連載Ideal Entrepreneur ──成功する起業家の要諦

「起業家っぽさ」はなくてもいい。REAPRAが研究・実践を重ねる、「理想的な起業家」の要諦

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インタビュイー
諸藤 周平

株式会社エス・エム・エス(東証一部上場)の創業者であり、11年間にわたり代表取締役社長として同社の東証一部上場、アジア展開など成長を牽引。同社退任後2014年より、シンガポールにて、REAPRA PTE. LTD.を創業。東南アジアおよび日本を中心に、数多くのビジネスを立ち上げる事業グループを形成すると同時に、投資活動および独自のハンズオン支援をおこなう。個人としても創業フェーズの企業に投資し多くの起業家を支援している。1977年生まれ。九州大学経済学部卒業。

鹿谷 幸史

マッキンゼー・アンド・カンパニー、株式会社ミクシィを経て、REAPRAに入社。経営企画部にて主に研究と実践を一般化する業務をリード。

三浦 豪

外資系コンサルティング会社のPwC Strategy& (旧ブーズ・アンド・カンパニー)を経て、2017年11月にREAPRA入社。経営企画部にて、自社の戦略策定、投資先のハンズオン支援や一般化業務に携わる。

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Research(研究)And Practice(実践)の略称を社名に持ち、東南アジア及び日本で活動するベンチャービルダーREAPRA PTE. LTD.グループ(以下、REAPRA)。

彼らと共に、 0→1フェーズを駆け抜けた先達であるアントレプレナーにインタビューし、REAPRA独自の概念「Ideal Entrepreneur(理想的な起業家)」像を探る連載企画。今回は、特別に「Vol.0」と題し、REAPRA・CEOの諸藤周平氏、経営企画の三浦豪氏、鹿谷幸史氏の3名に話を伺った。

「Ideal Entrepreneur」という概念が生まれた背景、概念に込められたREAPRAの思想、そしてその研究・実践の現在、を明らかにする。

  • TEXT BY MASAKI KOIKE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「起業家っぽい人」でなくても、「理想的な起業家」へと変わりうる

本題へ入る前に、今回の連載企画で読者の方に、ぜひ留意していただきたい点があるそうですね。

REAPRA CEO 諸藤周平氏 株式会社エス・エム・エス(東証一部上場)の創業者であり、11年間にわたり代表取締役社長として同社の東証一部上場、アジア展開など成長を牽引。同社退任後、2014年より、シンガポールにて、REAPRA PTE. LTD.を創業。

諸藤REAPRAでは、現時点で事業を興す意志がない人でも、複雑性の高い市場での起業にフィットする可能性があると考えています。もともと起業に全く興味がなかった方が、内発的動機に突き動かされて起業し、REAPRAと一緒に「Ideal Entrepreneur(理想的な起業家)」(以下、「IE」)への変容に日々挑戦し続けている例もあります。

いわゆる「起業家っぽい人」でなくても良いと。IEとはどういった概念なのでしょう?

諸藤起業家とその事業の成長をサポートするために、REAPRAが研究・実践する概念です。

とはいえ、初めからIEのすべての資質を高いレベルで兼ね備えている必要はありませんし、そんな人はほぼ皆無でしょう。REAPRAは、ハンズオン支援によって、起業家の成長や変容を志向する組織です。いま持っている素質だけで支援可否を判断し、優秀な起業家の選抜を価値創出源とするスタイルは取りません。

「IE」の資質は、後天的に身につけていくものなのですね。

諸藤私自身、もともと「何者でもない自分」という自己認識がありました。しかし、起業後にさまざまな経験を積んでいくにつれ、苦手なことを克服し、変容してきた感覚を強く持っている。だから私たちは「人の可塑性を信じる」という前提を共有しているんです。

起業家が経験学習を通して熟達し、IEに変容していく過程に、注意深く、根気良く向き合う──そういったスタイルで起業家のミッション・ビジョンの達成を支え続けるために、我々が存在していると思っていますし、それがREAPRA独自のハンズオンのコンセプトです。

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シリコンバレー型モデルはとらない。REAPRAが取り組むのは「複雑性の高い領域」

REAPRAは、どのような起業家や企業に投資や支援をしているのでしょうか?

