連載FastGrow Conference 2021

新ソウゾウは「ビッグインパクト」確実!?
人材とタネを結集させ、メルカリの次の成長をつくる戦略を聞け

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登壇者
野辺 一也

学生時代にIT系ベンチャー創業、事業売却後に外資系コンサルティング会社にて事業戦略・マーケティング等を担当。2007年に株式会社リヴァンプに参画し、支援先化粧品会社CEOとして事業再成長を実現。2013年から株式会社ローソン上級執行役員マーケティング本部長、オイシックス、ロイヤリティマーケティング(ポンタポイント運営会社)などの社外取締役も務めたのち、2019年2月より株式会社メルカリに入社。経営企画やマーケティング、事業開発等に横断で関わる。

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「今のスキルを生かして社会をさらに良くしたい」「頭の中にこのアイデアを育てて、世界に良い影響を与えたい」次の時代を創るイノベーターの卵たちの脳内には、さまざまなイメージや思い、野心が詰まっているはずだ。

ではそれを具現化するのはどうしたらいいのだろうか?そんな素朴な問いを、今まさに活躍する現役事業家に直接聞くため、「事業のことは、事業家に聞こう」をテーマとして、2021年1月に開催したFastGrow Conference2021。Day1最初のセッションに登場したのが、あのメルカリだ。

今や日本を代表するテックカンパニーとなったが、この会社に“満足”はない。このコロナ禍でも世界を舞台に、新たな挑戦に着手している。

なんといってもこの1月、新規事業を担う株式会社ソウゾウ(以下、新ソウゾウ)を再び立ち上げ、話題をさらった。FastGrowは、あのメルペイをはじめとする数々の新規事業を生み出した『旧ソウゾウ』について、以前もイベントとレポート記事で迫っている。さて、今回の『新ソウゾウ』では何が違うのか?狙うビッグインパクトの内容は?メルカリ執行役員の野辺一也氏に、初公開情報も含めてじっくり語ってもらった。

  • TEXT BY AYUMI KANASASHI
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潜在ユーザーは国内に3600万人?まだまだ続くUX磨き込み

2013年2月1日に産声を上げたメルカリ。もはや説明は不要だと思うが、フリマアプリ『メルカリ』を通して、シェアリングエコノミーを日本社会に一気に普及させた存在ともいえる。現在はアメリカにも展開している。

メルカリ日本事業を牽引する野辺氏は、2019年2月に同社にジョイン。執行役員 VP of Business Operationsとして経営企画、マーケティング、事業開発、新規事業に網羅的に関わる。前職のローソン マーケティング本部長時代には、ローソン店頭でのメルカリ商品発送の受付開始や、電子決済サービス『メルペイ』の店頭導入など、コンビニサイドからメルカリに関わり、ポテンシャルを感じていたという。

野辺氏はまず、メルカリの現状から語り始めた。

野辺メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」という理念を掲げています。月間利用者数(MAU)は約1800万人、累計流通額(GMV)は1.5兆円超。成長率は年30%前後。非常に好調ですが、「新しい価値を生み出さない限り成長の壁にぶつかる」という危機感を持つようにして、今後の成長戦略を描いています。

2020年6月期の流通総額は約6200億円にのぼる。単純な比較はできないが参考として、同じリユース市場で主に店舗型事業のブックオフグループは、2020年3月期連結総売上高が約840億円だ。このデータをみると、メルカリの流通額の大きさがよく分かるのではないだろうか。

圧倒的な数値結果を叩き出していても、本来の目的からはほど遠い。ならばこの先、いったい何が必要だと捉えているのか。まず現在のメルカリが展開されているCtoCマーケットプレイスでの課題を伺った。挙がったのは「出品体験」だ。

すでに多くのユーザーがメルカリに価値を感じ、利用しているのは確かなわけだが、これから一体どの部分をどのような理由で改善しようとしているのか。意識しているのはどうやら、「売るものの写真を綺麗に撮るのが面倒くさい」「お金のやり取りが面倒くさい」「発想が面倒くさい」といった声のようだ。こうした点を解消すること=「出品体験をなめらかにする」ことを通して、ユーザーをさらに引き込もうと考えているのだ。

野辺お客さまに分かりやすい点で最近取り組んでいるのは、出品体験を良くしていくこと。メルカリは購入者の増加だけを促進すると、あっという間に出品不足が起こってしまうため、出品者を増やすために「出品体験の拡張」に注力をしているのです。

2019年に行った調査からの試算ですが、国内だけでも約3,600万人もの人々に「まだ使っていないけど、使ってみたい」と思っていただけているんです。この方々に、いかにして使ってもらうか、すなわちどのようにテクノロジーを使ってオンボーディングするかを考えています。これが、出品体験を滑らかにするという考え方で、さまざまな取り組みを行っています。

