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元SMS海外支社長が挑む!
海外不動産取引の超巨大市場を開拓するグローバルスタートアップBEYOND BORDERS
創業から約2年にしてマレーシアにも10人のメンバーが在籍する不動産×ITスタートアップ、BEYOND BORDERS。
エス・エム・エス出身で海外法人立ち上げ経験もあるCEO遠藤がなぜこの分野に興味を持ったのか。
一体この巨大市場をどうやって攻略していくつもりなのか。
また、マレーシア支社長である玉邑の同社ジョインの決め手は何だったのか。
- TEXT BY FastGrow Editorial
自らの成功体験に裏付けされた自信と共に起業へ
「好きすぎて不動産の価格をずっと見ていました。仕事でもないのにエクセルにまとめるほど」そう笑顔で語ってくれたのはBEYOND BORDERS CEO、遠藤忠義。 株や為替取引に魅了される事はよくある事だろう。だが、不動産投資が好きというのは珍しい。
遠藤不動産投資は5回して、どれもうまくいきました。実はマレーシアでも不動産を買った経験があって、あまりわからなかったから怖かったですが、値動きを見ているとほとんど上がっていたので購入しました。一年ぐらい住んで売ると1000万円以上儲かったんです。すごいなと思って。こんなこと日本ではないんですよ。
日本では少子高齢化や経済が成熟してきたこともあり、魅力的な投資機会を見つけることは難しくなった。だが、マレーシアのような発展途上国は今後も高い経済成長が見込めるため、魅力的な投資機会で溢れている。
遠藤のように海外不動産取引で強烈な成功体験があれば、投資しないほうがおかしいと思うかもしれない。しかし一般的には、言語の壁が投資のハードルを上げている。
遠藤言葉が難しいんです。だからその人の言語でわかりやすく不動産投資をサポートできればいいなと思った。じゃあ、それやりたいと。ニーズがあり、不動産の目利きはできる。それに、不動産が好きなんでやりたくなったんです。
現在遠藤が目指しているのは、国境を越えた不動産取引を快適かつ安心にすることだ。
株式会社BEYOND BORDERSは海外不動産取引に特化した2つの事業を展開。1つは多言語でアジアの不動産を検索できるサイト「SEKAI PROPERTY」の運営、もう1つが日本や海外の不動産取引を多言語でサポートする国際的な不動産仲介事業だ。
元来、アジアにて未発達の地域では外国人向けの情報が少なく、投資家自身がその地域の言語に対応し、情報を理解する必要があった。同社の最大の特徴である多言語に対応したサービスは、ユーザーの言語の壁を解消するものである。
同社のメンバーはみな2か国語以上を駆使し、様々な言語で不動産取引をサポート。不動産契約に関する事項や投資におけるリスク、税制などの情報を顧客が理解できる言語で詳細に説明したり、現地にて投資先を視察する際も同行して対応したりといったように、海外投資に関わる顧客の不安を徹底的に解消する、といった顧客視点のサービス設計が同社の特徴だ。
不動産領域に精通した海外支社長、中国での勤務経験があるCTOが並ぶ盤石の経営陣
不動産好きの遠藤であるが、不動産業界に在籍したのは新卒入社したゴールドクレストでの2年間のみ。キャリアのうち12年という長い期間を株式会社エス・エム・エスで過ごした。そんな彼を支える経営メンバーがBEYOND BORDERSには2人いる。
遠藤根っからの不動産屋ですごいんですよ、不動産知識とか。
そう遠藤が絶賛するのは、マレーシア支社長を務める玉邑だ。東急リバブル株式会社にて9年間不動産売買仲介業に携わった後独立。4年間ほど自身の不動産会社を経営していたが、“海外不動産×IT”で事業展開を模索していた矢先に遠藤と出会い、BEYOND BORDERSへのジョインを決めた。
東急リバブル時代には同期の営業職300人中1位の営業成績を収めたこともある玉邑。2人が出会うきっかけを作ったエス・エム・エス創業者の諸藤も「今まで出会った営業マンの中でも群を抜く」と絶賛するほどだ。
玉邑に加えて、エンジニアリング領域で同社を支えるのがCTOの水野だ。水野は、日本人初の開発者として中国最大の検索サイト運営会社である百度に入社。主にウェブやモバイル検索の開発に携わり、上海開発センター代表として年間賞を受賞した経験を持つ。
不動産のプロフェッショナルである玉邑、競争が激しい中国IT業界で実績を持つ水野、海外で子会社を設立し成功に導いた遠藤。起業家、事業家、CTOの3名がうまく結束しているのがBEYOND BORDERSの経営チームの特徴である。
