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子ども写真をリーズナブル、ユーザーファーストに CELEBABYが変える親子の思い出アルバム

子どもの成長を写真に収める。親にとっては至福の時間だ。ママは毎日スマホをタップしていることだろう。しかし、子と共にママが映ることは難し...
子どもの成長を写真に収める。親にとっては至福の時間だ。ママは毎日スマホをタップしていることだろう。しかし、子と共にママが映ることは難しい。また記念の写真はクオリティを追求したい。だが、プロの撮影サービスは高額だ。そこに課題を発見し、新たなサービスで参入したのが2013年に設立されたRETAIL INNOVATIONだ。
あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──
  • TEXT BY REIKO MATSUMOTO
  • PHOTO BY YUKI IKEDA
17-12-12-Tue
永田 和樹 (ながた・かずき)
株式会社RETAIL INNOVATION 代表取締役
谷野 祐規 (たにの・ゆうき)
株式会社RETAIL INNOVATION 取締役

子どもの成長を写真に収める。親にとっては至福の時間だ。ママは毎日スマホをタップしていることだろう。しかし、子と共にママが映ることは難しい。また記念の写真はクオリティを追求したい。だが、プロの撮影サービスは高額だ。そこに課題を発見し、新たなサービスで参入したのが2013年に設立されたRETAIL INNOVATIONだ。

同社代表取締役を務める永田和樹氏が起業を決意したのは2011年のことだった。それまではぼんやりと「いずれ起業を……」と考えるのみ。ところが、その年に東日本大震災が起きたことで心境が一変した。

当時は損保ジャパンに勤務。新卒以来、内勤で黙々と机と向き合う日々が続いていたが、震災が起きた際、現地に暮らす人々に保険金を支払うために1軒1軒歩いて被災者の家を回ったことで、仕事への向き合い方が変わったのだ。

現場の状況は悲惨なもので、支払い対象者がどこにいるかもわからない。ようやく見付かればすぐに査定をして支払い手続きに取り掛かる永田氏に対して、被災者たちは「ありがとう」と声をかけてくれた。

「そのとき初めて、お客様と向き合ってありがとうと言われたんです。そのことがすごく嬉しくって、今の仕事をやめてもっとお客様にありがとうと言われる仕事をしたいという思いが自分の中に沸き上がったんです」

やるならB to Cで、ターゲットは「困っている人」がいい。その思いを胸に慶應ビジネススクール(KBS)で経営について学び始めた。当時の年齢は28歳。周りを見渡すと結婚・出産のタイミングを迎える友人が多く、次第に「新米ママの役に立ちたい」という思いが強くなった。

「出産も子育ても初めてのことで、皆わからないことだらけ。そうしたママに喜んでもらえるサービスってなんだろう?と考えるところからスタートしました」。

そんな永田氏の起業パートナーとなったのが、KBSの同期だった。1年目の終わり頃、2013年3月には意気投合して株式会社RETAIL INNOVATIONを共同創業。そこで最初に形にしたサービスは、ブランドのベビー服のシェアリングサービスだった。

しかし、どうにもいい反応が得られず、半年たったころに軌道修正。仕入れた衣装をすべて貸衣装にすることで、撮影サービスをおこなおうとしたのだ。

早速カメラマンとレンタルスタジオに目星をつけ、右も左もわからないながら撮影サービス(セレベビースタジオ)を開始。途中、共同創業者は早々に起業の道を諦めて就職することとなるが、それでもひとりで頑張り続けた。

こなすべき業務は多い。撮影現場のディレクションから子どもの相手、さらにはウェブサイト構築、予約システム開発などもすべて自分である。

年間の撮影件数はおよそ400件。ウェブの知識も写真業界のノウハウも持っていなかったため、とにかくしゃかりきに走るしかなかったという。

しかし、2013年10月のセレベビースタジオ開始から2年経った2016年1月頃に転機が訪れる。損保ジャパン時代の同期だった谷野祐規氏が運営を手伝ってくれることになったのだ。

