【トレンド研究】「テレビCMはオワコン」こそ時代遅れだ!──なぜ急成長スタートアップはテレビCMをも上手く活用できるのか、そのワケをノバセルに訊く〜注目事例4選もリストアップ〜

楠 勇真
  • ノバセル株式会社 ビジネスプランニング部 部長 

東京大学経済学部卒業後、2020年4月にラクスル 株式会社に新卒で入社。広告領域の新規事業「ノバセル」に配属され、入社当初からストラテジックプランナーとして約40社のお客様のテレビCMを通じたマーケティング戦略をサポート。並行して、メディア業務や効果分析業務も行い、ワンストップでお客様の事業成長をサポートする。その後、効果分析SaaSの導入支援や分析レポーティングなどを担当し、現在はラクスル 史上最年少マネージャーとして、ビジネスプランニング部で営業部長として各企業様の案件を統括。

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「テレビ産業/広告は衰退しつつあるのに、なぜテレビCMを活用する企業は未だに多いのだろうか」と疑問を抱く読者は多いのではないだろうか。

インターネット広告市場は未だ成長を遂げている一方で、横ばい傾向にあるテレビCM。直接的な効果測定が難しいうえに、労力や費用面での負担も大きく、特にFastGrowの読者に多い、ベンチャー・スタートアップ企業にとってはハードルが高いとイメージする人も多いだろう。

それでは、「テレビCMは時代遅れ」なのだろうか──。答えは否。

実は、急成長しているスタートアップがテレビCMを展開するケースは少なくない。テレビは依然として「強い」マスメディアであり、スタートアップの​​ブレークスルーに未だ有効打であり続けるのだ。

そこで今回は、「マーケティングを民主化する」をミッションに掲げ、テレビCMなどの広告動画の企画・制作・放映・分析までをワンストップで提供するノバセルのビジネスプランニング部の営業部長を務める楠 勇真氏を招聘。昨今のベンチャー・スタートアップ企業におけるTVCM活用の現状をお伺いするとともに、選択肢として比較されやすいタクシー広告とのメリット・デメリットなども対比についても見ていこう。

また、実際にテレビCMを展開する急成長企業としてLIFULL senior、ユーザーライク、NewsPicks、Chatworkの4社をピックアップ。各社の活用事例とともに、テレビCMを活用して事業をブレークスルーするための戦略について考えていく。

(※)ユーザーライク、NewsPicks、Chatworkに関する情報は、ノバセルサービスサイトなどから情報取得

  • TEXT BY MARI FUJIMOTO
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スタートアップ企業におけるCMの効果的な活用方法とは?

まずは冒頭の「テレビ産業/広告は衰退しつつあるのに、なぜテレビCMを活用する企業は未だに多いのだろうか」という疑問に、早速答えていこう。

インターネット広告が新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどの4大マスメディアに比較しても存在感が一層高まっているのは間違いない。大手広告代理店の電通の統計によると、2021年度、「インターネット広告費」は継続して高い成長率を保ち、2兆7,052億円(前年比121.4%)に達し、「マスコミ四媒体広告費(新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビ)」の総計2兆4,538億円を初めて上回った。

テレビCM市場が衰退している理由としては、大きく分けて2つの要因が考えられる。 まず1つ目が、「テレビという媒体自体のパワーが減少していること」だ。スマートフォンの普及と、それに伴うネットコンテンツ利用の低年齢化により、テレビ視聴率の減少幅がもっとも大きい10代から20代にかけては、インターネットの利用率がテレビの利用率を大きく上回っているといったデータもある。

そしてその背景にあるのが、個人の嗜好に合わせたコンテンツの登場であろう。動画や音楽のサブスクリプション、YouTubeのチャンネル登録など、個々のユーザーが「好きなものだけを選べる」ようなサービスが数多く登場している。逆説的に考えると、「若者にとっては、テレビ番組よりもネットコンテンツの方が魅力的に映っている」状況なのだ。

そして2つ目が「広告効果が見えづらいこと」。インターネット広告という、非常に使い勝手が良く効果が見えやすいメディアが台頭してきたことにより、効果指標がわかりづらいテレビCMが投資対象から外れる事態が起きている。

