「まだない答え」とは、こういうことだったのか──創業10年のファンズ、新ミッションは各事業の足元にあった
Sponsored2016年11月の創業から、ファンズ株式会社(以下、ファンズ)は2026年で10年を迎える。祖業の『Funds』は、個人が上場企業などの貸付ファンドに投資できるサービスで、累計1,100億円を超える募集で遅延・元本欠損ゼロを維持している(同社発表、2026年5月時点。将来の成果を保証するものではない)。2026年5月にはシリーズEラウンドを総額約48億円で締め、創業以来の累計調達額はエクイティで約88億円、デットを含めると100億円を超えた。グループの連結売上も、3年連続で前年比2倍以上の伸びを続けているという。
この10年で、ファンズの事業は『Funds』の外へも広がった。ベンチャーデット、不動産、金融教育、そして海外で金融事業を営むFIGC(シンガポール)やFunds AMFC(台湾)。事業が増えるほど、社員にも投資家にも「ファンズは結局、何の会社なのか」を一言で伝えるのは難しくなっていった。
その問いに、会社として出した答えがある。2026年5月、ファンズはグループのミッションとビジョンを刷新した。ミッションは「資本の流れを変え、『豊かさ』の総量を増やす。」、ビジョンは「世界的な直接金融プラットフォームを創る。」。
新しいミッションは、これまでの仕事を足元から掘り起こした言葉だという。では、それはどう掘り起こされ、ビジョンはどこまで目線を引き上げたのか。そして、働く一人ひとりの仕事とどうつながっているのか。CEOの藤田雄一郎氏、取締役で海外事業管掌COO・CLOの髙尾知達氏、CFOの前川寛洋氏、そして策定プロジェクトに加わった鈴木絵美氏の対話からたどる。
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
利益をつくるための多角化──事業が増えるほど「なぜ一つの会社か」の説明が要るようになった
事業を5つに広げた会社は、外からどう見えるのか。CFOとして投資家と向き合ってきた前川氏は、資本市場の側からの見え方を挙げる。
前川外から見れば、「単一の事業をただ足し算しているだけなら、既存の事業に集中したほうがいいじゃないか」と感じるものです。世に言う、コングロマリット・ディスカウントの議論に連なる話ですね。
単独で一つの事業を追求するのではなく、ファンズという複合事業の会社の中でやることの合理性を説明できないと、結局「分散しているだけ」に見えてしまう。実は昨年の資金調達活動中、投資家に説明するエクイティストーリーでも、旧ミッション・ビジョンを敢えて前面に出さないことすらありました。説明に使うことで、かえって投資家の理解を難しくする可能性があったからです。
それでもファンズは、事業を増やす道を選び、さらに拡大を続ける方針としている。理由は、はっきりしている。
藤田直近の3〜4年で言うと、グロース市場の状況が変わり、利益を生み、拡大していかなければ、そもそもバリュエーションがつかない状況になりました。その中で、明確な意思決定として多角化していこうと。2023年に経営会議で、はっきり決めました。
多角化の主な目的は、兎にも角にも、多くの利益を創出していくことです。だからこそCEOの自分は、利益を創出しながら立ち上げていけそうな一方で、その推進が簡単ではないと考えた不動産事業に、敢えて2〜3年集中してきました。
ただ、事業を多角化していくときにありがちなことだと思うんですが、経営陣のあいだではその考え方が共有されていても、現場からの見え方は違います。「最近、藤田さんは『Funds』のことはどうでもよくなって、不動産にしか興味がないんじゃないか」と言われることも出てきました。もちろん、そういうわけではありません。そのタイミングでは、そこにリソースを割くのがいちばん合理的だと考え、経営会議でも合意した判断でした。
祖業の『Funds』は、利益が多く出続けるほどに大きく育つまでには時間がかかる。短期で収益に貢献できる事業を並行して立ち上げるのは、経営としては筋の通った判断だった。ただ、その判断の筋道が、現場の一人ひとりにまで行きわたるのは簡単なことではない。
グループとして何を目指し、そのなかでいまなぜこの事業に力を寄せるのか。それを共有する言葉が、まだ無かった。
藤田人数が多くなると、経営層一人ひとりの想いや課題感をリアルタイムで共有し続けることが難しくなる。だから、「グループ全体としてはこの方向に向いている。その中で、いまはここが必要だから自分はここに時間を使っている」と、わかりやすく説明できる言葉の必要性も高まっていくのだと感じました。
