INTERVIEW
前田 一人 才田 敦士
17-12-19-Tue

「“お金くらいのこと”でつまらない人生を送ってほしくない」
住宅ローン比較のWhatzMoneyがお金の問題をフラットにする

TEXT BY MISA HARADA@HEW
PHOTO BY YUKI IKEDA
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WhatzMoney(ワッツマネー)は、インターネットを通じて、
国内で契約できる1万6,000以上の住宅ローンの中からユーザーに最適な物を提案する住宅ローン比較サイト。

よく「家賃は収入の3分の1を目安に」と言われるが、
逆に言えば、「収入の3分の1“も”住宅費に縛られている」ということ。

代表取締役の前田一人は、金銭がネックになって、
やりたいことをやれない世の中を変えることを目指している。

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メモ書き程度のスライドで『Incubate Camp 7th』決勝進出

前田世の中のお金の問題をフラットにしたいんですよ。“お金くらいのこと”で、つまらない人生を送らないといけないなんてナンセンスじゃないですか。

そう語る前田は大学時代、いわゆる“意識が低い”タイプだった。レコード収集とDJが趣味ではあるものの、とくに就職面接でアピールできるようなことはない。

そんなとき「大変だけど給料がいい」という話を聞いて、試しに受けたのがキーエンスだった。無事内定がもらえたため、さっさと就活を終了。

「そういう適当な学生だったから、あまり話すこともないんですよ」と前田は苦笑する。

前田厳しいところに行かないと俺はダメだろうなと思ったんですよ。最初に軍隊みたいなところで基礎を叩きこまれないと、ビジネスマンとして社会でやっていけないだろうと(笑)。

キーエンスでは研究所などを対象に、顕微鏡の営業を担当した。世間にも認知されている通り、同社の「実力主義な社風」は性格に合っていた。

しかし、大きな問題もあった。「顕微鏡に一切興味が持てなかったんです」

在籍中の4年間、最後まで商品に興味が持てず、マネージャーから「お前、顕微鏡嫌いだろ」と言われたこともある。

前田こういうことってお客様にもきっと見破られているんだろうな、と思いましたね。

いくら給料は良くても、好きじゃない仕事は楽しめない。前田は転職を決意した。自分は一体何が好きなのか?考えた末に出た答えは、“金”だった。

前田言葉にすると下世話ですね(笑)。でも、たとえば『料理が好き』、『旅行が好き』、『スニーカーが好き』……。どんな“好き”も、結局常にお金がまとわりつくんですよ。じゃあ、そこを制してやろうと思ったんです。

当時結婚して子供がいたことも、金融に興味を持つ大きなきっかけとなった。

貯金を始めたり保険に入ったり、自然とお金を意識する機会が増えた。さらに株式運用を始めたことで金融の面白さにも気づいた。

そこで金融に狙いを定め転職活動をスタート。自ら「運は良いし、追い込まれたら強い」と話す前田はまたしても無事、住友信託銀行に入社する。

個人向けの営業からキャリアがスタートしたが、法人向けの融資に携わりたいと自ら異動を志願。2回目の自主応募で法人担当へと転身。合わせて約9年間働いた。

同行に務める間も、ずっと起業への興味はあったものの、特別やりたいことがあったわけではない。このまま銀行にいてもいいか──

そんなふうにも考えていたとき、電車内でほとんどの乗客がスマホを触っている風景を見て、「ウェブサービスでお金の分野を攻略したい」とひらめいた。

そこに大学時代の「適当な前田」はもういなかった。それから3カ月後、「とにかく勉強しないといけないと思った」という理由から、仕事後にスーツ姿でデジタルハリウッドのウェブデザイナーコースに通い始めた。

さらに、起業を後押しする奇跡も続く。ピッチイベントの『Incubate Camp 7th』に応募したところ、モックアップもなくメモ書き程度のスライドだけで挑んだにも関わらず決勝進出が決まった。

「『Incubate Camp』で決勝に行ったら会社を辞めよう」と決めていた前田は、まもなく住友信託銀行を退社し、WhatzMoneyを立ち上げたのだった。

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ローンは何かの手段にすぎない。“すべての人に最適なお金の選択を”