そんな時代背景にもかかわらず、テレビCMを打ち出しているスタートアップ企業の存在をFastGrow読者なら目にしているのではないだろうか。

ノバセルの楠氏によると、彼らがテレビCMを介して狙う効果は、ズバリ「指名検索」だという。

テレビの影響力が弱まり、テレビCMよりデジタルマーケティングに予算が寄っていく産業構造になっていますが、そんな時代背景において、テレビCMを活用して大きな事業成長を遂げたスタートアップは数多く存在します。有名どころで言えばビズリーチ、Sansan、我々ラクスルあたりが挙げられるでしょうか。

テレビCMを介して事業が伸びたスタートアップの共通項は、「指名検索」です。この「指名検索」とは、企業名・店名・商品名・サービス名・ブランド名といった、固有名詞やブランド名をGoogleなどの検索窓に入力して検索することを指します。

例えばネット印刷をしたいと考えた際、「ネット印刷」ではなく、「ラクスル」、即戦力人材を採用したいと考えた際に「人材採用」ではなく「ビズリーチ」で検索してもらう。

このようにピンポイントで自社サービスを「指名検索」してもらうことは非常に重要で、「指名検索」を増やす手段は限られています。そんな中、テレビCMはスタートアップが認知や指名検索を獲得していく上で、大きな影響力を持つ媒体であると考えています。

「ラクスル」の例を挙げてみよう。「ネット印刷」というキーワードで検索をかけると、ラクスル以外にも「プリントパック」「プリントネット」など、さまざまな競合企業が表示される。この状態では、競合との比較になり獲得コストは高騰、また広告の運用を続けなければ上位表示が難しくなる。一方でテレビCMにより認知を獲得することで、初めから指名で「ラクスル」というキーワードで検索してもらえる確率が高くなるのだ。

ラクスルの場合、テレビCMを始める前は「ネット印刷」という検索数よりも競合ブランドの指名検索数の方が圧倒的に大きく、「ラクスル」と比較しても16倍ほど差がついており、このままインターネット広告だけで戦っていくと競合に勝てない未来が明確に見えていました。その中で、会社名をピンポイントで検索してもらえるか?その課題に対して有効だったのが、テレビCMでした。

「テレビ広告は衰退している」と一口に言っても、依然としてテレビメディアの利用時間は長く、国民全体で「1日平均3時間1分」がテレビ視聴に充てられているというデータがある。動画を除くネット閲覧が「44分」、動画閲覧が「24分」というデータを見ても、テレビがなお「国民的メディア」であることには変わりがない。

インターネット広告だけのマーケティングでは、いずれ成長が頭打ちになる瞬間が来る。顕在的なニーズを刈り取るだけではなく、第一想起を獲得し指名検索してもらうための認知拡大施策を打つ必要がある。

そんな状況において、テレビCMは今なお大きな影響力を持った存在なのだ。

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テレビCMに向く企業、向かない企業

では、指名検索を獲得したいスタートアップ企業は、すべからくテレビCMを活用していくことが必勝法と言えるのだろうか──。答えは否。

楠氏によると、やはり企業のフェーズやビジネスモデルにおいて向き不向きが大きいという。

テレビCMが不向きな企業として、まず「Webマーケティングをやりきっていない企業」が挙げられます。

テレビCMはあくまで認知や検索に繋げる施策であり、検索したあとの受け皿としてWebマーケティングをやり切れていないと、バケツに穴が空いた状態で水を投入する状態になります。結果、認知・検索には繋がったが売上に繋がらない、という状況に陥りやすくなります。

また、「認知」といった側面にアプローチする手法のため、短期で投資回収ができるとも限りません。長期で投資を継続し投資回収ができるよう、そもそもの企業の資本力、そして経営陣の理解も重要になってきます。

また扱う商材と業界によっても、向き不向きがあります。テレビCMではWebほどターゲティングを細かくできないため、例えばターゲットが狭すぎる商材を扱う企業には向きません。

テレビは以前より力が落ちてきているとはいえ、マスマーケティングの代表格であることには代わりない。

楠氏曰く、テレビ向きの商材は大きく分けて2つ。「ターゲットが広い」「単価が高い」のどちらかに該当するパターンだという。

インターネット広告がこれほど台頭した現代においても、リーチ単価が最も安い媒体はテレビCMだと言われています。ただ、この「1リーチ」にはターゲット層以外のリーチも「1リーチ」としてカウントされているため、テレビCMで効果をあげやすい商材は「低いリーチ単価」が活きるターゲット層が広いもの、例えば食品、日常生活品などが該当します。

