AI旅行提案サービス、BtoB顧客紹介マッチング。インキュベイトファンド厳選のスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
今回は、創業期のスタートアップに特化して投資を行うVC・インキュベイトファンドとのコラボレーション企画として、インキュベイトファンドの投資先のみが集まる限定回を開催した。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、AVA Intelligence株式会社、株式会社Saleshubの2社(登壇順)だ。インキュベイトファンドの寿松木充氏も登壇し、クロストークセッションも開催した。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY YUI TSUJINO
インキュベイトファンド
資本と人材の両面から事業成長に伴走する
インキュベイトファンドは、創業期のスタートアップに特化し、投資・支援を行う独立系VCだ。現在は、特にDX、パブリックセクターイノベーション、ディープテックの3領域に注力し、投資を行っている。
資本と人材の両面からスタートアップの成長を支援すべく、コミュニティやイベント、HR支援なども実施。資金調達を目指すシード・アーリーステージ起業家向けの合同経営合宿『INCUBATE CAMP』や、半日がかりで事業相談の1on1を実施する『CIRCUIT MEETING』など、複数のコミュニティの場を提供している。他にも、大学生・大学院生を対象とした、VCに関する講義イベントも実施。
日本のスタートアップエコシステムをさらに盛り上げようと、多様な取り組みを展開している。
AVA Intelligence
検索から予約までシームレスなAI旅行提案サービス
最初に登壇したのは、AI旅行提案サービス『AVA Travel』を開発・運営しているAVA Intelligence代表取締役の宮崎祐一氏だ。
AVA Travelが解決するのは旅行先を決めてから予約するまでのフローにおける課題だ。「情報が点在しており、どれが良いかを選ぶのに時間がかかる」状況を変えたいという。
宮崎旅行を計画する際、Googleで旅行先を検索する人は多いのではないかと思います。まとめサイトなどから候補地を見つけ、記事やブログなどから観光スポットを調べ、行きたい場所が見つかったら、予約サイトでホテルの値段を確認する。
それで条件や値段が合えば良いですが、自分自身や一緒に行く人と予算が合わなければ、再び候補地探しに戻って、煩雑なフローを繰り返さなければいけません。
こうなってしまう背景には、既存の予約サイトの多くが、目的地が決まっていないと検索できない上、検討に必要な情報が一つのサイトに揃っておらず、縦割り構造になってしまっていることがあると考えています。AVA Travelはこうした複雑さを解決するサービスです。
AVA Travelでは、インターネットにある膨大な旅行情報を収集し、独自にスコア化。ユーザーの旅行に関する好みや条件に合わせて、おすすめの旅行先やアクティビティ、ホテル、飲食店など、パーソナライズした情報を提案する。宮崎氏は「自分だけのオリジナルガイドブックが瞬時に生成されるイメージです」と形容する。
ユーザーは提案された観光地の周遊プランや行き先ごとの関連記事などを、複数のサイトを行き来することなく閲覧できる。気になるスポットがあれば、周辺のホテルやレストランを調べ、料金比較や予約も行える。
宮崎既存の宿泊予約サイトとの違いは、そのサイトに掲載している施設以外の情報を、あらゆるサイトからAPIやクローリングによって収集し、エリアごとにまとめて見せていること。宿泊施設に限らず、ホテルから近くの体験、レストラン、観光スポットなども網羅しています。選択肢を広げながら、旅行を計画できる体験を実現したいです。
AVA Travelで提案を受けたユーザーのCVRは予約サイトや比較サイトに比べ、およそ2、3倍高いといった数値も得られているという。
今後は、既存プロダクトのアップデートに加え、自社のレコメンドエンジンを、APIとして貸し出す事業を始める予定だ。宮崎氏は「将来的には検索の仕組みそのものを変えていけたらと考えている」と語った。
宮崎今、多くの人が行っている検索スタイルは、自らキーワードを入力して情報を取る能動的なスタイルです。
しかし、最近は自分好みのものやおすすめを見つけてもらえる受動的な検索スタイルに移行しつつある。私たちはこの流れをAIを使って加速させたい。旅行のみならず、あらゆるものがユーザーの好みに応じて提案されるような世界観を目指していきます。
旅行事業の収益性向上とレコメンドエンジンのAPI提供事業の開発に取り組み、数年後にはIPOも見据えている同社。「エンジニアやマーケターなど募集しておりますので、ぜひご連絡ください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
Saleshub
非効率な営業をなくす顧客紹介マッチングサービス
続いて登壇したのは、顧客紹介マッチングサービス『Saleshub』を開発・運営しているSaleshub代表取締役の江田学氏。
Saleshubを立ち上げた背景には、江田氏が営業部長として働くなかで「テレアポや飛び込み営業を辛い」と感じた体験がある。「テレアポや飛び込み営業の非効率的な部分や精神的な辛さをどうにかできないかと思っていました」と振り返る。
