戦略シミュレーションゲームを社会実装する──「ゲーミフィケーション」で人材データを活用するカオナビのプロダクト戦略

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インタビュイー
玉木 穣太

デザイナー・アートディレクターとして10年余のキャリアを積んだ後、独立し複数のベンチャーへの参画、株式会社XCOG設立を経て、2020年7月にカオナビへとジョイン。CDO(デザイン最高責任者)に就任し、ブランドデザイン部部長を兼任。

松下 雅和

複数のSIer企業、サイバーエージェントを経て、スマートフォン向けアプリを提供するトランスリミットでCTOを務める。その後、2020年2月にカオナビへとジョイン。同年9月にCTOに就任。

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「データは21世紀の石油である」という言葉を引くまでもなく、ビジネスにおけるデータ活用の重要性は明白だ。一方で、EU一般データ保護規則(GDPR)に象徴されるように、データ活用に対する風当たりは世界的に強まっている。

「ゲーミフィケーション」を応用し、このジレンマを軽やかに乗り越えている企業がある──カオナビだ。同社は「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」をビジョンに掲げ、クラウド人材マネジメントシステム『カオナビ』を展開。約1,900(2020年9月末時点)社の企業に導入され、タレントマネジメントシステムとして5年連続シェアNo.1(※)を獲得している。

(※) ITR「ITR Market View:人事・人材管理市場2020」人材管理市場:ベンダー別売上金額

「データプラットフォーム」への逆風が吹き荒れる昨今、カオナビはいかにして事業を構想し、成長させているのか。CDO(Cheif Design Officer) / ブランドデザイン本部長の玉木穣太氏とCTOの松下雅和氏に、「当たり前の働き方」のアップデートに向けて、「楽しんでデータを貯めてもらえる」プラットフォームを構築する戦略を聞いた。

  • TEXT BY RYOTARO WASHIO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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逆風吹き荒れるデータビジネスの勝ち筋は
「楽しんで情報を貯めてもらうこと」

カオナビが掲げるビジョンは「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」、ミッションは「個の力にフォーカスし、マネジメントを革新する」だ。その背景に込められた意図を、松下氏はこう語る。

株式会社カオナビ CTO 松下雅和氏

松下働き方の多様化は、不可逆の潮流です。以前、カオナビ主催のオンラインイベントで講演をしていただいた、著作家の山口周さんの言葉をお借りすれば「これからの働き方には、ニューノーマルすら存在しない。個人がそれぞれ全く違う働き方をし、ノーマルと呼ばれる働き方が消滅した“ノーノーマル”の時代が来る」。そうなると、人材情報の取り扱い方も、大きく変わらざるを得ないはずです。

これまでは会社が個人の情報を管理することが一般的でした。管理方法は紙からデジタルへ、サーバーからクラウドへと変化してきましたが、いずれにせよ個人の仕事上の成果や評価は、会社がデータとして保有していた。

しかし、働き方が多様化し、個人が複数の会社で働く時代になると、会社が個人の情報を管理するスタイルでは効率が悪くなる。情報が複数の会社に散在し、統合が困難になるからです。カオナビは、個人の情報を集約するプラットフォームを作る、すなわち「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」ことで、この壁を乗り越えようとしているんです。

ビジョン実現にあたって、カオナビが大切しているのが「ゲーミフィケーションマインド」だ。同社の思想や文化を発信するため、2020年10月に発表した『kaonavi Future Deck』でも「カオナビの個性」の核として記載されている。

玉木『カオナビ』さえ見れば、その人がこれまでにどんな仕事を手がけてきたのか、どんなスキルを持っているのか、どんなパーソナリティなのか、一瞬で理解できる。そんなプロダクトにしていきたいと思っています。

でも、現状の『カオナビ』は、ポテンシャルの半分しか発揮できていません。プロダクトの価値を最大化するためには、よりたくさんの個人情報を集め、人材活用や個人のキャリア形成に役立つ状態にしなければなりません。『カオナビ』の導入を決めていただくのは人事部門や経営者ですが、その先にいる社員にデータを入力してもらわないと、プロダクトの価値は発揮できない。