出品体験をより良くするための取り組みとは、どのような内容なのだろうか。

野辺CtoCサービスだからこそ、匿名性や安全性の強化、商品が売れた後の発送体験や梱包作業の負担軽減が重要です。

そこでメルカリが買い手から一時的に代金を受け取り、商品の受け渡しが終わった時点で売り手に売上金を渡す、『エスクロー決済』に追加して、宛名書き不要で匿名配送できる『メルカリ便』や、メルカリ内にあるカタログデータから商品詳細や価格をサジェストする『AI出品』や『バーコード出品』を導入。アプリ作りは今後もフロントエッジとして取り組んでいきます。

『メルカリ教室』やコンビニ各店舗との連携など、オフラインでの活動も目立つメルカリ。その背景には、安心感や信頼感をオフラインでも広げ、オンボーディング体験を良くしたいという思いがある。

野辺『メルカリ教室』は、不要品をメルカリで売れるようになることをゴールにした教室で、メルカリの基本操作から出品〜発送の流れ、売上金の使い方などを講師がお伝えしています。その結果、実際に日常的に出品するようになる方が非常に多いサービスとなっています。

今後は、売れた商品を非対面で発送できる『メルカリポスト』や、新宿マルイ本館2階にオープンしたフラッグシップストア『メルカリステーション』ではタッチポイントとしての機能を展開し、オフライン側も含めて施策を展開していきます。

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どこの企業も喉から手が出るほど欲しいデータが膨大に

メルカリには、約1,800万のユーザーが商品の閲覧やお気に入り登録をした行動データや、商品の値引きや購入などの取引を行ったデータが眠っている。そのデータ件数は、実に数十億件の規模に及ぶ計算になる。このデータを活用するために力を入れるのが、他企業との連携だ。

野辺メルカリは、サービス上での取引データや価格データ、購入者や出品者の属性データなどを持っています。中古品を販売するビジネス、つまり“二次流通”では、LTVの比較的高い商品もあれば、大きく価値が毀損する商品もある。

これがなぜ生じるのか、データを共有して分析することによって、メーカーの商品開発や、一時流通での購入活性化に役立てていきたいと考えています。さらに一次流通企業やメーカーとデータを繋いで、商品のライフサイクルを可視化していこうという試みも行っています。現状ではこうした試みを行うために、パナソニック、アイスタイル、マルイとの連携が進んでいる状態です。

また出品体験を良くする上でも、この一次流通データとカタログデータを連携させたら、購買チャネルや商品情報の正確性が担保されます。また二次流通データを一次流通にフィードバックすることで、データを活用したさまざまなサービスが作られる可能性も出てくるでしょう。

もちろん事業開発の手も緩めない。2020年2月にはNTTドコモとの業務提携を発表。初めての本格的な業務提携として、多くの注目を集めた。

野辺メルカリの累計流通数(GMV)は現在6,000億円近くに到達し、dポイントのGMVは2,000億円。合計8,000億円規模のポイントが一体的に使える世界を構築し、データを連携して相互に使うことによって、シナジーを生み出して生きます。

ユーザーのアカウント連携は2020年4月からスタートしましたが、すでに500万カウント以上の連携が進んでいる状況です。このスピードは尋常ではないと実感しています。

1,800万近くの月間利用者数(MAU)に対してID連携が進んでいけば、データを使った取り組みがより加速するでしょう。

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経営コア人材だからこそ、新規事業へ

業務提携で並ぶビッグネーム。これだけでも十分なインパクトがあるが、メルカリは新規事業をまた新たに加速させしようとしている。お待ちかね、『新ソウゾウ』の話だ。

2015年から2019年には、『旧ソウゾウ』が存在。地域内での不要品販売を促進する『メルカリアッテ』や、現在も好調な『メルペイ』、バーコード出品ができる『メルカリカウ』などの新規事業を生み出したグループ会社だ。『旧ソウゾウ』と『新ソウゾウ』は、まったく違う会社だという。その違いとは何か。

野辺『旧ソウゾウ』は、メルカリ級の事業を作るための組織として立ち上げました。結果的にメルカリ級になった事業はありませんでしたが、『バーコード出品』や『AI鑑定』などの機能はメルカリ内に吸収され、メルカリ自体の成長に役立てられています。

そして新規事業にチャレンジした人材は、結果的にメルカリの経営コア人材として迎え入れました。現在のメルカリは、『旧ソウゾウ』で重要な役割を担っていたメンバーが支えているのです。

しかし残念ながら、『新ソウゾウ』で取り組む事業はまだ公にできません。ただ、『新ソウゾウ』の取締役CTOにメルカリCTOの名村卓、取締役にメルカリ代表取締役CEOの山田進太郎が就任するように、メルカリ内の経営コア人材があえて新規事業に飛び出していきます。

経営コア人材だからこそ新規事業にチャレンジし、その立ち上げを推進していく。そして次の人材を経営のコアとしてしっかり育てていく。そんな流れをメルカリ全体で作っていきたいと考えています。

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新たな領域「CtoBtoC」とは?

