こだわってつくられた組織カルチャーは、マネできない──HRの面白さは無限大。
組織支援のプロ金田氏とhacomono本多氏に、極意と実践例を聞く

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インタビュイー
金田 宏之

組織人事コンサルティングファームにて大規模組織の人事制度設計や会社合併に伴う人事制度の統合、監査法人や大学法人など、様々な組織の人事制度設計を手掛ける。制度設計の他に、プレミアムブランドを支える人材の採用・教育研修・評価等の人事マネジメント全般の仕組みづくりにも取り組む。2014年、スタートアップ向けの組織人事コンサルティングに特化したインプリメンティクスを創業。クライアントのMission実現に向けてハンズオンで支援中。

本多 将大

ゲーム会社で海外子会社CEOを務めた後、2018年にSansan株式会社へ入社。Global Sales Managerとして海外事業の成長に貢献。2021年にhacomonoに入社し、Marketing、Salesを経て、現在はHR Managerとして全力投球中。

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採用が上手いスタートアップと言えば?そう聞かれば、すぐに数社が頭に浮かぶ。そんな読者が多いことだろう。だが往々にして、そうした企業も組織拡大にこそ、最も苦戦している。FastGrow編集部でもこんな悩みを聞くことが少なくない。

言い換えるなら、事業成長を実現しているスタートアップは増えてきたが、組織成長も同時に順調に進められているスタートアップは多くない。ユニコーン企業の数が米中に比較して明らかに少ない現状の原因が、この点にもあると言える。

人材が少ない、あるいは人材の流動性がそもそも小さいといった社会の課題がよく指摘されるが、それだけだろうか?いや、スタートアップ側の受け入れ態勢も、まだまだ改善の余地があるはずだ。この記事ではそんな課題に対する挑戦を追う。

金田宏之氏は、人事領域に強みを持つ経営コンサルタントで、スタートアップの支援を主な役割としている人物だ。そして、同氏がいま支援するhacomonoが、この1年弱の間に約30名から約100名の組織へと変貌した。同社HRマネジャーである本多氏とともに、組織課題に先回りしてスタートアップの成長を後押しする方法について解き明かしていきたい。

ぜひ、属している組織が持つ問題について、どのように解決できるかを考えながら、読んでみてほしい。

  • TEXT BY TOSHIYA ISOBE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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急成長の裏に、組織課題が満載。
金田氏の支援が、スタートアップに不可欠な理由

金田氏をご存知の読者なら、「著名企業の組織づくりを支援してきた、スタートアップ人事組織のプロフェッショナル」だというイメージがすぐに浮かぶだろう。現在もスタートアップ数社と契約を結び、スケールに向けた重要な役割を担っている。

そんな金田氏のこだわりは、「人事コンサルではなく経営コンサルであれ」という考え方にある。どういうことだろうか?まずはその仕事の哲学をお聞きしたい。

金田私の仕事のミッションは経営者の考えを理解し、具現化することで経営者をサポートすることです。

たしかに、個人的に経験が長いのは人事領域ですが、あくまでも「より良い経営で事業を伸ばしていくためのアプローチ」として、人事や組織、会計、システムなどが存在するわけです。こういう認識のもと、目的を履き違えないようにいつも注意しています。

その支援が中途半端なものにならないよう、契約先は5社ほどに絞っている。hacomonoやモノグサなどの急成長スタートアップばかりだ。

支援内容も非常にきめ細かい。組織づくりの上流となる戦略や採用、人事制度設計を考えるだけでなく、「○○さんがキャリアの悩みを抱えている」あるいは「選考中の○○さんの評価が分かれている」といった現場にまで入り込む。

金田例えば「○○さんが伸び悩みを抱えている」といった声があったとします。それは○○さん個人の問題でもありつつ、組織の問題かもしれません。私の責務は、「今この組織フェーズでこうした悩みが表面化するということは、次のフェーズに到達するまでに□□な課題が生まれる、ということかもしれない」と指摘することなんです。

