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医療情報の信頼性をどう担保するのか──「サプリEC」「サブスク型サプリ」から探るキュレーションの在り方

米国のサプリメント市場は約440億ドル(約4.8兆円)を超えていると言われる
米国栄養評議会「CRN」の2018年の調査によれば、米国の成人の75%が栄養補助食品を摂取しており、
その使用率は過去10年間で10%増加している。

一方で、サプリメント服用による事故も増えている。

2017年、米国ではサプリメントの使用により30人以上が亡くなり、その内の数人は禁止されたサプリメントの服用が原因だったという

こういった事故を減らすため、アメリカでは「サプリメントのキュレーション」を行うベンチャー企業が立ち上がっている。
キュレーションといっても、メディアだけではない。
サプリメントのECなどで、医薬品を「パーソナライズ化」する取り組みが進んでいるのだ。

医療情報デマ問題に挑む米国スタートアップと日本企業の事例から、いま企業に求められてる視点を紐解いていきたい。

  • TEXT BY YUSUKE KANAMORI
  • EDIT BY MONTARO HANZO
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消費者のリテラシーを高めるアプリ「zenamins」「Labdoor」

zenamins

サプリメントへの信頼度が高いアメリカだが、自己判断で市販のサプリメントを選ぶことに難しさを感じる人は少なくないだろう。自分にあったサプリメントを選びたい消費者の救世主が「zenamins」だ。

zenaminsを利用しようとするユーザーは、まず最初に生活習慣に関する10問ほどのアンケートに答える。

簡単な基本情報と「あなたがケアしたい体の問題は?」といった質問に4〜5問答えると、ぴったりの栄養素を提案してくれる。筆者も試してみると、ケアしたい要素に「脳の健康(Brain Health)」を選択したことで、ビタミンD、マグネシウム、鉄分といった栄養素を紹介してくれた。

アンケートの結果画面から、配達するサプリメントの組み合わせを決め、購入は完了。月額約30ドルからサプリメントの詰め合わせを届けてくれる。

サブスクリプションサービス以外にも、消費者のリテラシーを高めようとする取り組みは多く存在する。「Labdoor」は、サプリメントの成分を独自にテストし評価を与え、ランキング形式で掲載しているECだ。

Labdoor

サプリメント製造企業とは直接関係のないLabdoorは、小売店やオンラインストアから購入したサプリメントをFDA(アメリカ食品医薬品局)に登録された試験所で、化学分析を実施している。

ラベルの正確性(Label Accuracy)、製品の純度(Product Purity)、栄養価(Nutritional Value)、成分の安全性(Ingredient Safety)、有効性(Projected Efficacy)という5つの観点から独自の「LABDOOR SCORE」を算出。レポート結果をランキング形式で公開している。

栄養価だけでなく、服用量当たりの価格も明記されており、さまざまなニーズにあったサプリをリサーチできるのも特徴だ。2017年時点で1,000万人以上の利用者を獲得している。

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医薬品の物流を「見える化」することで、安全性を担保

TraceLink

世界各国で、偽造医薬品対策の法規制が進んでいる。

医薬品は色や形状、パッケージ、名称が紛らわしいものが多く、誤用による医療過誤が問題となっていた。医療現場では「その製品がいつ、どこで、誰によって作られたのか」を共有できるツールが求められていたのだ。アメリカでも「医薬品流通網の保全に関する法律」が2013年に成立しており、医薬品流通の透明化が推進されている。

消費者を偽薬から守るために、流通にメスを入れる企業も登場した。アメリカの「TraceLink」は、医薬品の流通経路を追跡し、記録蓄積するクラウドサービスだ。サプライチェーンにおける商品の流通情報を「見える化」することで、危険性の高い偽薬処方の根絶を目指している。

上述した医薬品流通の透明化のトレンドを受け、TraceLink社の2018年Q1の売り上げは前年同期比で69%も伸びている。市場全体としても、医薬品トレーサビリティーの世界市場は、2017~2021年にかけて19.25%の成長が見込まれており、同社の成長に目が離せない。

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偽薬対策へ、日本で立ち上がり始めたベンチャー企業たち

モノの.store

日本でも、サプリメントや医薬品のリテラシーを固めるためにベンチャー企業が動き始めている。2018年創業の株式会社gojuonは、「正しい医療知識と薬剤知識で、安心できるモノ選びをあなたに。」をビジョンに、サプリメントや医薬品を紹介するメディア「モノの.store」を運営している。

ユーザーへの納得感を信条とする同社は、メディアの監修に9名の薬剤師を迎え入れている。医薬品の紹介記事には、監修者の顔写真と略歴を明記。また、ユーザーが抱える悩みを「LINE@」で薬剤師に直接質問できる点も特徴だ。

2014年に創業された株式会社メディカルノートが運営する「Medical Note」は、月間1,000万人以上に利用されている日本最大級のデジタルヘルスケアプラットフォーム。「病名」「部位」「症状」といったカテゴリから病気の概要・対処法などを記載している。

記事の信頼性担保のため、総勢1,700名弱の医師や専門家、800の医療機関の協力関係を構築。症状ごとのソリューションを発信している。

インターネットで気軽に情報収集・購買ができるようになった現代においても、医薬品の信頼性担保の手法は固まっていない。

zenaminsのようにWeb上でアンケートを取り、サプリメントを「パーソナライズ化」する企業もあれば、Medical noteのようにプロによる「キュレーション」を手法とするメディアもある。

いずれにせよ、ユーザーが求めるのは健康的な生活を送るために信頼性の高い薬を手に入れることに間違いはない。医療者の起業が増えるなかで、消費者のリテラシー向上に努める動きに今後も注視していきたい。

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執筆

金森 悠介

編集

姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。

デスクチェック

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

こちらの記事は2019年05月17日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。