仕組みをつくる経済モデル“サーキュラーエコノミー”を推進する企画で、上勝町はその先駆けとなる街づくりを推進。こうしたSDGs関連の取り組みにもfabulaは既に着手している。その他、現在は大手企業との共同プロジェクトも進めているそうで、精力的な活動状況がうかがえる。

他社がこれまで挑戦しようとすら思わなかった「食品廃棄物の製品化」という発想と実践こそがfabulaの強みであり、周りから「fabulaの取り組みは革新的だ」という評価を集める所以なのだ。

町田“本来なら捨てる食材が素材となり、新たな物に変化する”。ここに、従来のリサイクル素材がもつ“機能的な価値”だけでなく、“ストーリーという価値”が付与され、共感を呼んでいると考えています。

この意味を血液の循環に例えると、我々が扱う対象とする天然素材を使った物づくりを“動脈産業”、一方で、廃棄物を回収・処理して再資源化する産業を“静脈産業”と位置づけるとします。

この“動脈産業”では、エンドユーザーとなる消費者のことを考えて、天然素材から製品を生み出します。そこには製品の機能的な価値だけではなく、それこそ我々のような“食器や建材から果実の香りがする”といった共感性のあるストーリーをつくりやすい側面があるかと思います。それに対して、今の“静脈産業”では“処理”や“無害化”といった言葉が主なキーワードにあげられています。現実的に物が循環していたとしても、合理性は感じられるが、共感性、ストーリーを感じづらく、ある種の無機質さを感じてしまうんですよね。個人的にそれではあまりワクワクしないなと。

“動脈産業”・“静脈産業”のいずれにおいても、今以上に共感性のあるストーリーが打ち出せると嬉しいですし、こうしたストーリーが加わると、機能面だけの価値に比べて、単純計算で2倍の提供価値になる。そうした世界をfabulaで描きたいと思っているんです。

単に革新的な技術で既存の仕組みを変えるだけでなく、そこにストーリーをもたらすことで、社会の共感をより広く集めることができる。兼ねてより社会課題の解決にも関心があったという、町田氏らしい事業構想だ。

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反対の声には憤りも覚えるが、すべては改善の種

食品廃棄物から食器や建築材料をつくるといったこれまでにない発想での“技術開発”と、これまた従来の食品廃棄・再生領域では大々的に発信されてこなかった“ストーリー”という2つの価値を創出するfabula。

しかし、当然ながら世の中は賛同者ばかりではない。従来の常識に無いものというのは、初めは否定されがちなのが世の常。こうした風当たりについてはどのように向き合ってきたのだろうか。

町田事業を通じて出会う方々には、「こんなものは建築素材として使えない」「この耐久性では既製素材の代替にはなり得ない」などと散々に言われてきましたよ。

ただ、我々の取り組みに関わらず、世の中どのようなものにも賛否は必ずあると思っていて。なので、こうした数々のご指摘が我々の事業に対する問題点や課題点を明らかにしてくれていると捉えています。

つくったものに対してもちろん自負はありますが、社会に普及する素材としてはまだまだ未熟なのも事実。ですから、今は一つでも多くのフィードバックをいただける方が、むしろ素材の進化に繋がるとポジティブに受けとめています。

町田ただ、僕も感情のある人間ですし、言われた瞬間には憤りを覚えることもありますよ。でも、冷静になればケロッとして切り替えられていると思います。

それこそ、今は建築の現場で当たり前のように使われているコンクリートも、今の僕らと同じように「使えない」と思われていた時代があると思うので、全然気にならないですね。

そこでめげずに、もらったフィードバックを次の開発に落とし込み、製品の改善に繋げていくことが重要だと考えています。

柔和な人となりと相反して、中身のハートは熱い。彼が描く未来は決して低き壁ではないが、心許せる仲間や信頼のおける共同パートナーらに支えられ、一歩ずつだが着実に前へと進んでいく力強さを感じさせた。

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湧き上がる好奇心こそが、逆境における原動力

描く未来に向けて邁進するfabulaだが、研究開発を主とした事業であるならば、開発や実装に掛かる資金の捻出は必要不可欠。しかし、同社はこれまで一切の資金提供を受けずに、事業の売上のみで会社を継続させてきている。

昨今のベンチャー、スタートアップブームにおいて、デット・ファイナンスはもとより、エクイティ・ファイナンスの機会は十分にありうると思うが、そこに頼らず事業を展開する町田氏には、経営者としての独自のスタンスがあるのだろうか。

町田fabulaはまだ生まれて3ヵ月程度の企業なので、経営者としてのスタンスが確立されている訳ではありません(笑)。しかし、外部からの資金提供で一気に事業や組織を拡大するよりも、現段階では地に足ついた成長を優先したいと思っています。

実は、僕の高校の先輩があるベンチャー企業を立ち上げ、今では海外のベンチャーキャピタルも含め何百億円単位の調達をし、会社を大きくしていくのを見ていました。

そのスケールの大きさに羨望を覚えることはありますが、じゃあそれが自分たちのやりたいことにあてはまっているのかというと、違うんです。それは経営方針だけでなく、調達して急拡大すべき事業と、そうでない事業というのもあると思いますしね。

町田もちろん、事業として利益を出すことは大切ですし、経営者として合理性を重視するのは分かります。ただ、「こうしたい」「誰とやりたい」といった自然に生まれてくる想いも大切だと僕は思うんです。例えるなら、当てもなく散歩をしていて、曲がりたい道で曲がってみる。そんな、理屈や経済合理性だけに囚われない在り方も、志を持って取り組む事業においては時に大切なのではないでしょうか。

「大人になると誰も考えなくなりますが、私は今でも『ヘンゼルとグレーテル』を読んで、『お菓子の家を食べたい』と思うように、いつか『家を食べてみたい』と思うんですよ」と冗談まじりに呟く町田氏。

「今ある素材の代替品をつくる」という単純な話ではなく、町田氏のめざす循環型社会には、誰もが子供時代に夢見たワクワクがある。彼の言う、自然に湧き上がってくる「やりたい」や「楽しい」こそ、fabulaが逆境でも着実に歩みを進めることができる原動力なのだ。そしてその等身大のスタンスこそが、創業から僅か3ヵ月という間に経営メンバーや大学、果ては大手企業らも巻き込む推進力を生み出しているのだろう。

苦しい状況下において、無理にスピードや規模を追い求める必要はない。自らの内に秘める原動力を忘れずに、いずれ来たるタイミングに向けて、一歩一歩積み重ねる。fabulaに限らず、多くの経営者にとっても今はそんな時期にあるのかもしれない。

こちらの記事は2022年05月31日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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