だから、毎週1回の定例MTG設定は必須とさせていただいています。hacomonoさんでも、最初の大仕事だった人事制度設計がひと段落したときに「MTGの頻度を減らそうか」という話がありましたが、私が強く主張したことで、同じペースを今も保っています。

hacomonoのHRマネジャーである本多氏は、金田氏のhacomonoへの関与をどのように見ているのだろうか。本多氏は金田氏の魅力を大きく3点に分けて挙げる。

本多一つ目は、経営陣に対する人事のコミットメントのとり方、二つ目は先回り力、三つめはCEOに安心を与えていること。この3点が、金田さんのすごさだなと感じています。

まず、経営陣に対する人事のコミットメントについてですが、当社は事業の成長こそ最近は順調ながら、スタートアップですから、まだまだ生き残りを懸けているフェーズです。経営の意識も、ついつい営業をはじめとする事業側に寄りがちになります。ですがそれではいけない、と気づかせてくれたのが金田さんです。

これから事業成長に伴って組織も大きくなり、それによって生じる問題も多数予想される。起こってから対応するのではきっと遅い。そこで金田さんはこれまでのご経験から、企業のフェーズごとに組織に起こる問題について、具体例を出しながら経営陣との週次でかなり多くの時間を割いて伝えてくださっています。

これによって対応できているところが多くあり、とても助かっています。

少数精鋭であるスタートアップに、人事や採用のプロが属していることはあまりない。hacomonoでも、本多氏はもともとセールスマネジャーである。だからこそ、金田氏のような存在が、大きな意味を持つのだ。

本多二点目の先回り力は、先ほどのコミットメントにも重なりますね。hacomonoで打っている人事施策のほとんどが、金田さんが事前に提示してくれた“起こりうる問題”に対処するためのものなんです。先回りする動き方は、我々だけでは当然、実行は難しかったと思います。知見も経験もありませんから。

もう一つ、CEOが安心感を得られているというのも大きいですね。「経営をコンサルティングしている」とおっしゃったことに「そうだよな」とも感じたところなのですが、hacomonoのフェーズで、人事領域の専門家を雇用するのはとても難しいことです。そもそも、スタートアップ界隈の転職市場にはいないのかもしれません。

そんな中で、まさに専門家である金田さんとこのフェーズでご一緒できることに大きな価値があります。例えるなら、経験豊富なCHROがいて、組織について検討や対策を的確に考えてくれているわけです。CEOを始めとする経営陣に、多大なる安心感を与えてくださっています。

多数のスタートアップを見てきた金田氏は、人事領域でまさに起きている問題に対して対処もするし、組織拡大におけるフェーズごとに起きる問題を整理して理解しているため先手を打ってもいる。

スタートアップは、事業の急成長が常に求められる場である。したがって、組織も同時に急成長させる必要があり、必ず“成長痛”に直面する。言い換えるなら、組織をスケールさせることができなければ、スタートアップとしての事業成長も続けられないのである。

だから本来的に、人事や組織に関する施策は何よりも重要だ。だが、本多氏が指摘するように、担える人材はほとんどいない。つまり、多くのスタートアップにとって金田氏の支援は、喉から手が出るほど欲しいものなのだ。

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スタートアップ頻出つまづきポイント「マネジャーの任用失敗」

ここからもっと具体的な話に切り込んでいく。

hacomonoで最近、組織面での大きな変化があった。代表取締役CEOの蓮田健一氏が、そのリソースを採用にほぼ全振りするようになったのだ。当然、金田氏の存在が大きな影響を与えている。

金田私は、CEOのリソースの全部を採用にかけてもいいと思っています。CEOが事業に注力すると、その反面、組織づくりは自然と弱くなる。

全部は難しくても8割くらいは採用にかけてほしいなと思い、支援先ではそのように伝えています。そして実際に、それくらいやれているところは、事業もうまくいっています。

本多2021年11月に、蓮田がセールスを担うのをやめ、リソースの7~8割を採用に充てることに踏み切りました。

もちろん、きっかけはいろいろあります。ですがその一つに、金田さんのご指摘があるのは間違いありません。

蓮田氏はALL STAR SAAS FUNDのPodcastで、Coral CapitalFounding Partner & CEOを務めるJames Riney氏とのランチが決め手になったと明かしているが、その前から金田氏とも議論をしていた。しかも、セールスを降りた翌月、過去最高のMRR(Monthly Recurring Revenue)が更新されたというオチまでついているから驚きだ。

