連載FastGrow Conference 2022

「BizDev=何でも屋」と考えるようではド三流。
スキル定義を諦めず、理想を追い求めるモノグサ竹内と10X矢本の熱い議論から、BizDevの本質を探る

登壇者
竹内 孝太朗

名古屋大学経済学部卒。2010年に株式会社リクルートに入社。中古車領域での広告営業に従事し、2011年に中古車領域初及び最年少で営業部門の全社表彰を受賞。2013年からは「スタディサプリ」にて高校向け営業組織の立ち上げ、学習到達度測定テストの開発、オンラインコーチングサービスの開発を行う。高校の同級生である畔柳とMonoxerを共同創業。

矢本 真丈

2児の父。丸紅、NPO勤務、ECスタートアップ、メルカリを経て、10Xを石川氏と共同創業。育休中に家族の食事を創り続けた原体験から、食の課題を解決するプロダクト『タベリー』(2020年クローズ)などの開発を経て、チェーンストア向けECプラットフォーム『Stailer』を開発・運営する。

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Business Development、略して「BizDev」。昨今、注目度が急上昇しているが、実際には事業や組織の規模で、そのミッションや役割が大きく変わる。

ユーザー検証や人材の確保に務めるときもあれば、プロダクト改善にむけ組織構築に励むこともある。このように、求められることが多岐に渡るため、本質がどこにあるのか、ややわかりにくいと感じている読者も少なくないだろう。

2022年に開催されたFastGrow Conference 2022。1日目のセッション『BizDevキャリアの本質とは!?職種名ではなく、トラックレコードで語れ』では、モノグサ代表取締役CEOの竹内孝太朗氏と10XCo-Founder代表取締役CEOの矢本真丈氏が登壇した。

本セッションでは、2人の経営者からBizDevはどのような役割なのか、また、BizDevキャリアをどのように歩めばいいのかが語られた。「事業」や「プロダクト」の立ち上げやグロースに貢献したい若者は必読の、濃い内容を記録した。

  • TEXT BY YUI TSUJINO
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BizDevの曖昧な定義が、企業成長を阻害する

竹内氏と矢本氏は開口一番、世間がイメージするBizDevに対しての違和感を語った。

竹内個人的には、BizDevの定義は、事業を成長させていくときに、エンジニアではないアプローチで貢献していくこと全般だと考えています。

しかし、世間一般的に、「BizDevはM&Aやアライアンスなどかっこいいことをやっている!」「BizDevは何でも屋!」みたいに捉えている人が多いなと思います。

矢本そもそも応募をかける企業側にも、BizDevを誤解していると思います。

10Xの失敗例でもあるのですが、BizDevにふわっと色んな意味を込めて候補者に伝えてしまって……。候補者に「新規事業開発って何だかかっこいい!」と、曖昧に受け取らせてしまったんです。

事業のフェーズや特性によって、BizDevの役割は変わってきます。なので、BizDevは一体何をして、どういう役割を担うか、企業が丁寧に説明する必要があります。

定義されていないゆえに、様々なイメージを想起させてしまうBizDev。候補者と認識を合わせるために、両社は、どのようにBizDevを募集しているのだろうか。

矢本前提として10Xでは、「『Stailer』の事業機会の最大化」をBizDevのミッションに掲げています。BtoBtoCモデルの『Stailer』は、パートナー企業と、その先のお客様が主なステークホルダー。「機会の最大化」は、パートナー企業とお客様を増やすことを指します。

すごく大きな役割をBizDevに込めているので、10XではBizDevを3つの部門に分けました。1つ目は「ビジネス」で、パートナー企業のリードをしたり、クロージングする部門です。2つ目は「ローンチ&オペレーション」で、社内外のステークホルダーと連携してプロダクト・オペレーションに必要な要素を創り上げます。3つ目は「グロース」で、パートナー企業を向いてグロースさせていく部門です。