諸藤中長期的な拡大が予見されていて、かつ複雑性の高い市場で、単純化することなく経営に取り組もうとしている、あるいは取り組んでいる起業家および企業です。

「複雑性の高い市場」とは、ステークホルダーの多さや政府の規制など扱う変数が多く、変化のタイムスパンも長いがゆえに、実際に手を動かしながらでないと解決策が見えてこない市場のことを指します。 REAPRAは様々な産業領域でベンチャービルドしているため、一見「ポートフォリオに一貫性がない」ように見えるかもしれませんが、実は「複雑性の高さ」「長期的な成長ポテンシャルの高さ」という観点では一貫しているんです。

REAPRA 経営企画 鹿谷幸史氏 マッキンゼー・アンド・カンパニー、株式会社ミクシィを経て、REAPRAに入社。経営企画部にて主に研究と実践を一般化する業務をリード。

鹿谷REAPRAでは、ビジネスの領域を、複雑性の高い市場と低い市場に分けてとらえています。後者においては、課題に対する解決策がある程度見えているので、まとまった資金を投資すればワンプロダクトでインパクトを残せます。一般的なシリコンバレーのスタートアップが取り組んでいる市場がこれに該当しますね。

一方でREAPRAが取り組んでいる、多くの変数が絡み合う「複雑性の高い市場」では、巨大な資本力や単一のイノベーティブなアイデアは、持続的な成長ドライバーになりづらいと考えています。

シリコンバレーのスタートアップモデルは取らない、ということですね。

REAPRA 経営企画 三浦豪氏 外資系コンサルティング会社のPwC Strategy& (旧ブーズ・アンド・カンパニー)を経て、2017年11月にREAPRA入社。経営企画部にて、自社の戦略策定、投資先のハンズオン支援や一般化業務に携わる。

三浦明確な線引きはしていませんが、一般的なVCやスタートアップとは異なった考え方や手法が求められることが多いです。あくまでも中長期での産業創造がミッションであり、市場の複雑性に向き合って、あらゆる変数を取り込み続けて大きなインパクトを出せる領域が対象ですね。どちらかというと「社会起業」と呼ばれるような領域や手法に近いかもしれません。

「複雑性の高い領域」の具体例はありますか。

鹿谷たとえば、働き方改革の市場です。中長期的に働き方が変わっていくことは目に見えていますが、企業だけでなく政府や国家が絡む規制も存在するため、不確定要素も大きい。複雑性が高く、解が出せればインパクトの大きい市場の典型例といえます。

こうした市場においては、数多くの施策を打ちながら、実践の中で解を探っていくしかありません。だからこそ、一緒に事業をする起業家が、「独自の価値観をベースにした強い内発的動機に突き動かされて、継続的に経験学習を行える」資質を身につけていくことがインパクト創出のために重要だと気づき、IEの概念が生まれたんです。

なぜそういった領域に注力するようになったのでしょう?

諸藤以前創業したエス・エム・エスの代表を2014年に退任した後、原点に立ち返り、「残された時間で自分がやりたいことは何か」を見つめ直した時期がありました。初めは東南アジアでVCのような取り組みを行おうとしたのですが、「純粋な投資ではインパクトを出せる気がしないし、本当に自分がやりたいことでも無いな」と感じたんです。

そこで、改めて自身の生い立ちや価値観を振り返ったときに、気づいたんです──「複雑なものを複雑にマネージする」ことこそ、自分がやりたくて、かつインパクトを出せることなのではないかと。

エス・エム・エスで個人としても成長しながらインパクトを出すことができたのも、まさに「長期的に見れば伸びるが、始めは規模が小さく、かつ複雑性が高い」市場でした。そこに、「複雑なものを複雑にマネージしたい」という気質を持つ自分がフィットしたことで、経験学習を繰り返しながら、インパクトを出すことができたのだと思っています。

高い抽象度で内省して紡ぎ出した「自分が本当にやりたいこと」ですし、その手法を研究・実践し続けることで東南アジアにおいてもインパクトを出せると信じられたので、その実現の場としてREAPRAを設立することを決めました。

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「理想的な起業家」に求められる、4つの重要な資質

「複雑性の高い市場」に向かう起業家に求められる、IEの要素を教えてください。

鹿谷現在、REAPRAの研究・実践において特に重視しているのは、「エフェクチュエーション」「メタマルチ※」「自己批判的内省」「独自の価値観」の4つです。

※抽象度を上げて考える「メタ思考」と多面的に考える「マルチラテラル思考」をかけ合わせたREAPRA独自の造語。

「エフェクチュエーション」とは、目的から手段を算定して行動する「コーゼーション」の対極にある思考様式で、行動を起点に結果を導き、そこから目的に対する意味合いを紡ぎ出すアプローチです。とはいえ、ただ「行動して終わり」では未来に繋がらないので、自らの行動を構造的に捉え、反省点や再現性を見出すために「メタマルチに考える」「自己批判的に内省できる」ことも必要になる。また、複雑性の高い市場へ中長期的に立ち向かっていくことには困難も多く伴います。しっかりとやり抜くためにも、内発的動機につながる確固とした「独自の価値観を持っている」ことが求められるのではないかと考えています。