また意外に思われるかもしれませんが、「ラクスル」のように職種を横断して産業、製造業に向けたもの、つまり従事者が多い業種であれば、ターゲットとなる人口も多くテレビCMは有効と言えます。先ほどの文脈で言うとホリゾンタルSaaS等が該当します。

一方、高級車などの「単価が高い」商材もテレビCMに向きやすい商材と言えます。テレビ視聴者における購買層の絶対数は少ないですが、一件あたりの購入単価が高いので、費用対効果が合いやすいのです。

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タクシー広告や、その他のデジタルマーケティングとの比較

次はテレビCMの位置付けをYouTubeなどのデジタルマーケティングや、タクシー広告と比較してみよう。

確かに、YouTubeはテレビCMの立ち位置に近づいてきた側面があります。テレビCMを打つ前に、テレビCMよりはコストのかからないYouTubeでトライアルを行う企業も増えてきています。

ただ、YouTubeCMの注意点としては、広告出稿場所の指定が難しいことが挙げられます。テレビCMであれば「この番組放送中に流れるCM枠」と配信されるコンテンツをある程度事前に把握することができますが、YouTubeではどんな動画を見ている時に自社のCMが流れるか、コントロールが難しい。企業のブランドイメージを重視する企業にとって、悪手となり得る場合があります。

テレビCMと似た立ち位置になってきたYouTubeに対し、似ているようで全く異なる利用層になっているのがタクシーCMだという。

タクシーを頻繁に利用される層の中には、ビジネスの決定権を持つ役職の方も多いです。そのためBtoBで、アプローチしたいターゲットがタクシーをよく利用する層であれば、非常に有効な手段です。

また費用の違いもポイントです。首都圏でテレビCMを放送しようとすると、1ヶ月あたり数千万円~億単位の費用がかかりますが、タクシーCMなら1週間数百万円程度から配信できます。

楠氏の言うように、タクシーCMを使うべき企業はターゲット層が明確である場合が多い。 プレリリース配信サービス「PR TIMES」、ビジネスSNS「Wantedly」、ロイヤル顧客マーケティングシステム「coorum」といった名前を聞けば、タクシーCMを配信すべき企業のイメージがより明確なものとなるだろう。

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デジタルマーケティング×マスマーケティング。
ノバセルが提唱する、新時代のテレビCM

以上の特徴を踏まえた上で、スタートアップ企業はテレビCMをどう活用していけばいいのだろうか。

もちろん、先に述べた通り、テレビCMにこれから参入する企業はインターネット広告をまずはしっかり実施し、「バケツの穴をふさいだ状態」にすることが前提となる。知見のあるデジタルマーケティングを土台にしながら、テレビCMに参入できれば心強い。

「デジタルマーケティング×マスマーケティング」を強みとするノバセルは、そんな需要を満たしてくれるサービスと言える。

ノバセルでは「ノバセルトレンド」という独自のツールを持っています。自社だけでなく、世の中のあらゆるテレビCMの放映情報と、その時に各ブランドでどれくらいの指名検索があったかという情報を掛け合わせ、各社のテレビCMによる指名検索効果を分析できるツールです。

この「ノバセルトレンド」の最大の特徴は「テレビCM放映前後数分間の指名検索データ」を出せることです。どの番組、クリエイティブが指名検索に繋がったのか、CM枠1本単位で把握することができるんです。

これらのツールにより、テレビCMを出すのが初めての企業でも、どんな枠でCMを放送すれば指名検索が取りやすいのか、どんなクリエイティブが有効なのか、分析・把握できるようになっています。

せっかく巨額の予算を投じてテレビCMを作っても、指名検索が取れないと意味がない。特に大企業に比べて事業の基盤が安定していないスタートアップにおいては致命傷になりかねない。事前に指名検索に繋がりやすい番組やクリエイティブを把握できるのは、大きなアドバンテージと言える。

また、気軽にクリエイティブのABテストができることも多くの企業から支持を集める所以だ。

そもそもノバセルが生まれた根源には「なぜテレビCMは何十年も同じ仕組みのままで、インターネット広告のように運用しないのか」といった疑問から生まれています。

もちろん、CMを大量に流せば認知は獲得できるかもしれませんが、資本力の限られたスタートアップは常に運用しながら効率を上げていくことが重要ですよね。

なので、ノバセルではクリエイティブもWeb広告のように複数種類制作します。

そして、CMを打った時にどれだけ検索数やセッション数、新規ユーザー獲得が伸びたかをリアルタイムにチェックし、効果の高いクリエイティブに放映を集めることで運用しながら効率を上げています。