事業ではなく組織にリソースを振り向けることで、結果として事業がしっかり伸びることにつながる。事業が得意なCEOが聞けば、何とも皮肉な話だと感じるかもしれないが、スタートアップにおいてはやはり、組織こそが重要ということだろう。

そんな金田氏に、「スタートアップが共通して陥りやすい失敗にはどのようなものがあるか」と聞いてみた。

金田多くのスタートアップがつまづくことがあります。それは、マネジャーの任用失敗です。

組織が壊れる原因のほとんどは、“人”です。その中でも、マネジャーが適切にアサインされなかったケースが少なくありません。当のマネジャーは辞めていくし、社内からも悪者扱いされてあまり語りたくない話題となるから、なかなか外には出にくい情報だとは思いますね。

きちんと良いマネジャーをアサインしよう。これは誰でもわかるはずだ。ではなぜこの問題が至るところで繰り返されるのか?そしてどんなことに気をつければよいのだろうか?

金田スタートアップは事業の成長が先に来るため、慢性的にマネジャーが足りない状態が続き、多くのメンバーが何かしらの担当を兼務している状況になります。そんな状況下で起きやすいのが、「少し気になるところはあるけれど、それなりに経験がありそうだから、うちでマネジャーに挑戦してみてもらおう」と考えて採用するパターンです。

採用拡大期には、「今回逃したら、こういう経験者はしばらく採用できないよね」と焦ってしまいがちです。でもたいていの場合、本当は採用面接の時点で何かしらの違和感を持っていたはずなんです。それなのに目先の大変さに負けて、その違和感を無視して、しまいには「多様性があったほうが良いよね」「うちの会社にはない部分だよね」と正当化してしまう。

つまり、根本的には、最初に抱いた違和感を無視してしまうことが、マネジャー任用失敗の問題なのだと考えています。

この話を聞いて肝を冷やした読者も少なくないだろう。組織の人不足を埋めるために違和感を無視してしまう。それが返ってさらなる組織の崩壊を生んでしまう可能性が、大いにあるのだ。違和感には常に、注意を払う必要がある。

また、「いきなりマネジャーとして採用しない」という点も強調された。

金田自分以外のメンバーの力によって一緒に成果をつくっていくことが、マネジャーの仕事です。だから、社内での経験がないのにいきなりマネジャーとしてアサインしても、ずっと現場でやってきたメンバーからしたら「この人誰?」となるのは当然でしょう。

一定期間一緒に働き、きちんと信頼関係を築いてから配置するのが基本です。

最近では、副業で関わる期間や、1日以上をかけて入社前トライアルを実施するスタートアップもある。バリューやカルチャーのフィット感を見極めるために、こうした取り組みをし過ぎてもし過ぎることはない、それがやはり理想なのだ。

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HRの魅力は、圧倒的な「幅の広さ」

このような助言を先回りして受けることで、シリーズAラウンドの調達から1年弱で、30名ほどから100名ほどにまで組織を急拡大してきたhacomono。だが実は、HRマネジャーを務める本多氏は、これまでセールスやマーケティングなどビジネスサイドのキャリアを歩んできた人物だ。

金田氏が「よくある話」と指摘したのと同様に、セールスマネジャーとHRマネジャーを兼務する本多氏。今この仕事に、大きな面白みを感じていると話す。

本多一言で言えば、範囲の広さの違いがすごいですね。「HRとはなにか?」を勉強していると、「HRとは経営である」という言葉によく出会います。実際に、経営と同じ視座で事業に向き合える。この点が、セールスとは大きく異なると感じています。

会社のフェーズによって、やることは大きく変わるのも注意すべき点ですね。今、hacomonoが最も注力しているのは採用です。

この人を採用して、hacomonoが描いている事業計画の達成に資するのか?もし採用計画が未達に終わったとしたらそれはHRの責任であると、チームの一人ひとりが思える状態になっているのか?