登壇時の矢本氏

一方、モノグサはBizDevを2つに分けて定義している。

竹内モノグサでは、「セールス(事業開発)」と「カスタマーサクセス(事業開発)」と2つに分けて募集をしています。

セールスは、プロダクトが売れる前の顧客とのタッチポイントを担います。カスタマーサクセスは、プロダクトが売れた後のタッチポイントを受け持ちます。

「プロダクトにお客様の声をフィードバックするのが事業開発だ」と定義しているんです。

事業の特徴や段階に応じてBizDevを定義しているモノグサと10X。それでは、それぞれの事業の特徴とはどういったものなのだろうか。両者ともに事業の特徴を「市場に予算がない事業」だと語る。

竹内モノグサは記憶定着の学習プラットフォーム『Monoxer』を提供しています。「記憶」という事業領域が面白いのは、今まで人類が記憶にお金を払ったことがない、という点にあります。TOEICや単語帳など、 コンテンツには支払っていますが、“記憶予算”というものはありません。なので、予算がない市場に向き合って事業開拓しています。

矢本「予算が存在しない事業」というのは10Xも同じですね。10Xは開発不要でネットスーパーを立ち上げられるサービス『Stailer』を提供しています。しかし、小売り・流通のうちネットスーパーを提供している店舗は約3%しかありません。多くの企業には予算すらないなかで、ネットスーパーがいかに戦略重要かを理解いただいたり、その実現方法として『Stailer』をご利用頂く必要があります。そこで、「事業開発」の考え方が必要になります。

あとは、「誰が決裁するのか」も重要です。課長が決裁できるのか、部長が決裁できるのか。ネットスーパーの事業開設は、パートナー企業の経営戦略に大きく関わる意思決定です。なので、契約書を持っていくだけではだめなんです。パートナー企業に対して、どのように伴走し、どのようにサービスを構築していくか、といった細やかなすり合わせが必要になるため、この点においては「組織開発」という言葉が当てはまるのかなと感じています。

また、会社のフェーズによってもBizDevの役割は大きく異なると指摘する。設立から約5年の10Xでは、BizDevの役割はどう変わっていったのかが語られた。

矢本プロダクトがまだ全く存在していないときは、プロダクトをつくること自体もBizDevに含まれます。プロダクトがリリースされてからは、顧客の声をプロダクトにフィードバックすることも含めてBizDevになります。

フェーズや機会によって、どんなスキルが活きるかが変わるのが、BizDevの面白いところですね。私が事業を立ち上げるときには、プロダクトマネジメントとトップセールスが活かせました。ですが、そのスキルをもった人だけで、プロダクトがグロースするかというとそうではない。フェーズが変われば変わるほど、多様な機会が増えるのがBizDevの特性です。

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トラックレコードも大事だが、これから必要なのは「スキルの定義」だ

ここ数年で、BizDevを募集する企業は増加している。しかし、BizDevがどのようにスキルアップしてキャリアを歩めばいいのかという点は、まだまだ世間一般に流通していない。竹内は「BizDevとしての過去の実績も大事だが、これからはまずスキルを定義したほうがいい」と言う。

竹内そもそもビジネスサイドは、エンジニアと比較してスキルの定義が曖昧です。

「元気でストレス耐性が強いから、あの人はセールス」みたいな安直なやり方で職種を決めているケースはまだまだ多いなと感じます。一方でエンジニアは、SREやCREといった言葉がどんどん新しく生まれているように、スキルを定義できている場合が多いです。

ビジネスサイドでも、「セールスなら何がスキルとして存在し、事業にどう貢献できるか」をきちんと明文化しておく。候補者はトラックレコード(過去の成果)を語るだけではダメ、なぜそのトラックレコードを発揮できたのか、が言えることが大事になっていくでしょう。

登壇時の竹内氏

モノグサではスキルを定義するためにも「営業検定」という独自の検定を、社内のオンボーディングに組み込んでいる。

竹内営業検定ではレベルが4段階に分かれています。レベル0は、応対接客ができる。レベル1は、顧客がもつ情報の非対称性を埋められる。レベル2は、顧客が抱える潜在的なニーズを顕在化させることができる。レベル3は、顧客のニーズを新たに創造することができる。このように分けています。

