【FastGrow厳選5社】いま、知っておきたい物流Techの世界

「社会課題を解決したい」──。そう息巻くベンチャーパーソンなら、日本経済の未来を脅かす“生産年齢人口の減少”という課題にこそ刮目せよ。

もちろん、ここで世の中の課題に対し優劣をつける気など毛頭ない。しかし、課題ごとに生じる緊急性や、社会にネガティブな影響を及ぼし得る度合いというものは事実、存在する。

今回は、我々が抱える社会課題のなかでも一際重要度の高い、“生産年齢人口の減少”という課題に対し、テクノロジーを駆使して挑む業界・及びそこで活躍するベンチャー/スタートアップを紹介したい。その業界とは、物流・ロジスティクスだ。

Amazonの即日配送に代表されるように、我々は日々、“きわめて”素早く手軽に商品を購入し、受け取っている。しかし、その裏では当然ながら人力による多大な工数が発生しているのだ。“今はまだ”、何とか稼働が回っている状況かもしれないが、10年、20年先はどうだろうか?そんな未来に思いを馳せると、“生産年齢人口の減少”という課題は、もはや諸君の生活にも直結する問題に見えてこないだろうか?

今回はそんな前提を踏まえたうえで、FastGrowから5社の物流ベンチャー/スタートアップを紹介する。掲載企業の共通項としては、他に類を見ない事業のユニークネスを持ち、何より業界や社会そのものを変えんとする志の高さだ。本記事を通じ、日本社会を変え得る企業との出会いに繋がれば本望だ。

  • TEXT BY KIICHI MURAKAMI
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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ロジレス
生産性向上を通じて日本の“社会”を変革する、ECロジスティクス・スタートアップ

株式会社ロジレス

“ECロジスティクスを変革し、日本の未来をスケールする”というミッションを掲げ、ECバックヤード業務における生産性向上を実現する。

さて、まずは読者が入りやすい話題からお伝えしよう。ロジレスはCoral Capitalや、SaaS企業を選りすぐって投資するALL STAR SAAS FUNDから累計5.5億円の資金調達を済ませているスタートアップ。そして同社が提供するプロダクト『LOGILESS』は、FastGrowでもお馴染みのTENTIALBASE FOODなどスタートアップから、グミやキャンディで有名なカンロといった大手企業まで幅広く導入されているのだ。

そんな同社のプロダクトを具体的に解説すると、『LOGILESS』とはEC事業者と倉庫事業者が一つのシステムを利用し、ほぼ完全な自動出荷を実現することができるということになる。具体的にいうと、本プロダクトは独自のRPA機能を有しており、“初回購入の場合はノベルティを同梱する”、“離島配送の場合は配送会社をより安い料金の会社に変更する”等のEC物流における煩雑なオペレーションを自動化することができるため、全注文の90%以上という高い自動出荷率を実現しているのだ。この一連の工程を“ワンプロダクトで”実現し、オペレーションプロセス全体の効率化を図っている点こそ、ロジレスが起こしたイノベーションの肝と言えるだろう。

それまでEC業界においては、受注管理システム(OMS:Order Management System)と倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)がそれぞれに存在しており、OMSはA社のシステムを使い、WMSはB社のシステムを使うといった状況が慣習となっていた。しかし、それでは受注から出荷に至る間でオペレーションの無駄やミスが発生してしまい、EC事業者と倉庫事業者それぞれの生産性を阻害する要因となっていたのだ。

しかしその課題は、ロジレスが提供するこの『LOGILESS』によって終焉を迎えることになる。単に物流の流れを素早く、正確に、簡単にするだけでなく、生産年齢人口が減少していく日本において、企業の生産性向上を実現していく、まさに“社会課題を解決する”プロダクトなのだ。

