リファレンスチェック、バーチャルオフィス。採用・テレワークに特化したスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーションを興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社Parame、株式会社エクステンシブルの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY RYOTARO WASHIO
Parame
第三者による正当な評価を可視化する、リファレンスチェックサービス

最初に登壇したのは、リファレンスチェックサービス『Parame Recruit』を開発・運営している、Parame代表取締役の岡野亮義氏。
大学在学中に受託開発事業を中心に展開する会社を起業した岡野氏。会社運営に注力するため大学を中退したものの、事業は思うように伸びなかったという。「大きな組織を見てみたい」という想いもあり、会社を閉じることを決断。入社したアクセンチュアで、最新テクノロジーを活用した新規事業の実証実験プロジェクトに従事し、2020年2月に「2度目の起業」としてParameを創業した。
リファレンスチェックサービスに着目した背景について、自身の原体験を交えて語った。
岡野履歴書や職務経歴書には表れない、個人のスキルが正当に評価される仕組みを作りたいと思ったんです。そう思ったのは、僕自身が大学を中退しているから。「大学中退」は、履歴書上ではマイナス要素と見なされてしまいます。しかし、そういった要素だけでは人は評価できないはず。
テクノロジーを活用して誰もが正しく評価される社会を実現すべく、リファレンスチェックサービスを立ち上げました。
リファレンスチェックは、人材の流動性が高いアメリカで盛んに行われている。日本においても、終身雇用からジョブ型雇用の移行に伴い、ここ数年で普及し始めている。
リファレンスチェックが必要な背景には、人事担当者が抱えるある課題があるという。
岡野面接のみで採用可否を決定することに人事担当者は不安を抱えています。面接時の評価と、入社後のパフォーマンスに乖離が生じてしまうことも少なくありません。現在はオンライン面接も多いことから、より判断が難しくなっています。

それらの課題を解決するのが、『Parame Recruit』だ。前職時代の同僚や上司など採用候補者をよく知る人物から、採用候補者の情報を取得するサービスだ。
人事担当者は、採用候補者を知るための質問項目を作成。リファレンスチェックを依頼したい人物の条件を設定し、回答URLを発行する。採用候補者から、該当人物に回答を依頼。回答された内容は自動で『Parame Recruit』の管理画面に送られる仕組みだ。回答者の本人確認も行っているため、なりすまし防止にもつながっている。

サービスの特徴について「チャット機能」を挙げた。
岡野正当な評価につながらない、抽象的な回答しか得られないことも少なくありません。回答の質のバラつきを解消するために、回答者と直接コミュニケーションが取れるチャット機能を実装しています。「より詳細に教えていただけますか?」と質問することによって、正確に評価を下すための情報を得られるんです。
オプションとして、提携している調査会社に依頼し、自己破産の履歴や反社チェックなどバックグラウンドチェックも実施できる。
今後は、採用候補者が一度登録したリファレンス情報を活用し、同じ採用候補者が別の企業で働く際にも以前登録したリファレンス情報を共有できる仕組みを構築。採用の応募段階で、人事担当者がリファレンスチェックを完了できる、そんなユーザー体験の実現を目指している。
「ビジネスサイドの採用を強化しています。ご興味ある方はご連絡いただければ幸いです」と参加者に呼びかけた。

採用情報
エクステンシブル
社内エンゲージメントを高める、バーチャルオフィス

続いて登壇したのは、バーチャルオフィス『Oasis』を開発・運営しているエクステンシブルで、CSユニット責任者を務める井元崇文氏。
冒頭で井元氏は、バーチャルオフィスを「ビジネス版のメタバース」と表現した。
井元メタバースと聞くと、ゲームやエンターテイメント領域のサービスを想像する方が多いかもしれませんが、実は従業員のオンボーディングやビジネスパーソン同士の交流を目的とした、ワークスペースとしての活用も進んでいます。
ある調査によると、2026年までに人類の25%が、1日1時間以上メタバースで過ごすことになると予測されています。そこで、私たちは新しい働き方を支えるワークプレイスを目指し、より”手触り感のある”ビジネスメタバースを開発しています。
コロナ禍でリモートワークが浸透し、テレワークの継続を希望する人は多い。しかし、従業員と経営者では「理想の働き方に対して乖離が生じている状況」だという。
井元従業員はリモートワークを継続したいと思っている一方、オフィス勤務に戻したいと考えている経営者は少なくありません。なぜなら、リモートワーク環境下ではうまくマネジメントができていないと感じているから。本当に仕事をしているのか、自分の想いが正しく伝わっているかなど、経営層の不安が大きくなっています。
とはいえ、リモートワークが主流になりつつある中で、無理に出社を求めると、人材の確保が難しくなる可能性があります。リモートワークでも適切なマネジメントをするためにも、バーチャルオフィスの利用が必要だと考えています。

『Oasis』は、ハイブリッドワークを円滑にするための新しいワークプレイスだ。従業員は、自宅・オフィス・サードプレイスの中から仕事をしている場所を登録。その上で、バーチャル空間上に存在する「自社オフィス」のフロアに、自らのアイコンを操作して「着席」できる。「オフィス」には、執務室やフリースペース、集中ルームといった場所が用意されており、自由に選択して利用することが可能だ。
また、執務エリアなどのテーブルに着席した場合は、同じテーブルに座っている同僚たちの会話を聞けるだけでなく、その会話に参加も可能。あたかもリアルなオフィスにいるような体験が得られるのだ。さらに、フロア上にいる従業員のアイコンをタッチすれば、1on1または複数名でのトーク申請もできる。
既存のチャットツールで利用されている音声機能との違いについて、井元氏はこう説明した。
井元既存のチャットツールを活用して音声通話では、組織の一体感は感じづらいと思っています。なぜなら、同僚の情報が音声に集約されるため、誰がどこで何をしているのか、見えづらくなるから。
『Oasis』を利用すれば、バーチャルオフィス内で同僚が働いている様子を見ながら話しかけることができます。つまり、バーチャル空間ではありながら、実際のオフィスと変わらない状況を再現できるため、心理的安全性を保つことができる。帰属意識の醸成にもつながりますし、生産性も高まると考えています。

また、『Oasis』の利用データから従業員の会話量を可視化することも可能だ。今後は、従業員一人ひとりの人となりを可視化する機能を追加し、実際に顔を合わせたことがない従業員同士でも気軽にコミュニケーションを取れる環境の構築を目指すという。
「まだまだバーチャルオフィス領域は発展途上。フロンティア精神を持って、この領域を開拓していきたいです」と語り、ピッチを締めくくった。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2022年04月26日に公開しており、
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
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