こうした問いかけを常に意識しています。それくらい、自分たちが経営と同じ視座で考えるというのは難しい部分でもあり、面白みを感じる部分でもあります。

とはいえ、セールスも「経営者の視座を持とう」と言われないこともない。それだけでなく、「◯◯とは経営」という話は、ともすればどの職種でも言えてしまうことではないだろうか。

本多たしかにそうですが、セールスであれば売上を高めるためにひたすら考えて、活動をやりきることが求められますよね。

一方でHRは、セールスがうまく行くような組織やカルチャーを考える必要があります。同時に、開発チームで描いているプロダクトロードマップとそれに紐づく形であるべきチーム像と必要な人物像を理解する必要もあります。組織が大きくなれば、屋台骨となるコーポレートチームも強化するべく、そういう人たちの要件を整理して組織をつくる必要だってあります。

このように、企業が持つさまざまな機能について理解を深めないと成り立たないのです。この幅の広さは、HRならではだと感じています。

ここでいう幅広さは、単に関わる部署が多いだけではない。一つ一つの部署や機能に対しての深い理解をした上で、HRの活動に落とし込んでいく動きが必要になってくる。この幅広さに加えて深さもあるというのが、HRのユニークなところなのだ。

こうした変数の多さから、事業側の人がHRをやると組織が活性化するなどの話もよく聞く。金田氏はどう考えているのだろうか?

金田HR全体を任せられるマネジャー、つまり採用や組織開発、人事制度構築といったキャリアを歩んできたミドル以上の人物は、そもそも採用マーケットに少ないですよね。なので、「人事部長たる人をどのように採用するか」は、常に大きな課題になります。

以前、ラクスル代表取締役社長CEOの松本恭攝さんが、人事部長をCTOやCPOがローテーションして一定期間で替えるといった類のことをおっしゃっていました。その手法に強く共感しています。もちろん人事は専門領域なのでキャッチアップは必要ですが、社内に通じている人がやるのは非常に合理的です。

松本さんが言うには、例えばCTOがやることで人事評価オペレーションをシステム化したり、CMOがマーケティング視点を取り入れて採用活動をしたり、ということですね(参考記事はこちら)。このような視点をHRに取り入れていくべきだなと思っています。

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360度フィードバックの施策を即決。
hacomonoCEO蓮田氏の魅力

hacomonoは、金田氏の支援をフルに受けながら、多くの施策を進めてきた。数ある施策の中で金田氏にとって印象に残っている施策を聞くと「360度フィードバック」だと回答。これはメンバー同士で評価しあってコメントをしてもらうような取り組みであるが、運用面の負担も小さくないため、取り入れる企業はあまり多くない。

金田ほかの企業に提案しても「今はまだ...」とお茶を濁されてしまうことも多い中、hacomonoでは蓮田さんが、自身と組織の成長のためにやるべきだと即決。その意思決定の速さはすごかったなと思います。

蓮田さんとしては、マネジャーや自分たちが成長しないと、事業の成長についていけないという危機感を持っていたようでした。実際にやってみると、メンバーから改善に繋がる良いフィードバックを得られているようで、今後も継続しようとなってました。

多くの会社が躊躇うような施策をすぐに実行に移し、素直に学びへと転換する姿勢はCEO蓮田氏やhacomonoの魅力だと、金田氏が強調する。

金田360度フィードバックって、結果の良し悪しよりもフィードバックをどう読み取ればよいかが大事です。批判的なフィードバックがあったとして、その意見は間違っていて全体像が見えていないからそうなると考えるのか、こう説明すれば解決できたなと考えるのか、どこまで自分ごと化するかによって捉え方は変わります。

hacomonoさんでのこの制度に、決してやらされている感を誰も出していない。それはカルチャーとして根付いていくと思います。

360度フィードバックを経て、本多氏も変化を感じているそうだ。

本多蓮田はとことん素直な人間で、他者からのフィードバックを真摯に受け止める姿勢を崩しません。常に改善に向けて考えているのを我々マネジャー陣は目の当たりにしています。