前田は、自身の結婚生活や銀行での仕事を通じて、多くの人々が住宅ローンを借りているにも関わらず、契約内容をきちんと理解している人はほとんどいないことに気づいた。

「これは銀行が儲かる仕組みになってしまっている。情報の不均衡を失くしたい」という思いが、WhatzMoneyの創業理由だ。

前田ローンって目的を叶えるためのツールでしかないわけです。ビルが欲しいからローン、学校に行きたいからローン、車が欲しいからローン。ローンを組む先に、人生の目的があります。お金の問題なんて数字で判定できるんだから、人間がやる必要はありません。

機械がお金の問題に対して最適なソリューションを提供する仕組みを社会に浸透させることができたらゴールですね。可能な限りお金の問題を取り除くことで、あとは自分で努力すればなんとかなるという世の中にしたいんです。

一般的に、家計におけるウエイトが一番高いのが住宅ローンだ。そこを改善できれば、人々に与えるインパクトも大きいだろうと、まずは住宅ローンを扱うことに決めた。

しかし、“お金くらいで悩まない世界”を実現し、“すべての人に最適なお金の選択を”というミッションを達成すべく、将来は他のローンも取り扱っていくつもりだ。

「わかりづらいから住宅ローンドットコムにしたら、とかよく言われるんですけど」と前田は笑いながら話すが、“WhatzMoney”という社名には「将来の住宅ローン以外への事業展開」を意識したこだわりがあるのだった。

ここで、一抹の不安がよぎる読者もいるだろう。金融機関から睨まれるサービスなのではないか?ということだ。そんな心配を前田は「自分たちのやっていることは金融機関にとってもメリットがあることなんです」と説明する。

前田WhatzMoneyが住宅ローンにおいて強力なプラットフォーマーとなれば、銀行側もわざわざ不動産屋に営業をかける必要がなくなります。

WhatzMoneyのビジネスモデル自体は、いわゆるFintechのレンディング分野で上場したアメリカ企業を参考にしているが、金融業界を取り巻く文化が日米ではまるで違うことは、金融出身の前田が1番理解している。

だからこそ当然、ビジネスモデルにも日本向けに独自アレンジを加えた。

「アメリカの成功モデルを真似しようとしているスタートアップは日本でも出てきていますが、完コピだと日本市場では絶対通用しない。たぶん私達だけが生き残りますよ」と彼はニヤリと笑う。

そんなWhatzMoneyに誰よりも早く出資を決めたのが、スローガン代表取締役の伊藤が率いるスローガン・コアントだ。出資を決めた理由を問われた伊藤は、「金融に精通したバックグラウンドはプラスに感じたが、決してビジネスモデルに出資した訳ではない」と語った。

伊藤キーエンス、大手金融機関を経て30代で起業する人自体が珍しい。本当にITベンチャーとしてやっていけるのか?と最初は内心思っていました。

しかし、『今はまだプロダクトを自分で開発しているんです』と言う話を聞いて、ビジネスモデルは変われど、この人なら何かやり遂げそうだなと直感したんです。

大手企業2社を経て30代で起業する人で、人に頼らず、0から開発の勉強をしてしまう柔軟性と熱意に投資した感じですね。

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お客さんが本当に“食べたいもの”は?

一方、「WhatzMoneyの未来を担う存在」として前田から期待を受けているのが、営業部営業推進責任者の才田敦士だ。

「すごい会社に早い段階で入れるかもしれないという直感が働いた」という理由でWhatzMoneyに興味を持ったと言う。

新卒で入社したメーカーの経理から、求人広告の代理店に転職し営業畑へ。そこで働く中で起業に興味を持ち、「クラウドソーシングサービスを通じて自分で稼ぐことを経験してみた」

そして起業するか転職するかと迷いはじめた矢先、前田からビジネスSNSを通じてスカウトを受けたのだ。

前田はその頃、人材系サービスの営業経験のある相手にスカウトを30通ほど送っており、才田はその中の1人だった。当時兵庫県在住だった才田は、わざわざWhatzMoneyの面接のためだけに新幹線で東京までやって来たという。

当時を振り返り「カジュアル面談だし、ウェブ面接でいいじゃん!」とツッコみを入れる前田を前に、才田は「確かに(笑)」とはにかむ。

才田ただ、自分なりに理由もあって。WhatzMoneyのビジネスモデルに興味を持ちましたし、将来一緒に何かするかもしれない相手とは、やっぱり直接話をしてみたいなと思ったんです。