諸藤設立から数年間、東南アジア・日本を中心に手探りでさまざまな起業家に対峙し支援していくなかで、複雑性の高い領域で経験学習を行ってインパクトを生み出せる起業家の資質が見えてきました。先の4つを含む十数個の要素と、各要素の相関関係を「Ideal Entrepreneur(理想的な起業家)」と定義して、投資先の起業家と追究しています。

他には、どのような形での起業家支援を行なっていますか?

三浦企業の成長フェーズに合わせて様々な支援を行っていますが、ひとつには、創業の前段階で必ず実施する「Foundation Design(ファウンデーションデザイン)」(以下、FD)というパッケージがあります。FDによって起業家の生い立ちや過去の体験を深掘りすることで、相対的に変化しづらいその人の価値観や思考の癖を特定していきます。将来到達したい姿と現時点でのギャップやボトルネックを発見していくことで、IEに向かうための土台(ファウンデーション)の整理を行なっているんです。

鹿谷創業時だけでなく、事業が拡大していった後も、定期的に内省してもらうようにしていますね。FDによって、IEに成長するうえでの阻害要素となりうる価値観や癖を見つめ直すんです。

諸藤生い立ちや価値観、感情を深掘りする過程で、ときには失敗の経験やこれまで避けてきたコンプレックスなどにも切り込んでいかなければいけません。苦しいプロセスではあるのですが、複雑な領域で中長期的で大きなインパクトを出すための成長には、欠かせないと考えています。

事業を成長させるために、必要な活動は数多くあります。ミッション・ビジョンの策定、競合優位性のあるオペレーション、事業戦略、人材マネジメント...。企業成長とミッションの達成を、起業家本人の成長とともに確実に進めていくために、このFDを活用しています。

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IEの要素は、日々変わり続ける。

短期IPO前提の、いわゆるVCやスタートアップスタジオとは、領域もハンズオンの手法も全く異なるんですね。

鹿谷戦うフィールドもインパクトの出し方も全く異なります。ですから、起業を考えているけれど、VCやスタートアップスタジオのようなスタイルに何か違和感を持っている方には、REAPRAが向いているのかもしれません。我々の活動の主軸は、「REAPRA」という社名の由来でもある、「Research(研究)」と「Practice(実践)」。複雑性が高く、成果が出るまで中長期的に取り組む必要がある領域なので、「研究」と「実践」の両軸からアプローチし、一般解を追求することで、起業家や社会に還元していきます。

三浦複雑性の高い領域における企業経営では、組織全体が経験学習をし続け、自律的に機能することが求められます。だからこそREAPRAでは、組織の成長に最も大きな影響を与える「起業家自身の変容」に重点を置き、IEの概念を通じて経験学習・継続学習を伴走、支援しています。

IEを目指せるか分からなくても、チャンスはあるのでしょうか?

諸藤私自身、人の可塑性を信じられる経験をいくつも経験してきましたし、経営者がその価値観を持つことは重要だと思っています。冒頭でもお話ししたように、IEの資質は後天的に身につけられますし、それを支援するために研究・実践を繰り返しながら、起業家に向き合い伴走する我々がいる。少しでもREAPRAに興味を持ってくださったのであれば、いま起業に興味がなくても、是非会いに来てほしいですね。

三浦先ほどお話ししたIEの要素は、現時点の解として公表してはいますが、これから研究・実践を進めていくうえで十分変わりうると思っています。日々起業家と向き合うなかで、研究対象として注目するトピックも移り変わっていますし、その他の要素や、要素間の関連性についても研究は続けていきます。

こちらの連載企画「Ideal Entrepreneur──成功する起業家の要諦」では、その研究・実践をみなさんと共有する場のひとつとして、「Ideal Entrepreneur」の要素をお持ちの起業家に、インタビューをさせていただいています。

こちらの記事は2019年01月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

写真

藤田 慎一郎

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