実際に、私からもフィードバックさせていただいた内容にあった、「もっと先を見てほしい」という言葉を受けてのことか、今では未来に向けた発言が増えているのも感じています。トップのそういう姿勢を見ると、自分も身が引き締まりますね。

FastGrowが2020年、2021年、2022年と毎年、蓮田氏のインタビューを実施している中で強く感じるのも、この点だ。2020年の取材では、どちらかといえば過去と現在のプロダクト開発が主な話題だった。ところが2021年の取材では、未来を見据えた事業の中におけるSaaSプロダクトの理想形が、そして2022年の取材では、見ている未来が遠く先、約10年後が当たり前に語られるようになった。

そんな蓮田氏の事業上の意思決定について、さらに、本多氏が補足する。

本多蓮田は、普段は深くじっくり思考していくタイプです。ですが、考えていることと目の前に出てきた選択肢がハマったときには、ズバッと行動に移す思い切りの良さがあり、社内で信頼を集める一つの要素になっています。

金田たしかにこうした「すぐに結果が出るわけではない施策」についての意思決定は、経営者によるトップダウンが有効ですよね。伸びるスタートアップは、上手にトップダウンを利用していると感じます。

金田氏によると、“トップダウン”の使いこなし方も、スタートアップの成長を左右する大きな要素になる。

金田これから組織が大きくなる中で、この点は注意もしながら進める必要がありますね。まず注意すべきは、経営チームがメンバー層を無視してやるという見え方になってはならないということ。

一方で、思い切りの良い意思決定が必要な場面も多くあります。大事なのは、それを担うのがだれになるかという点。「会社を伸ばすために今、どうするべきなのか」を、一番長く深く考えた人が、判断していくべきなんです。つまり、経営者でなくても、できることなのです。

“トップダウン”を、杓子定規的に「悪」と思ってはいけない。スタートアップに重要な「スピード」が失われる原因にもなってしまいますから。

スタートアップでは、「“良いトップダウン”が必要不可欠」、そんなメッセージにも聞こえる。蓮田氏はまさにこれを体現しているようにも感じるのだが、実は本多氏も同様に、HRマネジャーとしてトップダウン的に躍動している。もちろん、金田氏のサポートあってのものだ。その具体的な動きもぜひ、見てほしい。

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HRが、会議体も社内報も、クリエイティブに企画する

HR初挑戦の本多氏にとって、金田氏の存在は大きかっただろう。そもそも何から始めればよいかわからない状態から、年間で回す人事制度関連の基本施策、例えば中間・期末評価やOKR等の構築と運用はできつつあるそうだ。その上で、本多氏がこだわりを持って推進しているカルチャー浸透施策がある。驚くなかれ、「会議体のリブランディング」という、一見HRらしくない施策だ。

本多全社員が集まる月初会のリブランディングを実施しました。「hacomonoらしさをどのように表現するか?」を必死に考え、ネーミングやクリエイティブ、コンテンツにこだわりを表現しようとしました。

<h1>会議のロゴマーク(株式会社hacomono提供)

この会議体は「<h1>会議」と名付けられている。hacomonoの1番であることや、htmlにおける最上位の見出しのタグであるh1から転じて最も重要なテーマを指すという意味合い、そして社として1番伝えたいこと、といった複数の意味を込めている。

こだわりをもってつくられたロゴも印象的だ。全体的に要素が均一で右肩上がりに構成されており、全メンバー揃って上を目指す想いが込められている。

<h1>会議のロゴマークのデザイン解説(株式会社hacomono提供)