提供開始から5年、EC事業者は約630社、倉庫事業者は約130社が導入しており、『LOGILESS』経由で年間に出荷された荷物件数は1,500万件超という急成長ぶり。そんな抜群の事業ポテンシャルを持つロジレスだが、実は1年前にMVVと経営体制を刷新し、その後の成長スピードと快進撃がベンチャー/スタートアップ界隈で話題になっている。今後は単なる業務効率化を担ういちIT企業ではなく、生産性向上を通じて社会変革を起こすスタートアップとして、大海原に出ていくことだろう。

FastGrowでも今後、ロジレスの航海はつぶさに追いかけていく予定。今はまだ、序章に過ぎない──。

期待して待たれたし。

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シマント
開発力に強みあり。DXを確実に進める、アジャイル×マルチバリューデータベース

株式会社シマント

同社が取り組むのは、まぎれもなく「DX」だ。物流企業に単なるデジタル化を提供するのではない。その骨格をデジタルに革新させるのである。その手段として今提供しているのが、メーカーと物流企業の間で用いられる“発注データの統合”と、運送時にどの荷物をどのトラックにどれだけ積むかという“配車割り付け業務の自動化”の2つだ。

強みは独自のシステム開発力で、“アジャイル型”דマルチバリューデータベース”を武器に物流の課題解決に挑む。

この“発注データの統合”と“配車割り付け業務の自動化”は、これまで長年アナログの手作業で整理・調整が行われてきた工程である。例えば前者の“発注データの統合”、この発注データはメーカー各社から送られてくる情報なのだが、各社ごとにそのフォーマットはバラバラ。「各社共通のフォーマットで発注をかけてもらうようメーカー側に打診すれば良いのでは?」と考える人もいると思うが、それはレガシーな現場を知らない素人発想というもの。

長年、各社ごとに独自の商慣習で進めてきたしきたりを、物流事業者の効率性のためにおいそれと刷新できるはずがないのだ。ならば、「各メーカーからの発注データのフォーマットは変えず、それを受け取った物流事業者側でデータを統合できる仕組みをつくることができれば、この課題は解決できる」。代表の和田氏はそう考えたのだ。

同氏はもともとメガバンクで中小企業の経営者を相手にセールスを経験したのち、企画本部で社内データの加工・統合業務に従事。その際、まさに社内から送られてくるデータの仕様がバラバラである状態に違和感を覚え、解決策を探す道へと進むのである。詳細は過去の取材記事に預けるが、メガバンク退社後、和田氏はこの課題を解決する技術『マルチバリューデータベース』に出会い、その道の第一人者であるデータベーススペシャリストの渡邉 繁樹氏をCTOに招き入れ、今のシマントを築く。

こうした技術力の高さ故、同社は名だたる大手企業からも多数引き合いを受けている状況だ。しかし、FastGrowに言わせればその理由は技術力だけでなく、和田氏を筆頭に徹底した現場主義のカルチャーがあるからこその結果だと捉えている。

どういうことか?前半にも記載した通り、DXを謳うベンチャー/スタートアップは星の数ほどあるが、そのなかでクライアントの現場感、およびそこで作用している力学をしっかりと理解した上で価値提供できている企業がどれほどあるだろうか。「このツールを入れるだけで終わりです」「このプロダクトは仕様が決まっているので、クライアントさんの方で情報を揃えてください」などと、クライアント側にプロダクトへの適応を委ねるベンチャー/スタートアップも少なくない。

こうしたなか、シマントは“アジャイル”דマルチバリューデータベース”を用いて、とことんクライアント毎のニーズに応える開発スタイルを志向する。決まった型を提供するのではなく、まさにオーダーメイド式でDXを提供しているのだ。

「クライアントの物流現場を見学した時、若い女性スタッフや外国人労働者が重い荷物を何度も何度も運んでいる姿を見て、少しでもラクな業務環境を提供したいと感じたんです」と語る和田氏。同氏が率いるシマントは、250万人のエッセンシャルワーカーを救う救世主となるか──。今後の飛躍に注目だ。

同社の取り組む課題や解決手法のユニークネスについてはこちら:https://www.fastgrow.jp/articles/simount-wada

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トラボックス
創業起源は運送会社。Visionalグループ唯一の物流DXスタートアップとして、運送のマッチングを科学する

