新規事業から人事へ。
体験者が語る、新卒が活躍する組織に必要な思想とは?
優秀な新卒人材を採用したい。
そんな声は良く聞くが、実際に優秀人材を採用したあと、社内で活躍の場を与えられている企業はどれだけあるだろうか?
新卒入社した人材が事業立ち上げや人事マネジャーとして活躍する理想の組織の1つが、株式会社ネットプロテクションズだ。
今回は人事マネジャー河西遼氏が、スローガン社主催のイベントにて自社の人材活用ノウハウを明かしてくれた。
- TEXT BY REIKO MATSUMOTO
全てのステークホルダーにWINを。正の循環が生まれる組織設計
ネットプロテクションズの事業戦略・組織理念は、『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)で著者の楠木建さんにも絶賛されていますね。河西さんはそんな注目の会社で人事を担当なさっているとのことですが、いつ頃から人事に携わっているのですか?
私は東京大学の大学院卒業後、2013年にネットプロテクションズに新卒入社しました。最初の配属はセールスのプロモーションで、大手企業のコンサルティングなどに携わっていたのですが、配属直後に自分で提案して新規市場の調査プロジェクトを1人でやらせてもらいました。
半年後にその結果が出たことから、「新規サービスを立ち上げましょう」と提案して立ち上げ責任者を任せてもらえたのですが、サービスローンチのタイミングで心境の変化があって、人事に異動希望を出しました。それが2015年のことなので、人事には3年弱携わっていることになります。
ちなみに、どういう新規事業を立ち上げたかというと、もともと弊社のメイン事業であったBtoCのインターネット通販事業者向け後払い決済サービスである「NP後払い」と同じスキームをとりつつ、オフラインに対象者を変えたBtoCサービス提供者向け後払い決済サービス「NP後払いair」です。
事業を立ち上げていく中では、お客様のニーズは見えているものの、それをマネタイズして持続的に提供する仕組みに落とし込むことができるかが見えるまで時間がかかったし、とにかく試行錯誤の連続でした。
それでもゴールへとたどり着けたのはなぜかと考えると、もともとわたしは自ら仮説を立ててチャレンジすることにやりがいを感じるタイプだったんです。
何もわからないなりにも、失敗も成功も両方経験にした上でさらに仮説の精度を高めていくことをひたすら繰り返していたので、マネジャー陣や経営陣はその姿勢を信じて後押ししてくれたのでしょう。
会社が、一人ひとりの特性までしっかり見てくれているんですね。
そうですね。ネットプロテクションズは、単純に利益を上げたりお客様や株主に価値を提供したりするだけでなく、関わるすべてのステークホルダーのWIN、メリットを高めていくことをミッションと定義していて、働いているメンバーももちろんそのミッションを拠り所にしています。
そのため、メンバーの成長や自己実現をサポートすることも会社の使命であって、個人が自己実現していくための力をつける機会の提供も大切にしています。

そうなると、メンバーはやりがいを持って業務に取り組むことができるため、結果として会社でのパフォーマンスが高まる。会社でのパフォーマンスが高まれば、利益も増え、さらに会社としてメンバーに提供できるものが広がっていく。
そういう正の循環を目指しながら、機会提供や自己実現支援ができる組織設計を行っている会社です。
組織としてもよくあるヒエラルキー型の階層を撤廃して、フラットにネットワークを築くことができ、一人ひとりが裁量と責任を持って自律的かつ共同的に動いていける、いわゆるホラクラシー型組織を心掛けて設計しています。個人がやりたいときにやりたいことを実現しやすい組織に移行した、ということですね。
プロジェクト制とビジョンシートの共有で1人ひとりのWILLを叶える
その他に個人のやりがいと会社の成長の両立のために存在する具体的な制度を教えてください。
今の思想を体現している特徴的な制度を2つお伝えします。
1つめは、ワーキンググループ制度です。Googleがとりいれている「20%ルール」を聞いたことがある人もいると思いますが、あれに近いものですね。
簡単に言うと、全社公募型のプロジェクトをなるべく多く切り出していって、そのプロジェクトに参加したい人は誰でも、自分の業務時間の20%の範囲内で参画できる制度です。
オフィスの移転、新卒採用、予算策定など、全社にとって影響度の高いプロジェクトを、特定の専門知識を有した部署のみでやるのではなく、希望者全員で進めていけるよう門戸を解放していく。それによって全員が熱意を持って関わるプロジェクトに取り組めるというわけです。
そして2つめは、ビジョンシートの導入です。
ネットプロテクションズでは半期に1回異動を実施しているのですが、それが全員にとってよりよい結果となるよう、その都度本人のキャリアビジョンや、その達成に向けて今どんなことをしたいのか、そのためにどういう職を担当したいかをレポートとしてウェブ上にアップしてもらっているんです。
さらに、それを全社員分とりまとめ、全社員に開示しています。全員がどんなことを考えて働いているのかを理解することで、助け合いが生まれるからです。
そして、経営者側は一人ひとりの熱意に対して機会を提供していく意思を表明する。そこに反する意思決定をしたら経営側に矢が飛んでくるような状態を敢えて作っているんですよ。
だから、みんな成長意欲が高くて頻繁に異動があるし、中には複数のミッションを抱えている社員もいます。働き方の流動性、自由度を高めることによって、自分がやりたいからこの仕事をしているのだと思ってもらえるようサポートしているんです。

そうした環境で新規事業に携わることはとてもやりがいがあったと思うのですが、河西さんが人事への異動を希望した理由はなんだったのでしょうか?
「事業作り」の次は「組織作り」にチャレンジしたいという思いが強くなったからです。新規事業のローンチに向けて2年弱ほど試行錯誤を重ねて、スキーム作りやシステム開発、拡販にまで携わらせてもらう中で、そう感じるようになりました。
ビジネスである以上、数字を達成することだけに目的が収れんしてしまうのは仕方のないことですが、それがある程度達成できてきたことによって、自分自身の知的好奇心が減退しているように感じていたんです。
そこで、ビジネスにおける目標数値の達成よりも難解かつ本質的な価値と向き合いたいと思い、人間の幸せや感情に直接アプローチできる仕事はなんだろう?と考えるようになりました。
その結果、今の資本主義の世の中だと、人生において仕事に関わって生活する時間が大半を占めているので、会社における人事担当が多くの人の生活の質に対して、かなりの責任と裁量を持っていることに気付いたんです。
そうした思いを汲んで異動させてもらったので、これからも、一人ひとりの幸せにつながるような人事を行っていきたいと思っています。
【19卒就活生向け】代表登壇 ネットプロテクションズ特別選選考会
こちらの記事は2017年12月16日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。
執筆
松本 玲子
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