もちろん、効果検証を行う上で"事前の仮説"が重要になることは言うまでもない。「このターゲットにはこういう価値を届けると、どんな反応が起きるのか」といったように、いかに最初から筋の良い仮説を設定できるかが肝になりそうだ。

その点ノバセルのマーケティングチームには、ラクスルグループが約60億円以上かけて事業成長を実現してきたマーケティングノウハウがしっかりとインプットされている。ほとんど全てのスタートアップにとって未知の領域であるテレビCMの戦略策定を、初期からサポートしてくれる相手としてこれ以上頼りになる存在はいないだろう。

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スタートアップのテレビCM活用例

最後に、テレビCMを活用し大きく伸びたスタートアップ企業や、近年テレビCMに参戦して効果を上げた企業の事例を4つ紹介しよう。

事例1 LIFULL senior

日本最大級の老人ホーム・高齢者住宅検索サイト『LIFULL 介護』の運営や、日本最大級の遺品整理・片付け業者の検索サイト『みんなの遺品整理』を運営するLIFULL senior。

そんな同社がテレビCMを始めたきっかけは、「SEO環境の変化や広告の競争の激化等により、これまでとおなじ集客経路だけで戦っていくのは難しいのでは」という課題感が浮上したからだ。よりサービスを認知してもらうための集客対策として、テレビCMの放映に参入した。

とはいえ、同社は初めからテレビCMを放映したわけではない。

まずは未経験の領域かつ限られた予算の中で実施できる施策として、2022年8月にYoutube動画広告を配信。その結果、ポジティブな効果が得られた一方、投下予算も少額だったことから大きなビジネスインパクトにはならなかったという。継続的且つビジネスインパクトが出せる取り組みとして、規模感の大きい施策が必要なのではという議論から、テレビCMを活用することとなったのだ。

まずはYoutube動画広告施策の振り返りと合わせて、最初に「何をゴールにするのか」を決めKGI ・KPIを設定。ゴールを設定した後に代理店とタッグを組み、ターゲットや戦略を詰めていったと言う。具体的に配信するメディアが決まったのち、そのメディアを主軸に「どういうターゲット」に「何を」「どのように」伝えるかを自ら試行錯誤したという。

先ほどの楠氏の話にもあった通り、LIFULL seniorのように自社でオーナーシップをもちながらテレビCMの作成に着手できる企業は決して多くない。

過去FastGrowの記事でも取り上げた、同社代表泉氏、『LIFULL 介護』の事業責任者を務める原田氏といったマーケティング領域のプロフェッショナル人材を抱えるLIFULL seniorだからこそなし得た技と言える。

また、橘氏が解説した「テレビ向きの商材」である「ターゲットが広い」にも合致している点は注目したい。

日本の人口ピラミッドにおいて現在一番のマジョリティは団塊世代(1947〜1949年生まれ)であり、この団塊世代が今や75歳を迎え始め、介護の課題に直面しつつある。

また、介護の課題に直面しているのは、何も高齢者だけではない。介護にまつわる不安は、当事者のみならず、その子供たちの世代にもつきまとう問題。つまり、団塊世代を親に持つ“団塊ジュニア世代”もターゲットになるのだ。介護に悩みを抱える人の多さ、これが「テレビ向きの商材」である「ターゲットが広い」に合致する所以なのだ。

そして、LIFULL seniorの親会社であるLIFULLでは、これまでテレビCMを積極的に活用してきたナレッジが蓄積されている点も忘れてはいけない。

LIFULL seniorとLIFULLが連携しながら伝えたい価値や体現したいものを細かく分解していき、全体のコンセプトやクリエイティブなどを自社でオーナーシップを持って決定することができたのだ。

TVCM放映の裏側──Webマーケターから見たLIFULL seniorの現状・今後の展望とは

事例2 ユーザーライク

「毎日にちょっとした感動を」をミッションに、週替わりで季節 の花が届くサブスクリプションサービス『bloomee』、法人向けお花の定期便『bloomee biz』を運営するユーザーライク。

スタートアップ初期のタイミングでは、巨額の施策であるテレビCMは候補にあがらなかったというが、シリーズCからDに資金調達のステージが進んだときに、テレビCMと言う大規模なマーケティング施策をスピード感を持って行う必要性を感じ、ノバセルと手を結んでテレビCMの施策を行うことになった。