金田かなり前の話ですが、蓮田さんに「hacomonoの強みは何ですか?」と聞いたところ、「デザインの力です」と返ってきました。プロダクトだけでなく、このような社内ミーティングの場でも社内で活かされているのは面白いですよね。

hacomonoのデザイン力と言えば、シリーズBラウンドの資金調達発表リリースで、ビビッドな服装のアスリートたちが並んだクリエイティブが異彩を放ったのは記憶に新しい。

だが、こだわりはもちろんこうした「見た目重視のもの」ばかりでは決してない。会の中で行うコンテンツの内容も、本多氏を中心に企画している。

本多<h1>会議のコンテンツを、私が主導していくつも新しく企画しました。

そもそも<h1>会議の目的は「全社員に事業進捗を伝え、主要KPIに対する情報格差をなくすこと」に置くべきだろうと考え、全体的に刷新したんです。まず、事業上重要なKPIといった各指標がどうなっているのかを、全て公開して説明しています。指標以外にも、事業提携や資金調達などの社内外が絡むイベントを逐一しっかりと共有したり、CEOの頭の中についてじっくり発表してもらったりと、一連の流れにこだわりを持ってつくっています。

また、新入社員の紹介や交流を行う時間も意識的に長く入れています。今は採用を大きく強化しており、どんどん新しいメンバーが入ってきている状態。ですがリモート勤務も多く、交流の場は少ない。そんな中でも温かい雰囲気で迎えられるようにと、自己紹介と交流の時間を<h1>会議でも長くしっかり設けています。

ほかにも社内で行う施策において、ロゴやバナーをあえて制作している事例が多い。例えば、社内報的な立ち位置として2つのメディア。2021年に新しく導入した『hacomono broadcast』という配信コンテンツで使用されるバナーは、「心が動いてほしい、何かを感じてほしい」という想いから、心電図のようなモチーフを採用する。

2021年に新しく導入した『hacomono broadcast』のバナー。映像配信やアーカイブ動画といったコンテンツの形で月1回程度、経営陣が対談形式で社員向けにメッセージを発信する。「心が動いてほしい、何かを感じてほしい」という想いから、心電図のようなモチーフを採用している(株式会社hacomono提供)

一方で全社員がYouTubeを使って社内向けに情報や近況を共有する『hacomono times』では、メンバーや組織に注目するという意味を込めスポットライトをイメージしたロゴを制作した。

動画による社内報的メディア『hacomono times』のロゴ。humanのhとteamsのtでスポットライトが照らされる、という様子を描いている(株式会社hacomono提供)

さらに、ミッション「ウェルネス産業を、新次元へ。」をメンバーが率先して実践しようとする企画として紹介してくれたのが『Run for』だ。メンバーがランニングで消費した総カロリー分の給食を、開発途上国へ寄付する取り組みだ(プレスリリースはこちら)。数十人のメンバーで、累計走行距離は950㎞に及び、3330食の寄付につながった。この企画でもロゴがつくられ、各メンバーを後押しした。

『Run for』のロゴ。スピード感を残しつつ、鋭さをなくすことで「きつい」「つらい」というイメージを軽減。「for」を優しさも感じられる手書き文字とし、先進国も途上国もつながっていることを表現するため緑(陸)と青(海)のグラデーションに(株式会社hacomono提供)

さて、これらは果たして、HRの仕事なのだろうか?そんな声も聞こえるようだが、そうした囚われがないのも、本多氏が担当しているメリットといえるだろう。

本多新しい企画をすることが、そもそも好きなんですよ。

カルチャー浸透がうまくいっているかどうかって、今後必ず起こる課題の一つだと思うんです。

急激に人が増えている状態でカルチャーがうまく浸透できなくなるケースは少なくないと、金田さんからもお聞きしています。そんな状況で、これまで培ってきたhacomonoカルチャーを、新しいメンバーに対してもしっかり伝えることができるか。これは、永遠のテーマでもあり、考えるだけでわくわくする大好きな仕事のひとつですね。

金田会議体や社内報についてHR担当が考えるとしても、「リブランディングします!」なんて話はあまり出てきません。そこは本多さんが、セールスやマーケティングのバックグラウンドを持っていて、専門性があるから生まれる発想なんだと思いますし、それこそがHRに異なる職種の人をローテーションさせる意義の一つだと感じています。

