あの『食べチョク』25歳新取締役と、混雑可視化プロダクトのPdMが登壇──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社ビビッドガーデン、株式会社バカンの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
株式会社ビビッドガーデン
生産者と消費者をつなぎ、一次産業を支えるオンライン直売所
最初に登壇したのは、株式会社ビビッドガーデン取締役兼マーケティング統括の松浦悠介氏。
すでにFastGrowでは代表取締役社長の秋元里奈氏を3度にわたり取り上げている(記事一覧はこちら)が、同社は農家や漁師といった生産者が、個人宅に “直接”商品を販売できるオンライン直売所『食べチョク』を開発・運営している。
生産者側のユーザーは中間業者を介さずに商品を販売できる。自分で価格を決められ、手数料は売れた商品代の20%のみで掲載料や初期費用などはかからない。また食べチョクが、マーケティングのサポートやカスタマーサポート対応のヘルプを行うため業務負担も減らせる。
一方、消費者側のユーザーは、新鮮な食材や一般流通では手に入れることのできない希少な食材などを購入できる。さらにはオンライン直売所上で、出品している生産者の背景や想いも知ることができる。
生産者と消費者をつなぐサービスの背景には、代表である秋元氏の経験があると、松浦氏は紹介する。
松浦秋元の実家は小さい農家を営んでいたのですが、お祖母様の代で、農家を廃業したそうです。母からは「実家の農業を継ぐな」と言われ、秋元は新卒でディー・エヌ・エー(DeNA)に入社しました。
そこで数年間働くなかで、ふと実家で荒れ果てていく農地を目にし、幼少期に畑で遊んだことを思い出したといいます。そこから農業への思いに気づき、起業を決意しました。
社名である「ビビッドガーデン」には、鮮やかな農地をもう一度取り戻したいという思いが込められています。
秋元氏の実家に限らず、国内の農家をめぐる状況は厳しい。農業従事者の平均年齢は67歳で、その数は今後も減少の一途をたどるであろう。
特に品質にこだわりを持つ小規模農家は収益を得るのに苦労しているという。「頑張っている農家や漁師のみなさんが正当に評価される世界を作りたい。そんな思いでサービスを運営しています」と松浦氏は語る。
その思いは着実に実を結びつつある。食べチョクを利用する生産者は2021年2月時点で3,700軒を超え、売り上げを伸ばしている小規模農家も出てきていると言う。こうした事例を増やしていくため、出品や販促のサポートにも力を入れている。
松浦現在は、地域との連携を深め、出品から販促までのサポート体制を整えています。地域のなかで取り組みを率いるリーダーを決め、その方を中心に食材を出荷するケースもあります。
また、売り上げを伸ばしている生産者さんからのナレッジ共有、写真撮影や商品ページの作成にまつわる学習サポートなども取り組んでいます。
消費者側のユーザーも順調に伸びている。松浦氏は「直近1年で流通額は42倍成長を遂げています」と語り、注目を集めているものの「いたって普通で地道です」と謙遜するように形容する同社のマーケティング戦略も紹介した。
松浦2020年7月に、初めてテレビCMを放映しました。認知拡大を狙うというより、Facebook広告などと同様、新規顧客を獲得する手法の一つと捉えています。
また、プロモーションから食べチョクに流入した新規顧客の受け皿をしっかり用意するため、生産者向けに出品を支援するためのキャンペーンも積極的に行いました。
主力サービスの食べチョクに加え、消費者に合わせた野菜の定期便『食べチョクコンシェルジュ』やオンラインコミュニティ『一次産業みらいラボ』など、幅広い事業を展開する。
さらなるグロースに向けて「かなり人手が足りない状況」だと語る松浦氏。プロダクトやコーポレート周りを中心に、エンジニアやインターンなどを募集しています。スタートアップに興味がある方はぜひお問い合わせいただけると嬉しいです」とピッチを締めくくった。
採用情報
株式会社バカン
“混雑・空き情報”をリアルタイムで可視化するIoTプラットフォーム
続いて登壇したのは、株式会社バカン事業開発本部PdM/PjMの小牧弘和氏。
同社は「いま空いているか1秒でわかる、優しい世界をつくる」をミッションに掲げ、AIやIot技術を活用して、店舗や施設の混雑・空き情報を可視化するプラットフォームを複数展開している。
代表的なサービスには、スマートフォンの地図上にお店や施設の混雑・空き情報を配信する『VACAN Maps』や、店舗・施設の混雑状況を検知してサイネージや特設Webページに表示する『VACAN AIS』、トイレの混雑状況を可視化しつつ、個室内にタブレットを設置して広告配信を行う『トイレの混雑解消サービス』などがある。
バカンの展開するソリューションは『検知』『解析』『配信』という3つのアプローチから成る。
小牧例えば『VACAN AIS』では、天井に設置したカメラやセンサが混雑状況を「検知」、得られた情報をAIが自動で「解析」。混雑状況を、施設に設置されたデジタルサイネージや特設Webページで「配信」します。
3つのアプローチにより、飲食店や商業施設など、さまざまな場所でリアルタイムの混雑や空き情報を可視化します。
「混雑状況の可視化」を軸に事業を展開するきっかけは、創業者の河野剛進氏が休日に子供とショッピングに出かけた際の経験だ。
小牧河野は、よく休日に家族でショッピングモールに出かけていました。しかし、ランチはどこも混んでいて、探し回っている間に子供がぐずり始める場面を何度か経験したそうです。
また、トイレや授乳室もリアルタイムの空き情報がわからない。時間が限られた人生のなかで、心に余裕を持てるようになりたい。そんな思いを抱き、起業に至ったそうです。
その想いを強く持ち、事業成長に向けたモチベーションにしてきた。2019年4月には海外現地法人を上海に設立し、2019年6月には7.9億円の資金調達を達成。同時期には経済産業省が、「世界で戦い、勝てるスタートアップ」を育成支援するプログラム『J-Startup』に採択されている。
さらにコロナ禍以降は、三密を避けた施設利用のためのサービス導入に注力している。
小牧熱海にある老舗旅館では、カメラやセンサーを設置し、混雑情報を一元管理しています。宿泊者は、大浴場やフロントの混雑状況をリアルタイムで把握できます。大変ご好評いただいており、旅館のブランド向上にもつながっています。
また、東京駅にある飲食店街では、駅構内にデジタルサイネージを設置。また、オンラインで順番待ちをできる仕組みを導入したところ、店頭での密が解消され、お客様も時間を有効活用できるようになりました。
今後は「自治体や避難所での混雑状況の可視化に貢献していきたい」と小牧は語る。「全方位で採用を進めていますので、ご興味ある方はぜひお気軽にお声がけください」と呼びかけた。
採用情報
第31回目となった今回は、これまで見えていなかった情報を可視化し、新たな価値を生み出すスタートアップが登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい
こちらの記事は2021年02月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ
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