不動産事業も立ち上げから3年ほど経ち、人数も規模も大きくなって、ある程度任せられるようになりました。いまはグループ全体を見て、『Funds』本体を伸ばすことにもう少し力を使うべきだという判断から、少しだけ軸足を動かしています。
取材内容等を基にFastGrowにて作成
投資家には、5つの事業を一つの会社で営む合理性を。現場には、CEOがいまどこに時間を使い、それがグループのどこへつながるのかを。二つの説明を同じ言葉で支えるために、策定チームが最初に取りかかったのは、各事業会社それぞれにおける言葉づくりだった。
各社のミッションを先につくって並べた──残ったのは「資本の流れを変えたい」という共通項
ファンズでは、事業が先に広がり、それらを束ねて説明する言葉をあとから探す流れになった。藤田氏によれば、祖業の『Funds』も「この領域は面白いのではないか」というマーケットインの発想から始まっている。だから新しい言葉をつくるとき、藤田氏が何より気にかけたのは、それが事業の広がりを狭めないことだった。
藤田私が最も意識したのは、ミッションが、事業の拡張を制限するものにならないようにしたいということです。今後も、良い事業機会があればどんどん広げていきたい。ミッション・ビジョンがその足かせになることだけは避けたかったんです。
そこで策定チームは、各事業会社が自社のミッションとビジョンを言葉にするところから始めた。策定プロジェクトのメンバーと各社のボードメンバー、主要メンバーが、ミーティングを重ねた。
前川当時は、各事業会社にミッションはあっても、ビジョンが明確ではないケースが多かったんです。だから、グループ全体のミッション・ビジョンを考える前に、まず各事業のミッション・ビジョンをつくり切りました。
そのうえで、各社から出てきた言葉を横に並べ、全体として何が共通しているのかを議論していったんです。
各社が何を実現しようとしているのかを掘り下げると、「資本の流れや金融の力学を変えたい」という考え方は明確に共通していました。既存のプレイヤーが十分にできていないことを、できるようにしたい。その発想が自然に出てきたから、シンプルな言葉にも納得感を持てたのだと思います。
提供:ファンズ株式会社
この順番に意味がある。グループの言葉を先に決めて各社へ配れば、各社はその言葉に合わせて自分たちの仕事を説明し直すことになる。ファンズは各社の仕事から言葉を立ち上げ、並べてみて初めて共通項が浮かび上がった。
言葉の選び方にも、同じ考え方が通っている。当初の候補は「お金の流れを変え」だった。
藤田「お金」の方がわかりやすくはあります。ただ、すでに不動産は取り扱っていますし、今後の可能性として人的資本や情報資本という考え方もある。「資本」という言葉なら、今後の意思決定を不必要に制限せず、幅広いものを含められます。
「資本」が事業の領域を広く保つ一方で、どの事業を選ぶかの条件を示すのが「『豊かさ』の総量を増やす」だ。投資家、資金を受ける企業、サービスの利用者が得る価値を増やしながら、自社も成長する。藤田氏は、これを創業時から持ち続けてきた考えだと語る。
藤田2016年の創業当初から考えていた「誠実でありたい」というのは、関わる人たちがみんな豊かになるようにしたいということでした。誰かが得をして誰かが損をするようなパイの奪い合いをするのではなく、パイ自体を増やしていく。それまで言葉にはしていなかったけれど、ずっと持ち続けてきたものを表現できたと思います。
取材内容等を基にFastGrowにて作成
髙尾氏も、2017年の入社当時からこの価値観を感じていたという。そのうえで、言葉に実感が伴うようになったのは、各事業が実績を積んだいまだからだと話す。
髙尾たとえば、創業時に今回の新ミッションが掲げられていても、僕がメンバーとして聞いたら、正直、あまり共感できなかったかもしれません。ファンズらしさは感じても、まだ実績がないので、言葉に血が通っていないような感覚です。
いまは、それぞれの事業で実績を積み、実際に仕組みや構造をつくってきた。だから、自分たちの日々の仕事が社会の仕組みを変えることにつながっていると、具体的に想像しやすくなっていると思います。
ミッション・ビジョンが今後の事業拡張の足かせにならないように、という話がありましたが、この実績の積み上げこそが、言葉に抽象度を残しても、今回のミッションが我々に組み込まれた価値観や方向性を示す「北極星」として機能する、という確信の基盤になっているんです。
経営陣にとって、新しいミッションは10年分の仕事から掘り出した言葉だった。では、それを受け取る側にはどう届いていたのか。ここからは、策定プロジェクトに加わりつつ、日々の現場に近いところで働く鈴木氏の視点に移る。
新しい言葉を、どう自分事にするか──藤田氏の答えは「ミッションはいまやっていることの言語化」
