連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

ALL STAR SAAS FUND厳選!製造・産廃の業界をDXするスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート

登壇者
楠田 司

2015年より、JAC RecruitmentにてIPO前後のWEBスタートアップ特化の人材紹介チーム立ち上げ時に参画。主にVCキャピタリスト、エンジェル投資家との連携をおこないコンフィデンシャル求人を対応。2019年9月にALL STAR SAAS FUND、Talent Partnerに就任。投資先企業のハイクラス人材採用支援。SaaSスタートアップ企業にてCXO、VPを目指したい求職者向けのキャリア構築コミュニティ、SAAS TALENT NETWORKを運営。

細井 雄太
  • ものレボ株式会社 CEO 

「世の中のほとんどは第四次産業革命は大企業の工場から始まると信じているが、真実は無数の中小工場から有機的に始まる」
大学卒業後、アイシン精機(株)で技術開発や生産ラインの企画・立上げに従事。日米での実務経験を経て”トヨタ生産方式”という日本のノウハウと”デジタル”というアメリカのテクノロジーが、多様化する社会が必要とする新しい製造業の形を創ると確信し、2016年ものレボ(株)創業。

近藤 志人
  • ファンファーレ株式会社 CEO 

1991年生まれ。美大出身のUXデザイナー兼経営者。crewwにて大手企業の100件以上の新規事業創出に関わった後、リクルートにて組織開発・大規模プロダクト開発などを経験。その後、2019年ファンファーレを創業。AIを活用した廃棄物業者向けの業務支援サービス「配車頭」を提供。

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「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

今回は、 SaaSベンチャーに特化したVCである、ALL STAR SAAS FUNDとのコラボレーション企画として、同社の投資先のみが集まる限定回を開催した。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、ものレボ株式会社、ファンファーレ株式会社の2社(登壇順)だ。ALL STAR SAAS FUNDのタレントパートナー 楠田氏も登壇し、パネルトークディスカッションも開催した。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY RYOTARO WASHIO
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ALL STAR SAAS FUND
起業家とともに、100年続くSaaS企業をつくる

ALL STAR SAAS FUND

ALL STAR SAAS FUNDは、SaaS企業への投資・育成に特化したVCだ。資金面のサポートだけでなく、「人」に重きを置いた支援プログラムも充実。事業フェーズに合わせた採用や組織づくりの支援を実施している。

また、セールスやイネーブルメント(セールス人材の育成)、カスタマーサクセスなど専門分野での経験とノウハウを豊富に持つSaaSのスペシャリストが公式メンターとして参画し、投資先企業の成長を加速させるための支援を行っている。その他、一般公開イベント・セミナーなども定期的に開催し、 SaaS業界全体の成長に繋げるための取り組みも積極的に実施している。

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ものレボ
工場の製造工程をデジタル管理し、「見える化」する

ものレボ株式会社

最初に登壇したのは、工場の製造工程をデジタル管理する『ものレボ』を開発・運営している、ものレボ代表取締役CEOの細井雄太氏。

冒頭、細井氏は同社が掲げる理念について説明した。

細井我々は「日本発ものづくり革命」を理念に掲げています。会社を設立する以前から「なぜ日本からGAFAのような企業が生まれないのか」疑問に感じていたんです。「どの領域なら日本は世界と戦えるのか」と考えたとき、やはり製造業だろうと。

かつて世界を席巻した日本の製造業の輝きを取り戻すため、ものレボを立ち上げました。

『ものレボ』は、少量多品種×短納期が求められる製造業のスケジュールや在庫、受発注などの管理を一元化するSaaSだ。

ユーザーが品番・数量・納期を『ものレボ』に入力するだけで、簡単に生産計画表を作成。各工程に担当者の割当が行える他、外注工程のスケジュールも一元管理できる。

タブレットやスマートフォンから操作できるため、気軽に現場で利用することが可能。製造現場での使用に特化してデザインされており、自動車や航空機、医療、建設など幅広い業界で利用されている。2021年11月時点で、中小製造業を中心に130工場が導入している。

2021年10月には、ALL STAR SAAS FUNDなどから、総額1.8億円の資金調達を実施。「セールス、カスタマーサクセスのメンバーを募集しています。製造業にかける我々の想いに共感できる方はぜひご連絡ください」と語り、ピッチを締めくくった。

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ファンファーレ
廃棄物業界の人手不足を解消する

ファンファーレ株式会社

続いて登壇したのは、ファンファーレ代表取締役CEOの近藤志人氏。同社は、産業廃棄物を回収する際の配車ルートをAIによって最適化する『配車頭』を開発・運営している。

産廃業界には、一般廃棄物と産業廃棄物を収集する企業が存在する。一般廃棄物とは、家庭から出るような少量の廃棄物のこと。産業廃棄物は、工場や建設現場から何トンと大量に出る廃棄物のことだ。

