連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

日米つなぐVCファンドWiLが注目!ワークマネジメントツールAsana、ビデオ会議用ツールmmhmmが登場──FastGrow Pitchレポート

登壇者
代田 常浩

ベンチャーキャピタルWiLのパートナー。シリコンバレーを拠点にソフトウエア、インターネット分野での米国及び欧州における成⻑企業への投資に注力し、Asana、Auth0、mmhmm、Wise(旧TransferWise)などへのWiLによる投資を主導。WiLへの入社以前はEvernoteでアナリティクス担当副社⻑、事業オペレーション担当副社⻑を歴任したほかバークレイズ・キャピタル及びリーマン・ブラザーズにて投資銀行業務に従事。スタンフォード大学経営学修士(MBA)、東京大学経済学部卒。

田村 元

25年以上にわたりビジネスアプリケーションを通じて企業のパフォーマンス向上に従事。特に、SaaSビジネスに関しては、2000年代後半の日本におけるクラウドコンピューティング黎明期から、常に先駆的な立場でクラウド活用による業務効率化をで推進してきた。SAPジャパンではマーケティングバイスプレジデント、ネットスイート株式会社の代表取締役、株式会社パソナテキーラ代表取締役、日本マイクロソフト業務執行役(ビジネスアプリケーション)などを経て、2019年7月より現職。

井上 健
  • mmhmm, Inc. General Manager, APAC All Turtles & mmhmm 

住友銀行に入行後、米スタンフォード大学留学を経てNECの米シリコンバレー戦略部門の立ち上げに参画。日本帰国後のインターネット黎明期にネットエイジにて事業・資本提携や新規事業立ち上げに携わる。その後、グロービス・キャピタル・パートナーズに参画して国内外のITベンチャー投資に従事したのち、複数社のCVC設立やスタートアップ支援、海外ベンチャーの日本市場参入プロジェクトに携わる。スマホ黎明期には頓智ドットに参画し「セカイカメラ」の事業・資本提携を指揮。Evernote の日本・アジア事業の統括責任者を経て、2017年より AI を活用したスタートアップや新規事業を支援する All Turtles の日本代表を務める。

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「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

​​今回は日米を中心にテクノロジーベンチャーへの投資を行うVC・World Innovation Labとのコラボレーション企画として、World Innovation Labの投資先のみが集まる限定回を開催した。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、Asana Japan、mmhmmの2社(登壇順)だ。今回は、World Innovation Labの代田常浩氏も登壇し、各スタートアップの事業の魅力を語っていただいた。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY HARUKA MUKAI
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World Innovation Lab
日米を拠点に次世代を担う起業家を育成する

World Innovation Lab

World Innovation Lab(以下、WiL)は、2013年に設立された、シリコンバレーと東京に拠点を置くVCだ。日米問わず、成長期を迎えたテクノロジーベンチャーへの投資、グローバル進出・拡大のサポートを行う。

また、同社は国内大手企業の変革による、起業家精神の普及とスタートアップ産業の拡大を目指す。ベンチャーキャピタル投資に加えて、大企業におけるイノベーター人材育成や新規事業創出、オープンイノベーションも支援する。

今回は、日本市場でも存在感を発揮する、シリコンバレー発の注目スタートアップを紹介いただいた。

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Asana Japan
働くすべての人をサポートするワークマネジメントツール

Asana Japan

初めに登壇したのは、ワークマネジメントプラットフォーム『Asana』を開発・運営しているAsana Japan代表取締役ゼネラルマネージャーの田村元氏。

Asanaは2008年、Facebookの共同創業者であり、CTOを務めていたダスティン・モスコビッツ氏によって開発された。

田村当時、Facebookの社内では、新しいアイデアや動きが渦巻き、カオスな状態が広がっていました。そこでモスコビッツ氏が開発したのが、Asanaの前身となる仕事管理ツールでした。おかげで誰が何をやっているのか把握できるようになり、組織内の見通しが良くなったそうです。

これは良いツールだと、モスコビッツ氏はFacebookを退職し、Asanaを創業。2012年にプロダクトをリリースしました。

Asanaでは、一つのタスクや仕事にまつわる書類やファイル、コミュニケーションをひとまとまりにして管理する。社内メールでやり取りせずとも、asanaであらゆる報連相が完結するため「圧倒的にコミュニケーションコストを削減できる」という。

一つひとつのタスクをリストやタイムラインなど異なる形式で閲覧できるうえ、プロジェクトやチーム全体の進捗、メンバーの負荷状況、目標進捗なども管理できる。

田村氏はasanaを「ワークマネジメントツール」と形容する。個人のタスクやチームのプロジェクトに限らず、組織のあらゆるレイヤーで「仕事をうまく進める」状態を実現したいと語る。

田村1つ目は個人のレイヤーです。最前線で働くチームメンバーが、目標達成のためにフォーカスすべきことを見極め、フロー状態で仕事ができるようにしたい。

2つ目はチームのレイヤーです。やるべきことが常に変わるなかでも、チームで誰がいつ、何をしているのか共有でき、責任の所在が明確になるような仕掛けを用意したい。

最後は会社全体のレイヤーです。会社の戦略や目標に対し、どの仕事がどこまで実行されているのか、一人ひとりの仕事がどのような価値を生んでいるのか。全体像を把握できるようにしたいと考えています。