鈴木会社が多角化してステージも変わった今だからこそ、ミッションとビジョンを更新する必要があったのだと感じています。会社の進化と共にアップデートされたミッションとビジョンに合わせ、社員の目線もさらに一段上げていかなければならない。そのためにはただ「会社が目指していること」ではなく、「会社が描く未来に共感し、自分たちの手でそれを実現させたい」という強い自分ゴト化が必要ですが、社員一人ひとりがそう捉えられる状態にするには何が必要なのか。そこは私自身も難しいと感じていました。
目線を上げるには、まず言葉を一人ひとりが自分事にできなければならない。策定の内側にいた鈴木氏が、率直に口にした問いだ。藤田氏は、ミッションとビジョンを分けて答えた。目線を引き上げるのはビジョンの役目で、ミッションはそうではないという。
藤田私は、ミッションとビジョンをそれぞれ少し違った捉え方で見ています。まずミッションは、いまのグループ全体がやっていることに共通する思いや、提供したい価値を言語化したものです。実は、「以前よりも次元の高いことを新たに目指してほしい」といった意志や意図は、特にないんです。
たとえば『Funds』は、プラットフォームを通じて企業へ向かうお金の流れを変えている。『ファンズ不動産』は不動産の流れを変え、『Funds Startups』はスタートアップへ資金が流れる選択肢をつくっている。流れを変えることで豊かさを増やしてきたという、いまやっていることを言葉にしたイメージです。
海外事業では、その流れが国境をまたいでいる。
髙尾台湾のFunds AMFCでは、十分な金融サービスを受けにくい人に、バイクやスマートフォンなどを購入するための資金を提供しています。その原資の一つとして、日本の資本を供給するわけです。
日本の投資家には好リターンの新しい運用先が生まれ、現地の利用者には、それまで買えなかったものを買える選択肢が生まれる。まさに「豊かさ」の総量を増やしている例だと思います。
鈴木以前のミッション「未来の不安に、まだない答えを。」を掲げて取り組んできた軌跡が、「資本の流れを変え、『豊かさ』の総量を増やす」ことであり、これが「まだない答え」だったのだと一気に腹落ちしました。
今回のミッションは、いわば前のミッションへの「アンサーソング」なのかもしれないですね。創業当初に掲げた「まだない答え」とは、こういうことだったのだと……!
取材内容等を基にFastGrowにて作成(再掲)
「アンサーソング」は、藤田氏と髙尾氏の説明を聞いた鈴木氏の口から、その場で出てきた言葉だ。策定に関わった鈴木氏でも、各事業の具体例を一つずつ聞くまでは、旧ミッションと新ミッションを別々に捉えていた。
策定の中心にいた前川氏も、浸透の進め方を同じ方向で考えている。
前川その背景を全員に詳しく学んでもらうことも考えたのですが、そうではない進め方にしました。「このミッションが実現すると、どのような成果が生まれるのか」「事業戦略へ落とし込むと何を意味するのか」といった形で、言葉と具体的な仕事のつながりを一人ひとりの立場から見えるようにしていく。そうすることで、背景もじわじわと理解されていくのではないかと思っています。
一方でビジョンについて、藤田氏ははっきりと目線が上がったと言う。
ビジョンは目線を引き上げた──個人の資金を企業へ直接届ける仕組みを、世界へ
藤田ビジョンは、以前より目線が上がり、明確に「グローバル」を意識しています。また、あえて「直接金融」というワードを含めました。この難題に向かっていくぞ、という意志表示だとも言えると思います。
ただし、現状とかけ離れた目標を突然掲げたつもりはありません。すでにグループ全体の約4分の1が海外のメンバーで、営業収益では約30%が海外事業によるものです。この実態を考えれば、国内に閉じず、「世界的な」と掲げることが正しい目標設定だと思っています。
鈴木なるほど。こちらは、改めて認識して、背筋が伸びる思いがしますね。
この「世界的な直接金融プラットフォーム」という言葉は、資金調達の場でも使われてきた。前川氏によれば、新しいビジョンとして掲げる前から、投資家への説明に使っていた言葉だという。
前川いまグループビジョンとして掲げている「世界的な直接金融プラットフォームを創る」のような表現を、私は投資家向けのエクイティストーリーの中で以前から使っていました。
資本市場の側から捉えたときに、我々の事業のスケールを想像してもらえたり、唯一無二のポジショニングや思いを直感的に腹落ちしてもらえたりする言葉として、けっこう刺さっている感覚を持っていたんです。そういう実態にも即して、今回正式に据えることになったわけです。