私は課題こそ指摘できますが、このような企画の発想は出てこないです。なので私も、たくさん学ばせていただいていますね(笑)。

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「言語化できても、マネできないこと」が、カルチャー

ところで、前段で本多氏が語っていた「カルチャー浸透」について掘り下げて考えてみたい。同じ空間で長い時間を過ごせていた状態から、人が増えることで暗黙知化されていた共通の考えが失われていく。カルチャーが根付いておらず、組織としてばらばらになってしまうシナリオとして、こうしたことが想像できるだろう。そうならないためにできることとは何なのだろうか?

金田重要なのは、背景の共有です。先ほどKPIに関する情報格差をなくすための共有をしているという話をされていましたが、今後は数値以外のさまざまな意思決定の背景を丁寧に説明することが、カルチャー浸透に必要でしょう。

組織について長く深く考える中で金田氏は、「マネできないことがカルチャー」であるとの考えに行き着いたと語る。

金田「カルチャーは言語化できない」と言われていますが、どちらかというと「言語化できてもマネすることはできないことがカルチャー」だと思うんです。

hacomonoさんだったら、クリエイティブへのこだわりが、カルチャーではないでしょうか。言語化自体はできるけれど、同じレベルのものを他社がやろうとしてもできない。そういったことは、日々一緒に仕事する中で醸成、浸透していくものなのです。

たとえばSmartHRでは、「ダサいことはしない」というカルチャーが根付いている(取締役ファウンダー宮田昇始氏の会長退任ブログなど参照)。施策アイデアを出すときに「これはダサいからやめよう」という言葉が日常茶飯事に出てくるそうだ。だが、バリューなどにその基準が明記されているわけではなく、暗黙の価値基準としてワークしている。

他の会社が同じように、「これはダサいね」と話して避けていたことがあったとしても、そのダサさの対象や、それによって得られる成果は、SmartHRの場合と大きく異なるだろう。そうした、「言語化できてもマネできないこと」が、その組織固有のカルチャーなのだ。本多氏も頷きながら補足する。

本多蓮田の自然な言動そのものがカルチャーなんだと思っています。そして私の役割は、それをいかにしてクリエイティブに落とし込み、より一層浸透させていけるか、というところ。

組織が大きくなるにつれ、蓮田の生の声に社員が触れる機会が減っていきます。だから、意識して企画化し、カルチャーとして浸透させていく必要があると考えています。

最後に、hacomonoが持つ良さについて金田氏に聞いてみた。

金田簡単な言葉で恐縮ですが、人として素晴らしい人が多いですよね。蓮田さんの素直さについて先ほど触れましたが、本多さんをはじめとしてほかのメンバーも同様に素直で、事業に向き合う姿勢が素晴らしい。

急激な事業成長についていくのは大変だと思いますが、その状況に立ち向かいながら、むしろ自分たちの成長を楽しんでいる。それはメンバーからマネジャーまで、いい人たちを採用できているからだと思います。

本多ありがとうございます(笑)。ただ同時に、いい人というだけで終わらないというのはこれからの課題でもあります。今後の成長を見据えていろいろな会社さんとのお付き合いが増えていく中で、さまざまなプロフェッショナルと真剣に議論しあい、多少バチバチしても物事を進められるくらい、一人ひとりが個人としてレベルアップしていきたい。これが今後の課題ですね。

hacomonoCEOの蓮田氏が体現する素直さやクリエイティビティが随所に感じられ、まさにカルチャーとしての差別化になっているのが見て取れたインタビューだった。金田氏が立ち会ってきた数々の組織課題に先回りし、スピーディーに施策を打つことで、問題が問題として生じないようにさせるというアプローチ。まさに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というビスマルクの言葉が思い出される。

近い将来、hacomonoがロールモデルとなり、組織としても注目を集めるかもしれない。

こちらの記事は2022年04月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

磯部 俊哉

写真

藤田 慎一郎

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