トラボックス株式会社

同社は「物流の仕組みを、未来へ加速させる」をミッションに、荷物とのマッチング創出を通じて売上向上を実現する国内最大級の求荷求車サービス「トラボックス求荷求車」を提供するスタートアップ。加えて、業務のデジタル変容・効率化を通じてコスト削減を実現するTMS(輸配送管理システム)も提供を開始している(物流DXSaaS事業も展開)。

サービス開始は1999年、運送会社を経営する若手メンバーらが集まり、『トラボックス』は立ち上がった。他のベンチャー/スタートアップとの大きな違いは、創業メンバーが業界を熟知している面々であり、既に20年以上の事業経験があるベテラン企業という点だろう。

ともすると一見、「ベンチャー/スタートアップではないのでは?」という疑問も出てきそうだが、企業の在り方は継続年数では測れない。事実、2020年にはその事業ポテンシャルを買われ、Visionalグループ(ビズリーチ社がグループ経営体制に移行し誕生)へとジョイン。このVisionalが持つマッチングビジネスのノウハウと資本力を活かし、今後急激に事業成長していく様がうかがえる。

その他、組織観点でみても攻めの姿勢は顕著だ。現在、創業者は会長のポジションへと移り、代表はテクノロジー×ロジスティクスのプロフェッショナルである片岡 慎也氏が担っている。同氏は海外の大学でマーケティング&ロジスティクス科を卒業したのち、ロジスティクスコンサルタントとしてキャリアをスタート。その後、FastGrowでも馴染みのあるベンチャー企業のグリーやフリークアウト、メルカリなど複数社を渡り歩き、2021年初頭にトラボックスへジョイン。

このように、業界を知り尽くし、運送会社らと密なネットワークを築いている同社のポジショニング。また、同じく業界に明るく、かつテクノロジー起点でも豊富な事業経験を持つ経営メンバー。そして、それらをバックアップするVisionalの潤沢な事業ノウハウや資本力。この3点が同社の魅力や可能性を示すファクターとなるだろう。

来る2024年、まもなくドライバーの労働時間に規制が設けられる。これはつまり、物流の中でも同社が取り組む運送領域こそ、“生産年齢人口の減少”による歪みに輪をかけて苦境に立たされる領域であるということに他ならない。そんな文字通り“待ったなし”の状態にある課題に対し、自身の使命感をぶつけてみてはいかがだろうか?

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Azit
移動の未来を創る!?モビリティ・デリバリー領域に特化したテクノロジー企業

株式会社Azit

スマホひとつで、今晩飲むべき薬が届く──。Uber Eatsをもって“イノベーション”と早合点してはいけない。ラストワンマイルのフードデリバリーが成立するのなら、フード以外の配送も当然、アリだろう。

Azitは、モビリティ・デリバリーに特化したテクノロジー企業。ラストワンマイルを担う輸送手段を持つ個人や企業1万社以上と連携し、食べ物はもちろん、薬やギフト、ちょっとした小物なども含め、あらゆる配達を支援するプラットフォーム『CREW Express』を運営している。整理解雇も経験した苦労人の起業家・吉兼 周優氏率いる同社に、最早怖いものは何もない(2度のピボットを乗り越えた物語はこちらの記事などを参照されたい)。

まず何より、このラストワンマイル配送という領域は世界的にもユニコーンが複数存在する注目市場であるということをインプットしておきたい。アメリカのOlo、アジアではLALAMOVE、欧州(スペイン)ではGlovoなどの名を聞いたことがある読者もいるだろう。そしてここ日本においてもその市場は急拡大しており、コロナ禍の2020年度には前年比で約3割拡大。2023年には3兆円規模になるとも言われている。

その市場ポテンシャルを指し示すが如く、同社の売上は直近6カ月だけで見ても10倍成長を遂げているとのこと。加えて、2022月5月に3.5億円の資金調達も実施。これから一気にアクセルを踏んでいく様がうかがえる。また組織観点でもBCG(ボストンコンサルティンググループ)やリクルート、電通など名だたる有力企業を経た面々がジョインしており、今後の事業成長に大きな期待が持てるだろう。

