処方箋なしで病院の薬が買える薬局、フリーランス向けオンライン型ファクタリングサービスのスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、GOOD AID株式会社、yup株式会社の2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY RYOTARO WASHIO
GOOD AID
処方箋なしで薬が買える、街の薬局
最初に登壇したのは、GOOD AID取締役の小瀬文彰氏。同社は、処方箋なしで病院のお薬が購入できる『セルフケア薬局』や、従来の調剤薬局が持つ機能、すなわち処方箋受付も行う『おだいじに薬局』を展開している。
創業者である服部雄太氏は薬学部を卒業後、外資系製薬会社で勤務。 同社を創業した背景には「服部自身が薬剤師として働く中で抱いた『調剤薬局が抱える課題を解決したい』という想いがある」と小瀬氏は代弁する。
小瀬薬剤師が存在するにも関わらず、処方箋を効率よくスピーディーにさばいていくことばかりが求められ、その価値が十分に発揮できていないことに課題を感じていたそうです。
また、患者としても病院での診察から薬局で薬をもらうまでにはかなりの時間を要しますよね。ようやく薬剤師から薬がもらえると思っても「今日はどうしました?」といった質問が投げかけられ、面倒に感じたことがある方も少なくないと思います。
薬剤師がもっと活躍できる場をつくるために、服部は起業しました。はじめは一般的な薬局を運営していましたが、根本的なビジネスモデルを変えなければ現状を脱却できないと思い、処方箋なしで薬がもらえる薬局を始めた背景がございます。
『セルフケア薬局』は、処方箋なしで病院のお薬を購入できる零売(薬剤師がカウンセリングを行い処方箋なしで薬を販売する医薬品の販売形態の一つ)サービスだ。
薬剤師は患者から症状をヒアリングし、約10分程度でお薬がの購入が可能。患者が支払うのは薬代のみで、10錠200円から購入が可能だ。薬の種類によっては病院で受診をした際と同程度、もしくは安くなるケースもあるという。
零売は制度上、患者は店舗に来店し、薬剤師と相談して薬を販売する必要があるため、一見すると不便にも思えるだろう。確かに、薬をもらうためだけに薬局を訪れるのは労力がかかるが『セルフケア薬局』は患者にとって「薬をもらうためだけの場所」ではなく、気軽に健康面の相談ができる場所となっている。「言うなれば『街の保健室』ですね。そういった場所でこそ薬剤師の価値は十分に発揮されます」と語る。
小瀬処方箋がないからこそ、丁寧に患者と向き合ってヒアリングをすることができます。
たとえば、ある店舗に30代の男性が腰が痛いと湿布をもらいにきました。ヒアリングしたところ、子供をあやしながら長時間作業をしていたら腰を痛めてしまったと。担当していたトレーナー兼薬剤師が、筋肉が凝り固まっている状態を把握し、根本解決のためにリラクゼーションの利用を提案させていただいたケースがあります。
単に薬を販売するだけでなく、相談から様々な健康への選択肢を提案できる「街の保健室」として患者に利用していただき、お客様にパーソナライズしたサービスを提案したいと考えています。
同社は2021年5月にJR東日本グループと提携し、『セルフケア薬局』を駅ナカにも展開中。現在(2021年10月時点)、その店舗数は4だが、「3年後には50店舗にまで拡大したい」と目標を語る。また、処方箋受付に加えて、零売サービスを提供する業態である『おだいじに薬局』については現在の25店舗から、110店舗にまで増加させると力を込める。「事業拡大に向けて採用を募集中です。ぜひお声がけください」と参加者に呼びかけ、ピッチを締めくくった。
採用情報
yup
フリーランスの資金繰りをサポートする、
オンライン型ファクタリングサービス
続いて登壇したのは、請求書の前払いサービス『先払い』を開発・運営している、yup代表取締役社長の阪井優氏。
阪井氏は、新卒でNTTドコモに入社。その後、キャッシュレス決済事業を行っているコイニー(現:ヘイ)に転職し、2019年2月に同社を創業した。
決済の先払いに着目した背景として「自身の原体験」を挙げた。
阪井大学時代、法人を相手に商品を売る会社でアルバイトをしていたんです。商品を売って、請求書を発行し、入金を待つわけですが、入金までに2、3ヶ月かかっている状態を目の当たりにしました。また、アパレルブランドを運営していた友人の話を聞くと、販売から入金までのリードタイムが長く、資金繰りに苦労していたんです。
さらに、前職でキャッシュレス決済に携わっていた時には、ユーザーから請求書やクレジットカードの入金サイクルをもっと早くしてほしいといったお声をいただいていて。そういった経験から、決済にまつわる様々な課題を解決したいと思い、創業に至りました。
『先払い』は、いわゆるファクタリングサービスである。その利用方法はこうだ。まず、ユーザーは取引先に送った入金前の請求書をサービス上にアップロード。サービス利用料として請求額の最大10%を差し引いた金額が、『先払い』からユーザーの銀行口座に振り込まれる。そして、取引先からのユーザーに請求額が支払われた後、ユーザーはyupに対し同額を振り込む。つまり、ユーザーは取引先と定めた入金期日の前に売上を手にすることができるのだ。
申請から入金までは、最短60分。初期費用・月額費用は無料となっており、取引先にサービスを利用していることは一切伝わらない。
さらに、確定申告や決算書などの書類提出も不要なため、気軽に利用することができる。
阪井他社のサービスを利用すると事業計画書などから与信審査が行われますが、我々は独自の与信アルゴリズムを構築しています。なかでも、特徴的なのが「SNS」という項目があること。普段使用しているSNSを登録していただき、その情報も審査結果に反映されます。
同社はfreeeやマネーフォーワードなど約30社と連携し、サービスの認知向上を図っている。2019年9月のサービス開始後、累計申込数は1万3000件を突破。利用者は、デザイナーやドライバー、エンジニアなど、フリーランスとして働いている方が多いそうだ。
「フリーランス人口の増加が事業の追い風となっている」と坂井氏。2020年時点では約1,000万人だったフリーランス人口が、ここ1年で約60%増加。さらに、2020年には約18兆円だった経済規模も28兆円を越えた。
最後に「求む!創業メンバー」と書かれたスライドを共有した阪井氏は、採用状況について語った。
阪井副業人材や学生インターンを含め約40名の組織となりましたが、正社員は3名しかいません。フルコミットで日中働けるメンバーを募集しています。
特にエンジニアが足りておらず、バックエンド・フロントエンド問わず、ご興味持って頂ける方がいたらお声がけください。また、プロダクトマネージャー、事業開発マネージャー、広報、学生インターンも募集中です。採用ページもしくはSNSから直接ご連絡ください。
阪井氏は「今後、急激なサービス成長を目指していきたい」と熱く語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年12月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
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