しかし、2018年にEU一般データ保護規則が施行されたことに象徴されるように、個人情報を扱うビジネスへの風当たりは、年々強くなっている。今まで以上に、プライバシーに配慮しながらビジネスを展開していくことが求められています。だからといって、守りに入っているばかりでは世界は変えられません。

そこで打開策として考えたのが、ゲーミフィケーションの原理を活用し、個人が意欲的に情報を『カオナビ』に提供してもらえる状態を実現すること。ゲーム感覚で、ユーザーが楽しみながら自身の情報を貯めていくようなプロダクトにできれば、ユーザーとプラットフォームの双方にメリットが生まれるはず。一方的なデータの搾取に陥らないために、ユーザーに遊び心を持ってデータを貯めてもらうことが大切なんです。

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組織拡大に伴い、創業当初のプロダクトアウト思想が薄れてしまった

「ゲーミフィケーションマインド」は、カオナビの原点でもあるという。玉木氏は「そもそも『カオナビ』はゲームから着想を得て開発された」と説明する。

株式会社カオナビ CDO 玉木穣太氏

玉木『カオナビ』は、代表の柳橋が武将系戦略シミュレーションゲームからヒントを得て生み出したプロダクトなんですよ。こうしたゲームの特徴は、キャラクターの能力値が可視化されている点。武将ごとに「統率」や「知略」といったパラメータが数値化されていて、プレイヤーはそのパラメータを参考に武将の配置や活用方法を決定し、ゲームを進めていく。

「この仕組みを組織開発や人材育成にも活用できないか」と考えたことが、『カオナビ』の出発点です。ビジネスに関するスキルやその人の個性が可視化できれば、異動や組織づくりに活かせるのではないかと。

『kaonavi Future Deck』を発表し、カオナビの個性や原点を改めて言語化した背景には、ある危機感があったという。

玉木「創業以来、大切にしてきた思想が、現場に伝わっていない」。2019年8月、柳橋からそんな課題感を伝えられました。従業員が増えるにつれ、創業者の思想がメンバーに伝わりにくくなってしまっていると言うんです。その相談をきっかけに、『カオナビ』の根幹をなす思想や柳橋の考えを言語化し、メンバーに伝えるためのプロジェクトが始まりました。

柳橋は「マーケットインの傾向が強くなってしまっていること」と懸念していました。彼自身が語っているように、カオナビはプロダクトアウトの思想を大切にしてきた会社です。しかし、その思想が薄れてきてしまっていると。マーケットイン志向が強くなると、プロダクトとしてのオリジナリティがなくなり、カスタマーサクセスで差別化を図るしかなくなる。そうなると「社会のあるべき姿」を考え抜き、プロダクトアウトで良いものを作って、ムーヴメントを起こしてきたカオナビとしては、自らのアイデンティティを捨てることになってしまいます。

そうした課題感を解消するため、「ゲームの要素をプロダクトに持ち込んだら面白いのではないか」という初心に帰り、「ゲーミフィケーションマインド」を打ち出したんです。

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ゲーミフィケーションマインドあふれるプロダクトに必要な
“3つの要素”

ゲーミフィケーションマインドは、「ユニバーサルデザイン」「テックトレンド」「クラフト」という3つの要素に支えられている。これら3つが、カオナビのプロダクト開発の現場では大切にされているのだ。

玉木「ユニバーサルデザイン」とは、言語を介さず、万人に使い方を理解してもらうためのデザインです。操作が面倒だったり、直感的に使い方を理解できなかったりしたら、意欲的にデータを入力してもらうのは難しい。説明書を読まずに操作できることは、良いゲームの条件の一つです。『スーパーマリオブラザーズ』をプレイする際、いちいち「マリオの動かし方がわかりません」とカスタマーサポートに問い合わせていては、楽しく遊べませんよね(笑)。カスタマーサポートが必要だということは、サービスが不完全であることの証拠なんです。

そして、「テクノロジートレンド」。時代遅れのプロダクトにならないよう、常に最新の技術トレンドにキャッチアップし続ける必要があります。『ゲームボーイ』はユニバーサルデザインを取り入れたプロダクトですが、2020年に初期と同じものを発売しても、レトロ品以上の意味は感じてもらいにくいでしょう。