では、ビジョンにある「直接金融」とは何か。銀行に預けたお金は、銀行が選んだ先へ貸し出される。これが間接金融だ。直接金融では、お金を出す人が自分で貸し先の企業を選び、その企業へ直接お金を届ける。海外では社債などを通じて個人にも身近な方法だが、日本ではまだ選べる場が少ない。
日本の個人が持つお金の多くは、預貯金のまま銀行に置かれていて、その額は1,000兆円を超える。ファンズの見立てでは、このうち1%が動くだけでも、10兆円規模のお金が成長企業へ流れていく計算だ。
しかもいまは、預けておくだけではお金の価値が実質的に目減りしていく時代になった。金利が上がり、物価も上がっている。お金の貸し先を自分で選ぶことへの関心は高まっているのに、日本ではその選び先がまだ少ない。
お金を借りる企業の側にも、ファンズは空白を見ている。上場企業にとって、銀行から借りることと株を発行することのあいだで選べる方法は、まだ少ない。『Funds』は、そこにもう一つの選択肢をつくろうとしている。
この仕組みを、ファンズはすでに国境の外へ広げ始めている。
髙尾海外事業の統括拠点であるFIGCが掲げてきた「国境をまたぐ成長循環」は、新しいグループミッションと、むしろかなり近いものになっています。FIGCが先行して取り組んできたことが、逆算のようにグループ全体の新ミッションになったという感覚もあるくらいです。
すでに台湾、香港、韓国、ポーランド、アメリカの案件を手がけ、日本とこれらの国・地域の間の成長循環に取り組んでいます。
日本の個人の資金を企業へ直接届ける仕組みを国内で育て、海外の資本の流れにもつないでいく。ビジョンの「世界的な」は、すでに動き出しているこの流れの行き先を指している。
その流れを太くするために、グループが次に取りかかるのが、事業同士の掛け合わせだ。
自立した事業を掛け合わせる次の10年──多角化した会社だから、事業の中心を担うチャンスが多い
前川事業を始めたばかりの段階で、シナジーや掛け算を先に求めると、どちらかが足を引っ張ることがあります。だからまずは、それぞれの事業を自立させ、しっかり立ち上げることに集中しました。
一定の事業規模が生まれれば、組み合わせたときの成果も、互いに意味のある大きさになる。その段階で初めて、本質的なシナジーが生まれるのだと思います。まさにいま、そのときが来ています。
各事業がそれぞれの市場で立ち上がったからこそ、組み合わせる意味が出てきた。鈴木氏は、この話をミッションと重ねて受け止めた。
鈴木何かまったく新しい道を見つけなければ、ミッションへ到達できないわけではないのだと、理解が深まった感覚です。
一つひとつの事業が、それぞれ掲げている目標を追求しつつ、同じファンズグループの中で切磋琢磨し、成長し合っていくことで、結果としてミッション・ビジョンの実現に間違いなくつながっていくという体感を持つことができました。
これから加わる人にとって、この段階は大きな機会だ。事業を多角化してきたぶん、事業責任者や事業の中心を担えるチャンスは多い。広がりのあるミッションを掲げた以上、新しい事業への挑戦も続いていくだろう。海外事業が伸びれば、仕事の舞台も国内にとどまらない。早い段階から責任ある立場を担える機会も多い。
創業10年の年に刷新された新しいミッションとビジョンは、次の10年でさらに飛躍し、会社が大きく変わっていく、その節目に掲げられた言葉でもある。
藤田金融領域はもちろん、すでに取り組んでいる不動産領域も、そのほかも、それぞれ非常に大きな市場です。そこにグローバルを掛け合わせていくので、国内のスタートアップの中でも、将来かなり大きくなれる可能性のある場所で事業を営んでいる自信があります。
これらの領域は、まだまだ変えていくべき余地も大きい。私たちは既存の固定観念にとらわれずに取り組んでいくべき存在として、近い将来、大きな社会変化を次々と実感してもらえるような会社になっていきます。
各事業がこの10年で変えてきた資本の流れを言葉にしたのが、ミッションだ。その流れを世界へ広げる先を示したのが、ビジョンだ。新しいミッションを自分の言葉で語る手がかりは、一人ひとりがいま手がけている仕事のなかにある。
つまり、ここまで10年分の仕事が、次の10年の言葉になった──。これぞまさに、理想とするミッション・ビジョンの在り方の一つだと言えるのではないだろうか。
ファンズがこれから、さらにどのような価値をこの世の中に生み出していくのか、楽しみで仕方がない。
こちらの記事は2026年11月04日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
写真
藤田 慎一郎
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