「経営企画が現場を理解していない組織は不健全だ。営業の現場を理解した上で事業設計をしないといけない」という前田の考えのもと、才田は“営業もできる事業開発”となることを期待されている。

前田とやり取りをする中で才田が痛感したのは、「自分は今まで営業をしっかりできていなかった」ということ。前田の営業のやり方を、才田は独特の例えを用いて説明してくれた。

たとえば才田が今まで行っていた営業は、「お腹が空いた」と訴えるお客さんに対して、ただ自分が持っているパンを渡すようなもの。

しかし、前田の場合はというと、お客さんが何を食べたいのかを汲み取り、本当はカツ丼が食べたいとわかったら、おいしいカツ丼屋までの道筋や乗るべき電車の時間までを調べるものだという。

才田僕はまだ全然それができていないから、お腹が空いているお客さんに『パンどうですか?』って渡して、『いや、俺本当はカツ丼が食べたかったんだよね』と不満に思われてしまう。

前田結局それはお客さんの本質を見ていないってことなんだよ。お客さんは口では『お腹が空いた』と言っているかもしれないけど、本当は別の欲求が裏にあるかもしれない。

そこまでちゃんと見ているか、本質を捉えているか。そういうことは営業に限らず仕事の全てにおいて大事にしている部分。これはキーエンスで徹底的に叩き込まれた、本質を見る、ということなんです。

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「欲しいモノはなんですか?ローンの借り換えで買えますよ」

その都度「なんで?」と問いかけることで思考を深めて、問題の“本質”を捉えなければ──。正論だけでモノは売れない。それは創業時に立ち上げた事業であるオンラインでファイナンシャル・プランニングを提供するビジネス立ち上げをしていく中で学んだ。

誰もが口ではサービス内容を褒めてくれても、結局売れることはなかった。やはりそれは本質を捉えきれていなかったからなのだろう。

前田は反省を活かし、現在は「借り換えて得したぶんだけ〇〇ができる」と少々即物的な伝え方をするようにしている。

前田住宅ローンって基本的に借りっぱなしで見直さないんです。1,000万人もの人がこの瞬間にもローンを活用しているのに、75%の人が借り換えたことが一度もない。そりゃあ面倒くさいですからね。

そこに正論で『借り換えたらメリットあります』って言われても、やっぱり面倒くさい。ウェブマーケティングを通じてメリットを訴えるだけでは、そういう大衆には刺さらないんです。

でもそんな人々だって、ほしいモノはある。だから、『旅行に行きたい?わかりました。じゃあ住宅ローンを借り換えて浮いたお金で行きましょう』という伝え方をするように変えました。

消費者が“住宅ローンを借り換えて得した分、欲しい物が買える”。それは裏返せば、事業会社にとって“住宅ローンを乗り換えて得した人々に物が売れる”ということでもある。

現在はリフォームECサイトとの連携、ホームセンターなどの小売企業と連携してローン乗り換え提案をしているが、他の企業とも連携をとれる可能性は充分にある。

前田どんなに商品が魅力的でも、結局お客さんに購入予算があるかという話になりますから。私たちはその問題を取り払うことができるんだから、これをいい話だと思わない会社はおかしいですよ。だから理屈上は旅行会社でも塾でも車でも、どんな事業会社とも協力していけるはずなんです。

前田あなたがほしいモノはなんですか?ローンの借り換えで買えますよ。

何かを売買するときに必ず紐づいてくる“お金”の部分を、WhatzMoneyはこんなキラートークで解決する。ところで、冒頭で伝えた、前田が金融業界を志望した理由として述べた言葉を覚えているだろうか?

前田どんな“好き”も、結局常に金がまとわりつくんですよ。じゃあ、そこを制してやろうと思ったんです。

近い将来、前田を筆頭とするWhatzMoneyは本当に、お金の世界を制しつつあるのかもしれない──

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「“お金くらいのこと”でつまらない人生を送ってほしくない」 住宅ローン比較のWhatzMoneyがお金の問題をフラットにする
WhatzMoney株式会社 代表取締役 前田 一人 WhatzMoney株式会社 営業部営業推進責任者 才田 敦士
[撮影]池田 有輝
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