当時、谷野氏は早稲田大学ビジネススクールに通う学生。最初の1年ほどは学業もあったため無償での手伝いにとどまっていたが、2017年5月の資金調達のタイミングで正式にジョインすることになった。

「ちょうど地盤を作った段階でこれから成長を目指そうというところだったので、やりがいのあるタイミングだと思いました。事業自体の可能性も感じていたし、大学院で勉強した知識をすぐに活かせるのも魅力だった」と谷野氏は当時を振り返る。

早稲田で学んだのはマーケティングをはじめとする経営全般。身に付けた知識をもとに、新しい事業にチャレンジしたいと考えていたのだ。

このころには都心だけではなく全国のママパパにもサービスを利用活用してもらいたいとの考えから、カメラマンとユーザーのマッチングサービス「CELEBABY(セレベビー)」に業態を転換していた。

登録しているカメラマンは約100人、登録カメラマンが共用できる撮影スタジオを都内に2軒構えて業界初となるシェアスタジオでの撮影マッチングサービスを行うほか、全国津々浦々で出張撮影のマッチングも展開している状態だ。

そのため、サービスの運営まわりに加え、カメラマンと密にコミュニケーションを取ることもふたりの大事な仕事だった。

「セレベビーは前身のセレベビースタジオの時代からずっと、カメラマンと二人三脚でお客を集めてきました。登録数だけを重視してカメラマンとあまり連携をとらない競合他社も見受けられますが、当社は一貫してカメラマンの質にこだわり、一人ひとりと丁寧にコミュニケーションをとるようにしています。だからこそ、これまで広告を打たず、口コミだけでユーザーを増やしていくことができたんだと思っています」と永田氏。

この結果、2013年10月のセレベビースタジオ立ち上げ当初は月間2桁台だった客数は徐々に増加。現在では、月に200件ほどの利用があるという。

また、撮影費を抑えているのも人気が高い理由のひとつだ。

「これまでの赤ちゃん、子どもの写真撮影って、実はすごくコスパが悪いものなんですよね。大手の企業だと1回あたり3万~5万円くらいします。しかし、それで手にできるのはたった数枚の写真を使った印刷物だけで、しかも撮影データは1年後までもらえなかったりするんです。子供って本当に日々変化していくから、できるだけ小まめに成長の記録を残してあげたいというのが親心なのにこれじゃあ気楽に記録を残すことができないですよね」

そうした業界の課題から、セレベビーでは高額だった撮影予算を分割して、もっと頻繁に子どもの成長を残せるよう、予算1万円台で楽しめる撮影プランをそろえている。また、全撮影プランでデータ納品を約束しており、撮影1回につき平均60~70枚のデータを、1週間以内に提供する

「一度きりの撮影で終わるのではなく、子どもたちの成長を一緒に見守っていけるような息の長いサービスを作りたいんです。子どもと家族の変化を全てセレベビーで記録して、人生のスライドショーを創っていただくことが我々の目標です」

そのために新たな展開も構想中だ。「歯が生えたとかつかまり立ちしたとか、瞬間・瞬間の思い出を切り取ろうと思ったら、オンデマンドで“カメラマンを今呼べる”システムもありかなと思っています」と永田氏は明かす。

そのためには新たな人材もほしい。その採用にあたっても、同社のミッションである「ママの困ったを解消する」を遂行したいと考えている。

「ママさんがどこよりも働きやすい環境を提供できる会社にしていきたいです。リモートワークはもちろん、子ども連れの出社など様々な制度を、実際に子育てをするママの意見も聞きながら検討しています」

そう話す永田氏の横で、「経験に関しては、我々とまったく異なるバックグラウンドを持っている人がいいですね。お子さんがいらっしゃる女性はもちろん歓迎ですし、我々にはないアイディアをいただけたらうれしいです」と谷野氏が補足する。

ふたりの躍進は、今後も多くのママたちを笑顔にしていくに違いない。

0→1創世記

あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──