それぞれのレベルに対して、細かくチェック項目を作成しています。なので、社員同士でどこまでできているかチェックし、スキルアップの指標として使っています。

竹内氏の説明をうけ「ぜひ、営業検定を公開してほしい」と矢本氏は関心を持った。また「なぜ、竹内氏は営業検定というものを作ろうと思ったのか。また何を参考にして作成したのか」と疑問を投げかけた。

竹内あまり本などは参考にしておらず……。前職でセールスを担当していたとき、一気に100人程のメンバーを育成する必要がありました。そのときに、セールスとしてのスキルを明確に言語化し、それを基にオンボーディングのマニュアルを作成しようと思ったんです。

そこからは、顧客に営業するうえで、どこで難易度が変化するかを意識して観察してみました。手がかりになったのは、「顧客がどれくらい課題を自覚しているか」だったんです。その自覚度合いが基準となって、営業検定のレベルが4つに分かれました。

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コンサルもセールスも、BizDevになれる。
だが、「誰でも難しい」のが面白さ

これからBizDevはどのようにキャリアを歩めばいいのだろうか。まず、竹内氏は「コンフォートゾーンを抜け出すべきだ」と語る。

竹内モノグサでは、セールスこそ事業開発だと考えています。セールスは、「いかに顧客からサービスの価値共感を獲得できるか」が勝負です。そのためには、コンフォートゾーンから出て、共感が得難い領域における“フロンティア”に入る必要性があります。

よく社内では、「モノグサは現在の領域において共感獲得できるようになれば、いずれはソフトウェアのみで“記憶”の状態をモニタリングするようになるだろう。そうなるとセールスはさらに共感されることが難しい、苦しいゾーンに身を置く必要性が出てくる」と伝えています。

“記憶”はみんな困っていることなのに、予算や市場がない。そういう意味では、すごく面白い領域ですので、興味がある方はぜひすぐにお話ししましょう(笑)。

矢本氏は「不確実ななかでも最大限価値を発揮できることが、BizDevには求められる」と伝える。

矢本私は「不確実性をマージする」という言葉をBizDevに投げかけています。たとえば、何かのモデルを変更する、あるいはオペレーションを変更するようなときに、しっかりとバリューが発揮できる。このことが、BizDevの価値になるなと。

10XのBizDev担当者は、多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されています。例えば、前職が戦略コンサルティングファームで、10Xではオペレーションの立ち上げを経験したメンバーが、いまは、プロダクトを使いながらパートナー企業をスケールさせることに尽力しています。

一方で、前職ではセールスを担当して、10Xでは『Stailer』をどんな企業に提供すればもっとも価値を発揮するのか、模索しているメンバーもいます。

このように、全然違うキャリアの人たちが、同じミッションに向かって歩める仕組みになっています。スタートアップでBizDevをやってみたい人は、ぜひ10Xに興味を持っていただけると嬉しいです。

一見、全く異なる役割を担っているように感じる、モノグサのBizDevと、10XのBizDev。だが、この経営者二人の頭の中には、似た思想があるようだ。その証拠に、半ば食い合うように展開された議論。レポート記事の形で表現しにくいのが悔しいところ。

「より詳しく」と感じたなら、この2社へのカジュアル面談を申し込むといいだろう。きっと、濃い話をこれでもか、と披露してくれるはずだ。

だが、イベントでも、レポート記事でも、BizDevのすべてを語るにはまったく足りない。竹内氏と矢本氏が直接カジュアル面談に応じてくれたとしても、きっとまだ足りない。本質を味わい、自分の身に刻み込みたいのなら、やはり現場に飛び込むべきだ。そんな環境を追い求めようとすること、それが「これから求められるBizDev」になるための第一歩になるだろう。

こちらの記事は2022年04月22日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

辻野 結衣

1997年生まれ、東京都在住。関西大学政策創造学部卒業し、2020年4月からinquireに所属。関心はビジネス全般、生きづらさ、サステナビレイティ、政治哲学など。

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