また、顧客のなかにはAsanaを「働き方のDXツール」と捉えている人もいるのだという。

田村氏は、経産省によるDXの定義に含まれる「業務そのもののや組織、プロセス、企業文化・風土の変革」、特に「即時性」と「コスト削減」にasanaは貢献できると捉えている。

田村即時性は、仕事完了までの速度ですね。asanaでは、最前線で起こっていることが常にわかるので、判断から実行までの時間を極限まで短くできます。週次で状況をまとめ、月次の経営会議で意思決定するといったスピード感を変えることができる。

コスト削減は、業務におけるムリ・ムラ・ムダの排除です。製造業の現場のように、オフィスワークでも効率化に取り組み、付加価値を生む時間を確保できるようにしたい。

DXというと、製品やサービス、ビジネスモデルの変化が注目されることが多いですが、こうした業務プロセスの改善あってこそ、新たな価値創出が可能になるのだと考えています。

WiLの代田氏は、2018年からAsanaに投資をした決め手として「ミッションドリブンなメンバーが多いこと、ユーザーからの共感も得られていること」を挙げ、今後の伸びしろへの期待を語った。

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mmhmm
Evernote創業者が手がける、
ビデオ会議をもっと楽しくするツール

mmhmm

最後に登壇したのは、ビデオ会議用ツール『mmhmm』を開発・運営しているmmhmm General Managerの井上健氏。

『mmhmm』は、EvernoteのCEOとして長く活躍したフィル・リービン氏が、4年前に創業したプロダクト・スタジオ「All Turtles」から立ち上げた新規サービスだ。彼は現在、両社のCEOを兼務している。

All Turtlesは「Product Studio」という独特の事業を標榜し、新たなサービスやスタートアップを次々と世に送り出してきた。mmhmmもその一つだが、特徴的なのは「コロナがあったからこそ生まれた、パンデミックプロジェクト」である点だという。

井上皆さんも経験されているとは思うのですが、朝から晩までZoomで会議をすると、さすがに疲れてしまう。2020年は国内外で「Zoom疲れ」が叫ばれていました。そうした状況に終止符を打ちたい、そう思って生まれたのが私たちのサービスです。

mmhmmでは、話す内容に合わせて、背景やスライド、アニメーションやフィルターを自由に設定できるビデオ会議ツールだ。用意されている背景は楽しいものからマジメなものなど数百を数え、ユーザが自らアップロードもできる。それに加え、上記の井上氏の画面のように、自身の映る位置や大きさ、見え方を変更したり、PCやスマートフォンの画面を投影したりと、幅広い機能を利用できる。

背景やスライドなどは全てリアルタイムで変更でき、より印象に残るコミュニケーションを実現する。ビジネスでは社内外のプレゼン、セールス、セミナー、イベントなどに活用されている他、研究発表や大学・幼児教育、友達との楽しい会話などにも使われている。

ZoomやWebex、Google Meetなど主要なビデオ会議ツールと併せて使える他、YouTubeなどに配信も可能。投影するスライドはPowerPointやKeynote、PDFなどをインポートすることもできるが、mmhmmで簡単に作成することも可能。

新・mmhmm で最高のビデオ会議を!(2/2021最新機能ご紹介)

mmhmmは2020年7月にベータ版を公開。3ヶ月後には約33億の資金調達を行うなど、正式ローンチ前に多額の資金調達を行い注目を集めた。2021年7月にはシリーズBでソフトバンク・ビジョン・ファンドやSequoia Capital、そしてWiLから110億円を調達している。

ピッチの後半では、今回のFastGrow Pitchのテーマ「黒船到来!?日本進出するシリコンバレースタートアップ」に含まれる「黒船」という言葉について、井上氏がどのように捉えているのか、自身の考えを共有した。

井上黒船という言葉、キャッチーですし、どこか「脅威」であるかのように使われますよね。ただ、そもそも前提として、私たちの生活や仕事において、海外の製品を使わないことなんて、ほとんどないと思うんです。少なくともサービスにおいては、外資か日系かにかかわらず、良いサービスは受け入れられる。

脅威として受け取りがちなのは、転職先として検討するときなのではないかと思います。検索すると「外資の落とし穴」「向き・不向き」といった話がたくさん出てきますよね。

しかし、外資と一口に言っても、企業のあり方は多様化していると考えています。例えば、mmhmmのCEOはロシア系の移民。先に説明したようにオフィスは全て解約しましたので、本社は存在せず、従業員も日本を含む世界16ケ国に散らばっています。さらに株主は、ソフトバンクなど多様な国の企業やファンド。

外資か日系かよりも、大企業なのかスタートアップなのか、経営者が老いているか若いか、伝統産業か成長産業かなど、それぞれの要素のなかで、何が大事かを見極めることが大事なのではと思います。

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記念すべき第55回目となったこの日は、ワークマネジメントツールやビデオ会議ツールなど、働き方を変革するシリコンバレー発のスタートアップが登場した。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年09月06日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

向 晴香

inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ

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