さらに「クラフト」も大切にしています。『カオナビ』が備えるさまざまなアプリケーションを組み合わせて、ユーザーそれぞれが適切な使い方を見つけてほしい。大企業とスタートアップでは、適切な人材管理の方法は異なるでしょうし、産業ごとにも違ってくるでしょう。

僕らが『カオナビ』を通して提供しているのは、それぞれの企業にとって最適な人材管理の手法をつくり上げるための“道具”なんです。僕らは良いパーツを準備する、何を作るかはユーザー次第。

家具量販店IKEAは、この観点で非常に優れていると思いますね。まずショールームをたくさん見せられて、疲れ切ったところで食堂が出てくる。そこでお腹を満たすだけでなく、置かれている紙と鉛筆で「今日買って帰るもの」を想像させたうえで、最後の最後で倉庫が登場する。あまりに練り込まれたUXで、感動してしまいました。

松下僕個人としても、かなりしっくり来るコンセプトでした。前職で世界展開を前提としたゲーム開発をしていたのですが、そこでも「クラフト」「グローバルデザイン」「ノンバーバル」といったキーワードを大切にしていたので、初めてこのコンセプトを聞いたとき「まったく同じじゃん!」と思いましたね。ゲーム開発で取り組んでいたことを、今度は『カオナビ』というプロダクトで実践できると考えると、とてもワクワクしました。

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自社が実験場──「当たり前の働き方」をアップデートする

「ノーノーマルの時代」を支えるプロダクトをつくる会社だからこそ、自社でも積極的に働き方の“ノーマル”を廃している。自社を「実験場」とし、新しい働き方を模索しているのだ。

松下カオナビでは、「会社と個人は、選び、選ばれる対等な『相互選択』の関係にある」と考えられています。1ヶ月だけカオナビに在籍して、別の会社に行って、また半年後に戻ってくる……それくらいのスパンで人が出入りしてもいいと思っています。

流動性の高い組織を実現するためには、新メンバーがスムーズにキャッチアップできる体制を整えなければなりませんし、システム自体がシンプルなものでなければいけません。そのために、以前のインタビューで詳しくお話したように、現在『カオナビ』のシステムをモノリシックな構造から、複数の小さなサービスをAPI連携させる構造に変える「マイクロサービス化」に取り組んでいます。

それぞれの機能が独立した構造になれば、新しくカオナビに入社したエンジニアであっても、システム全体を細かく理解せずとも開発に取り組むことができるようになる。そうすれば、短期的なスパンで人が出入りする組織をつくることも十分可能だと思っています。

「柳橋とも『歓迎会や送別会がない組織をつくりたいね』と話しています」と玉木氏は重ねた。一昔前に比べると転職が一般化してきたとはいえ、会社に入社する、あるいは退職することは、依然としてビジネスパーソンにとって大きなイベントの一つだ。「覚悟を持って入社する」「新たな一歩を踏み出すために退職を決めた」──そんな言説に内包されるのは、「会社は簡単に“出入り”できるものではない」という暗黙の了解だろう。

カオナビは、そうした“ノーマル”に一石を投じようとしているのだ。その意図は、2020年11月に稼働を開始した新オフィスや、12月から運用が開始された人事制度にも表れている。

玉木新オフィスのコンセプトは、自分の所有物であることを意味する「OWN」に「T」を付け足して「TOWN」としました。オフィスは会社のものではなく、それぞれのメンバーの所有物であるという考えを表現しています。

そもそも、リモートワークが普及してきた現在でも「週●日は出社しなさい」と会社やマネージャーが決めている企業も多いと思いますが、それって、カオナビが掲げる「相互選択」の考えに基づくとおかしいんですよ。

オフィスにいつ来るか、どれくらい滞在するのかを決める権利は、メンバーにもあります。一切出社しなくてもいいし、毎日来たっていい。会社の意向を聞き、お互いにすり合わせる必要があることは大前提ですが、メンバー目線からすると、自分の所有物ともいえる「オフィス」をいつ、どう使うか決められるのは、当たり前のことですよね。