まずは富山でローカルテストを行い、クリエイティブを何度もブラッシュアップしながら、2021年3月に関西でテレビCMを放送。5月には関東でテレビCMを放送した。

「お花の定期便といえばbloomee」という認知を獲得し、CVも順調に増加。 さらに顧客だけでなく提携企業や農家の認知も獲得し、仕入れがスムーズになるなど、企業全体に良い影響をもたらしているという。

過去にFastGrowでもユーザーライクのテレビCM成功の舞台裏について取り上げた記事が存在している。「プロダクトの認知・購買経験・購買頻度などによって顧客を5つないし9つのセグメントに分け、その心理を深掘りして、打ち手につなげていった」と語る同社のマーケティング手腕をぜひご賞味いただきたい。

事例3 NewsPicks

累計無料ユーザー・会員数約718万人に上る、言わずと知れた国際最大規模の経済ニュースプラットフォーム『NewsPicks』。日本中のニュースをキュレーションされた状態で読める、オリジナルコンテンツがある、ニュースやコンテンツに対するユーザー(Picker)のコメントが読める等のコンテンツが人気を博し、有料会員数はリリースからの8年間で19.3万人にのぼる。

会員数増加に伴い安定収益は伸びていたものの、その度合いが少しずつ鈍化しつつあったこと、さらなる成長に向けた「次の一手」が求められていたことをきっかけに、テレビCMを行う運びとなった。

第一弾のCMでは、6パターンのCMを放送。残念ながらどのバージョンも狙う成果は得られなかったが、「無料」「経済」というキーワードを訴求したCMは、それらのワードを使っていないCMに比べて効果が2〜3倍高いという結果を得た。

第二弾のCMではこれを踏まえ、キーワードを〈「経済ニュースアプリ」を「無料」で読める〉に設定。放映する番組を経済系番組に絞り込み、ターゲットを35〜50歳の男性に絞ったところ、効果が大幅に向上。CPIがほぼ半減するという大きな成果を得た。

NewsPicksほどの知名度を誇るサービスであっても、一筋縄ではいかないテレビCM。ぜひその葛藤の舞台裏を覗いてみてほしい。

【セミナーレポート】NewsPicks×ノバセル「テレビCMの未来について徹底議論 -運用型テレビCM活用最前線-」

事例4 Chatwork

リモートワークの急増により、競争が激化したビジネスチャットツール業界。その中で大きな存在感を保ち続けている企業が、国産かつ国内最大級のサービスを提供している『Chatwork』だ。

ビジネスチャットツールの中では国内No.1の利用者数を誇るChatworkだが、そもそも競合他社も含め、ビジネスチャットの普及率は2割未満とまだまだ低い。つまり、市場創造と自社プロダクトの認知向上、この両方が課題であったのだ。

そんな状況においてビジネスチャットはコロナ禍で市場が活況になり、競合他社も活発に動き始めた。ここでテレビCMによって『Chatwork』というサービス名を浸透させ、純粋想起を取っていくことで、デジタル広告のCPAを下げつつセールスの成約率を高めていくことを狙いとしたのだ。

結果としては、計2回の放映を通じて、各エリアで認知率が5~6ポイント向上。「わかりやすくインパクトのあるクリエイティブ」が功を奏し、想定した通りの良い結果が出たと言う。また、セールスメンバーが書く日報の中で、「売りやすくなった」という副次効果も得られた。

今後はテレビCMだけでなくタクシーCMにも力を入れ、ビジネスチャットツールの「自分ごと化」を促すようなバーティカルなアプローチと、多くの人に刺さるようなホリゾンタルなアプローチの両方を試していく算段だという。

「事業をどう伸ばすか」から会話してテレビCMを実施。Chatworkとノバセルが見出した戦い方とは?

他にも女性限定キャリアスクールコミュニティ「SHElikes」や、オンラインピル処方の「mederi」など、女性をターゲットにしたスタートアップ企業のCMも近年目立っている。

テレビ産業が縮小傾向にあるのは確かであり、特に若い世代は「テレビをほとんど見ない」という人も少なくない。

しかし、まだまだテレビは影響力の大きい媒体であり、認知拡大や指名検索を増やす上で大きなインパクトをもたらす存在と言える。スタートアップ企業の新規参入も十分可能だ。

FastGrowでは今後もテレビCM業界の動向をウォッチしていく。乞うご期待。

こちらの記事は2023年06月08日に公開しており、
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執筆

藤本 摩理

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