近藤氏によると、高度経済成長期に入った1960年代から1980年代にかけて産業廃棄物の量が5倍に増加。全国で産廃業者が立ち上がったものの、業界を支えた多くの人材が現役を退きつつあり、現在では深刻な労働人口の不足に悩まされている。産廃業における業務負担を軽くすべく、配車担当の業務効率化に目を向けた。

近藤生産性を高めるためのキーマンは、配車ルートを作成している配車担当です。産業廃棄物の回収ルートは、日々変化します。なぜなら、工場の生産内容の変更や建造物の竣工に伴って、産業廃棄物の内容や回収場所が変わるからです。そのため、毎日異なる配車ルートを作成する必要があるんです。

そのため、配車業務も職人芸と言えます。現場のドライバーを何年も経験し、配車担当になった上で、さらに技術を身に着けなければなりません。アナログな作業が多く、多くのステークホルダーを巻き込みながら仕事を進めるため精神的な負荷も大きいのが現状です。

そういった課題に向き合うのが、『配車頭』だ。配車に必要なデータを入力すると、瞬時に配車表や効率的なルートを出力。近藤氏いわく「1日(約7時間)かかっていた配車表の作成作業が、たったわずか3分ほどででき、誰でも受注可否を判断できるようになる」という。

配車効率を向上させることで、新たな人員を確保することなく、より多くの配車を実現。売上の増加もサポートする。

2021年9月に、ALL STAR SAAS FUNDなどから合計約1.5億円の資金調達を実施した同社。「エンジニアの他、業務コンサルの経験を持つ方やカスタマーサクセスなど募集しています。より詳しく知りたい方はぜひ採用サイトをご覧ください」と参加者に呼びかけた。

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ニッチ産業の開拓は「信頼関係の構築」から

ピッチ終了後はALL STAR SAAS FUNDの楠田氏も交えて、パネルディスカッションが行われた。今回は、製造・産廃業界をサービスの対象とするデスクレスSaaS(製造現場など、デスクやPCが無い環境での使用に特化したSaaS)を展開する2社が参加したことから、楠田氏から「デスクレスSaaSならではの課題や苦労は何か?」と質問が飛んだ。

近藤産廃業界に携わった経験を持つ人はあまりいないので、ユーザーを理解したり、当事者意識を持ったりするまでには時間がかかります。特に採用候補者はIT企業など、デスクがある環境で働いている人がほとんどで、デスクレスSaaSを利用するユーザーの理解は直感的にしずらいですね。

近藤氏の発言を受けて、細井氏も「サービスの対象となる業界に対する理解がある人材が欠かせない」と語る。

細井製造というバーティカルの中の現場管理という、とても狭い領域を正確に打抜く必要があります。打抜く武器がすべて物理解決でないところ(論理解決が必ず入る)が頭の使いどころです。それを認識したうえでソリューションに落とし込まなければならないので、業界を深く理解している人材が社内に必ず必要ですね。

続いて、「現場で活用されやすいデスクレスSaaSの特徴はなにか?」という問いに対して、細井氏は「馴染みやすさ」を挙げた。

細井デスクレスSaaSは、毎日現場で使用されますが、多くのユーザーにとっては「これまで使ったことのないもの」。少しでも違和感があると、すぐに使ってもらえなくなってしまいます。「気がついたら業務の一部になっていた」と思われるくらい、現場に馴染めるかが重要だと思います。

さらに、サービス導入において重要な信頼関係の構築についても触れた。

細井セールスの段階から信頼関係を築くようにしています。たとえ、お客様の細かい現場の状況を把握できていなくても、話を聞きながら課題を特定する。その上で一歩先を行く解決策を提示することで「こいつ、わかっとるな」とお客様に思っていただき、信頼関係を築いていくことが重要です。

近藤氏も、同様に「仲間」だと思われることの重要性を掲げた。

近藤外から来た“IT屋”ではなく、仲間だと思われることがすごく大事ですね。我々の場合、サービスを導入すれば終わりではなく、組織改革を伴うことが多い。当然、業務コンサル寄りになるのでお客様に温かく受け入れてもらわなければ、価値を提供できませんから。

最後に、10年後、20年後のマーケット予測が語られた。

近藤 産業廃棄物の回収を依頼する側として、建設現場の若い世代が増えています。そういった世代は美容院も飲食店もWebサービスやアプリを使って予約しています。日常生活はITによって変わっているのに、なぜ自分の業務はアナログなままなのか、疑問を持っています。

産廃業界はデジタル化の余地が多くある業界とも言えるので、がデスクレスSaaSは大きく成長すると感じています。

細井氏もまた「デスクレスSaaSが当たり前の選択肢になるのではないか」と語る。

細井ハードウェアで言うところのロボットのように、デスクレスSaaSは仕事をこなすための相棒になると思います。例えば、製造現場において新しい工場をつくったら、まず『ものレボ』を導入するのが当たり前の選択肢になる。そんな未来にしていきたいですね。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年12月02日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

鷲尾 諒太郎

1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。

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