2020年11月に移転した新オフィスの風景。キャンプ場を模した会議スペースなど、ところどころに遊び心が取り入れられている。デザイン責任者は玉木氏。

松下働く場所だけではなく、時間もメンバーに委ねることにしました。コアタイムをなくし、平日の5時から22時の間で最低4時間勤務することのみ定めた「マイワークスタイル制度」を導入。月毎に基準となる労働時間は設けており、総労働時間が基準のプラスマイナス20時間以内に収めてもらうというルールはあるのですが、それさえ満たしてくれれば、4時間しか働かない日があってもいいことにしました。

今後はさらに、場所にも時間にも縛られない働き方を模索していきたい。海外に拠点を移して働くメンバーが出てきてもいいと思っていますよ。

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セクショナリズムを打ち破り、メンバーの心に火をつけろ

順風満帆なように見えるカオナビだが、解決すべき課題は山積している。目下の課題は、『kaonavi Future Deck』で掲げた内容を社内に浸透させることだ。

玉木会社の考えを表すステートメントは、一度提示しただけでは、社内に浸透していきません。繰り返し、説明していく必要がある。経営を担う一人として、これから社内向けの発信を強化していきたいと考えています。

ただし、会社の考えに納得できないのであれば、無理してカオナビを選んでもらわなくていいとも思っています。先ほどもお伝えしたように、会社と個人は相互選択関係にあります。『kaonavi Future Deck』に記されている言葉を理解しようともしない人と、「選び、選ばれる関係」を続けることは難しいでしょう。それくらいの厳しさと覚悟を持って、会社を一枚岩にしていきたいです。

一枚岩になったカオナビが目指すのは、いかなる未来なのだろうか。両氏に展望を聞くと、楽しげに構想を話してくれた。

松下まずは、マイクロサービス化を完了させることが短期的な目標ですね。そして、新機能、新サービスの開発を進めていきたいと考えています。

今後の最大の課題は、よりたくさんのデータを集めることです。現在の『カオナビ』では、導入企業のメンバーの情報が入力される周期は、短くとも1ヶ月ほど。そのスパンを短縮し、週単位、日単位で情報を収集できるようにしなければいけません。そのために、将来的にはIoTなども活用し、自分で打ち込まなくともデータが貯まっていく仕組みの開発も検討しています。

玉木人に優劣をつけるのではなく、個性を可視化するサービスにしていきたいですよね。「この人の長所はここ」「あの人はこんなパーソナリティを持っている」といったポイントを明確にするプロダクトにしていきたいと考えています。僕が興味を持っているのは能力ではなく、あくまで個性やパーソナリティをパラメータ化することなんです。

また、ファンづくりも重要です。「他のサービスより安いから」という理由で使っているユーザーはファンとは言えません。『カオナビ』より安価な類似サービスが出てくれば、すぐにそちらに流れてしまうでしょう。「『カオナビ』が好きだから使っている」と言ってもらえるユーザーを増やさなければ、僕たちが描く未来には到達できないと思っています。そのために、ユーザーのみなさんが楽しんで情報を貯められるような、ゲーミフィケーションマインド溢れるサービスにしていきます。

構想を実現するために、いまカオナビが求めているのは、セクショナリズムを打破できる人だという。

松下冒頭で玉木がお話ししたように、マーケットイン志向が強くなっていたため、顧客に求められる機能を安定的に開発することばかりに意識が向いてしまい、組織の縦割り化が進んでしまいました。その結果、チームを超えた協働が生まれにくくなっています。組織内に生じた分断を乗り越えていくため、チームや部署の枠を超えて、他者を巻き込んで開発を進められる方にジョインしてほしいです。

正直に言えば、中長期的な構想がものすごくカッチリ決まっているわけではありません。だからこそ、「ゲーミフィケーションマインド」を持って一緒に考えながらプロダクトを作っていける方は楽しめると思います。

玉木上場したカオナビだからこそ、ゲーミフィケーションマインドを持ちやすい面もあると思います。上場前のスタートアップだと、遊び心を持って偶発性を楽しんでいたら、VCから怒られてしまいますから(笑)。

もっともっと偶発性を高めていくためにも、既存のメンバーの心に、火をつけられる人に仲間になってほしい。「こいつとなら面白いことができるかもしれない!」と、部門の垣根を超えてメンバーをワクワクさせられるような方に、力を貸してほしいですね。

こちらの記事は2020年12月18日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

鷲尾 諒太郎

1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。

写真

藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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