ちなみに、コロナ禍で配送ニーズが加速したことは読者も想像がつくであろうが、その中における同社の取り組みとして、過去FastGrowでの対談取材に応じてくれたファストドクターとの提携がある。これはAzitが持つ配送ネットワークを活かし、コロナ患者に向けた医薬品や酸素器具の緊急配送を手がけるといった取り組みだ。このように、ラストワンマイルの配送は我々の生活の利便性を向上してくれるだけではなく、社会的貢献性も高い事業だということはFastGrowとしてもシェアしておきたい。

テクノロジーの力で次代のインフラ事業を創っていきたいという方は、要チェックだ。

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オープンロジ
目指すは物流業界の『AWS』。
フィジカル・インターネットの実現へ

株式会社オープンロジ

オープンロジが唱える「フィジカルインターネット」とは、倉庫やトラックのようなフィジカル(物理的)な機能のネットワーク化をはかり、効率的に物全体を運ぶ物流の仕組みを指す。そう、我々が日々インターネットを用いて縦横無尽に欲しい情報にアクセス・取得するように。

そんな同社のプロダクト『OPENLOGI』は、荷主企業(EC事業者)と物流企業(倉庫事業者)間における煩雑な業務をWebアプリケーション上で効率化・一元化、自動化するサービス。カジュアルに表現するならば、“面倒な物流業務をまるっとおまかせ”できる仕組みを提供している。

同社の言葉を借りれば、『OPENLOGI』の概念はAWS(Amazo Web Service)の倉庫版なのだという。つまり、荷主企業は同サービスを活用することで、オープンロジが提携する倉庫スペースを“従量課金制”で自由に活用することができるのだ。

もともと荷主企業にとって、商品を保管する倉庫の契約・管理・運用は業務負荷が高く、なにより“定額制”の固定費が嵩むポイントであった。特に、昨今のEC市場の隆盛にあたって新たにEC事業を立ち上げた事業者にとっては、慣れない倉庫業務の対応に終われ、本来注力すべき商品の企画や販売にフォーカスすることができなくなるといった弊害も生じている。こうした課題を解決するのが同社のプロダクトという位置付けだ。

この『『OPENLOGI』を用いることによって、荷主企業は事業にとって核となる商品の企画や販売にリソースを集中させることができるようになる。一方、倉庫事業者にとっては、非稼働になっている自社の倉庫スペースをオープンロジが代わりに営業してくれるといったメリットがあるのだ。そんな同社のプロダクトは、2022年4月末の時点で荷主企業側の導入社数が約10,000社に到達。物流企業(倉庫事業者)側は50社に及ぶとのこと。

また、ファイナンス面では2020年にシリーズCで17.5億円(累計27.5億円)を調達済み。住友商事、双日及び、ファンドを通じて出資済の伊藤忠商事からの調達ということで注目を集めた。そんな大手事業会社からもバックアップも受け、業界の刷新へとひた走るオープンロジ。果たして物流業界のAWSとなるか──。

以上、ひと口に物流と言ってもそこには様々な課題が点在していると、少しでも感じることはできただろうか。どのスタートアップが、どの課題を捉え、そのうえでどのように唯一無二の事業を生み出そうとしているか。そこには、物流という領域以外でも活かすことができる学びも多くあるだろう。

業界構造をひっくり返す事業。はたまた、日常生活に大きな変化を与え、社会変革すら起こし得るポテンシャルを秘めた事業。そうした伸び代ばかり存在するのが、この物流Techという世界。

「社会課題を解決する」──。そのスケールで事業家キャリアを志向するならば、この領域を見逃す手はない。「物流Techのトレンドは知らない」などとは恥ずかしくてとても言えない、そんな日がもう目前に迫っている。

こちらの記事は2022年05月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

村上 貴一

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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