経営コア人材が、新規事業にチャレンジする。では、メルカリは将来的にどのようなアングルを取ることがありえるのか。

野辺これが新規事業になりえるアングルです。現在のメルカリが取り組んでいるのは、この図の左下に当たる「有形資産のCtoCマーケットプレイス」。将来的にさらに事業を成長させるためには、新たに3つの領域を捉える必要があります。

1つ目の領域は、無形資産×CtoC。サービス、権利、スキル等を同じCtoCマーケットプレイスでやりとりする事業が検討できます。またゲームソフトやDVDのダウンロード型コンテンツなど、現物からデジタルコンテンツに移りつつある領域の権利売買も対象になるでしょう。

2つ目・3つ目の領域は、不動産や自動車など、消費者同士でも取り引き不可能ではないものの、扱う商品の専門性が高いため、他者の仲立ちが推奨されるような、有形資産×CtoBtoC、無形資産×CtoBtoCの領域だ。

野辺有形資産×CtoBtoCの領域は大きなポテンシャルを秘めています。CtoBtoC領域の問題は、事業者が負っている在庫リスクが取引価格に転嫁され、結果的に消費者が支払うコストが増加しやすいこと。

自動車販売であれば、自動車本体の輸送や名義変更手続き、自賠責保険への加入などが必ず付随します。これらのような他者が介在しているサービスを、消費者が選択制で検討できるようなマーケットが生まれてもおかしくありません。

そして無形資産×CtoBtoC、つまり金融サービスの領域も金融業者が仲立ちしている業態なので、CtoC化が図れるはず。認可や制約が多く最もハードルが高いですが、テクノロジーをベースにメルカリ・メルペイが連携し、新事業・サービスを生み出せる可能性があります。

これらの領域に海外という軸も掛け合わせたら、メルカリにはさらにビッグインパクトを出せる領域があると考えています。これを実現するため、新規事業チーム・人材の強化がメインの大仕事です。

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「ビジネスユニット型組織」が、機動的に新規事業を生む

新規事業を作るチームや人材を育成するため、メルカリでは「ビジネスユニット型組織」を形成し始めている。

野辺メルカリは大きな組織だと思われがちですが、実際はテーマ別にビジネスユニット化しています。ひとつのテーマに少人数のチームが一気通貫で関わることで、迅速な行動や意思決定が行いやすいのが利点です。

PJ Leadのもと、BizDevからAnalytics、PdM、エンジニア、Ops、マーケティングが一通りのファンクションを作成・検討し、PoCまで実施。そして事業化判断が行われるタイミングで、人員リソースを大きく貼ります。

今回の『新ソウゾウ』が取り組む領域は、私のNewBizチーム内の組織が事業会社化したもの。メルカリ・メルペイ内の人材に新ソウゾウに移ってもらい、より新規事業にフォーカスしてもらいます。また事業側だけでなく開発体制でも、このようなMicro Dicision化、Micro Service化を進めています。

メルカリから飛び出して新規事業を推進していく『新ソウゾウ』や、メルカリ内の新規事業組織では、まだ見ぬ事業を担う人材を募集している。

野辺メルカリのバリューは、「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」。Go Boldなチャレンジができるような目線が高い方を強く求めています。メルカリ内にはプロフェッショナルなスタッフはすでに多く揃っていて、All for Oneでやれる組織体です。

しかしGo Boldのチャレンジができる組織になるには、Go Boldな思いを持っていて、実際に行動できる方が必要です。先ほどのようなビジネスユニットを任せて、大胆なチャレンジをし、PoCまで成長させられる人材を揃えていきたいと考えています。

メルカリは成長に向けた投資を加速し、大手企業との業務提携により、ネットワークの活用が進んでいる状態です。さまざまな観点から注目されやすく、社会的なインパクトや価値感を創造できるやりがいもあります。そしてMAU1,800万人の状態からサービスをスタートできる環境です。最終的に自分で事業をやる際も、メルカリの人的ネットワークは大きな価値になるでしょう。

とはいえ、入社してすぐに新規事業に携われるのか。会場から飛んだその質問に野辺氏はこう答えた。

野辺入社時期に関係なく、新規事業に関われる可能性は十分にあります。例えばある事業は、アイデアを持ってきた新卒社員が中心となって進行中です。

新規事業にチャレンジしたい人にとって、こんなにいい環境はないんじゃないかと私は思っています。アイデアの持ち込みも大歓迎。ぜひメルカリの大胆なチャレンジに参加してもらえたら嬉しいです。

事業拡大の手を緩めないメルカリの姿を、様々な角度から知ることができたこのセッション。CtoCマーケットプレイスとしてのプラットフォームから得られる膨大なデータの活用や、メルペイとdアカウントを連動させた決済基盤など、メルカリだからこそできる、メルカリでしかできない、そんな事業創造のパターンも多くあるはず。

新規事業を「どうせやるなら大胆にやりたい」。そんな想いを持つあなたにおそらくぴったりの環境が、メルカリそして『新ソウゾウ』にあるようだ。

こちらの記事は2021年03月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

金指 歩

フリーライター。信託銀行や証券会社、ITベンチャーを経て現職に。主に個人・法人のインタビュー記事、金融関連記事を執筆。

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