遠藤の型破りで壮大なビジネスアイディアがこれだけの人材を惹きつけた部分もあるが、玉邑によると同氏は人格者としても大きな魅力を持っているようだ。
玉邑遠藤さんがやろうとしていた、不動産にITを交えたビジネスに可能性を感じると同時に、彼の数字に厳しいプロフェッショナルな部分、人間味のある人格者としての部分に惹かれ、この人だったら成功すると確信したんです。
遠藤は経営メンバーに関わらず、社員やインターン生に対しても相談しやすい環境を作っている。一見間違っているような指摘でも一度はしっかりと話を聞き、適切なフィードバックをしてくれると玉邑は語る。
この遠藤の経営者としての大きな器もあってか、現在の同社の躍進は若手の活躍によるところも大きい。
経営陣のノウハウを注入し、若手社員やインターン生も大活躍
現在、BEYOND BORDERSは某国最大手の不動産検索サイトと提携を予定している。同社が保持する日本の不動産情報を、同サイトで観覧できるという大型提携だ。驚くことに、この提携を実現させたのがインターン経験後にそのまま新卒入社した2年目の社員だという。
マレーシア支社では現地のインターン生も活躍中だ。同社は海外不動産を投資家が購入した後の、売却や賃貸という収益化までをサポートしている。そのため、アジア各地域にて多くの不動産エージェントとの連携・提携が必要となる。某大手不動産会社の競合は30社程度の提携に留まるのに対し、BEYOND BORDERSは8,000社以上もの現地法人・個人ブローカーとの提携を実現。これを可能にしたのも若手の活躍だと支社長の玉邑は語る。
このような若手の活躍も、経営陣のサポートあってのものだ。
「どうしたらお客さんの心をつかめるか?電話先のこのお客さんが本当に求めているものは何か?1本の電話、1件のメールにも徹底的にこだわる事を指導しています」と、玉邑。
玉邑前職では押し売りで結果を出す営業マンが数人いたんですけど、違うやり方で同じ結果が出せるんじゃないかという仮説を立てました。そう思って取り組んだのはメールや電話のクオリティを上げ、押し売りにならないよう、相手が求めていることを徹底的に理解し、それを与えることだったんです。
玉邑は、不動産業ではこういった1つ1つのことで信頼を築き上げていく事が重要だと気づき、現在メンバーにも電話やメールでの顧客との会話には徹底的にこだわろう、と言い続けている。
一方、遠藤もエス・エム・エス時代に培った「あらゆる施策をやり尽くす姿勢」をメンバーに注入している。
遠藤エス・エム・エスの営業時代、目標達成のためにあらゆる手を考えて、やれることはなんでも徹底的にやりつくしてきました。ディテールにこだわり、1つ1つの作業を徹底的にやりきることでしか、競合に勝つ方法はありません。
「具体的に何をやったのか、やり残したことはないか?」と徹底的に追求されるのが同社の日常だ。数ヶ月の勤務後にはインターン生ですら、目標達成のためにできる施策を自ら徹底的に洗い出し、実行しきるようになる。
遠藤徹底的にやる事が基準になると、がむしゃらに頑張れる若手はすごい力を発揮するんです。
この言葉が満面の笑顔から語られるところが、遠藤の人格者たる由縁なのだろう。メンバーの可能性を信じ、どのような意見にも聞く耳を持ち、任せるときは徹底的に任せる。シンプルなようだが、大きな度量が必要なことだ。
海外不動産市場を制覇した先にも勝機を見据える
同社のビジョンは、日本人だけではなく、全世界の人々の不動産取引をサポートすること。顧客をサポートする手法が確立してきたフェーズにあるため、これからはWEBマーケティングを強化し、顧客獲得を強化していく方針だ。
遠藤世界中の人が日本の不動産を様々な言語で検索するとき、必ずBEYOND BORDERSを使ってくれるようにしたい。
遠藤はもう、海外不動産投資を皮切りに、その先にも更なるビジネスチャンスを見据えている。
遠藤世界でのシェア獲得を目指しているその先にはさらなるビジネスの広がりがあります。海外の不動産を購入する人たちは富裕層が大半。その富裕層の顧客基盤があれば、保険やリノベーション、税務相談といった、富裕層向けビジネスを展開できる可能性を感じています。
2015年7月創業。設立後約2年で既にマレーシアに支社を持つBEYOND BORDERS。彼らが世界の不動産取引市場を一挙に担う巨大なプラットフォームとなる日はいつになるだろうか。国境を越えたビジネスがしたい人々にはうってつけの環境だ。
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