『Saleshub』は、顧客を紹介してほしい企業と、顧客を紹介できる個人(サポーター)をつなぐマッチングサービスだ。
企業は事業内容や必要としている顧客を投稿する。それに対し、サポーターが顧客候補との商談アポイントをセッティング。アポイント後は企業からサポーターへお礼の協力金を送る。
利用する企業は、あらかじめ会いたい企業のリストをアップロードし、サポーターは同時に紹介できるつながりを登録する。2021年7月にはこれらのデータをSaleshubが集計し、自動的にマッチングをする機能も提供を始めた。
BtoB企業を中心におよそ2800社の企業が登録している。アポイントの成約率が、テレアポや飛び込みなど一般的な営業手法に比べ、4倍ほど高くなったという結果もある。月30、40件ものアポイントを獲得している企業も出てきているという。
江田テレアポや飛び込み営業などに変わる新たな営業手法として、企業から利用いただいています。
また、顧客を紹介するビジネスパーソンは、30〜40代の営業職やビジネス職の方がほとんど。副業として取り組まれている方も多いです。
これまで副業というと、エンジニアやデザイナーなどの職種がメインだったと思いますが、Saleshubは営業職やビジネス職の方にも、副業の機会を広げられているのではと思います。月10万円前後の副収入を得られる方が多いですね。中には月に100万円以上稼いでいる方もいます。
さらに「定年退職後の働き方として利用する個人も多い」と江田氏は語り、とある企業の元役員のケースを紹介する。
江田その方は、複数の企業の顧問をされていたのですが、顧問業だと数十万円を企業からもらった上で、毎月数社の顧客を紹介しなければならないこともあったそうです。そうしたノルマのようなものが課せられていると、その結果、だんだん紹介が辛くなってしまったりするのだとか。
それに対してSaleshubであれば、本当に応援したい企業に対し、アポイント単位でフィーを受け取れます。また、自分の好きなタイミングで働けることも魅力の一つではないかと考えています。
最後に、江田氏は「サポーターのつながりにまつわるデータが集まり、日本中の企業を網羅できれば、テレアポや飛び込み営業をしなくて済むかもしれない。企業とつながりのある方に事業を紹介し、共感によって紹介がつながる世界をつくっていきたいです」と語った。
新たな営業のあり方を模索する同社。「フロントエンジニア、アプリエンジニア、経理リーダーを募集中です。ぜひご応募ください」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
「リスペクトできる能力を持っているか?」
が採用の鍵に
ピッチの後はインキュベイトファンドの寿松木氏も交えて、AVA Intelligenceの宮崎氏、Saleshubの江田氏が、組織づくりについてクロストークを行った。
両者ともシード・アーリーステージ、社員も10名前後であることから、「組織において最初の10人にどのような人を採用するか、あるいはしてきたか?」と寿松木氏がたずねた。
宮崎初期はプロダクトに専念し、そこから採用・組織づくりと役割が移っていくイメージです。弊社はデータ分析やAIを構築するビジネスなので、最初の半数以上はエンジニアやデータサイエンティストに入ってほしいと思っています。
7、8人目くらいからマーケターやプロダクトマネジメント、9、10人目くらいから人事や広報を採用していくことになるかなと。
現在、フルタイムメンバーが10名働いているSaleshubでは、初期メンバーは「学生ベンチャーを一緒にやっており、再び集まってきた人が多い」という。採用においては「リスペクトできるかどうか」を基準としてきた。
江田「こういうところが素敵だな、この点は自分では絶対勝てないな」と思える方をチームにお誘いしたいです。現に、今のメンバーもそういった方々に集まっていただいています。そのように心から思えるからこそ強いリスペクトを持って働くことができるのだと思っています。
最後に寿松木氏は「将来的な会社のあり方をどのように描いているか?ベンチマークしている企業があるか?」と問いを投げかけた。
宮崎明確に掲げているのはテクノロジードリブンな企業であること。優秀なエンジニアが在籍する少数精鋭な組織を目指しています。具体的にベンチマークしている企業はないのですが。テクノロジーの強さではGoogle、カルチャーではNetflixには憧れている部分はありますね。
江田氏は「世の中の構造を変える企業でありたい」と語る。
江田世の中の構造を変えるようなサービスを作っていきたいというのは、メンバー全員が思っています。
もちろんSaleshubを成長させていくのですが、目指しているのは、世の中の構造を変えてしまうくらいのインパクトを持つサービス。その起点になるチームをつくっていきたいです。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年10月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
辻野 結衣
1997年生まれ、東京都在住。関西大学政策創造学部卒業し、2020年4月からinquireに所属。関心はビジネス全般、生きづらさ、サステナビレイティ、政治哲学など。
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